ダンジョンの後衛です。
短いので今日二話投稿します。
腕が無くなった彼を4人は助けようとしません。恐らく一人くらいは回復魔法が使えるでしょう。それなのに魔法で彼を治そうとしないのは彼が嫌われているからだと思われます。
「こんなことして許されるとでも思っているのか!俺は決めたぞ!貴様を殺す!」
「殺害予告ですか?」
「うるさい!」
魔力を抜くと同時に彼の装備を素材の状態に戻しました。煌びやかだった装備たちは素材ごとに分かれてただの塊になります。私はそれに驚いたふりをしてさらに言います。
「猥褻物陳列罪もですか!どれだけ他人に迷惑をかければ気が済むのですか!」
丁度その時兵が駆けつけて裸の彼を連れて行ってしまいました。私は金属の塊を従魔を失ってしまったかわいそうな人に上げました。4人も止めなかったということはこれが正しいのだと思います。
「これは?」
「失った物は大きすぎますが、少しは気分が晴れるでしょう。本当に少しですが、受け取ってください。」
「・・・ありがとう。」
この従魔を失ったかわいそうな冒険者はその貴重な素材を使って装備を整え、凄腕の冒険者になりました。従魔を救う会を設立し、虐待されている従魔や捨てられてしまった従魔を保護しています。彼の誕生の影にいた一人の異世界人と不死人族の存在はあまり知られていません。私ですか?私は未来の私です。
ギルドに帰ろうとした私に4人が声をかけてきました。
「あの?」
「なんでしょう?」
「あれの代わりに勇者になりませんか?」
言っている意味がよくわかりませんでした。勇者というのは異世界の住人の総称です。元は初めに異世界から迷い込んだ住人だけを勇者と呼んでいました。しかし、異世界の住人イコール強いが成り立ってしまい、強い異世界人イコール勇者となってしまったのです。つまり、異世界人ではない私は勇者になることができないのです。わかりますよね?ちなみに、この世界の住人が素晴らしいことをすると英雄と呼ばれます。
「なりません。私はそれに興味がないのです。」
「駄目よ?逃がさないわ。」
「あ。そうか。」
この世界に俺を引きとめることができる者などいない。世界は理不尽に満ちていて、手にしたすべてはいつか失う。俺は魔法を使った。【暗黒魔法:原初の隠蔽】。初めからそこに無かったかのように、俺を光が貫いて行く。そして、4人の記憶からも。俺は風、俺は光、俺は土。俺は水。勇者の腕を斬ったのは自然現象。気に留めることはない。自然に。そういうものなのだから・・・
「あれ?私たちは何に話しかけて?」
「しらね。また頭でもおかしくなったんじゃない?」
「なんだって!」
「ほら。早く行くわよ。王にこのことを報告しなきゃ。」
4人は私を、自然を置いて行きました。魔法を解除したあと、私たちは再びギルドに入りました。ギルマスにダンジョンに潜ることを知らせなければなりません。私の魔法が役に立ったのか、私を気にする人はいません。あの出来事はなかったことにはなっていませんが、自然現象として捉えられています。
「ギルマス。」
「なんだ?俺の腕はやらんぞ。」
「あはは。ばれてますか。」
「高度な術だが、ある程度強くなれば違和感から気付く。それで?なんの用だ?」
「迷宮を攻略するので、また騒がれないように先に挨拶をしに。」
「わかった。丁度いいから。今のことよりも大きな印象を作ってこい。」
やはりギルマスになるような人は強いですね。私が即座に使った魔法なんて回避されています。今度は本格的に隠蔽しなければならないですね。そのための魔法を用意しましょうか。
迷宮はいくつか種類に分かれています。このダンジョンは転移型です。転移型というのは、完全に各階層が分かれており、地上から迷宮に入るときにも転移陣を使います。私たちは迷宮に入るために青白く光る転移陣に乗りました。迷宮に入った私と二匹の従魔。私たちはこの上級迷宮に入り込んだ小さな存在に気付きました。
「俺の名前はミスラン。こっちの男がアレク。そっちの貧乳がカレンだ。」
「貧乳じゃない!」
「私の名前はセルゼルフ。こっちがクロで肩のはブク。」
「ぽ!」「きゅい!」
「かわいいー!」
カレンと呼ばれたがクロとブクを触ろうとしたので、二匹とも抗議の声を上げました。
「ぽよぽぽ!」「きー!」
「触るなだって。」
「ひどい!」
カレンは不服そうな顔をすると元の正座した体勢に戻っていました。そう。彼ら三人は現在反省中なのです。
上級者ダンジョンの転移陣からダンジョン内に移動すればそこは煉瓦で囲まれた空間です。完全な部屋ではなく、死角が多数存在しています。その死角の一つに彼らはいました。
「お!お前もダンジョンに入った口か!」
「違います。」
「嘘付けよ!俺たちと同年代じゃねーか!」
私は説明するのが面倒だったのでギルドカードを見せました。すると彼らはものすごい勢いでカードに飛びつき、私に質問を浴びせてきたのです。
「私はもう行くので。早く帰った方がいいですよ。」
「それが・・・」
「魔力が尽きて・・・」
ダンジョンの目的はただ一つと言っても過言ではありません。それは魔素を集めることです。確かに、魔素を集めた後、魔素を何に使うのかはダンジョンの特性によりますが、魔素を集めるということは変わらないのです。では、どうやって効率よく魔素を集めるか。第一は魔力を持っているモノを閉じ込めることですよね?人族も家畜を飼うことで同じようなことをしています。元々ダンジョンに入るための転移陣は罠だったわけです。ただ、入り口と出口は必ず同じ場所でなければなりません。自動ドアを想像してほしいです。一部の店では片面からしか反応せず、出口と入り口が別になっています。このダンジョンもそうです。入る時には代償はいらない。しかし、出る時には魔力が必要なのです。片面しか反応しない自動ドアでも出るには力がいるのと同じです。
彼らは帰る時の魔力が無い状態です。対処法は魔核を所持するか、代償を払えるほどレベルを上げるか。こんな子供たちに魔核を与えるほど冒険者は優しくないのが通常です。ここの冒険者はダンジョンの魔物狩りをして魔核を手に入れています。彼らに魔物を狩るほどの実力があるとは思いません。
「どうするのですか?」
「魔核をくれ!」
ということで少し痛みを与えた後で彼らには正座をしていただきました。
「入った以上は自己責任です。死になさい。」
「そんなぁ!助けてください!」
「鬼!馬鹿!」
「馬鹿は貴方達です。面白半分で上級者のダンジョンに入った馬鹿は死ぬ運命にあるのです。おとなしく死になさい。」
絶望の表情をする彼ら。私の良心が痛みますが、知らない人を助けるほど私はお人よしではないのです。残念ながら。
「ロリコンの冒険者ならカレンさんを餌にできますけどね?」
「いやだ!」
てか、貴方達はなにをしに来たのでしょうか?若気の馬鹿で上級の魔物を倒す為に来たのなら武器を持っているはずですが、彼らはなにも持っていません。あ、持っていました。私の目には武器には見えませんが、金属の塊で造られた軽い剣と木の棒を持っています。
「カレンさんは魔法使いなのですよね?魔力がある程度あれば帰れるのでは?」
「二人を置いて行けないわ!」
「いや。冒険者なのでしょ?一人でも帰ることができればギルドが助けてくれますよ。」
と言う訳で、彼らは無事地上に帰ることができたようです。
彼らを助けなかったのは、彼らに関わりたくなかったからです。俺は誰ともパーティを組むつもりはないからな。少なくとも今は。
私たちは煉瓦でつくられた迷宮を進みます。上層には人間がいると思うのであまり戦闘はせず、できるだけ下に向かいました。
「さて。ここからですね。クロもブクも自由に狩って下さいね。次の階層に行く時は硝子を動かしますからね。」
「ぽー!」「きゅい!」
硝子の騎士団でダンジョンを戦略しましょう!
読んでいただきありがとうございます。
次回から、セルゼルフがダンジョンを攻略するまでサブストーリーの連続です。




