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感想、意見を常に待っている状態であります。
いつの間にか頭の上に乗っていた六面体。いつの間にか消えている卵。それとこれを関連させますと、スライムであることがわかります。持ち上げてよく姿を見ました。黒い液体に2つの赤い斑点。大きさは私の掌2つほど。雨の日の後で葉っぱに乗っている水滴を大きくした感じです。
「始めまして?」
「ぽぽ。」
「ああ。卵の時から意識があったのですね。じゃあ、初めての会話ですね。よろしくです。」
「よぽぽよ。」
「私の魔力は温かいのですか?気が付きませんでした。今から帰宅です。帰りますよ。」
さて、家に帰ります。そう思えば、名前はなににしましょうか?
「どういう名前がいいですか?」
「ぽ!」
「では、クロにします。いいですか?」
「よぽ!」
クロと共に帰路を進みます。ちなみに、現在の鎧は魔法使いの公式衣装です。尖がり帽子と長いローブです。しかし、頭の上にクロが乗っているため、尖っていません。それに杖ではなく剣を装備しているので、ちぐはぐな感じです。
「ただいま帰りました。」
「おかえりなさい。今日は遅かったのね?」
「はい。迷宮を彷徨ってきました。」
「いい経験をしたのね。すばらしいことだわ。」
「痛かったです。」
ローブをめくって片方だけ半袖になってしまった服を見せました。ちなみに、クロには気が付いていないようです。
「あら。貴方が腕を斬られるほどの相手だったの?」
「そうです。」
「大変だったのねー。」
「とても大変でした。」
「夕食よ。食べる?」
「もちろんです・・・・・」
機嫌がいいときの母は手料理を振舞ってくれます。母の夕食は美味しいので・・・はい。おいしいのです。美味なのです。洗脳されているかも・・・美味です!沢山食べることができました。問題はその後です。国の警報が作動しました。
『敵襲!清き道方向!』
この国は樹海に包まれています。外交するために切り開いた道はただの一つ。それが《清き道》です。そこから敵が攻めてきました。清きの元となったのは石畳が真っ白であることです。とても白く輝く石を使ってあるのです。
「私も出ます。」
「分かったわ。すぐに準備なさい。」
普通の種族。つまり死ぬ種族ならば子供に戦争の参加など認めないでしょう。しかし、私たちの種族は死にません。早いうちから戦争を知ることはいいことだとされています。何度か戦争を経験しています。その時の私の仕事は敵の魔力を抜くことでした。
「上空から魔法攻撃します!当たらないようにしてください!」
「あたるわけねぇー!」
「さっきスキル貰った若造の攻撃など痒くもないわ!」
前から効果を発揮していた魔法以外の魔法は一時的に使えない今でも、敵の殲滅くらいは余裕でできます。硝子の騎士を【炎魔法】で敵に飛ばします。私の準備が終わるまでは硝子達に活躍していただく予定です。さて、全身を鎧で覆い、自分を飛ばします。イメージは足から炎が出ている・・・そんな感じです。踵からすごい勢いで炎が噴き出しています。それに従って私も浮き始めました。クロは私から落ちないように触手を固定した後で寝ています。
しばらく制御に時間がかかりましたが、自由に飛ぶことができるようになりました。足の微妙な角度によって進む方向が変わりますから気をつけなければなりません。さて、敵兵の上空に来ました。
「さあ!行きますよ!」
使用するのは【大規模業火魔法:炎の大宴】です。なんとなくこの名前にしました。魔法名はなんでもいいのですよ。確か、聞いた話によると勇者パーティの賢者さんが火の玉にとても長い名前を付けたことがあるそうです。テンションが上がっている時以外は見た目の名前を付けるので、気持ちが理解できません。ちなみにその賢者さんは他の勇者パーティの人にチュウニビョウと呼ばれていたそうです。異世界では二種類の人だけ魔法が使えるようです。その1つは30歳まで身の純粋さを失わなかった者で、もうひとつが自分のイメージ力を力に変える者のようです。それぞれドーテイと、チュウニビョーカンジャと呼ばれているようです。
炎の渦がいくつも発生して敵兵を燃やします。触れた部分は一瞬にして灰となるこの魔法の唯一の弱点は動きが遅いことです。私はそれを数で誤魔化しています。後ろからは硝子の騎士たちが敵を倒しています。挟み打ちとはこのことですよね。
敵の将軍は恐らくあそこですね。暗闇の中でも光る場所があるのです。兵士たちがかわいそうですので、将軍を倒して終わりにしたいと思います。
「しかし、普通、襲撃ならば朝に行うのですが・・・」
今、敵の襲撃理由を考えていてもしょうがな・・・アンデット?
死んだはずの兵士(首付き)が動いています。楽に殺してあげるためになるべく首を刈ったのですが、硝子の騎士は斬るだけでなく貫くこともしますので、四肢と首が無事な死体もあるのです。その死体が動いています。
もしかしたらこのアンデットの性能を試す為に夜に来たのかもしれません。ちなみに、アンデッドは唯一人族が作れる魔物として有名です。キメラという魔物もいますが、あれは繋ぎ合せているだけですのでノーカウントでお願いします。
『アンデット。ただ、死なないのではなく、生物が一度死んでその死体が動いている状態のことを言う。内臓が機能していないのにも関わらず、魔力を使って筋肉を動かすという方法で行動する。首を切断すると動かなくなる。これは魔力を溜めることができなくなるからだと考えられている。また、夜や洞窟の中など、太陽光があたらない場所を好み、光が当たる場所では性能、能力が著しく低下する。魔物として発生した場合は魔物の死体の姿をしている。』
アンデットに効果があるのは【聖魔法】。ですが、火に関する魔法しか使えませんので、こうします。【聖炎魔法:死者の帰還】。
〝完全に体の機能が停止するまでアンデットになったとしても、感情は生きている。生者はアンデットになると苦痛を抱えて動いているのだ。〟
学問書にはこのように記されています。アンデッドにされてしまうとはかわいそうですね。
「作戦がうまくいかなかったのか?」
「そのようです。不死には不死を当てたつもりなのですが、所詮我々の不死は偽物だったということですね。」
何故か薄暗い部屋で3人の男が話しあっている。長い計画の集大成が簡単に防がれた事に関して、表面上は冷静を装っているが、内心ではかなり焦っていた。
「救いは実験隊が消滅させられたことでしょうか?」
「そうだな。あの液が灰になったことは大きい。解毒法を見つけられなかったことが大きいだろう。」
「次はどうしましょうか?」
この国では普通、内政と外交は別である。外交の中には戦略と防衛も含まれている。内政担当となるはずの王が外交に関わることは無いはずだったが、今回の場合は違った。今の王は研究者体質である。と、いうのはいいように言った場合である。率直に言うならば王は今、不死になりたがっている。その実験と戦略を兼ね備えているのが今回の軍事戦略。つまりは周辺国への不死兵戦略であった。
「森の民の結界を破れなかったのだから次は壁だ。アルケディヤを攻めるぞ。」
「ですが!あそこは不死の女王が!」
「我の言う事を聞け。攻めるのだ。」
「はい・・・」
「不思議でしたね。アンデッドの実験はおじいさんの現役の時代に禁止されたはずなのですが。」
「ぽ?」
「そうなんです。禁止されているはずなのです。」
「よぽぽ?」
「はい。その研究が栄えていたときには戦争がアンデッドばかりで行われていたようです。」
今回は騎士と他の不死人族の活躍もあり、敵は灰にしました。恐らく9割は森の養分に変わるでしょう。灰はいい栄養になると聞きますからね。亡くなった敵兵の皆さんがどうか安らかに眠ってほしいです。
「すごいじゃない!セル!」
「さすが俺の息子だ!剣の使い方も素晴らしかった!」
「ありがとうございます。剣は使っていませんよ。」
「よし!今日から俺と一緒に訓練だ!」
「え。できれば母さんと訓練したいのですが・・・」
「撃破!マザコン!」
朝から父と一緒の訓練。つまり、戦士の証です。認めてもらえました!ですが、私は後衛です。戦士にはなりません。
この不死人族の国は樹海に囲まれていると言いましたが、ただの樹海ではなく《死の樹海》や《帰らずの森》と呼ばれています。他にも呼ばれ方があります。その理由は3つほどありまして、1つ目はとにかく広いこと。迷って死にます。2つ目は崖、谷、山、湖、などなど誤って死ぬような場所が多いこと。一見平地に見えても実は崖だった・・・なんてこともあるので、慣れていない者が森を進むと崖から落ちて底なし沼に沈みます。3つ目は危険な魔物たちです。
魔物たちにはランクがあるのです。まずはSSランク。世界が危なくなるほどの魔物です。うまく立ち回れば世界を支配できる実力を持っている魔物ということですね。このクラスになると、とても知能が高いです。魔王と呼ばれる魔物はだいたいがこのランクですね。Sランク。世界ではなく、大陸が危なくなるほどの魔物ですね。森にいる魔物の殆どがこのランクです。ですので、以前倒したゴブリンは非常に珍しい個体でした。迷い込んだのだと思われます。Aランク。大国が危なくなるほどの魔物です。壁の破壊はもちろんできるのですが、知能と技術が発達しているため、人族になりすまして侵入し、内部からの破壊活動をするような魔物です。Bランクの魔物は壁を破壊できるような魔物です。知能が高いですが、全ての人を欺くことはできないのです。Cランク。騎士団壊滅レベルです。壁は時間をかけて壊すという魔物ですね。Dランク。兵士壊滅レベルです。召喚できる魔物の最高レベルだと言われています。戦争の切り札としてよく出されます。Eランクから先の魔物はそれほど脅威ではないのです。
冒険者という職業にもランクが施されています。1パーティに換算した時、つまり6人一組としたときのランクがそのランクです。とてもわかりにくいので例を出します。Dランクの冒険者が6人集まると兵士を壊滅させることができるのです。なのでソロの冒険者は自分のランクよりも一つ下の依頼を受けます。Dランク以上になると少しは名が知られます。
読んでいただいたことに感謝しております。
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