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3 学院入学式②

 オレの学院生活での心配事はベルファルト殿下の派閥だけではない。男子生徒ではなく女子生徒にも気をつけないといけないからだ。特に気をつけるべき女性は、


「アルム様。お久しぶりです。一緒に勉学に励みましょうね」


 バルデハイム王国の姫様であるミリアリア様だ。オレにとっては彼女が一番気をつけないといけない。

 毒を吐かないミリアリア様がオレに話しかけてきた。……最初は毒を吐かないが、後で毒を吐くから心を強く持たないといけない。

 ミリアリア様の側には学友で側近となったファムさんとコレートさんが一緒だった。

 三人とも制服が似合っている。特にミリアリア様は王宮でのドレスも似合っていたけど、学院制服もとても似合っていて綺麗だと思った。


「一緒にクラスになれなくて残念でした。ですが同じ学年なのですから一緒に授業を受ける場合もあるでしょう。そのときはよろしくお願いしますね、アルム様」

「こちらこそよろしくお願いします、ミリアリア様」


 頭を下げてミリアリア様に礼を言う。


「テオドール様もよろしくお願いしますね」

「お心遣い感謝いたします、ミリアリア様」


 いとこ同士の二人だけど、立場をわきまえているテオドールは恭しく臣下の礼をとる。

 下級貴族から王族となったので礼儀作法が少し劣っていたが、今では教育のお陰で様になっている。


「アルム様、学院が終わったらお茶でも如何でしょうか? お母様もアルム様とお茶をご一緒したいとおっしゃっていました。放課後は空いていますか?」

「はい。放課後は予定がありません」


 放課後は陛下から休みを貰った。徹夜明けだったから休息を取るつもりだった。……でも休む事が出来なくなった。


「ミリアリア様、申し訳ありません。アルムは放課後に先王陛下と会う約束があるので、お茶は難しいかと……」


 テオドールがミリアリア様に言った。先王陛下に会う約束なんてしなないが、テオドールにしか知らせていないのかな? 確かに昨日の戦場荒らしの説明を先王陛下にしていないからな。でもディーアが報告書を上げるって言っていたし……。


「……そうですか。ではお爺様の約束を優先してください。お茶はまた今度ですね」


 残念そうなミリアリア様。……そろそろ毒を吐く気がする。と思ったら、


「では私がミリアリア様とアルムエルグ様の時間が空いている日を聞いておきます。その時にお茶会を開きましょう!」


 ミリアリア様の学友のファムさんが提案をする。そしてテオドールが、


「あ、そろそろ教室に行かないと時間が! ミリアリア様、お茶会の時期は後で私とファムと責任を持って相談をしますので、急いで教室に行かないと!」

「そうですね! ではアルムエルグ様、テオドール様、失礼します」


 ファムさんとテオドールが会話を終わらせる。そしてオレはテオドールに引かれてミリアリア様を別れた。最後に挨拶をしようと思ったが、ミリアリア様も教室に行くようで歩き出すが、学友のコレートに口を塞がれていた気が……。


「……良かった」

「何が良かったんだ? テオドール。あと、先王陛下に会う約束って?」

「先王陛下に会う約束は嘘だ。徹夜明けのアルムには休息が必要だからね。寝不足でお茶会に参加して無礼を働いたらいけないだろう。だから日を改めてもらったんだ」

「ありがとう、テオドール。本当に助かったよ」


 テオドールは「別に良いよ」と言ってオレ達は教室に行く。本当にテオドールが一緒で良かった。

 ……しかしテオドールが言葉で『何が良かった』はどういう意味だったのだろうか?





 私はバルデハイム王国の騎士団長を父に持つギンガム子爵令嬢でミリアリア様の学友であるコレートです。

 今日の任務は責任重大です。その任務意図は、


「コレート。ミリアリア様がアルムエルグ様に話しかけられます。ミリアリア様の祝福を封じる『魔封じの魔法』を使って、一分後にミリアリア様の口を塞ぐ任務です。もしも失敗したらアルムエルグ様に毒を吐いたミリアリア様が悲しみます。アルムエルグ様も心にダメージを負います。重要な任務です」

「王族の口を塞ぐのは不敬ではありませんか?」

「陛下と王妃様の許可は取っていますから大丈夫です。ミリアリア様、台本通りに行きますよ。学院に通う者達にお二人の仲が良いという事を知ってもらう為ですから! ミリアリア様とアルムエルグ様の不仲説を消し去らないといけません」

「分かりました、頑張ります」


 アルムエルグ様とミリアリア様の不仲説は同年代に広がっています。主にミリアリア様がアルムエルグ様を嫌っているという事です。

 ミリアリア様はアルムエルグ様に毒を吐く呪いによって嫌っていると思われていますが、本当はアルムエルグ様が大好きです。しかし呪いの事をアルムエルグ様が知らないので、アルムエルグ様はミリアリア様に嫌われていると思っているそうです。

 だからミリアリア様の側近一同は二人を仲良くする為に全力を尽くしています。ミリアリア様は魔封じの魔法を使えるようになりましたが、一分しか継続できません。だから一分以内に会話を終わらせないと、ミリアリア様はアルムエルグ様に毒を吐きます。側近一同は毒を吐かせない様にする為に日夜頑張っているのです。


「ミリアリア様、準備は出来ましたか?」

「……魔封じの魔法を使いました」

「アルムエルグ様に会う為に十秒必要です。残り四十五秒で会話を切り上げて立ち去ります。コレートはミリアリア様の後ろで五十秒を超えたらカウントダウンをお願いします」


 私はファムの言葉に頷き心の中で秒数を数えます。

 ……アルムエルグ様とテオドール様に会いました。十秒経過。

 ……ミリアリア様がお二人に挨拶をします。三十秒経過。

 ……お茶会? そんな話題は台本にありませんでしたよ。四十五秒経過。

 ……テオドール様とファムが会話に入ります。一分経ちました。ミリアリア様がアルムエルグ様と話す前に口を塞がないといけませんが、今塞いだら私は変な子だと思われます。

 ……テオドール様とファムが会話を終わらせました。ミリアリア様が会話に入ろうとしたので、私はミリアリア様の口を塞ぎます。我ながら良いタイミングでした。

 今回の任務は成功でしょう。

 その後、教室に行き、学院の説明を受けて私達は馬車で王城に戻る途中、


「ミリアリア様、お茶会は台本にありません! テオドール様がフォローしてくれなかったら大変でしたよ! アルムエルグ様に毒吐く気ですか!」

「久しぶりに会ったから、お茶会にと思って……」

「それは側近一同で計画中です。台本も作成中です! アルムエルグ様の予定を考えずにお茶会に誘う事は王妃様だったら許しませんよ!」


 ファムがミリアリア様に説教をしています。ファムはミリアリア様に説教できる数少ない側近です。私はファムみたいに賢くないので説教なんて無理です。


「今回は生徒達にミリアリア様とアルムエルグ様とのご関係が良いという事を広げる為です。毒吐いたらご関係が悪いと噂されます!」


 周りに居た生徒達から二人の関係が良いという噂が流れるでしょう。王妃様もお茶にご一緒という事で、王妃様にも信頼されていると噂が広がるはずです。


「それに今日のアルムエルグ様はお疲れのご様子でした。それなのにお茶会に誘うなんて……」

「だからお茶会で疲れをいやしてもらおうと……」

「逆に気疲れで御倒れになります!」


 今まで二人の同じような会話を何度も聞いています。これもミリアリア様がアルムエルグ様を大好きだからなのでしょうか? そしてファムが二人の仲を良くしようと頑張っているからでしょうね……。

 そういえば、私がミリアリア様の口を塞いだ事を噂されるのでしょうか?

 変な子と噂されるのでしょうか?

 ……ファムに相談して私に対して変な噂が出たら払拭をお願いしないといけません。





 オレとテオドールは教室に入る。教室にはクラスメイトが先に入っている。

 Dクラスは男爵家と富裕層の平民達のクラスで、子爵以上の子供は王族のテオドールと公爵家のオレしか居ない。そしてオレ達を見てクラスが静かになった。

 ……原因はオレ達が教室に入ってきたからだ。先ほどまでオレの噂をしていたからな。欠陥品とか、魔法が使えないとか、王女様に嫌われているとか。

 だから聞こえないフリしてテオドールと一緒に机に座った。テオドールも噂の事を言わずに机に座る。


「アルム、ミリアリア様とのお茶会は何時にする? 王妃様もご一緒の予定なのだから早めの方が良いだろう」


 静かな教室にテオドールの声が響く。オレは「来週くらいなら予定が空くと思う」と言ったら「では来週に調整してみよう」と言ってテオドールはファムと相談すると言った。

 しかしテオドールとファムさんは仲が良い気がする。先週も二人で何か相談していたし。

 ……おや? 男子生徒と女生徒がテオドールに近づいて来る。殺意とは悪意とかは感じられないな。


「テオドール殿下、アルムエルグ様。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。初めまして、私はオスマン男爵家のトマソンと申します。同じクラスになれた事を嬉しく思います」

「平民が挨拶する事をお許しください。初めまして、テオドール殿下、アルムエルグ様。ウエルカ商店の店主の娘、セリーと申します」


 オスマン男爵は確かルックナー砦の隣の領地だったな。町は素通りで立ち寄った事はないから詳しくは知らないな。

 ウエルカ商店は日常品等を売っている王都でも五指に入る商人だったな。下手な貴族よりも金持ちで王宮にも出品しているそうだ。


「よろしく、トマソン、セリー。こちらこそよろしく。仲良くしよう」


 テオドールが二人に返事を返す。オレはオマケ感があるから二人には簡単に「よろしく」と言った。……眠いから頭が回らない


「アルム、眠いのは分かるけど、しっかり挨拶しなよ」

「ごめん、トマソン、セリー。よろしく」

「すまないね、アルムは睡眠不足で。昨夜、先王陛下や陛下のお相手をしていたから」


 テオドールがフォローをしてくれるので、オレは本格的に寝に入ろうと考える。しかし他のクラスメイトが自己紹介と挨拶をしてきたのでテオドールと一緒に対応する。そんな事をしていると教師が入ってきた。


「全員、席に座ってくれ。Dクラスの担任のハドソンだ。このクラスには王族と公爵家の子息がいるが、学院長が言った通り地位や身分に関係なく仲良くして欲しい」


 その後、ハドソン先生から学院の注意点や授業の予定、歓迎会の等を聞く。


「授業に関しては平民や騎爵位の子供達には難しく感じるだろう。逆にテオドール殿下やアルムエルグ様は簡単に思われると感じるでしょう。それは教育レベルが違うからだ。ですから、お二人には皆に勉強を教えてほしいのです」

「分かりました。しかし、私も王族になって一年経っていませんので、アルムに教えてもらった方が良いと思います。私もアルムにいろいろと教えてもらっていますから」


 という訳でオレはクラスの皆に勉強を教えるような立場になった。……テオドールも勉強できるのにオレに教師役を回された。テオドールは小声で「無能とか欠陥品とかの汚名を払拭するチャンスだよ」と言う。しかしオレで大丈夫かな?


「それから来週に歓迎会が行われる。新入生歓迎パーティーで他のクラスや上級生との親交を深める事を目的としているが、AクラスからCクラスは貴族令息令嬢だ。彼等の中には自分は特別な特権階級者だと思っている者達が多いから、身分の違う者達が集まる場所に行くのは止める事を勧める。下手に近づいたら召使の様にこき使われるからな」

「先生、学院長が言っていた身分に関係なく仲良くするという言葉に反していませんか?」

「その言葉は建前だ。学院内に置いても地位や身分を振りかざす学生は多い」


 生徒の言葉を否定する担任の教師。そして生徒達により騒めく教室。


「特に今年は地位の高い学生が多く、ベルファルト殿下やミリアリア様が入学して派閥も出来上がっている様だ。その派閥内の貴族子弟達は近寄らず、話しかけられたら相手の気分を損ねない様に心がけてくれ。身分の上の者に逆らわない様に」


 ……目が覚めるような説明にオレだけではなくクラス全員が言葉を失くす。これからの学院生活はどうなるのだろうかと。


「なので自身を守る為に派閥に入る事を勧める。王族のベルファルト殿下やミリアリア様の派閥、もしくはCクラスのジャルブランド公爵令嬢の派閥に。そしてテオドール殿下とアルムエルグ様の派閥に」


 クラス全員がオレ達を見る。テオドールにも派閥が出来たんだな。……オレもその派閥に入っている?


「現在、一番多いのはベルファルト殿下の派閥で男性教師もその派閥に入るようだ。二番目はミリアリア様の派閥でこれは女性を中心に形成していて、女性教師も参加するらしい。同じ女生徒のジャルブランド公爵令嬢の派閥はミリアリア様の派閥に参加するという噂があるから女生徒はミリアリア様達の派閥に参加する事を勧めする」


 教師陣も派閥に入るのか。……派閥に味方するという事だろう。

 そしてオレ達の派閥。正確にはテオドールの派閥だが、オレが参加していて他の者達は参加には慎重のようだ。オレがベルファルト殿下や他の令息令嬢に嫌われているからな。


「歓迎会までに派閥を決めておいた方が良い。それが学院生活で身を守る方法の一つだ」


 制限時間も加わり、Dクラスの男子生徒はベルファルト殿下に、女生徒はミリアリア様の派閥に参加する事を決めるだろう。テオドール派閥には参加しないだろうな。と考えていたら、


「私はテオドール殿下の派閥に入る予定だ」


 ハドソン先生はテオドールの味方になると言った。その言葉にクラスの皆が驚く。


「ベルファルト殿下は我儘で他人の痛みを知らない。その配下も暴力的で馬鹿しかいない。そんな場所に立場の低い平民が参加しても虐められるだけだ。だから私はテオドール殿下の派閥に参加する事を勧める。テオドール殿下なら皆を守ってくれるだろう」

「も、もちろん、守ります」


 ハドソン先生の言葉に引っ張られたテオドール。その言葉にクラスメイト達の表情は明るくなった。


「歓迎会までに男子生徒は派閥について考えておきたまえ。女生徒はミリアリア様の派閥が良いだろう」


 男子生徒は悩む事になるだろう。将来国王の座に近いベルファルト殿下と、少し前に王族となったテオドール。どちらに着くのが得なのか。普通に考えたらベルファルト殿下だが、大変な目に遭うらしいからな。


「最後に私が伝える言葉はこれだけだ。本を読み知識を増やし、剣術馬術魔法を鍛え、マナー教育等を学び学院生活を楽しんでくれ」

「楽しむ事が出来るのだろうか……」


 クラスメイトの誰かの言葉が教室に響いた。オレも学院生活を楽しむ事が出来るか心配になった。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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[気になる点] 入学式の日の学校の先生に世間の噂と真逆の真実を言われたベルファルトはいつ何をどこまでやらかしたのか?
[良い点] 中々面白い先生ですな。 そしてアルムの扱いが酷い...。 先王の後ろ盾があるアルムが1番強いのが皮肉が効いてる [一言] 連載頑張ってください
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