14 ダンス
ミリアリア様とアルムエルグ様を大広間の中央に送った私は不安だった。
「ファム、ミリアリア様は大丈夫でしょうか?」
「お言葉を言わなければ大丈夫のはずです。近くで陛下達がフォローしてくれるはずですし、エリスお姉様も近くにいますから」
学友のコレートに答えたけど不安でした。ミリアリア様がアルムエルグ様に毒を吐けなければ良いのですけど。
「ダンスが始まりましたね。……今のところは会話をしていないようです。二人ともお綺麗ですね」
コレート言う通り、とても絵になりますね。ドレスもアルムエルグ様に合った衣装を用意した甲斐がありました。昨日にアルムエルグ様の衣装が決まっていない事を知って大至急、情報を集めました。お陰で寝不足です。
「……少し、アルムエルグ様の表情が硬いですけど大丈夫でしょうか?」
先ほどからアルムエルグ様の表情が硬くなっていますね。何かあったのでしょうか? 逆にミリアリア様は……、特に問題ありません。いつも以上にニッコリ笑っています。とても幸せそうです。
側近の皆さんに報告をして、アルムエルグ様の表情の硬さの訳を調べないと!
「……ミリアリア様がアルムエルグ様とお話をされています」
コレートの言葉を聞いて二人を見ました。……ミリアリア様がアルムエルグ様にお話をしています。今回はどのような毒を吐いているのでしょうか?
エリスお姉様、フォローをお願いします。陛下達もどうにかしてください!
……駄目でした。アルムエルグ様が落ち込んでいます。いったい何を言ったのですか! こうなったらダンスを終了させないと!
ダンスパートナー交代作戦です! 陛下とアルムエルグ様とパートナーを交代する作戦です。前もって陛下と王妃には伝えています。
……ミリアリア様がパートナー交代しません。ミリアリア様がアルムエルグ様と王妃様を踊らせない様です。作戦失敗しました……。
ミリアリア様がアルムエルグ様とお話をしながら踊っています。だんだんとアルムエルグ様の表情が暗くなっています。逆にミリアリア様はとても嬉しそうです。幸せそうに踊っています。
早くダンスの時間が、演奏が終わる事を祈ります! これ以上ミリアリア様を喋らせる事は出来ません!
「ベルファルト殿下達にミリアリア様の毒舌が聞こえている様です。二人を見ています」
コレートの言葉にこれ以上悪化させないように作戦その三を発動します。
「コレート、作戦その三です! 急いで連絡を!」
「分かりました!」
コレートが行動を開始しました。作戦その一はパートナー交代。その二は周りの者達がミリアリア様を注意して喋らせない事、その三は最終手段の演奏を終わらせて終了させる。前もって陛下から指揮者の人には伝えています。
演奏を中途半端で終わらせる事は出来ませんので、少し時間がかかりますが、何とかダンスの時間を終わらせる事が出来ました。
少し早めに演奏が終わったので、訳の知らない者達が疑問に思っていますが、作戦その三は成功しました。
アルムエルグ様と名残惜しそうに別れるミリアリア様。……最後に何を喋ったのですか? アルムエルグ様が本格的に落ち込みましたよ。
「ファム、アルムエルグ様が落ち込んでいますね」
「そうですね。……今夜の祝宴は反省会になりそうですね」
※
ミリアリア様の顔を見て踊るのだけど、美しい表情に見とれて目を逸らしそうになるから集中しないと。でも本当に奇麗だな。こんなにミリアリア様の顔を見るのは初めてなのかもしれない。いけないダンスに集中しないと! 失敗したらとんでもない事になるからな。
「そんなに見つめないでください。恥ずかしいので」
「す、すいません」
音楽が中盤に入り、ミリアリア様が話しかけてきた。でもダンスパートナーを見ないといけないので仕方がないのです。許してください。
「無機物相手に踊っていると思っていれば、大丈夫と思っていましたが無理ですね。一秒でも早く音楽が終わってくれたら嬉しいのですが……」
「も、申し訳ございません」
「そろそろ無機物になりませんか? 私が手伝ってあげますよ?」
それは死ねという意味ですか? 踊りながら言うセリフでは無いと思いますが……。
「アルムならどんな方法で無機物になりたいですか? 私が叶えてあげましょう」
「で、できれば有機物のまま、寿命を全うしたいと思います」
「そんな凡人のような答えで、私が納得すると思いますか? 太陽に向かって焼かれて灰になるとか、海の水と同化して海水になるとか、地中深く潜って埋もれて土になるとか色々あるでしょう。何を悩んでいるのですか?」
焼死・溺死・生き埋めを提案しているミリアリア様。ダンスを踊りながら提案する事ではないよ。
「私の仮の婚約者なのだから、そのくらいの事は出来て当然でしょう。何を考えているのですか? 本当に情けない限りです。生きる意味ってモノを知っていますか?」
……死んでほしいと思っているのでしょうか? ミリアリア様は……。流石に泣きそうになるがダンス中だから笑顔のままで頑張る。早く音楽が終わってほしいな。
「ミリア、ダンスパートナーを交代して私と踊らないか?」
「ミリア、私もアルムさんと踊って良いかしら?」
陛下と王妃がダンスパートナーの交代をミリアリア様は言うが、ミリアリア様は拒否して、陛下達から離れる。
オレとしてはダンスパートナーの交代をしたかった。オレは穴掘って蹲りそうな気分ですよ。
「アルム、貴方は仮とはいえ私の婚約者なのですから、踊って良いのは私だけに決まっているでしょう。貴方の様な無能の無機物と踊ってくれる生物は私しかいないのですよ。もし他の誰かと踊るのなら無機物からランクアップして、人間レベルになって死んでからにしなさい」
心に傷を負わせて下落させて、更に急落下で落とすのですか。オレの欝な気持ちはどこまで落下するのだろうか?
「変な顔がもっとおかしくなっていますよ。私と向き合っているのですから笑顔はどうしましたか?」
「す、すいません」
欝な気持ちで笑顔になるのが、こんなにもきついとは……。マジできつい。
笑顔・笑顔と心の中で思いながら、踊る事に集中する。ミリアリア様が踊りながら何かを喋るが、主要な部分を聞かないで集中して踊る。……不敬だけど、これならなんとか気落ちしないな。
オレに向かって毒を吐いているミリアリア様の声を聞かない様にしていると、曲の終わりが近づいている。ダンスの時間が終わるのだ。……苦行が終わる。
踊り終えたので、ダンスパートナーであるミリアリア様に礼をする。
「今後もアルムがダンスパートナーなのだから、しっかりして頂戴。あと喉が渇いたから飲み物を持ってきて」
「は、はい」
ミリアリア様に飲み物を渡すために、疲れ切った顔でテーブルにある飲み物をとる。……毒物のにおいはしないから大丈夫だろう。
王族が居るテーブルにミリアリア様から頼まれた飲み物を届けたのだけど、ミリアリア様が居ない。陛下が「ミリアは少し席を外している。しばらくすれば戻ってくるだろう」と言う。手に持っている飲み物はどうしよう……。
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。




