四十話 セローの意気込み
「いただきます!」
「いただきます」
『イタダキマー』
『いただきます、ですわー!』
四人でテーブルを囲み、出来上がった料理をさっそくいただくことに。
「じゃあ、まずは──」
ドライフルーツはどちらかといえばデザート感覚。
先に干し魚の麦がゆをいただくことに。
「ふぅふぅ」
『?』
「そのまま食べると熱いのですよ、セロー様」
『ほー』
セローも俺が息を吹きかけるのを真似て、麦がゆの入った器に風を吹かせた。
スプーンで掬ったとろっとろの麦がゆからは、湯気と共にほのかに干物由来の香りがする。
海の魚のような磯の香りではなく、恐らく漬け汁に漬けて干したことによる旨味成分の香りが溶け出したからだろう。
「あつっ、んまっ」
十分に息を吹きかけて冷まし、いざ口の中へ。
煮込まれた米とそう大差ない食感の麦がゆは、とろみのあるスープのようにつるつると喉奥に運ばれる。
シンプルに塩味の効いたおかゆ部分も美味しいが、なにより干物!
噛むとじんわりと漬け汁の味が溶け出して、それがスープのようなおかゆと一緒に口全体に広がっていく。
たとえるなら……そうだな、入浴剤?
初めは一か所に落とされた入浴剤が、徐々に浴槽全体に広がっていく様子。
あれみたいだ。
「ミラウッド、美味しいよ!」
「それはよかった」
『ンマー』
『あつあつで美味しいですわー!』
お米と違って米の粒粒感があまり無いせいか、ふつうのおかゆよりもさらにツルンとしたのどごし。
時折顔を覗かせる茶色の皮部分は適度に食感も残っていて、噛むと味が広がる干物との相性も抜群だ。
シンプルなのに飽きがこない。おかゆって不思議だな。
「ふぃー」
一通り麦がゆを食べ終えると、お待ちかねのデザート!
といってもプリメの実の味は前回で把握したので、初見の驚きというのはないものの、干したことによる甘みの凝縮具合が楽しみである。
「種は取ってある」
「おお、気が利くなぁ」
ぺたんと平べったくなったプリメの実。
オレンジ色の果肉が、干されてむにむにとした触感に。
セローが食べやすいように半分にちぎってやると、セローは小さい両手で持って不思議そうな顔をした。
『ほー。アレを干したらこうなるのか……』
『まぁまぁ、風のお方はそんなことも知りませんの?』
『うるせぇな~』
ガブッと一口食べると、気に入ったのかそのまま夢中で食べ進めるセロー。
「じゃぁ俺も」
一口食べてみると、想像どおり甘酸っぱくて美味しい!
熱が加わると甘さが増す、というのは天日干しにおいても有効なようだ。
特徴の強い酸味はそのままに、甘さもほどよくマッチしていて噛むごとにねっとりとした食感が増す。
まるで自分で口の中でジャムを作っているような錯覚に陥る。
「これも美味しいな~」
「口に合ってよかった」
『ンマンマ』
『エルフのお方、ミラウッドさん。こちらにはなにか調味料とやらを足したのでしょうか?』
「いいえ、ルナリア様。こちらは種を抜いたプリメの実を、そのまま外で干しただけですよ」
『まぁまぁ!』
「へぇ。そのままでこの味なのか。果物ってすごいな」
いわゆる“オーガニック”と名のついたドライフルーツだろうか。
砂糖が足されたわけでもないのに甘さが増す……天日干しっていう一手間で変わるなんて、面白いな。
それは弓の材料にも言えることだ。
一手間、一工夫。ちょっとしたことで使い勝手が変わる。
明日はナガテをセローに乾燥してもらってエルフたちの弦作り。
きっとそこにもエルフ達の知恵や工夫があるんだろうな。
その工程を見せてもらうのが楽しみだ。
『まー、明日は任せてくれ。飯分の働きはするつもりだ』
『まぁまぁ、ご飯をいただけないと働かないおつもりですの? コーヤさまと契約しているのに怠慢ですわ。ええ、怠慢です』
『はぁ~~??』
『なにかございまして??』
「また始まった」
「ルナリア様もセロー様も、すっかり村に馴染んでいらっしゃるな」
「ほんとだよな……」
特にセローは風の上位精霊。
ルナリアと違って、いろんなところを旅してきた精霊だ。
そんな彼が村に馴染んでいるのは、口ではああだこうだ言いつつもここでの生活を気に入っているのかもしれないな。




