四十九話 凄腕の姉弟【ミラウッド視点】
「じゃ」
「乾杯!」
運ばれてきた飲み物を手に、まずは再会を祝した。
「………………ぷはぁ!!」
「仕事のあとって、なぁんでこうも酒が美味しいのかねぇ」
「依頼の後だったか。最近はどうだ?」
「どうもこうも、あんたが居てくれないと張り合いがないよ」
「よく言う」
「いやいや、ミラウッド。あんたも相変わらずだな」
「そうさね。あんたが居ないと、あたしの魔力が切れたらと思うとヒヤヒヤするよ」
二人とも相変わらず仕事終わりの一杯が生き甲斐の様子。
変わりはなさそうで安心した。
「そっちは?」
「私は……そうだな」
本題である魔物の討伐と、聖樹の状況やコーヤのことは直接の関係はない。
精霊の様子がおかしいという点だけを伝え、さっそく私が赴いた理由を伝えた。
「実は──」
フラマの木の状況から大型の魔物が森に出たこと。
理由は不明だが精霊の様子がおかしいため、ギルドを通して依頼を出すのが憚られること。
冒険者としての実績にはならないかもしれないが、長老方からの報酬は約束されているので二人に直接依頼したいこと。
それらを伝えた。
「……へぇ~~? それはそれは……」
「難しいか?」
「ミラウッド、あんたって……」
「?」
顔を見合わせて口の端を吊り上げる二人。
なんだ……?
「ミラウッドって、ほぉんと──」
「おれたちにとって、幸運のエルフだよな!!!!」
「…………」
幸運の、エルフ?
「なんだ、それは」
「知らないのも無理はないけどね」
ヨルディカはぐいっと親指を立てて壁の掲示板を指す。
そこには懸賞金の掛かった盗賊や魔物の姿絵と情報が載っている。
「あれは……!」
「前に隣の街で討伐依頼が出ていたヤツさ。話を聞く限り、大きいのっていったらアレかと思ってね」
そこには大きなトカゲのような体躯と鱗、長い尻尾が特徴の『ヘルリザード』とあった。
手元の爪はフラマの木の跡で見たような鋭いものだった。
「隣のヤツらが討伐に失敗して縄張りから逃げたらしい。再度依頼を出そうにも居場所が分からなかったからこの辺りの賞金首になってたんだが……、まさかエルフの森にいるとはね。怪我を癒してる最中か?」
「ちょうど探してたんだ。あんた、ほんっといつもタイミングがイイよ」
「ヘルリザード……か。その特徴は?」
「なんだい、もっと興奮しておくれよ。そうさねぇ……口から吐く炎が厄介らしいね」
「炎!?」
「……もしかして。精霊の様子がおかしいんじゃ、マズい状況か?」
「あたしも攻撃を防ぐくらいはなんてことないけど、さすがに森に燃え移るとなると……」
先ほどまでの明るさが嘘のように真剣な顔つきになる二人。
「どうする?」
「怪我が治る前に叩こう」
「! やってくれるか?」
「当たり前じゃないか。元から探してたんだ。懸賞金と長老さんからの報酬で二倍稼げるだろ? それに、もし別の魔物だとしても報酬は確約なら悪い話じゃないね」
「なによりあんたが困ってるってんなら、ムシはできねぇだろ」
不敵に笑う姉と、屈託のない笑顔の弟。
隣街の冒険者たちが失敗したという討伐を、なんてことのないように引き受ける。
相応の実力を持つこの姉弟には、随分と世話になった。
「……よろしく頼む」
「決まりだな!」
「んじゃぁ、さっそく作戦だけどさ……」
人間の変化というのは実に目まぐるしい。
だが、彼らの生きる時間に合わせてもなお、変わりないものはあるのだということを実感した。




