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Are you ready?  作者: 和島祥加
プロローグ
1/10

プロローグ 1

読めない、描写がおかしい、漢字が違う、日本語がおかしい……などなどなど!

こちらでも対処しますが、できる限りの協力を期待しております。

どうぞ、考えて、楽しんで頂けたらなと思います。


誤字訂正×1…otao様、ありがとうございます。

 洗面台の蛇口から、滴の垂れる音がする。


 小さなマンションの一室

 物音ひとつしないリビング。

 そこに男が一人。


 顔はひどく荒れ、目は虚ろに、輝きをなくしている。生気の抜けたそれは床に座り込んでいた。


その状態のまま、背にあるソファにもたれかかった。頭が重力に引かれ、自然と目は上を向く。



 暗い天井がある。


 それを乾いた眼球で無感情に見つめていると、襲ってくるような感覚を覚えた。


そこに『彼女』の姿が現れる。天井のひび割れが筋が、彼女の形をかたどっていくのだ。


 それはこちらを向いて笑っていた。

 目の奥が熱くなる。

 唇が震える。


 しかし涙が流れることはない。

 もう一昨日には流しつくした。補給するつもりなどない。そのような面倒なこと、誰がするものか。


 灰色のキャンバスに描かれた少女、今では会うことのできないヒト。


 一度でいいから触れたい。

どうでもいい話がしたい。

そしてバカみたいなことを言い合って、笑いあいたい。


そんな普通なことが、今ではとても遠いものだ。

 したいことはたくさんあった。やり残したこともたくさんあった。楽しい事ばっかりではなかったけれど、

その嵐みたいな時間は、確かに、充実したものだった。


 彼女に依存しているつもりはなかった。学校から帰り、どこかで待ち合わせをする。用事があれば連絡をしてそちらを優先する。


一か月に一度のデートだって何度行けなかったことがあったことか。それでも彼女は仕方ないと言ってくれた。

それが辛くて抱きついたこともあった。


 やはり依存していたのだろうか。何をしても、結局は一緒にいてくれるあの子が、自分の居場所として確立していたのだ。


 だからってここまで、心に広がる、言葉に表せないほどの穴が開くだろうか。


彼女とたくさんの写真を撮り、プリクラもした。しかし、そのすべての紙を集めたところで、この脳裏に焼き付く思いに届くわけがない。


 失ってしまった今でも、これほどまでに描くことができる。微細な表情の変化も、小さいことを気にしていた胸も、目尻にあったホクロも。何もかも。


 撃ったのは自分だ。あの日あの時あの場所で。

 銃口を向け、

  引き金を引き、

   銃弾を放ったのは俺だ。紛れもない、殺したのは俺なのだ。


 天井の彼女はその瞬間の表情になった。

       口は笑みを作り、

 目は驚きに見開かれ、

         顔は痛みにひきつった。

      口から血を吐き、

 目からとめどない涙を溢れさせた。


 腹部から定期的に噴き出す鮮血を止める手段はなかった。


 その光景を見て、俺は。

 取り返しのつかないことをして、俺は。


 声にならない叫び声をあげる。


 汚れない手。


 人の命を摘み取ったのだというのに、自分の体は一滴の返り血をも浴びていない。


相手だけが傷つき、こちらは無傷のままだ。殺した、という証拠は手に持っている銃以外になかった。


 けれど、この気持ちは相手があの子だったからだろう。

 他人ならばどう思ったことか。


 おそらく、『人を殺めた』という結果だけに固着し、後悔の念だけが渦巻くだろう。そしてすぐに消え失せる。



 たとえ、それも彼女と同じ殺人行為であったとしても。


彼女より酷く惨殺したとしても。


俺という人間は、状況だけを考え、被害者の親、親友、そして被害者自身の感情など見向きもしないだろう。


 これはいけないことだろうか。


いやすべての人間に当てはまる。自分に関係のない人間が死んだところで、それを可哀想とだけ感情の上っ面で思い、それで十分だろうと満足する。



どれだけ善人になろうとして、俺を蔑む輩がいても、同じ状況になれば変わらない。


なぜ、死んだのが大切な人なのだろうかと。


なぜ、どうでもいいあいつは、死なないのだろうかと。

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