プロローグ 1
読めない、描写がおかしい、漢字が違う、日本語がおかしい……などなどなど!
こちらでも対処しますが、できる限りの協力を期待しております。
どうぞ、考えて、楽しんで頂けたらなと思います。
誤字訂正×1…otao様、ありがとうございます。
洗面台の蛇口から、滴の垂れる音がする。
小さなマンションの一室
物音ひとつしないリビング。
そこに男が一人。
顔はひどく荒れ、目は虚ろに、輝きをなくしている。生気の抜けたそれは床に座り込んでいた。
その状態のまま、背にあるソファにもたれかかった。頭が重力に引かれ、自然と目は上を向く。
暗い天井がある。
それを乾いた眼球で無感情に見つめていると、襲ってくるような感覚を覚えた。
そこに『彼女』の姿が現れる。天井のひび割れが筋が、彼女の形をかたどっていくのだ。
それはこちらを向いて笑っていた。
目の奥が熱くなる。
唇が震える。
しかし涙が流れることはない。
もう一昨日には流しつくした。補給するつもりなどない。そのような面倒なこと、誰がするものか。
灰色のキャンバスに描かれた少女、今では会うことのできないヒト。
一度でいいから触れたい。
どうでもいい話がしたい。
そしてバカみたいなことを言い合って、笑いあいたい。
そんな普通なことが、今ではとても遠いものだ。
したいことはたくさんあった。やり残したこともたくさんあった。楽しい事ばっかりではなかったけれど、
その嵐みたいな時間は、確かに、充実したものだった。
彼女に依存しているつもりはなかった。学校から帰り、どこかで待ち合わせをする。用事があれば連絡をしてそちらを優先する。
一か月に一度のデートだって何度行けなかったことがあったことか。それでも彼女は仕方ないと言ってくれた。
それが辛くて抱きついたこともあった。
やはり依存していたのだろうか。何をしても、結局は一緒にいてくれるあの子が、自分の居場所として確立していたのだ。
だからってここまで、心に広がる、言葉に表せないほどの穴が開くだろうか。
彼女とたくさんの写真を撮り、プリクラもした。しかし、そのすべての紙を集めたところで、この脳裏に焼き付く思いに届くわけがない。
失ってしまった今でも、これほどまでに描くことができる。微細な表情の変化も、小さいことを気にしていた胸も、目尻にあったホクロも。何もかも。
撃ったのは自分だ。あの日あの時あの場所で。
銃口を向け、
引き金を引き、
銃弾を放ったのは俺だ。紛れもない、殺したのは俺なのだ。
天井の彼女はその瞬間の表情になった。
口は笑みを作り、
目は驚きに見開かれ、
顔は痛みにひきつった。
口から血を吐き、
目からとめどない涙を溢れさせた。
腹部から定期的に噴き出す鮮血を止める手段はなかった。
その光景を見て、俺は。
取り返しのつかないことをして、俺は。
声にならない叫び声をあげる。
汚れない手。
人の命を摘み取ったのだというのに、自分の体は一滴の返り血をも浴びていない。
相手だけが傷つき、こちらは無傷のままだ。殺した、という証拠は手に持っている銃以外になかった。
けれど、この気持ちは相手があの子だったからだろう。
他人ならばどう思ったことか。
おそらく、『人を殺めた』という結果だけに固着し、後悔の念だけが渦巻くだろう。そしてすぐに消え失せる。
たとえ、それも彼女と同じ殺人行為であったとしても。
彼女より酷く惨殺したとしても。
俺という人間は、状況だけを考え、被害者の親、親友、そして被害者自身の感情など見向きもしないだろう。
これはいけないことだろうか。
いやすべての人間に当てはまる。自分に関係のない人間が死んだところで、それを可哀想とだけ感情の上っ面で思い、それで十分だろうと満足する。
どれだけ善人になろうとして、俺を蔑む輩がいても、同じ状況になれば変わらない。
なぜ、死んだのが大切な人なのだろうかと。
なぜ、どうでもいいあいつは、死なないのだろうかと。




