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伊達宗弥

 伊達宗弥というごく平凡に生きて、平凡に自殺した男の半生。


「僕はね、別段家庭は裕福ではないけれども戸建てがあり、父はサラリーマンで母は専業主婦だった。兄弟は兄が一人。僕の国じゃごく普通の家って感じさ。


 兄は優秀だった。両親の期待を一身に背負って、過酷な中学受験に勝ち抜き日本一の中高、大学まで入って商社のエリートコースに就職して自分が死ぬちょっと前に結婚して子供までいたんだ。


 対して僕はそんなに期待もされなかったというよりかは、中学受験までは兄と同じ扱いだったがインフルエンザで全部棒に振ってから親は何一つ自分に期待しなくなったのを分かった。


 そのまま普通の公立中学、公立高校と進学した。


 どこにでもいる平凡な少し成績の良い学生だった。


 中学の頃から卓球を始めてそこそこに楽しくやっていたが、高校最後の年で良くて県大会のベスト16から8ぐらいで全国に行く地区の一番強いやつにストレートで引きちぎられる程度だった。


 それ以上に生徒会に巻き込まれることが多かった。


 何だか放っておけないという理由で、もめごとだったり、困ったことになっている人たちに突っ込んで行っては仲介したり、解決したりすることが多かった。


 そうしているうちに困りごとを抱えているのは生徒会ということで、生徒会に使いっ走りを頼まれたりすることになっていった。


 大してクラスの中でも目立つ方でなかったけれども、誰かに頼ってもらえているうちに自分の居場所のようなものを見つけていたのかもしれない。


 そのままふんわり大学に進学して、平和な四年間を過ごして就職をした。そのまま平和に就職して、東京に一人暮らし誰にも迷惑をかけずに平穏に生きていけると思っていた。


 もともとは技術部門の担当者としてやっていたが、そこそこセコイ立ち回りが得意だったということも相まって営業になった。成績はそこそこ良かったと思うけども、それほど評価されているようにも思えなかった。


 ある時、同年代ぐらいの女子社員がとてつもない勢いで若手を苛め倒していたので、それは良くないと思いますよと注意をしたら、セクハラされましたと喚き立てられたんですよね。ムカついたんで、その女子社員がパワハラぶちかましている証拠を集めたりとか、やたらと擁護する部長とその女子社員の不倫現場押さえたりとかしたんですが、結局会社辞める羽目になりましたね。まあ、その女子社員も処分されてましたからざまあみろって感じでしたけどね。


 それから仕方なく、今やっているみたいな人材派遣の仕事を始めてそこそこ上手く行っていたんだよね。相棒みたいなその時の同期がいたんだけども、一緒に頑張って仕事とって上手く行っていたんだ。


 でも、ある時その相棒みたいな奴がうちにいる何人か巻き込んで独立をしたいって話をし始めたんだ。そんな話が上の方に知れ渡ったら、真っ先に疑われるのは僕だ。だからなるべく関係ないふりして、相棒の仕事も代わりにやって準備がしやすいように整えていった。


 それで、相棒がいざ何人か率いて独立をした。エース格が一通り消えて会社はまともな形を取れなくなってきた。僕もさっさと辞めて合流したかったけど、会社に残っていた連中は上のやつも下のやつも僕をすがるような目で見ていたんだ。


 お前がいなくなったら何もかも終わり、俺のためにお前は消えないでくれみたいなそんな呪いみたいな願いが抜けることを自分に許せなかったんだよね。


 それからも会社の状況はどんどん悪くなっていった。悪くなるごとに降りかかる仕事ばかりどんどん増えて行って、最後には自分で死ぬことを選んでいたんだよ。


 僕はさ、多分僕一人の夢じゃ立っていられないぐらい弱いんだ。だから、今はみんなに感謝している。皆の夢が僕を立たせてくれているって思うんだ」


 語り終えた時に爽快感は何一つなかった。


 ただ胸いっぱいに不快感があふれて、吐き気でいっぱいになった。それでも、ここに来てエマに会えてよかったんだなということを思い返すのだった。


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