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十一歳①

 十一歳になりオレは学友としてベルファルト殿下達と勉強をしたり、体を鍛えたりしている。屋敷に戻っては妹のラルーシャと静かな食事をとり、叔父と話して部屋で休む毎日を過ごしている。……少し屋敷の様子がおかしい。知らない使用人が増えて、オレを変な目で見る。どうしてだろうか?

 他にはミリアリア様と会って毒舌を頂いた。相変わらずだな。へこみそうです。

 そして今年は叔父の子供。オレの従兄が王都に来るそうだ。なんでも叔父と会う為に王都に遊びにくるって言っている。それを聞いた妹はとても喜び「王都の案内は私がする!」と言っていたが叔父に「兄妹で案内を頼む」と言われてオレを凄い顔で睨んだ。従兄に妹から好かれる方法を聞いてみよう。

 数日後に従兄が来た。会うのは初めてだな。妹と二人で屋敷の入り口で出迎える。オレと出迎えるのが嫌で喋りかけても無視をする妹。そして従兄が来た瞬間に笑顔で出迎えた。第一印象は叔父に似ている。確かオレの一つ下の歳だったな。……なんか好きになれない感じがする。


「クルックスお兄様!久しぶりです!」

「ラルーシャも久しぶり。前よりも可愛くなったね」

「本当?嬉しいです」

「奇麗なドレスを着てどこかの姫様かと思ったよ」


 妹はドレスやアクセサリーを前日まで考えて気合を入れていたのだ。妹の部屋から明るい声が聞こえて侍女達とワイワイ話していた事を思い出す。


「叔父様の所に案内するわ!荷物はユーリアに任せておけば良いから。その後は屋敷を案内するわ」


 ……従兄の手を引いて屋敷に入る妹。オレは終始無視された。……挨拶も出来なかった。使用人達の仕事の邪魔にならない為に屋敷に入って叔父の所に行く。妹たちは執務室で叔父と会話をしていたのでオレも加わろうとして部屋に入ろうとしたが。


「ラルーシャの隣に居た人が兄だよね。なんか普通だね」

「あんな奴なんて兄と思っていないわ!口煩いし、間抜けの欠陥魔法使いよ」

「噂は聞いた事あるけど……」

「その噂は真実よ。公爵家に相応しくないわ!」

「ラルーシャ。自分の兄にそのような事を言ってはいけない」

「そうだよ。欠陥魔法使いだけど僕の従兄だよ。そんなこと言わないで。ラルーシャにそんな酷い言葉は相応しくないよ。僕は優しい言葉が好きだよ」


 ……叔父と従兄がオレをフォローしている。今は入らない方が良いな。挨拶は食事の時にしよう。妹にあそこまで嫌われているなんて悲しいな……。

 次の日、妹と従兄は城下町の見学に行く事になった。昨日の食事の時に従兄が街を見学したいと言ったのでオレと妹が街を案内する事にしたのだ。妹はオレが邪魔そうだが、叔父と従兄の頼みだったので渋々頷いた。


「こうして話すのは初めてだね。アルムエルグ殿。兄上と言った方が良いかな?」

「どちらでも良いよ。今日はよろしく、クルックス。それでどこに行きたい?」

「そうだね。まずは街を見学しよう。商店街なんてどうかな?」

「では商店街に行って、その後は広場に行ってみるか。確か広場でも露天商が出ていたはず」

「それは面白そうだね」


 オレ達は商店街に行って広場の露天商に見る事にした。ラルーシャは商店街でアクセサリーを従兄にねだったり、ドレスをねだったりしていた。従兄は妹とお揃いのアクセサリーを買って妹を喜ばせた。そして広場に行って妹は従兄は腕を組んでデートをした。オレは二人の後ろで空気の様になっていた。ラルーシャの専属侍女であるユーリアから同情されている気がした。


「ここからの王城は奇麗でしょう!」


 妹が従兄に広場からの王城を見せる。此処は王城が見える隠れスポットだ。他にも何人もの人達が王城を見ている。


「そうだね。とても奇麗だ!」


 二人とも良い感じだね。将来結婚しても驚かないよ、兄さんは。

 ……あれ?王城の部屋で何か変な人がいる?騎士や使用人ではないようだ。視力を強化して窓から見ると二人組の男が誰かを脅している。……あの人は宰相補佐だ!何回か会った事がある。そしてあの部屋の場所は確か……重要書類が置いてある部屋だ! 急いでどうにかしないと!

 オレはラルーシャの専属侍女のユーリアに用事が出来たと言って別れた。そして露天商で変装用のマントと仮面を購入して王城を目指した。





 ゲックハルト・ダンムレイは伯爵の地位にあり、宰相としてこの国を守っている。そして今も国を死んでも守るべきだと思っている。重要書類置き場には入れる者が限られている。宰相である私と宰相補佐。そしてこの部屋を管理している者の三人だけ。

 私はふと昔の書類が気になり重要書類置き場に向かった。……ドアが開いている?どうしたのだ?普段通りに部屋に入りドアを閉めた。……何か変な匂いがする。なんの匂いだ?この匂いのせいでドアを開けておいたのか?再度ドアを開けようとしたとき首に冷たいモノを付けられる。


「ドアを開けるな。閉めて静かにしろ!死にたくないだろう?」


 敵か? 何者だ?喋ろうとするが口を手で閉ざされて喋れない。声からして男のようだ。男はドアのカギを閉めて部屋の奥に私を連れて移動した。そこには二人居て一人は宰相補佐が刺されて血を流していた。この匂いは血の匂いか!


「宰相よ。命が惜しければここのカギを開けてくれ」


 もう一人の人間が言う。この場所は国内の地図の保管庫だ。国の機密情報だぞ!それを盗む気か!


「カギを開けてくれたら命は助けてやるぞ。早くしないと宰相補佐が死んでしまうぞ」


 なんて運が悪い。白昼堂々と賊が居るタイミングで部屋に入るなんて。


「……カギを持ち歩いているのは知っている。余計な殺しをさせるなよ。それともアイツの様に死にたいのか?」


 そこにはこの部屋の責任者が横たわっていた。死んでいるのか?お前達が殺したのか?


「早くしろ!」

「……断る。ワシの命よりも書類の方が大切だ!」

「そうかい。では死ね!」


 冷たい刃で私の体を突き刺されそうになり死を覚悟した。……まだ生きている。脅しだったのか?

 いつの間に目を瞑っていたようで目を開ける。小さい手が刃を掴んで止めていた。その手の者は青いマントで身を包みにおかしな仮面を付けていた。そして賊の一人を殴りつける。賊は殴り飛ばされて奥の方へ飛んで行った。

 私の後ろに居た賊は、私を盾にして言う。


「何者だ!変な格好をしやがって!」


 ……私も同感だ。青いマントに民謡的な仮面。道化でもそのような格好はしないぞ!


「それよりもどこから入って来た!」


 この部屋のカギは賊が閉めた。窓はあるが窓の外は何も捕まる所がない。そしてこの部屋は高い階層にあるから登る事も難しい。


「……」

「動くなよ!宰相様がどうなっても良いのか?」


 この小さい者は味方なのか?ならば私の言う事は一つだ!


「私はどうなっても良い!賊を退治してくれ!」


 その瞬間、小さき者は姿を消した!目の前から居なくなった!魔法か?そんな事を思っていたら後ろに居た賊が居なくなっていた。後ろを見ると小さい者が殴り倒していた。

 ……いつの間に後ろに。そして低い声で言った。


「気絶させた」


 そして宰相補佐の方に行って何かを確認した。……まだ生きているようだ。早く治療をしないと!


「……一人逃がしたか」


 そう言って小さい者は窓の方に走る。待ってくれ!


「何者だ!お主は何者だ!」

「……先王に頼まれた者だ」


 そう言って窓から飛び降りた。私は窓の外を見たが小さい者はいない。……そうだ宰相補佐を治療しないと! 部屋から出て騎士を呼んだ!瞬く間に騎士が来て宰相補佐にポーションを使う。


「……宰相。書類が取られました。ルックナー砦の書類です」


 意識を取り戻した宰相補佐はその事を言って気絶した。……書類を盗まれていたのか!それもルックナー砦の書類を! ルックナー砦は防衛線の要だ!あの書類には砦の内容が書かれている。他国に渡ればあの砦は攻められる!


「この事を陛下に伝えろ!私も後から行く!それから扉の前に門番を二人用意しろ!それから気絶している賊を牢屋に入れろ!死なないように見張っていろ!」


 指示を出して、部屋を閉めて陛下の元に行く。陛下と騎士隊長、そして側近の者達に説明した。


「……ルックナー砦の書類が外に出たか。至急、兵を出して逃げた賊を捕まえろ!殺しても構わん!そして捕まえた賊から情報を聞き出せ!」


 陛下が騎士団長に命じて、騎士団長は何人かを連れて部屋を出た。


「厄介な事になった。どうやって書斎に忍び込んだのかも考えないといけないが、宰相を助けた小さい者の正体も気になる。何者なのだろうか?」

「わかりません。しかし先王に頼まれたと言っていました。先王陛下の子飼いの者でしょう。念の為に先王陛下に聞いてみては如何でしょうか?」

「……父は私に秘密で誰かを雇っていた様だな。何者なのか教えて貰えないだろうが聞いてみるか」

「教えては貰えないでしょうか?私としては恩人に礼を言いたいのですが」

「その様に父に伝えよう。ルックナー砦だが人員を増やしておこう。あの場所が落ちたらマズイからな」

「騎士団長と相談します」

「頼んだ」


 ……先王陛下子飼いの者。面と向かって礼を言わなければ、私の気が済まない。先王陛下に手紙を出して感謝の事を伝えよう。





 しまった! 賊から逃げられた上に宰相に会ってしまった! そして先王陛下の事を言ったよ!先王陛下から怒られる! どうしよう!……そうだ!先に謝ろう! 手紙は……内容を見られたらバレる可能性がある!なら直接手紙を持って行くか、直接謝るしかない!

 賊が逃げたのも大変だけど、一番大変なのは従兄と妹達が広場に居ない事か!どこに行ったんだ! 聴力強化で声を……人が多すぎて聞き取れない。屋敷に戻っている可能性があるから戻ろう……。

 そういえばこの変装用のマントとお面はどうしようか?部屋に置いておくか。また使う事があるかもしれないし。

 屋敷には妹達は戻っており、お茶会をしていた。オレは二人に合わせる顔がなくてそのまま部屋に戻った。部屋に戻って先王陛下に今日の事を書く。賊が侵入して撃退した事。そして先王陛下に雇われたと言ったので口裏合わせを頼んだ。

 ……ローデンファング公国はここから馬車で十日くらい。本気を出して走れば五時間以内で行けるはず。先王陛下の部屋に手紙を置いてそのまま戻れば十時間以内で帰れるはずだ!

 今が午後三時くらいだから今から走れば八時には着けるはずだな。

 今日は気分が悪くなったから部屋で休もう。そう言って部屋で寝るフリをして密かに屋敷を出る。人に見つからない様に街を出て。全速力で走りだした。確か方角はアッチの方だから街道を無視して森を抜け、崖を飛び越え、川を走った。

 ……時間は五時間とちょっと。少し遅れたな。初めての道だから仕方がないか。先王陛下は……あそこだな。幸い先王陛下とゴーイングさんだけだ。運が良い!隠密行動なので窓から侵入、いきなり窓から入ったらゴーイングさんに剣を向けられた。


「すいません。夜分に失礼します。お久しぶりです」

「アルムエルグ殿?」

「アルムよ。夜中に窓から侵入とは感心できんな」

「すいません。こちらの手紙を読んでください」

「……手紙よりもお前が言えば済むだろう。何かあったのか?」


 確かにそうだった。オレは今回の件を話した。王城に賊が入り、宰相を脅して国内の地図を奪おうとした事を。一人は気絶させて、もう一人は逃げられた事を伝えた。


「城に賊が侵入したのか。警備の者は何をしていたのだ!」


 まだ続きがあるからそこまで怒らないでほしい。宰相にオレの事を聞かれたので先王陛下の名前を出した事を言う。


「……それなら問題ない。良く宰相を守った。皆にはワシの子飼いの者だと言っておこう。しかしその話は何日前の事だ?ベルファルトとの勉強はどうした?誰がお前に外出の許可を出した?」

「事件は今日の午後三時前です。ベルファルト殿下の勉強は明日ですから話が終わったら帰ります。あと無許可で来ました。私は体調を崩してベッドで寝ていると使用人に伝えたので大丈夫だと思います」

「……五時間で王都から此処まで来たのか?」

「はい。街道を通らず、最短距離で走ったので目撃者は居ないと思います」

「アルムエルグ殿。此処と王都の間には森と山と川がありますが……」

「全部走り抜けました。あの程度なら問題ありません」

「……アルムよ。馬車で十日かかる距離を短時間で走破するな……いや走破して良い。偶に来ても良い。お前には王都の情報収集係を任命する。そういえば食事は如何した?」

「食事は食べていません。どこかで何か買って走りながら食べる予定です」

「……少しくらい時間はあるだろう。ゴーイングよ、何か食事を持ってきてくれ。此処で食事をしてから帰れ。走りながら食事など行儀が悪いからな」


 先王陛下と一緒に食事を取る事にした。そして何か緊急の場合は先王陛下の名前を使っても良いという許可を貰い、偶に遊びに来いと言われた。

 さてと、帰りは夜だから街道が使えるかな?やっぱり道が整備されている方が早く走れるから今度は五時間切る事が出来るかな?





 夜遅くにクルックスは父親と話しをしていた。


「王都も大したモノはありませんね。しいていうなら平民が多い事ですね」

「その平民を導くのが貴族の務めだ。それでどうだ?ラルーシャは」

「ラルーシャと一緒に王都を見てから、屋敷に戻ってお茶をしながら二人で話をしました。だいぶ懐かれましたよ」

「そうか。お前も来年くらいには王都で暮らすか?その方がラルーシャも喜ぶし、王都の空気になれた方が良いだろう」

「そうですね。出来ればよろしくお願いします。それにしても従兄のアルムエルグですが、彼は何ですか?本当に貴族か疑わしいですね。案内をラルーシャにさせて、自分は途中から居なくなり、最後は体調を崩して休んでいる。貴族ではなく平民の様な従兄ですね」


 クルックスはアルムエルグを見て思った。私の方が彼よりも優れていると。


「しかし彼は公爵家の次男であり姫の婚約者だ。分家のお前とは違う」

「何という事でしょう。あの様な者が私よりも位が高い貴族なんて」

「そうだな。しかし私が公爵家を継げばお前が跡取りだ。その為にはお前の力も必要だから、お前も貴族として周りに認められように心がけろ」

「勿論です。私はアルムエルグとは違う。由緒ある貴族ですから」

「その内、王族の学友に選ばれる可能性もある。アルムエルグよりも勉強に励むが良い」

「そうですね。アルムエルグより私の方が学友に相応しい。アイツが首になれば次は私がベルファルト殿下の学友ですね」


 クルックスは領地にいるよりも王都で自分の力を出してみたいと考えている。しかし今の自分に出来る事は限られている。私がアルムエルグの立場にあるのなら……。という思いが次第に大きくなり始めた。

 その思いは公爵家の次の代の当主に就任するという思いになる。



閑話 姫様頑張る~挨拶編~



「ミリアリア様!どうして「ごきげんよう」と言うだけなのにそれ以外の言葉を話すのですか!」

「だって」

「そんな顔しても私には効きません!殿方なら効くと思いますが」

「アルムにも効くでしょうか?」

「それ以前の問題です。どうして挨拶も出来ないのですか!先日話し合ったばかりでしょう。アルムエルグ様に挨拶をして毒を吐く前に立ち去る。それなのに話し込んで!毎回毎回斬新な毒舌でアルムエルグ様を悲しませて」

「でも少しでもアルムと一緒に居たくて……」

「毒舌を言わなければ!話さなければ!会話しなければ!口を閉じていれば一緒に居ても良いです!でも口を開いたら毒舌の嵐!これでは口を閉じた方が周辺に被害が無いし!誰も悲しみません!」

「でも……」

「……過ぎた事を言っても仕方ありません。訓練をしますよ。目を閉じて正面にアルムエルグ様が居ると思ってください。アルムエルグ様が挨拶をしました。おはようございます」

「何を寝ぼけているの?今は昼よ。頭は大丈夫?一回取り出して洗浄した方が良いのではなくて?これだから無能なのよ。それよりもその惚けた喋りをどうにかした方が良くて?そんな言葉使いでは我が国の品格が問われます。一回と言わず千回くらい喋り方を復習しなさい。教師役として私のペットを遣わせましょうか?犬から習って畜生道を極めては如何です?って、どうしたのですか?ファム。座り込んで!」

「ミリアリア様、お許しください、私は犬以下の無能です。無能が生きている事を許してください。学友を辞退して家で一人静かに迷惑をかけずに生きる事を許してください」

「ファム!しっかりして!ファム!」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…………」

「ファム!」

「許してください、許してください、許してください…………」

「しっかりして!ファム!貴方に言ったのではないのです!」


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスをお願いします。

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[一言] 呪いなら呪いとアルムに告げればそれで済むのにねぇ。 何も知らされずに罵詈雑言、周りにもほぼ味方がいないなら性根がねじ曲がりそう。
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