無自覚お人好しのお兄様 2(妹視点)
「リドルお兄様、早く私にその子を紹介してくださる?」
玄関先で戸惑うリドルお兄様に声をかける。放置していたら、いつまでもそのままだろう。
近くで見てもリドルお兄様と腕の中にいる猫は同じ魔力の色をしている。互いを循環しているような動きをしていて、これは初めて見るけれど悪いものではなさそうだから気にしなくてもいいのかも。リドルお兄様に不調は見られないし、多分大丈夫なものなんだと思う。
「昨日、ちょっとしたことから保護してね。飼おうと思って」
またそんなことを言って。
そう言ってタウンハウス付近や領地で犬や猫などの小動物を拾ってきたのは、今回が初めてではない。両手で数え切れないほどあるのだ。しかも、健康体に戻してから里子に出すという徹底振り。懐いて離れない子は領地にまで連れて行って飼っている。あちらはとても広いというか自然溢れる土地なので、数がいても問題ない。
けれど、今までの子たちとは訳が違う。ただの猫ではない気がする。どうせ後でバレるんだから、さっさと話してしまえばいいのに、とリドルお兄様に問いかけた。
「本当の事を知りたいんですけれど。ただの猫じゃないでしょう? だってこの子ってばお兄様と同じ色を纏っているんですもの」
そう尋ねれば、リドルお兄様は観念して話しだした。昨夜の無断外泊もこの猫のように見える子と従魔契約をしたかららしい。これで同じ魔力を纏っている意味が分かった。モフモフとしていてとても可愛らしいが、リドルお兄様と猫の瞳が似ていて気になった。おそろいの様でとても良い。
詳細はみんなで聞いたほうがいいかなと思い、とりあえず玄関を潜り抜ける。そして、待っていたもうひとりのお兄様と執事夫妻と共に話を聞く。
まぁ、話に矛盾はないし無事に帰ってきたので良いけれど、本当によく巻き込まれ事故を起こすお兄様だなと思う。のほほんと生きていて、突然従魔契約して帰ってくる人なんていないのよ。
人間だけではなく、小動物にまでお人好しなのが知られてるんじゃないかしら。
ここに滞在している間に、今回は何匹集めてくるのか。ちなみに、前回は五匹保護していたわね。みんな可愛らしくお行儀よく躾もされ、他の家に旅立っていったそうだけれども。
拾われたことを覚えているのか、リドルお兄様の言うことはよく聞く。そして一度覚えたことは忘れない賢い子ばかりだった。
元気になるまで見届けることが叶わなくても、執事夫婦が相手を見極めて里子に出してくれるおかげで問題になったことはない。執事夫婦は動物が好きなので、リドルお兄様に任されることを喜んでいる節もある。楽しんでくれているならいいのだけれど。
さて、これから少し忙しくなる。
カミルお兄様はお父様たちの代わりに社交シーズンはこちらで動き回らなくてはいけないし、私とリドルお兄様は明後日のデビュタントを成功させなくてはいけない。
昔からお兄様たちに、魔力に変な色の奴がいたら気をつけろ、すぐに教えろと言われている。過保護ではと思うけれど、私がおかしいなと思った色を持つ人は、だいたい何かしら悪い噂のある人だったから仕方がない。近づかないのが一番だけれど、人の溢れる場所ではどうにもならないときもある。味方は多いほうがいいのだ。私は迷わずお兄様たちの手を取る。
今回はリドルお兄様の従魔の猫ちゃんも手伝ってくれるらしい。怪しい人物を見かけたら猫ちゃんに教えるだけで、リドルお兄様に伝わるんですって。なんて可愛いし便利なの!
憧れはあるけれど面倒くさいとも感じていたデビュタントが、少し楽しみになってきた。
私は口元の笑みをクッションで隠しながら、ソファにころりと寝転がった。お行儀は悪いけれど、外ではしないくら許してほしい。リドルお兄様も無事に帰ってきて、心の底から安心して気が抜けてしまったんだもの。




