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四十一話 全自動セロー型乾燥機

「セロー、がんばれ!」

『まだまだ気合いが足りませんわ! ええ、まだまだです!』

『こいつらうるせーな……』


 翌日。


 朝の支度を終えて、ミラウッド達と一緒にウィンハックの工房へやって来た。

 まずは採取したナガテをセローに乾燥してもらう。


 今は村に居てくれるセローにお願いしているが、通常エルフたちは周辺に風の精霊が居れば精霊魔法を使ってコツコツ数日かけて乾燥。もしくは風通りのいい場所にナガテとお供えものを置いて、通りがかった風の精霊の力を借りるようだ。


 やっぱりあの時遠くにいたセローに俺の弦音が聞こえたのは、不思議な現象なんだろうな。


『ったく……』

「セロー様、すごいなぁ」

「なんだかんだ言いつつ、いつも手伝ってくれるんですよ」

『…………フンッ』


 工房前の敷地でセローが周囲から風を集めると、風の球体が作り出された。

 まるで大型の乾燥機みたいだ。

 そこにナガテの束をいくつか入れて、風の球体の中で乾燥させる。

 放り込まれたナガテは、カサカサと音を立てながらぐるんぐるんと宙で球状に舞う。

 なんだかコインランドリーに来たみたいで、異世界にしては絵面がちょっと面白い。


『なーに笑ってんだ』

「え? いや、面白いなぁって」

『バカにしてんのか~?』

「興味があるって意味で、面白いんだよ」

『風のお方は短気ですわねぇ。ええ、気が短いです』

『はぁ~~??』

『あらあらぁ??』

「始まった……」


 今日も今日とて精霊バトルのゴングが鳴った。

 ウィンハックすら驚いていないのは、この精霊二人の普段の様子が村に知れ渡っているからだろう。


「私は倉庫にもう一つの素材を取りに行ってくる」

「ああ、頼んだよ」


 ミラウッドはナガテと組み合わせて弦を作る、別の素材を取りに行った。


「そういや、ミラウッドの料理はどうだい? 美味しいだろ」

「すごく美味しいです!」

「だよなぁ。ああいう一面を見ると、冒険者ってのにも憧れるよ」

「そういうものですか」


 ウィンハックはこれまでの話から察するに、保守的なエルフではないんだろうな。


「セロー様、よければミラウッドに外の話でもしてやってください」

『気が向いたらなー』

『わたくしたち森の者にはあまり無い感覚ですけれど、きっと知らない場所というのはワクワクするものなのでしょうねぇ』

「そうだな。もちろんワクワクだけじゃなくて不安もあるけど、……ミラウッドならどこでもやっていけそうだ」


 知らないことを知る……未知っていうのは人にとって、時に恐怖の対象でもあり、時に興味の対象でもある。そのバランスがどちらに傾いているかでいろいろ変わるものだと思うが……。


 俺でいうと、この世界に来たばかりの頃はどちらかといえば恐怖。不安や混乱が大きかった。

 でもミラウッドやセロー、ルナリアと過ごしていくと少しずつこの世界を楽しめるようになってきた。


 この世界自体が変わったわけじゃないのに不思議なもんだ。


『こんくらいかー?』

「もう少しお願いできますか、セロー様」

『おー』


 なおも一生懸命ナガテを乾燥させるセロー。

 精霊に働かせて俺だけ何もしないのも……と思いつつ、しばらくやることが無いのでウィンハックの工房をいろいろと見せてもらいミラウッドを待つことにした。


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