表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
22/128

十二歳②

 現在、王宮が騒がしい。その訳は他国が攻めてきたからだ。敵国は現在我が国の国境を攻めて王都に進軍している。現在はルックナー砦という要所を攻めているそうだ。オレも詳しい事は分からないがルックナー砦の事は聞いている。此処から歩いて十日くらいの距離にある砦で一万人くらいの者が砦を守っている。その砦は敵が五万人いても落とせないと言われている砦である。その砦が落とされそうだと噂されている。どうしてだろうか?

 国王陛下は援軍を送る準備をしているが何日後に送れるのか分からず、近隣の貴族に応援を頼んでいるが時間がかかるそうだ。これは王宮で働いている者達の情報で、聴力強化は使っていない。結構やばいのかな? しかしオレが出来る事はたかが知れている。

 そしてこんな時にでも悪事を働く者がいるから呆れてしまいます。王宮が大変だからって火事場泥棒のようにモノを盗むな! 捕まえて簀巻きにしてその場に置いておく。この事をゴーイングさんに教えておこう。

 ゴーイングさんとばったり会った。どうしたんですか?


「アルム殿、どうしました?」

「はい、簀巻きにした者が居るのでその報告です」

「わかりました。手配しましょう。それから少し相談があるので私の部屋で少し待っていて貰えませんか?用事が済んだら戻りますから」

「わかりました」


 部屋のカギを渡されてオレ達は別れた。ゴーイングさんは大半を王宮で過ごしているので部屋を与えられている。領地に家があるのに領地に行った事が無い。家族も領地に行って会っていないと愚痴っていた。先王陛下、ゴーイングさんに休みを与えてよ。

 ゴーイングさんの部屋は何度も来た事があるので椅子に座ってしばらく待つ。このところベルファルト殿下が変わったような感じがする。勉強とかは真面目にしているので問題ないけど、オレへの対応が少し厳しくなった。「もう少しデーデルの様に勉強しろ!」とか「ラーブスの様に訓練をしろ!」と言う。

 ベルファルト殿下より低いレベルなのだから仕方がない。これでもラーブスよりも頭が良く、デーデルよりも訓練をしている。……言っていて悲しくなる。短所に勝ってどうする!できれば長所で勝っても良いが、その前に殿下が勝ってくれ! じゃないとオレも勝てない。能力を低く見せる為の手加減だって大変なんだよ! それなのに……人の苦労も知らないで。

 それにラーブスやデーデルも五月蠅くなった。目の敵にされてウザい。オレを下に見てムカつく! デーデルは勉強でオレを馬鹿にして笑い、ラーブスは訓練で殴るって言い訳が「弱いから手加減が難しい」といって嫌らしく笑う。

 ベルファルト殿下もそれに注意しないでオレを責める。どうしてこんな苦労をしないといけないんだ!学友辞めたい……。

 きっとあの二人はミリアリア様を想っているに違いない。多分そのせいでオレを責めているのだ!オレが仮の婚約者だと思われているから自分達にも婚約者になれる可能性があると思っているんだ! オレはミリアリア様から嫌われているからお前達に婚約者の座を渡しても良いよ! でも他の偉い人達の許可を貰ってくれ! オレが動いても無理だったから。

 ミリアリア様は現在、学友と神殿で寝泊まりをして神聖魔法の修行を頑張っているそうだ。確か学友は二人でファムさんとコレートさんだったな。ファムさんは優しくていつもミリアリア様のフォローをしてくれる気立ての良い女の子で、コレートさんはミリアリア様の同世代の護衛として決められたそうだが、しかしコレートさんはラーブスの姉だから、オレの事を姉に悪く言っているだろうな。その内コレートさんにも嫌われるだろう。そしてその情報がファムさんにも伝わり嫌われるのか……。どうして嫌われている女性の婚約者なんだろう。婚約者辞めたい……。

 嫌われているといえば、ラルーシャはどうしているかな?母と一緒にローデンファング公国に行ったけど大丈夫だろうか?母が再教育すると言っていたけど……昔の様に仲良くなれれば良いな。

そういえば何故か屋敷の者達にも嫌われている気がする。今は離れの家で生活しているから使用人と会う機会が減ったけど、その使用人から偶に無視をされている気が……。

 気の回しすぎかな?偶に食事を持ってこないとか、家の掃除に来る数が減ったとか、洗濯物を回収しても持ってこない時があるが気のせいだろう……。気のせいだと思いたい。

 ……ドアが開いてゴーイングさんが来た。至急来てほしい所がある?





 王宮の会議室は異様なほど騒がしくなっている。ここまで騒がしいのは私が王に即位して初めての事だ。それも隣国のヨーテンボリー王国のせいだ! あの国は度々、我が国を狙ってきた。しかし毎回、ルックナー砦で撃退して退却させる。そして我が軍がルックナー砦の先の領地を占領した。

 ルックナー砦の先の領地はもともとヨーテンボリー王国の領地だったが撃退して退却するときに進軍して奪った領土だ。その為ヨーテンボリー王国とルックナー砦の間の領地はいつも戦争の被害がでる。住んでいる人間も減る一方で領地として割に合わない場所となっている。仕方がないと言えば仕方がない。隣国に面している領地なんてそんなモノだろう。

 そして今回、ヨーテンボリー王国は宣戦布告をせずに攻めてきた。お蔭で対応が追い付かず援軍を送るのも遅れている状態だ。そして一番の原因はヨーテンボリー王国がルックナー砦の弱点を責めている事だろう。

 去年、賊がルックナー砦の書類を盗み出した事でルックナー砦の設計図や内部構造が分かり、それを重点に攻めている事をルックナー砦から来た連絡兵から聞いた。

 ルックナー砦が落ちるかもしれない。落ちて王都に攻め込まれる可能性がある。その恐れからか不安にかられて会議場が騒がしい。ルックナー砦に至急援軍を手配して会議を終わらせる。会議場には私と宰相ゲックハルトと騎士団長ダムボックスの三人だけだ。


「宰相、援軍の準備にどのくらいかかる?」

「……早くて三日、遅くて五日です」

「援軍の準備が出来次第、出発させる事は?」

「可能ですが、それでも百人単位の軍が二日後に出発できるだけです」

「近隣の領地の援軍要請は?」

「連絡兵を出しています。しかし準備に時間がかかるでしょう」

「……早くて二日で援軍を送り、此処から砦まで十日かかる。ルックナー砦が落ちる可能性がある」

「陛下、ルックナー砦の責任者はロックマイヤーです! あの方が負けるはずがありません!」


 ロックマイヤーは確かに有能な将軍だ。しかし弱点を狙われて敵軍に苦労している状況だ。援軍を早く送れないものか……。


「どうした?会議は終わったのか?」


 父が会議室に入って来る。関係者以外は立ち入り禁止なのだが……。


「至急援軍の準備で会議は終わりました。他に出来る事を模索中です。父上には何か案がありますか?」


 父は少し考え私達を見た。そしてボソッと「味方を増やすか」と言う。どういう意味だ?


「お主達、私の自室に来い。ワシに考えが有るからルックナー砦の周辺の地図を持って来い。そしてお前達が言う小さき守護者に会わせてやるが、極秘だ! 絶対に誰にも言うな! それを誓えるのなら会わせてやる」


 父がルックナー砦を守る方法と小さき守護者の事を教えて貰う事が出来るなら誓って誰にも喋らない!宰相や騎士団長も誓った。そして父の自室に入ると父の側近のゴーイングと娘の婚約者のアルムエルグが呑気に話している。……これから小さき守護者を呼ぶのか?


「ゲックハルト、地図をテーブルに広げろ!ゴーイングも手伝え!アルムはこっちに来い!」


 父の言葉で全員が動く。どうしてアルムエルグを退出させない?


「確か……ルックナー砦の先の道は崖だったな?ダムボックス」

「はい、崖になっています。幅の広い崖の道を通ってルックナー砦に行く道です」

「その場所が通れなくなったら敵の補給物資を送れなくなる。そうだな!」

「確かにその通りです。しかし敵軍の後方です。敵に気づかれずに後ろに回って魔法で道を塞ぐことなど……。小さき守護者でも難しいのでは?」

「ふむ……どうだ?敵軍の裏に回り、崖を壊して道を塞ぐ、出来そうか?アルム」


 どうしてアルムエルグに聞く? 宰相も騎士団長も呆れているぞ! 呆れていないのはゴーイングだけ……。まさか小さき守護者って子供?


「……崖の広さはどのくらいですか?」

「ダムボックス、答えろ!」

「はい、幅は人間が五十人は横に並べる広さで崖の高さも同じくらいたったはずです」

「……味方と敵に見つからない方が良いのですよね?」

「勿論だ!」

「ここからルックナー砦の方向は?地図に書いてもらっても良いですか?」

「ゲックハルト、書け! 命令だ!」

「はい、……このようになっています」


 父は何をしようとしているのだ?


「距離は確か……ローデンファング公国と同じくらいの距離でしたね?」

「歩いて十日だからローデンファング公国よりも近いだろう」

「だったら四時間もあれば着くかな?」


 四時間? どういう意味だ? 馬で駆けても丸二日かかる距離だぞ!


「行ってくれるか!」

「フルブルーク様が私に質問をした時から断れないと思っています。でもどうして陛下達が居るときに質問をしたのですか?」

「なにお前に味方を作ろうと思ってな」

「……説明はフルブルーク様にお願いします。急いだほうが良いですよね」

「頼んだぞ! アルムが戻るまでここに居るから早く戻って来いよ。そして極秘任務を頼んだ!」

「了解しました!」


 二人の会話が終わったと思ったらアルムエルグが消えた。どこに行った?さっきまでそこに居ただろう?ゲックハルトもダムボックスも混乱している。


「……相変わらず行動が素早いですね。そう言えば騎士団長、簀巻きの罪人を牢屋に入れておきました。確認をお願いします」


 ゴーイングが慣れた口調で言う。簀巻きにして捕まえる者は小さき守護者しかいない。ではアルムエルグが小さき守護者? 子供が?


「お前が混乱するのは分かる。とりあえず私の話を聞け。アルムとの出会いからの話だ」


 そう言って混乱する私達に父は話した。ベルファルトの学友として見極める為に王領の神殿で人質になったがアルムエルグが父と娘を助けた事。


「それはゴーイングが助けたのではないのか!」

「私は一番最初に切られて動けない状態でした。アルムエルグ殿が敵を全滅させたのです」

「信じられん」

「私も信じられなかった。しかし目の前で敵を殴り飛ばし、剣を受けても無傷、一瞬で移動する速さ。目の前で起こった事が現実離れしていたからな」


 そしてローデンファング公国の暗殺者から身を挺して守った事。


「……どうしてナイフで時計塔が崩壊するのですか? 無理があるでしょう!」

「アルムエルグ殿は拾った石で熊の頭を貫通させる技術の持ち主です。ナイフで外壁を貫通して内部を壊す事が出来るでしょう」

「これが極秘事項だ! 知っている人間は本人を除いたらここに居る者だけだ」


 聞いていて頭が痛くなる。どうしてなのだ?待て! アルムエルグが熊殺しなのか?


「はい、私が熊殺しとなっていますが、アルムエルグ殿が間違って熊を殺してしまったので、秘密にするために仕方がなく私の手柄となっています」


 子供が熊殺し……。


「では、私を助けてくれたのはアルムエルグ殿なのですね!」

「その通りだ、勝手な行動をしたからと言って私に謝りに来たぞ」

「……そのとき先王陛下はローデンファング公国に居ましたよね」

「アルムなら五時間で着く。何度も私に会いにローデンファング公国に来たぞ。ミリアリアのお茶会の手土産も買ったりしていたし」


 ……馬車で十日、馬を丸二日はかかる距離を五時間で走る?どんな速度だ!

 数々の話を聞き力尽きてしまいそうだ。


「私がお前達にアルムの事を話したのは味方が欲しかったからだ。アルムは有能だがベルファルトの学友として能力を隠している。お前達はアルムが学友になったからベルファルトが勉強熱心になったと聞いた事があるだろう。それはアルムがベルファルトを煽てて気分の良いように行動していたからだ。勉強も剣術の腕もベルファルト以上なのにそれ以下の能力で動いてベルファルトの機嫌を取ったからだ」

「どうしてその様な事を!」

「ベルファルトは子供の時にミリアリアと一緒に勉強をしていたが勉強はミリアリアの方が出来た。だから不機嫌になって教師を困らせた。そうだな!」

「確かにその様な事がありましたね」

「そしてお前が公爵に頼んでアルムを学友にしただろう。しかし有能な者と一緒に勉強をするのはベルファルトが嫌がる。しかし学友として勉強をさせないといけない。だから公爵はアルムに命令を出した。ベルファルトよりも能力を下げておだてて勉強をさせろと。アルムはその事を聞いて今でもベルファルトよりも能力が低いフリをして、機嫌を損ねないように勉強をさせている」


 そんな事があったのか!確かにアルムエルグが学友となってから息子は勉強に剣術に頑張っている。それはアルムエルグがそのように進めたからなのか。


「しかし私がローデンファング公国に行っている間にアルムの噂が酷くなった。これではアルムの将来に支障をきたす。だからお前達に味方に付いてもらおうと思って打ち明けたのだ」


 なるほど。アルムエルグにそんな秘密があったなんて。父が気に入る訳だ。


「わかりました。アルムエルグの味方になりましょう。ダムボックスもゲックハルトも良いな!」

「恩人の味方になるのは当然です!」

「騎士の代わりに罪人を捕縛して国を思う心を持った方です。味方になりましょう」


 味方が増えて喜ぶ父。そしてお茶のお替りを貰おう。側近が呼べないからゴーイングがお茶を入れる。そういえばだいぶ時間が経ったな。アルムエルグが居なくなって六時間は過ぎたな。日も暮れて暗くなった。しかし本当に大丈夫なのだろうか?


「ただいま戻りました!」


 いきなりアルムエルグが帰って来た。白い布に包んである大きな荷物を持って。


「早かったな。まだ六時間くらいだろう?」

「方向が分かっていたので一直線で行きました。そのおかげで時間が短縮されたのです」


 ……たしか山を迂回して砦に行くからな。……山を越えて行ったのか?


「崖を壊して通れなくしました。一ヶ所ではすぐに道が元に戻ると思って三ヶ所ほどの場所で崖を壊しました」


 地図を広げて壊した場所に印を付ける。しかし本当に壊したのか?


「それで証拠が必要と思って証拠を持って来ました。これです」


 白い布を取ると気絶した人間がいる。誰だ?騎士団長のダムボックスが恐る恐るアルムエルグに聞く。


「アルムエルグ殿、もしかしたらヨーテンボリー王国軍の将軍ではないのか?」

「敵軍の後方で威張っている人を気絶させて持って来ました。これは証拠になりますか?」

「……こいつはヨーテンボリー王国の将軍で砦を攻めている敵国の大将です」


 ……敵国の大将がどうして城に居る?


「大将が軍から居なくなってしまったら、混乱して一時撤退するでしょう。……しかし道が崩れていて撤退できない。それを知ったロックマイヤー将軍はこの機を逃さず敵軍に突撃をして降伏させる?」


 ……最後は考えながら言ったな。ダムボックス。私も同じ考えをした。上手くいけば戦争が終わる。アルムエルグを見る。額に汗を流して「失敗した」っていう顔をしている。


「アルムよ。私は敵の補給線を崩す作戦を伝えたはずだ。どうして敵将を捕まえて戦争を終わらせる! 何を考えている!」

「すいません。こんな奴が敵将の大将とは思わなくて」

「もっと他に人間はいなかったのか! どうして敵の大将を持ってきた! それも王都の城に!」

「すいません。ワザとではありません!」


 ……戦争が終わった気がする。敵軍は撤退が出来ない袋小路に捕まり何もできない。補給も出来ずに援軍も時間がかかる。この戦争は勝ったと思う。勝利後は敵軍の平民達に壊した崖を修復させて騎士や貴族は捕虜にして身代金を貰おう。後の事は宰相に任せて騎士団長にはルックナー砦に行かせて状況を見てもらおう。

 ……しかしいつまで父はアルムエルグに説教をしているのだ?そして今までの苦労は何だったのだろう……。父の苦悩が少し分かった気がした。



誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 大人達のアルムの扱いがはなはだ疑問。 価値的にアルム>>越えられない壁>>王女>>越えられない壁>>王子でしょうに、王子の為にアルムの実力隠して迫害させておく意味が不明。 アルムの功績…
2019/12/04 05:02 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ