20 戦争の始まり
突然、街中で戦争が始まってしまった。
念の為に住民を避難させていて正解だった。
しかしパーティーの準備をしていた使用人や侍女、食料運搬等の商人達、神殿の神官達が街から逃げ出していない。
「防御陣を敷け! 敵は地理には詳しくない! 非戦闘員が街から脱出するまで建物と道を利用して防御に徹しろ!」
どうしてこんな状況になった? エルドラージ王国王太子ある私は頭を抱えそうになる。
私の名前はコンキデムス。エルドラージ王国第一王子にして王位継承一位の王太子だ。
そして前世の記憶を持つイケメンだよ♪
「コンキデムス様! 敵の増援です!」
「こっちも増援を出せ! 後建物の上から弓引け! 魔法撃て!」
前世で殺されて意識を失い、起きたら赤ん坊だったのは驚いた。そして自分が王子様って立場で更に驚いたよ。
「非戦闘員の脱出状況は?」
「まだ時間がかかります!」
仲の良い両親の間に産まれて、更に魔法がある異世界に転生した王子様だった。どこぞのラノベだ? とツッコミを入れたよ!
「敵も魔法を使って来ました!」
「こっちも応戦だ! 競り負けるな!」
王族に生まれたのだから頑張って国を良くしていこうと思ったのに、生まれて数年後に他国が攻め込んで来た。
ラノベ主人公の様にチート能力で敵国を撃退する事が出来ると思っていたが、私には魔力を出す事が出来なかった。魔力を体から出す事が出来ない欠陥魔法使いだった。
「これでも食らえ! 大リーガボール!」
「お見事です。それでダイリーガーボールって何ですか?」
「……気にするな」
欠陥魔法使いだった事に両親は悲しんだ。
しかし私は転生者の知識を使って考えた。魔法が体から出せないから内側を強くすれば良いと!
身体強化なら魔法が使えると! そして私は鍛えに鍛えぬいた! 漫画の知識を頼りに鍛えた!
強くなって攻め込んで来た他国に嫌がらせをした。後方部隊の兵糧を燃やしたり、野営地の飲み水に毒を入れたり、遠距離から敵将に石を投げて殺したり、敵国の王様を誘拐して降伏させた。窮地を脱したエルドラージ王国は敵国を占領した。
「コンキデムス様! 脱出が予定よりも進んでいます!」
「良し! 後どのくらいだ?」
「一時間もあれば脱出できます!」
「半分の三十分で脱出させろ!」
私は戦果を挙げた事で未成年の将軍となり王太子となった。
しかしまた他の国から攻め込まれて、撃退し敵国を占領する。その結果何時の間にかエルドラージ王国が大きくなった。
「本当にバルデハイム王国の先代国王が暗殺されたのか?」
「分かりません! 密偵からの報告からは何も」
「バルデハイム王国に密偵を出してなかったからな」
「小さき守護者に見つかったら同盟破棄ですからね」
こんなことならバルデハイム王国に密偵を入れておくべきだった! どうして同盟関係者の親族を殺さないといけなんだよ! こっちはバルデハイム王国の反対側の敵と戦っている最中なのに!
「しかしバルデハイム王国の先代国王が死んだという事はそちらには小さき守護者が居なかったのでしょうか?」
「そうだな。バルデハイム王国に居ないとなると……」
「此方に居るのでしょうか?」
側近の肩を押して倒す。その直後、側近が居た空間に石が飛んで来た。石が当たっていたら頭がザクロの様に飛び散っていただろう。
敵襲だと言う前に、小さき守護者が現れた。バルデハイム王国先代国王が持つ最強の守護者。
小さき守護者はオレと対面して動かない。オレを討ち取りに来たのではないのか? 交渉の余地はあるか?
「小さき守護者よ。今回のバルデハイム王国先代国王暗殺の件は、エルドラージ王国は関与していない」
「…………」
小さき守護者はこちらの様子を見ている。仲間にしますか? って出来るか!
襲う気満々だよ! 相手の行動を先読みして行動を起こさせない様しないと!
「本当だ! 同盟を結んだ国とは敵対はしていない!」
どうして返事をしなんだ!
「だからもう一度交渉を! お前の権限で話し合わせてくれ!」
……返事はない。小さき守護者はこちらの様子を見ている。近づきますか?
少し近づいてみよう。小さき守護者はどう反応するのだろう?
周りの側近達が止めようとするが、オレは小さき守護者に歩み寄る。しかし、
「小さき守護者よ! 止まれ! 神殿長がどうなってもいいのか!」
あ、オレの側近の一人がバルデハイム王国の神殿長を人質に取っていた。……待てよ! 人質取ったらオレ達が悪役じゃないか!
バルデハイム王国の神殿長は気絶している様だ。
小さき守護者は動いていないが、戦闘状態の雰囲気が変わった。ヤバい! 隙あらば小さき守護者が仕掛けてくる!
こうなったら神殿長を人質にしてこの場を脱出するしかない! その後、バルデハイム王国の神殿長を仲介して交渉をするしかない!
「小さき守護者! 動くなよ! 動いたらバルデハイム王国の神殿長はどうなると思う!」
良し! 小さき守護者は動かくなった。本当にピクリとも動いていない。
この間に少しずつ後ろに後退しよう!
って敵が家の屋根から矢を射ってきた! ちょうど神殿長に当たる! 小さき守護者は気付いていない!
「馬鹿野郎! 人質を殺す気か!」
私が瞬時に移動して矢を掴んだ! っていうか人質無視して更に多くの矢が射られた! 小さき守護者含めて人質もろともオレ達を殺す算段なのか!
「おい! 小さき守護者! お前にも矢を当たるぞ! 避けろ!」
小さき守護者が振り向いて自分に当たる矢を掴んだ。
私も側近や人質の前に出て矢を掴む。
「小さき守護者よ! バルデハイム王国の神殿長を返すから今回は見逃してくれ! 神殿長を矢から守っただろう! 借りが出来たはずだ! だから今回は見逃してくれ!」
……小さき守護者から返事はない。少し待つと「分かった」と小さな声で返事してくれた。
オレは側近から神殿長を預かって、雨の様に降り注いでいる矢を落している小さき守護者に神殿長を渡した。
「これで貸し借り無しだ!」
私は全員を退却させた。
クソッ! 絶対に今回の事件を調べてやる! 覚えていろ! エルドラージ王国に罪を擦り付けた奴等め!
※
どうも、アルムエルグです。
国王陛下からエルドラージ王国の王太子を討ち取れと言う命令を受けましたが、簀巻きでは駄目なのでしょうか?
現在、エルドラージ王国の王太子が目の前に居ます。王太子は『先王陛下の暗殺はしていない』と言っている。
……本当の事を言っている様だけど、国王陛下の命令は討ち取れだし……。やっぱり簀巻き駄目なのかな?
でもコンキデムス王太子は隙が無い。気絶させて簀巻きにしようとしても、失敗するビジョンが見える。……オレが動くとコンキデムス王太子が阻止するような動きを見せる。
コンキデムス王太子が「交渉しよう!」と言っているが、オレにはそんな権限はない。
どうするのか考えているとコンキデムス王太子が近づいて来た。……逆にこっちが下がりたくなる。
あ、エルドラージ王国の人間が神殿長を人質にした! さらに動けない!
神殿長は気絶しているようだ。……相打ち覚悟で王太子を討ち取れる事は可能か?
あ! コンキデムス王太子が消える様に動いた! 神殿長に当たりそうな矢を掴んだ!
コンキデムス王太子が注意をしてくれた。後を見るとオレにも矢を射られた! 後ろを見るとバルデハイム王国の兵達が屋根からオレ達に向けて矢を射っている! 人質が見えないのか!?
神殿長に当たりそうな矢を防ぐ。ついでに他の人に当たりそうな矢も防ぐ。
「小さき守護者よ! バルデハイム王国の神殿長を返すから今回は見逃してくれ! 神殿長を矢から守っただろう! 借りが出来たはずだ! だから今回は見逃してくれ!」
コンキデムス王太子が提案する。……確かに神殿長を矢から守ったけど、先に人質にしたのはそっちだろう。……でも神殿長を助けるのが先だろう。
「分かった」
答えると、コンキデムス王太子が神殿長を側近から受け取りオレに渡す。
矢が雨の様に降っている中で人質を交換が成立した。
コンキデムス王太子は片手で矢を弾きながら、もう片方の腕で神殿長をオレに渡した。
オレも片手で矢を弾きながら、もう片方の腕で神殿長を受け取り背負った。
そしてコンキデムス王太子と側近達は即座にその場から脱出する。
オレも矢が雨の様に降り注ぐ場所から脱出した。……コンキデムス王太子を討ち取る事が出来なかった。国王陛下になんて説明しようか?
しかしオレを含めて人質まで矢を射る兵達は一体何を考えているんだ! 国王陛下にチクらないと!
オレは国王陛下の元へ戻った。
「この街を占領してエルドラージ王国と戦うぞ! マクガイア将軍!」
「陛下、しかし、兵達が足りません。ルックナー砦で防衛戦だったので少ない兵で問題無かったのですが、攻め込むとなると兵の数が……」
「アスタテスラ国に出兵している兵を送る! それで兵の数は問題無いだろう!」
「陛下、兵の数が増えると兵糧も不足します」
「兵糧を増やせば問題無い!」
マクガイア将軍やダムボックス騎士団長が抑えているが、国王陛下はエルドラージ王国に攻め込む気満々だ。あ、国王陛下がオレに気付いた。
「王太子は討ち取ったか?」
「……失敗しました」
オレが失敗した理由を述べる前に、
「この馬鹿者が! 失敗してどの面下げて戻ってきた!」
……ごめんなさい。でも理由を聞いて欲しい。
「使えない奴め! 父の仇を討てない奴だとは思わなかった!」
ダムボックス騎士団長が国王陛下を諫める。しかし国王陛下の怒りは収まらない。
「……なに八つ当たりしてんだい。恥ずかしいと思わないのか?」
神殿長が意識を取り戻したようだ。オレの背から降りて国王陛下に、
「小さき守護者に八つ当たりして、恥ずかしくないのかい? 頭大丈夫かい?」
「うるさい! 関係ない人間は黙っていろ!」
「黙れガキ! 良い大人が八つ当たりして恥ずかしくないのか!」
マクガイア将軍とダムボックス騎士団長が二人の争いを止めるが、口喧嘩がヒートアップして最終的には、
「国外追放だ! 二度とバルデハイム王国に来るな!」
「だったらワシはエルドラージ王国に住むさ! こんなガキが国王なんて近い将来滅んでそうだね。滅ぶ前に逃げ出せて正解さ」
国王陛下は国外追放を命じて、神殿長は捨て台詞を吐いて出て行った。
……オレはそれを見る事しか出来なかった。神殿長の後を追おうと思ったが、国王陛下がオレに命令した。
「アスタテスラ国に行って、戦争を終わらせてこい! 将軍を簀巻きにするなり、アスタテスラ国王を簀巻きにして来い! 早く行け! アスタテスラ国王を簀巻きにするまで戻って来るな!」
「……はい」
今まで一番難しい命令を聞いた。国王陛下が怖いから早く移動しよう。
……どうやってアスタテスラ国王を簀巻きに出来るだろうか?
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。




