幕間2
「ザルマさん、ちょっといいっすか?」
「珍しいな、お前が俺に話しかけるなんて。疲れて寝ているコウタの代わりか?」
「現状話す相手がザルマさんしか思い浮かばなかったっす。少なくとも子爵様には話せない内容なので」
「コウタに話せない……。いったい何だ、別にグラウネシアの話でもあるまい」
「その通りっす。話したいのは堅牢なアルバタール邸がなんで落ちたかについてっす。多分あれは子爵様のせいっす」
「なんだと!? 馬鹿なこと言うな! 何の益があってコウタがそんな真似をする!」
「もちろん子爵様にはそんなことをする理由はないっす。けど、アン王女にはあるっす」
「アン殿下が? 話が読めんな。どういうことだ?」
「実はザルマさんがいないとき――処刑台から戻ってすぐ、アン殿下から押し花をもらったんすけど、図書館で調べたところによると、どうもただの押し花じゃなかったみたいっす。専門外なんで詳しいことまでは分からないっすけど、ほぼ魔術がこもっている符みたいで……。タイミング的にそれが発動して発火したとしか思えないっす」
「そのようなことが……」
「最初は幸運のお守りみたいなものかなと思って、いちいち話さなかったっす。でも子爵様から失くしたって話を聞いて、それが間違いだと気づかされたっす。あれは失くしたんじゃなくて、自動で動いたんすよ。lただ確証もないし、この話は子爵様は知らない方がいいんじゃないかと思って、こうしてザルマさんに相談したっす」
「それで正解だ。故意でなくとも、それを知れば奴はアルバタール閣下に多大な負い目を感じることになる。これは私達の胸に納めておくべき話だ。まず私に話してくれたことに感謝する。そして今この場で私と君は何も話さなかった。いいな。それではおやすみ」
「おやすみなさいっす……」




