続く誤算、向かう憎しみ
「馬鹿ヤロウが!!」
トリスタン国王ヘイゼル・スミス3世は声を荒げた。
避難民を受けとるために2000人の兵を連れて出た第3王子が途中で進路を変更し、海の街を攻めたのだ。
街には魔物が500程度しかいなかったため、多大な犠牲を出しつつも攻略に成功した。
しかし、防衛には向かない街であるため、拠点維持のために500人の援軍を要請してきたのである。
いたずらに兵を失い、得たのは海上交易の拠点であり防衛に向かない街である。しかも、今は交易をする余裕も商品もないというのにである。
それを、第3王子とその派閥は今回の功績を誇らしげに報告してきている。
命令無視などなかったかのように。
さらに兵を寄越せと。
「王都へ向かう途上の街や村ならまだ良かった。
だが、逆方向だろうが!!
何を焦ってやがる?小僧に対してか?
小僧に手持ちの兵力はねぇってのによ。」
俺の戦略もご破算ってか。
「アルバに謹慎を命じろ。それと今回の計画に絡んだ貴族を処罰する。数人は追放だな。」
国の復興には莫大な金がかかる。赤字を出し続ける辺境や砦なんざいらねぇ。小僧が西部の要衝・交路都市を抑えたのは誤算だ。しかし、兵力がなきゃ維持すら難しいはずだ。
大事なのは王都のある中央部、他国に繋がる東部、北部だ。南部は鉱山都市を抑えている以上俺達のもんだ。
「アホウが。」
悲しい呟きは風に消えた。
「父上は何を考えている!!
ランデルは我が国土を盗んでいるのだぞ!!
俺に頭を下げるなら未開の森くらいはくれてやってもいい。
だが、俺が継ぐトリスタン王国の土地は一握りとてやるものか!!」
元々第3王子であるアルバに国を継ぐ意志はなかった。だから軍人を目指し騎士養成所に入った。しかし今は周りの貴族達が囁くのだ。
「国内に居て、国王様の側にいるのはあなた様のみ。次期国王様はアルバ様です。」と。
そうなると全てが自分の物に思えてくる。
自分の物を奪うランデルは悪人なのだ。
「手柄をあげれば、国王様もすぐに譲位を考えるのではないでしょうか?」
その献策にのり、攻めやすい海の街を攻めた。
待っていたのは叱責だった。
追放される貴族達は焦った。このままでは全てを失う。
「ランデルさえいなければ。」
その怨嗟の声はアルバにも届いた。
「やつは次期国王たる俺にまだ挨拶をしていない。無礼だ!!ならば白刃を持って頭を下げさせてやる。」
諫めるアンドゥ将軍を海の街に置き、アルバ軍が出陣する。
その数700人。負傷者を街の防衛に残してきた。
「もし街を魔物に奪われればランデルのせいだ。
ランデルを恨んで死ね。」
アンドゥ将軍にそう命じて。
出陣するアルバ王子の目は憎しみと焦りにより血走っていた。




