表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
74/128

4 入学式後の学力テスト

 入学式から三日目、学院生活が始まった。

 最初に一日目と二日目は学力テストが二日間にかけて行われたので、三日目から授業が開始される。

 午前中は座学を中心にした勉強だ。

 オレやテオドールは復習のような授業内容だが、他のクラスメイトには難しいようで、休憩時間にオレやテオドールに授業内容の質問をする。

 テオドールは教科書を丸暗記しているので「教科書の〇〇ページを参考にすれば分かるよ」という感じで教え、オレの場合は「その答えは〇〇〇だよ」と直接的に教えた。

 昔はベルファルト殿下の気分を良くする為に手を抜いていたが、今ではそんな事をする必要性がないから楽で良い。……あの時はベルファルト殿下の機嫌を良くする為に頑張ったものだ。

 昼食を取り、午後は体を動かすような授業内容だ。ダンスの稽古、お茶会での所作法、礼儀作法を学ぶ。

 戦闘訓練や魔法の授業も午後の授業で、これらは将来騎士や魔法使いを目指す者達が参加している。

 午後の授業は礼儀作法やダンスの稽古、お茶会での所作法を受ければ終わりなので、用事の無い学生は帰る事が出来る。戦闘訓練や魔法の授業は別に取らなくても良い。

 オレは小さき守護者としての仕事があるので、午後の授業が終われば王宮に行くので戦闘訓練の授業は受けない。テオドールも王宮での仕事や小さき守護者の補佐としての仕事があるのでオレと一緒に王宮に帰る事になっている。

 そして歓迎会前日の日に、学力テストの上位者が発表された。


 一位。Dクラス、テオドール・バルデハイム。

 二位。Cクラス、リリムファーム・ジャルブランド。

 三位。Bクラス、ミリアリア・バルデハイム。Dクラス、アルムエルグ・ドックライム。

 五位、Fクラス、イーサン。


 五十位まで順位が出ており、オレはミリアリア様と同点だったので三位だった。

 実を言うとテストで上位を取ろうとは思わず、間違った答えで提出したが、まだ点を落とせたようだ。それもミリアリア様と同点だったとは。……毒を吐いて嫌味を言われなければ良いのだけど。

 ……五位のイーサンという生徒は知らないな。家名がないので平民の出なのだろう。

 ベルファルト殿下は十位。宰相の息子で頭の良さを自慢していたベルファルト殿下の学友だったデーデルは六位だった。ちなみに騎士団長の息子のラーブスは五十位内に入っていない。


「アルム、三位おめでとう」

「テオドールこそ、学年トップおめでとう。全教科満点って凄いね」

「授業内容全部、頭に詰め込んだからね。それ以外の問題が出たら順位を落していたよ」


 テオドールの特技である見たモノを一瞬で記憶できる瞬間記憶が羨ましい。オレは頑張って記憶しているのに。


「首席おめでとうございます、テオドール殿下、アルムエルグ様も三位おめでとうございます」


 オレ達に話しかけてきたのは学年二位のリリムファーム・ジャルブランド公爵令嬢だ。オレ達も


「次席おめでとうございます」と返事する。

「しかし一問間違ってしまって情けないです。それが合っていたなら満点でテオドール殿下と並んでいたのに……」


 テオドールは満点で一位、リリムファーム様は一問間違いで二位。オレは五問くらい間違えているはずだ。


「しかしアルムエルグ様は噂と違い優秀だったのですね。少し驚きました」

「アハハ……」


 笑って誤魔化す。今まで手を抜いていたとは言えないからな。


「ごきげんよう、皆さん。」


 ミリアリア様がオレ達の会話に参加してきた。


「テオドール様、一位おめでとうございます。リリムファームも二位おめでとう」


 ミリアリア様が二人を祝福する。そして、


「三位おめでとうございます、ウジ虫の分際で私と同点とは不正でも行ったのですか? それともフグッ」


 ミリアリア様の毒舌をファムさんが後ろから口を塞いだ。


「アルムエルグ様、三位おめでとうございます。ミリアリア様と同じ点数をお取りになるとは流石としか言いようがありません!」

「あ、ありがとうございます、ファムさん。ファムさんは二十位だったね」

「はい、もう少し勉強する時間が取れたらもっと上位を狙えたかもしれません。入学前日までいろいろ忙しかったので」

「それよりもミリアリア様の口を塞いでいるけど……」

「大丈夫です! もう少しお待ちください!」


 ……本当に大丈夫なのか? ミリアリア様の学友で騎士団長の娘のコレートさんが、ミリアリア様を移動させてオレ達から背を向けた。


「すいません、アルムエルグ様。ミリアリア様はアルムエルグ様とテストの点が一緒だったので、嬉しくて気が動転したようで……」

「ファム・マクガイア様。……先ほどのミリアリア様の言葉は?」

「リリムファーム様、ミリアリア様は『私と同じ点数で嬉しいです。アルムエルグ様が努力した結果です』と口にしようとしたのです。気が動転して少し言葉使いが変になりましたけど」


 気が動転って。……ミリアリア様にはよくある事だからオレは特に気にしないけど。リリムファーム様は少し混乱しているようだ。テオドールは天を仰いでため息をついている。


「少しお待ちください。ミリアリア様が冷静になるまで時間が必要ですから」


 ……約三分後。ミリアリア様が会話に加わる、それまでファムさんは学院生活での目標や将来に向けての抱負を必死に説明していた。


「ごほん、改めて三位おめでとうございます、アルム様。そしてテオドール様もリリムファームもおめでとう」


 毒を吐かないミリアリア様。そして安堵し疲れ切ったファムさんとコレートさん。


「王宮でのお仕事が忙しいなか、優秀な成績を収めるなんてアルム様はとても優秀ですね。私も婚約者として嬉しく思います。テオドール様もアルム様と一緒にお仕事をしているのに首席をとり、王弟陛下もお喜びでしょう。リリムファームも次席で大変優秀ですね。私も負けない様に努力しなければいけませんね」


 微笑みながらオレ達に褒めたたえたので礼を言うオレ達。


「もうすぐ歓迎会ですが、ミリアリア様のパートナーはアルムエルグ様ですか?」

「もちろんです。アルム様は私の婚約者なのですから」


 リリムファーム様とミリアリア様の会話にオレは「え?」と呟いた。そんな話は聞いていないよ。テオドールが小声で、


「歓迎会でダンスを踊るんだよ。パートナーは必要だろう。聞いてなかったのか?」


 ……半分寝ていたから聞いていないかもしれない。


「リリムファームはお兄様がパートナーですよね。テオドールは誰がパートナーなのかしら?」

「ベルファルト殿下からまだお返事が返ってきてないので……」

「まだパートナーが見つかっておりません」


 リリムファーム様もテオドールも大変だな。……オレはいつの間にか決まっているけど。手紙とかでパートナー命令書とかを送ったのか?


「お兄様には私から返事をリリムファームに返すように伝えましょう。テオドール様のパートナーですが、……ファムはまだ相手が決まっていませんのでお願いできませんか?」


 リリムファームは「お願いします」と言い、

 テオドールはファムさんに「私のパートナーになってくれませんか?」と願い出た。

 ファムさんは少し顔を赤くしながら「喜んで」と返事を返す。


「……私もパートナーが居ないのですが」


 と小声で独り言のように呟くコレートさん。オレ以外の耳には聞こえなかったようだ。……オレがコレートさんのパートナーを勧める? 無理だ。知り合いが居ないから。……先王陛下に相談してみるか?


「では明日の準備があるので失礼しますね。ミリアリア様、ベルファルト殿下にお伝えの件、よろしくお願いします」


 リリムファームはオレ達に礼をして派閥の側近達と一緒に去った。


「私達も明日の準備をするので失礼します」


 ファムさん達もオレ達の前から去る。ミリアリア様が何か話そうとしていたが、コレートさんに口を塞がれたままオレ達の前から去った。


「アルム、王宮に戻って用事を済ませて、明日の準備をしよう」

「分かった。でもミリアリア様が口を塞がれているけど、どうしてなんだ?」

「アルム、淑女の行動に口を出すべきではなし、気にしてはいけないよ。それが紳士だ」


 ……なるほど。口を塞いでいるコレートさんや、口を塞がれているミリアリア様の行動は、紳士として気にしてはいけないのか。これからはコレートさんの行動は気にしないでおこう。……でも不敬罪ではないのか?





 職員室で大声が響く。


「どうして私のテストの成績が十位だ! おかしいだろう! 採点ミスだ! もう一度採点しろ!」

「……ベルファルト殿下。採点に間違いはありません。貴方の点数は上から十番目です」


 テストの点に納得がいかないベルファルト殿下がAクラス担任に反論している。ベルファルトだけではなく派閥の側近達も居た。

 ……昔と変わらなかったのか? とDクラス担任である私ことハドソンは思った。そしてベルファルト殿下との出会いを思い出す。

 あれは二十歳の頃、用事で登城した時だった。親族に頼まれてベルファルト殿下と会った。

そしたら、木刀を持たされて模擬戦をさせられた。

 剣術など全くできない私は子供のベルファルト殿下相手に木刀で叩かれ続けた。王族相手に反撃も出来ず逃げる事も出来ない。

 結果、私は体と心に傷を負った。痛みで倒れていた私にベルファルト殿下は、「大人の癖に私に負けるとは情けないな」と笑っていた。周りの騎士達も笑い出して、連れて来た親族も苦笑していた。

 そして私は家に引きこもった。

 傷ついた体を見た家族達は説明を求めたが答えなかった。子供に負けたという情けない理由ではなく、見下ろす騎士達の嘲笑に、信頼していた親族に裏切られた事にショックを受けた。

 家族とも会わず部屋に引きこもった。家族も王宮での出来事を聞いて心配してくれたが、笑い声を思い出しそうで部屋に入らせなかった。

 王宮での職が決まっていたが、家に引きこもった事により辞退した。王宮では私は子供に負けた無能と言われるのが怖かった。

 親族が謝罪に来た。ドア越しで謝罪したが、私は返事をしなかった。親族の苦笑いを思い出し、笑い声が聞こえた。

 婚約者に婚約破棄を願い出た。王宮での無能ぶりは婚約者の耳にも届いただろう。情けない男と結婚して見下されるなら一生独身で良い。

 数ヵ月後、ある噂を聞いた。

 ベルファルト殿下の学友にドックライム公爵家の次男が付いたという噂だった。

 ドックライム公爵家の次男は欠陥魔法使いでベルファルト殿下よりも能力が低く馬鹿にされていると聞いた。しかし先王陛下に信頼されて、ミリアリア姫様の婚約者となったらしい。

 弱い私はベルファルト殿下に嬲られ、周りの騎士達から笑われた事によって部屋に引きこもっている。

 ドックライム公爵家の次男は王宮で馬鹿にされ続けていても、頑張っている事に私は情けなく思った。

 たった一回貶された私よりも長い時間貶されているドックライム公爵家の次男。彼に負けない様にと思った。

 部屋を出ようと努力した。家族と会話しようと頑張った。……家族と会話するのに半年かかった。

 婚約者と会った。婚約破棄はされていなかった。彼女は私を想っていた。

 彼女の想いに触れて泣き崩れ、彼女にプロポーズした。

 彼女のお陰で私は立ち直った。そして伝手で学院の教師となった。

 良き教師となろうと努力した。同僚達にも信用されて生徒にも信頼されている。

 そしてベルファルト殿下が入学してくるという事を失念していた。王侯貴族が学院に入学するのは当たり前なのに……。

 登城のときの事件は、妻のお陰で乗り越える事ができ、嫌な思い出というレベルになっている。

 ベルファルト殿下に会って会話しても大丈夫だろう。ベルファルト殿下も私の事など覚えていないはずだし。

 ……案の定、ベルファルト殿下は私の事など覚えていなかった。そして昔と同じクソガキに育っている。


「アルムがデーデルよりも上の順位という事もおかしい! 採点ミスだ!」

「……アルムエルグ様の成績も間違いではありません。学院長も確認をしました」


 このような事が起きると思って、テオドール殿下やアルムエルグ様のテストを学院長や他の教師にも確認させた。毎年、似たようなクレームをつける者達がいるからな。

 ベルファルト殿下達がクラスの担任に食らい付くが事実は覆らない。最後にベルファルト殿下が

「話にならん!」と言って側近を連れて出て行った。

 ベルファルト殿下のクラスの担任は苦労しそうだな。彼はベルファルト殿下の派閥希望だったが、他の派閥に変更するかもしれないな。


「大変でしたね」

「ハドソン先生。ベルファルト殿下があのような人柄だったとは……。噂では優秀で思いやりのある方と聞いていたのに」

「それは他の王族の方ですよ。ベルファルト殿下はそのような性格ではありません」


 ため息をつく同僚。……本当に昔と変わっていない事に私もため息をつく。

 私のクラスもテオドール殿下が居る。二人が争わなければ良いのだが……。

 昔の事を思い出すのでベルファルト殿下とは近づきたくないが、教師としてその願いは叶う事はないだろう。

 願わくば、ベルファルト殿下が横柄な命令をしない事を願う。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] アルムは未だテスト全力出さないつもりだったのか?と思ったが直後に成程と思わされた。 こういうのが沢山積み重なり続けて強固な信頼又は恨みとなっていくのだが、加害者側である王宮やミリアリアは着々…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ