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好き を 求めた 異世界 物語   作者: 三ツ三
序章   Believe in one step
9/70

第9話 おはよう

【第2都市ベルデラ 正門前】



サナミ

「これより、ハイトスへの掃討作戦を開始します!!」




私の声にみんなが士気を上げてくれた。



この戦い絶対に負けられない、




カズキさんの為にも。




-------------------------------------------------------------------


【騎士団 設営本部】



カズキさんが手掛かりを手にしシェインのアジトを突き止めた。

そしてハイトスの行動原因が明らかになった。



シェインは、彼を神からの使徒だと呼び、自分達は彼の目覚めの手助けをした。

そしてその結果がこの惨状。


そう説明した。



普通なら確かに、信じがたいことだが。

私自身がその奇跡に等しい現象を目の当たりにしている。


あれは何かの夢だと思い、近衛騎士団にも曖昧な報告ですませた。

だけど、シェインが言う通りなら確かに納得もしてしまう。



彼が普通の真人ではない。




そしてあの日見た剣。



彼は頑なに武器を手にすることを拒んだ。


あの3枚刃の剣が関係している?

わからない、彼への情報は溢さないように注意していたのに、何かが足りない。



クリル

「サナミ様!!!?」



クリルが驚いた声を上げる。

恐らく私が彼をおぶっている姿に驚いたのだろう。



ニーネ

「団長!! 一体どうしたんですか!?」


サナミ

「ごめん! とりあえず私のテントに連れていくから彼を治療して上げて、説明は後でする」




私の必死さが伝わったのかニーネはすぐに治療用の準備をする為自分のテントへと向かった。



サナミ

「クリルはバケツでお水の用意を、お願い」


クリル

「わ、わかりました!」



クリルもすぐに行動に移ってくれた。


彼は今眠っている。

ただ悪夢を見ているのか、うなされ、汗が止まらずにいた。


彼を寝かせたのは私だ。

だがあのままでいさせたら彼が壊れてしまうと感じた。


あの牢屋で一人泣いている姿。

あれだって結局、あれが正しかったのかなんてわからない。


だから今回だってそうだ、これが正しいなんて思っていないけど。




カズキ

「っ・・・くっ・・・ぅぅ・・・」



彼に全てを背負わせるわけにはいかない。

その思いだけで十分だ。



彼を助けたい、その為に尽力する。




-------------------------------------------------------------------



【騎士団設営本部 サナミ テント前】


私のベッドで彼を寝かせ、あとはニーネに任せた。

外を出るとクリルが心配そうにし待っていた。



クリル

「あいつ、大丈夫なんですか?」


サナミ

「うん、きっと簡単な催眠術技だから大丈夫」



自分でかけておいて何を言っているんだろ。

一先ずクリルに共有をしなくてはいけない情報がある。



ハイトスのアジトが、この下水道であること。

そしてシェインはアジトがバレたことを承知で私達を迎え撃つ気でいること。


これら全てを彼が、突き止めたことを。



クリル

「じゃあ!サナミ様・・・!」


サナミ

「うん、早速クリルはベルデラの兵士達に伝えてきて、冒険者には私が・・・っ・・・!」



すぐにドトルへ向かおうとしたが立眩んでしまった。



???

「団長、休憩してろって言いましたよねあたしは?」


サナミ

「アニレナ・・・ごめん」



またアニレナに怒られてしまう。

女性なのに屈強な体つき。


彼女はアマゾネスという人種族、戦うことを誇りとした女性だけの種族。

みんなは筋肉だるまとか脳筋肉だと言うが、彼女ほど精彩でお節介焼きで口うるさく田舎のおばあちゃんみたいな優しい人、他に私は知らない。



アニレナ

「ったくよぉー、冒険者ギルドへは私が今から行く、今度こそあんたは自分のテントで休みな!」


サナミ

「アハハッ、ごめん先約がね・・・」


アニレナ

「なら、あたしのテントを使いな、今すぐに!」



全く強引なんだから。

だけど、どうしたものか。


彼の事をナザ君とフェーチスちゃんに伝えようとも思ったのだが。


アニレナ

「わかったよ、何だい?お使いの内容いいなって!ほら!」


アニレナにはバレバレみたいだ。

これはもう勝てない、なら彼女にお願いすることにした。



まずドトルで冒険者達に伝えることは明日の夕暮れに正門に集合しハイトスを一気に叩くこと。

それまでに準備を整えておいてほしいこと。


そしてこれは私のお使い、ナザ君とフェーチスちゃんをここへ呼び彼を守ってもらうようにお願いしたい。


それよりも先に二人へ謝罪をしなくてはいけない。

彼を守ることが出来なくて。



そう、守って上げれなかった・・・。



アニレナ

「団長・・・サナミ! しっかりしなさい、あんたまた」


サナミ

「え・・・?」



あ、まただ。

涙が突然出てくる。



アニレナ

「わかったから! とにかくあんたは寝な!寝ないとニーネも呼び付けるからね!」



アニレナのテントの中に放り込まれた。

そうだね、ここで倒れたら元も子もない。



アニレナ達に任せたここは明日に備えよう。

そう決め服を脱ぎ布団の中へと入る。



早く寝なくては、早く寝て、寝れば大丈夫。



目が熱い。



寝ればもう大丈夫なんだきっと・・・。



それでも・・・。



何度目を閉じても。




彼の事が頭の中から離れないでいた。



何一つ守れないでいた。



やっぱりは私は・・・強くなんて・・・。




サナミ

「・・・っ?」




何かの気配を感じた。


これは・・・あの時の感覚。



3枚刃の剣の・・・。


近くにいる・・・?



もしかして私を怒りに?


彼を守れなかったことを。



でも、ごめんなさい。



あなたには謝ることくらいしかできない。






違う・・・?





怒ってない・・・?




ありが・・・とう・・・?






そして優しい蒼い光りに私は包まれ気がついたら眠気に落ちていたのだった。




--------------------------------------------------------------------



【騎士団設営本部 サナミ テント前】



目醒めが今まで生きてきて一番。

そんな感想が出てくるくらいな朝だった。



昨日の寝る瞬間の事を思い出す。

あれは絶対に彼の中の剣。


どうして私に・・・。





アニレナ

「おーい団長、連れてきたぞー」



アニレナの後ろには男女二人。

ナザ君とフェーチスちゃんだ。


ここから二人に彼のことを話さなくてはいけない。

気が重くない、と言ったら嘘になる。




だけど、二人には知っておいて欲しい、そして彼を守ってほしい。


完全に自分勝手である。


それでも彼を頼めるのは二人だけだ。



まずは・・・彼を守れなかったと、一番に謝ろう。





サナミ

「・・・・・・二人とも、朝早くにありがとう」









---------------------------------------------------------------------



【騎士団設営本部 サナミ テント内】



アニレナと看病をしているニーネに席を外してもらい。


二人に説明し、彼の容態を見せた。

もちろん、眠らせたのは私だということも知っている。



ナザ

「くそっ!! ハイトスの野郎共!!」



二人は二つ返事で彼を守ることを承諾してくれた。

これで私は心おきなく、戦いに行ける。


ここは二人に任せテントを出よう。



フェーチス

「サナミさん!! 気を付けてくださいね!」


サナミ

「・・・うん、ありがとう行ってきます」



そうだ。

今は午後からの掃討戦に集中する。


その為にもまずは準備をしっかりとしなくては・・・。



ガサッ・・・。



サナミ

「・・・ん?」



ポケットの中に何か入っている?



サナミ

「これ・・・フフッ・・・」



干し肉が一枚。

それを口に加え、準備に取り掛かった。




------------------------------------------------------------------



不思議な感覚、空間。


俺とミツバの境界線か。



また俺はここにきたのか。



カズキ

「心配・・・だよな・・・さすがに・・・」



あれが全て俺のせい・・・。


じゃああれはなんだったんだ。



カズキ

「はぁ・・・きついもんだな・・・」



この境界線にいるということは俺はまた眠ってしまったのか。



カズキ

「いや、あの人が俺を寝かしたのか・・・感謝だな」



ミツバとのこの境界線にいなかったら俺は一体どうなってたことやら。

こんなんばっかりだな。



カズキ

「もうずっとここにいようかなー・・・! 冗談だよミツバ」



ブレブレだ。

強く、強くいようと思えば思うほどボロボロになる。


そういえば、あっちでもずっとそうだったけか。


強くなるのが下手、ってことか笑えるな。


強くなるのが下手ならどうすればいいんだよまったく、強くなる必要はないって言いたいのか?




トクンッ・・・。




カズキ

「マ、マジでか・・・? ミツバ・・・」




トクンッ・・・。




カズキ

「ハハハッ・・・本当にお前には敵わないよ、蛾蝶の言う通りお前本当に神様なのかもな」





少なくても、俺の神様だ・・・・・・。







--------------------------------------------------------------------



【騎士団設営本部 サナミ テント内】



目が覚めるとそこはまた見知らぬ場所。


そして見知った顔がそこにあった。



フェーチス

「カズキ!!?」



また心配させたみたいだな。



ナザ

「起きたか!!?」



勢いよく来たところを見ると、本当に心配で気が気じゃなかったんだろうな。



カズキ

「すまん、心配かけた。もう大丈夫だから」


ナザ

「けど、お前・・・」


フェーチス

「サナミさんから聞いてる、ハイトスの幹部と会ったって」



なるほど、それこの二人を俺の護衛においたってことか。

だとすると、もう戦いは始まっていると考えていいな。



カズキ

「本当に心配は無用だ。 ナザ、状況を教えてくれ」



ナザ

「お前・・・わかった」



ナザは俺を信用した。

良い洞察力、というところなのか。



ナザ

「お前ももう察してるとは思うが戦いはもう始まってる、13時に集合って話だから、もう1時間は経ってる計算になる」


カズキ

「ここから正門まで何分だ?」


ナザ

「走って20分、お前の術技を使えばもっと早いと思う」


カズキ

「よし、それで行こう、頼むぜ相棒」


ナザ

「あぁ・・・早速行こう」




お互いの握り拳をぶつける。

ここからは時間との勝負になる、俺達が遅れればその分状況が不利になるかもしれない。



ナザ

「そうゆうわけだからフェーチsぅうぅ!!?」


カズキ

「ん? っぅ!!?」


フェーチス

「・・・・・・・」



うわ、すげぇー怒ってる。

何の反応もない所がすげー怖い。



カズキ

「あの・・・フェーチスさーん?」


ナザ

「な、なに怒ってるんだよ」


フェーチス

「べーーつにーー!? 私も仲間だと思ってたのに蚊帳の外なんてっ全然怒ってませんし!? 呼び出されて事情聞いてずっと面倒見てて起きたらどう声掛けた方がいいのか悩んでたらキョロってしてるのも怒ってないですし!?、ナザのまるで男の友情面して全てわかったみたいな面してるけど本当は何もわかってないくせにって怒ってないですけど!?」



めーちゃくちゃ怒ってる。

一体これはどうすればいい、ナザを見ても今すぐにでも痴話喧嘩したい自分と葛藤してるように見えるし。



フェーチス

「ん!」



フェーチスは右手を出した。

握った右手を。



フェーチス

「早く!行くんでしょ!」



俺とナザは溜息と共に笑みがでた。



コツンッ・・・。



フェーチス

「いってらっしゃい!」



カズキ       ナザ

「「いってきます!!」」




そして俺たちは急いでハイトスのアジトへと向かったのだった。

騎士団は強い、俺達が行ったところで何も変わらないとは思うが、行かなくてはならない。



嫌な予感と共に感じたのだ。




-----------------------------------------------------------------------



【第2大都市ベルデラ 地下水道】



アニレナ

「どおおおおおりゃぁああー!!!」



アニレナのハンマーが大型サソリのモンスターを吹き飛ばす。

今のうちに体制を立て直す。



サナミ

「負傷者後退! アタッカースタンバイ!」



見えた。

動きは・・・アニレナへとヘイトは向いている。



サナミ

「アタック! ヒーラーはタンク回復に専念!」



クリル

「おっしゃぁああー!! これでもくらえぇー!!ツイン!スパイラル・ランサアァアアー!!」



クリルの一撃が急所に入った。

大型サソリの体勢が崩れる。



サナミ

「畳み掛けて!!」



自分も一気に距離を詰める。



サナミ

「ツイン ナイトレイ・スラッシュ!」



大型サソリの尻尾を切断することに成功した。

それを見た冒険者達も続いて術技を繰り出した。


そして大型サソリモンスターは、動きを止めるのだった。






あれから時間は・・・まだ1時間しか経っていないのか。

先ほどから小型モンスターと戦い、進むと大型モンスターと戦うということがずっと続いている。


マッピングしているニーネも何かおかしいと思い始めている。


本来であれば、1時間もすれば全ての道を通った計算になっているのだが、あまりにもこれはおかしい。



サナミ

「ニーネ、どう?何かわかる?」


ニーネ

「すみません・・・罠の類は注意深く見ているのですが」



ニーネでも見分けることのできない違和感。

考えられることとしては。



アニレナ

「なんだい団長? 進まないのかい?」


サナミ

「いや、ちょっと待って。 みんな少しいいかな」



冒険者や兵士達を注目させる。

今ここで進んだところで恐らく駄目だ。



サナミ

「私と同じ違和感を感じている人が、いると思う。そこで私の意見を聞いてほしい」



恐らく単純なことだ。

こんな初歩的なミスを犯すとは、悔しい。



サナミ

「私達はもう何かしらの罠に掛かってしまっている。と思います」



私の言葉を聞いた帝国兵士は動揺を隠せないでいた。

冒険者はさすがというべきか、一切動揺せずに顔色一つ変えないで辺りを見渡し始めた。


恐らく何かしたら解除策を探しているのであろう。

自分も一緒に何かを探そうとした時だった・・・。


シェイン

「ご明ーーーー察ぅうう、素晴らしい着眼点、タイムはドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥルドゥル1時間15ふうううん。残念ワースト1位でーーすうう」



サナミ

「シェイン・トルテン!」



奴の声が聞こえる。

だがこれは声だけ、本人は別のところから私達をきっと嘲笑ってる。



シェイン

「あれれれれれれーーー使徒様はああ? ねえねえねえねえねえねねえええー使徒様どこー? 連れてくるよおおうに言ったはずですが?」



シェインの言葉にみんなが同様する。

彼の事はみんなには話していない。


ここで変な軋轢が生まれたらまずい。



アニレナ

「また気持ちわりぃこと言ってあたしらを分断させようってか? てめぇー等の常套手段はもう聞き飽きたんだよ!!」


クリル

「そうゆうこった、めんどくせーからさっさと面だせや!!」


シェイン

「おやぁああー困りましたああー私困りましたーーならーあなた達を人質にしてぇええ」


サナミ

「っ!!?」


周りの風景が変わり、闘技場になった!?

まさか地下水道だと思っていたところから罠、幻術技!?



サナミ

「警戒! 円陣を!!」



シェイン

「使徒様をお待ちすることにしましょう」





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カズキ

「くっ、またか」


奴らのアジトに向かう途中、モンスターがこちらに襲ってくる。

こちらの邪魔をしたいだけなのか。


となると、やはり余計に急がないといけないか



オーク

「ゴォオオオ!!!」



カズキ

「ナザ!」


ナザ

「わかってんよ! サンドショット!!」



モンスターの顔へナザの術技が直撃する。

ダメージは通らなくても動きを止めさせた。



だが十分だ。



カズキ

「アクセルムーブ ライド ストライクアップ!」




術技の加速で強化した足蹴りをオークの腹をえぐる。



カズキ

「とどめ頼む!」



ナザ

「オッケー! グランド!!バスタァアー!!!」



土、石、岩で作り出された大矢は俺がえぐった腹部に一寸の狂いもなく直撃さえ貫通させた。



カズキ

「よし・・・急ごう」



このモンスターの配置、やはり俺達を妨害している動きだ。

出発時に感じた嫌な予感が現実味を帯びている。



ナザ

「カズキ!まただ! 今度は鎧騎士だ」


カズキ

「ちっ・・・」



急ぎたいが無視なんて出来ない。

戦うしかないか。



「エアインパクト!!」


「ストレートボム!!」


「シューティングアロー!」



背後から攻撃。

俺達を狙ったものではない。


術技は全部召喚された鎧騎士モンスターに直撃した。



ナザ

「っ!? お前ら!?」


「こいつは貸しだからな、ナザ!」


「へっ手枷の英雄の手助けできるってのも悪くないぜ」


「さぁ!お二人は先に行ってください! こいつは僕らが」



街の警備を任された冒険者達か。

感謝しかない。



ナザ

「へっ! 終わったら一杯奢ってやんよ!」


カズキ

「あぁ・・・俺も負担しよう」



ジャンパーハイク。



小型のモンスターと街の人達も戦っている。

助けに入ろうとしたが。



「帝国兵に頼るのはおしまいだ!!」


「冒険者達ばかりに無理はさせれねー!」


「俺達の街は俺達が守るんだ!!」



みんなも戦ってる・・・一緒に戦ってるんだ。

そうだ、弱いからと誰が決めつけていいんだ。


確かに俺達よりも力はないかも知れない、けど戦えないわけじゃない。

つまり彼らは強い、こんな惨状になろうと強い。


強いから卑屈にもならずに立ち向かう、立ち向かう人が弱いわけがないんだ。


弱いから立ち向かった強くなる・・・そうじゃなかった。


立ち向かおうとする人が強いんだ。



ナザ

「正門だ!」


カズキ

「っ!!?」



これでアジトまで一歩なのに。

大型のハイウルフ。ギガンウルフか。


こいつの相手をしないと通してくれそうにないか・・・。



エーイ

「クラッシュインパクトォー!!」



ギガンウルフ吹き飛び正門まで道が開いた。

そして正門には一人の鼠人族がいた。



カズキ

「エーイ!? お前どうして・・・」


エーイ

「へへっカズキの旦那が困ってる聞き及んで参上いたしました」


ビーイ

「いたしました~あ~」


シーイ

「事情はわかりませんが、こいつは僕達に任せて下さい!」



3兄弟全員来てたのか。

なんて奴らだ、俺の為だけにこんなところまで。



カズキ

「・・・すまん、ここは頼んだぞ!」


エーイ

「合点!」



鼠人3兄弟に任せ俺達はアジトへ急行した。

エーイのやつ、成長し過ぎってキャラ変わったのか?


それに比べてビーイは全く変わらずのマイペースで、シーイはさらに逞しくなったように思える。

3兄弟を微笑むばかりだった・・・。






----------------------------------------------------------------------


【幻術闘技場】


あれからどれだけのモンスターを倒しただろうか。

壁に追い詰められてもみんなよく耐えている。


負傷者もしっかりとカバーし死者は出していない。



サナミ

「アニレナ!右!」


アニレナ

「っ!!! くそぉぉ!! ぶっとべぇえ!!」



まずい、アニレナが負傷した。

すぐに駆け寄り回復術技を施す。



アニレナ

「へへっ・・・あんたに休めって言っておいてこのざまとはあたしもまだまだだねー」


サナミ

「しゃべらないで、すぐ頑張ってもらわないといけないんだから」



酷いように聞こえるが、これがアニレナにはいい薬になる。

彼女とは長い付き合いなのだからよく分かっているつもりだ。



クリル

「はっー! 残り全部私がもらうからそのままくたばってくれてていいが?」


アニレナ

「冗談!! もういいよ団長」



相変わらず・・・。

でもこの二人の働きは相当大きい。


どうしても現状帝国兵士は4人で1体を相手出来るかどうか、冒険者達も疲弊が目立つ。

後方部隊も回復などの判断が雑になり始めている。


もってあと・・・1時間か・・・。



シェイン

「お疲れ様でーーす皆様ーいやぁー騎士団の方々は流石ですねぇえー888888、そーーーんな君たぁああーちに、私の素敵素敵素敵素敵素敵素敵なぁあープレゼントです!! オーープン!!」



空から棺が何個も降ってきた。

そして棺の扉がふっくりと開く。



シェイン

「わたくしのー研究テーマナンバー44!ザ不老不死! かっこ生死は問わないかっことじ!!!」



棺の中から人が出てきた。

ゆらりゆらりとこちらに近づいてくる。



「嘘だろ・・・おい!」


「あれってまさか・・・」


「街の人間・・・かよ」



あれが、もしかして襲撃にあった被害者達の遺体を使って!?

どこまでふざけた人間なのシェイン・トルテン!



シェイン

「これえええは試練!!死んだ者は戻らない、帰ってこないのです、だから別れの試練、何度も何度も別れを経験し、別れを克服するのです何度何度何度何度何度何度何度、ね?」



サナミ

「戦いたくない人は下がって!! クリル!アニレナ!」


クリル

「わかってるって、ったく本当に胸糞わりい」


アニレナ

「同感、吐き気がするよ」



二人が相手をしてくれている間に戦意喪失している人達のところへ向った。

あのゾンビ達を彼らと戦わせるわけにはいかない。



アニレナ

「くっ! やってもやっても! きりがない!」


クリル

「再生速度半端じゃねーぞこいつら!」


通常のゾンビよりも再生速度が速いなんてここにきて。

冒険者達や帝国兵士を見てももう戦える人は殆んどいない。


こんな状態であんな物を見せられたらこうなっちゃうのも仕方ない。

私も戦線に加わって早くゾンビを駆除しなくては。



「・・・めろ!」



サナミ

「・・・っ?」



「やぁあめろぉおー!!」


一人の冒険者が飛び出した。

剣を大きく振り被って。


ゾンビ達の群れ? いや違う。



サナミ

「クリル、避けて!!!」


クリル

「何っ!!?」


走り抜けた冒険者はクリルへと斬りかかる。



ガキンッ! ガキンッ!!!



クリル

「てめぇえ!!何しやがる!!」


冒険者

「やめてくれ!!あれは・・・御袋なんだ!!」


サナミ

「そんな・・・」




ガキンッ!!!




クリルは冒険者を難無く吹き飛ばした。

だが彼は立ち上がり一人のゾンビへと駆け寄る。



冒険者

「御袋・・・こんなところにいたんだな・・・やっぱり生きてたんだな」



その姿に私はどうすればいいのか・・・わからないでいた。

ここまで・・・考えていたっていうの。



シェイン

「ああああぁああああああーーー素晴らしき家族家族家族の  愛  美しいいいいいけどお悲しいいいこれは偽り、早く目を覚まさせてあげないと、だって母もういないのだから、早くお別れを、偽りから目を覚ますまでまでお別れをさせてあげるのですぅうさぁああああ!!!」




これが人間。

同じ人間がなせることなのか。


どうしてこんなことを思いつく。

歪んでる、狂ってる、イカれてる、壊れる。



クリル

「サナミ様・・・あいつ・・・ヤルね」



サナミ

「っ・・・!」



クリルがゆっくりと冒険者に近づく。

この状況で出来ることは、それしか・・・ない。




クリル

「一回だけ忠告してやる、退け、それか勝手に死ね」



冒険者

「くぅ・・・ううおぉおー!!!」




迫りくるクリルに耐えかねた冒険者がクリルに襲いかかろうとする。

避けれない、もう駄目だ・・・。




ドゴォオオオオーン!!!




闘技場の中心が爆発した。

一体何が。



シェイン

「おぉおおおおううう!あぁあああ!!! 使徒さまぁああああああー!!」


サナミ

「・・・カズキさん」

















状況把握。

これは幻術で何かしらの条件をクリアしないと出れない。

そんなところか。


右手を開き空高く突き上げる。



カズキ

「マインドリフレッシュ」



術技と同時に闘技場全体に光りの霧が飛び交った。

同時にゾンビ達が動きを止めその場で倒れこんでいく。


思った通り、ゾンビは回復とダメージが逆転するなんていうことがある。

ゲームからの知識だがな。



シェイン

「あぁあ!!お待ちしておりました使徒様! どうぞあなた様ようの試練をご用意しておりますゆへこちr」


カズキ

「黙れ蛾蝶、お前の相手は後だ」



回りを見渡す。

やはり、すぐに気付くような物ではない。


だが1つだけ気になっていた物はある。



カズキ

「あれか?」




頭上を見上げたる、



ライブラリング・アイ。



やはりそうだ、俺はみんなの頭上から降ってきた。

自分から幻術に飛び込んだが、まさかの上空から現れた。


ならば答えは簡単。

出入り口は、上。



カズキ

「あれだ、誰かあのコウモリを!」


アニレナ

「あたしに任せな!! スピニング!ハンマー!!!」



回転するハンマーが上空へと放たれた。

正確な術技だ、まるで吸い込まれるようにしてコウモリへと直撃した。



シェイン

「おおおおおぉぉおぉぉおおおう!!!!」



響き渡る悲鳴と共に空間が歪みだす。

風景も壊れていき、大きな光りが一瞬で全員を元の現実へと引き戻した。




ナザ

「おっしゃ! 流石だぜカズキ!」



こちらではナザを待機させておいた。

最悪こちらがどうする事も出来なくなった時、頼れるのはナザしかいない為だ。



カズキ

「観念しろ、お前の負けだ」



どうやら近い距離で幻術をかけていたようだ。

目の前に元凶がいた。



シェイン

「負け? はてはてはて? 勝ち負けとは一体何が基準なんでしょうかねぇー? 私の勝ちとあぁああああああ!! 神の覚醒ええぇあえええ!!」



シェインの足元が光り始めた大きな揺れが生じる。

まだ何かを隠し持ってたのか。



サナミ

「アニレナ! クリル! みんなを外へ!」



召喚術技か?

今までと比べられないほどのデカさか。



シェイン

「さぁああぁ試練の時です使徒様あぁああ!最大試練!!!デエエエエエエエエモオオオオオオン!!!」



更に揺れが大きくなる。

そして足元からモンスターが現れだすが。



ナザ

「おいおいおい!これじゃあ!」


カズキ

「上の街までいくつもりか」



ここは地下水道。

こんなところでこんな巨大なモンスターを召喚なんてしたら。



シェイン

「さあああああお止めくださあい、使徒様」



モンスターに気を取られてしまいシェインから目を離してしまった。



カズキ

「逃げるのか」


シェイン

「すみませーーーん、ここでの私の目的は終えたので退散んんんんんんということでええどうぞ神を目覚めさせる良き旅を をほをほをほをほをほをほほぉおぉお!!!!」



完全に奴の気配が消えた。

一体何が目的なんだ。


ミツバの覚醒だけじゃない?

それとももっと他の何かが・・・。



ナザ

「カズキ、ヤバい!デーモンが街に出るぞ!」



そうだ、今はやつよりもあれを、牛のような頭をしたデーモンをどうにかしないと。

すぐにポケットにあるポーションをサナミ団長へと投げ渡した。




カズキ

「それしかないですが、いけますか」


サナミ

「ごぐごぐごぐ・・・はぁ、当然!」




俺達3人は瓦礫を飛びデーモンを追う。


ここまでは想定していなかった、まさか巨大なデーモンを召喚し地下水道を破壊し街に解き放つなんて。











レザリア

「あれは一体・・・」


クレエス

「デーモン、召喚術技での召喚物でしょう、カズキ様、ナザ様、ヒトミヤ様が応戦している模様です」


レザリア

「なら、ドトル内の市民を避難させないと!」



ドトル内ではすぐに避難民の誘導をいち早く初めていた。













フェーチス

「なん・・・ですかあれ・・・?」


ニーネ

「フェーチスちゃん!避難急ごう!救護またお願いすると思う」


フェーチス

「はい!私に出来ることならやらせてください!」





騎士団設営本部も移動を開始していた。








ナザ

「グランドバスター!!」


サナミ

「ナイトレイヴォルグ!!」




デーモンが街に現れてから、俺達はとにかくデーモンを攻撃し続けた。

倒すためではなく、ヘイトを俺達に向け守る為だ。



ナザ

「でかすぎだろ流石に」


サナミ

「でもこれが出た場所が大きな公園が不幸中の幸い、ここなら少しは戦いやすい」



だが、こいつを倒すには火力が足りない。

今戦える者はほとんど残っていない。


アジトに行った者達は騎士団と俺とナザ。

街にいる人間は外から来るモンスターを抑えないといけない。



クリル

「はーーっなんだこのデカサ、初めてみるな」


アニレナ

「サイズばかりでかくたって意味ないんだよ!男も女も!」



騎士団の加勢か。

早急な到着は助かる。



アニレナ

「何か作戦でもあんのかい!団長!手枷!」



考えてはいるが、思いついてたらもう実行している。



サナミ

「ある! とにかく今はみんなこいつを止めて!」



なにあるのか?

この状況を打開する方法が。



サナミ

「・・・うん」



団長の顔は本気だ。

闇雲に考えてるわけではないことは間違いない。


だが、一体何がある。

戦力は動かせない、援護があるとしてもそれは明日だ。




デーモン

「ぐおおぁおおお!!!」




デーモンの咆哮が響き渡る。

5人を視界に入れた。



サナミ

「来るよ! ブロック!!」



アニレナ

「おうよ!!」


クリル

「任せて!!」




ガッッギィイン!!!!!!




デーモンの振りかぶる斧を二人が掛かりで受け止める。

受け止めた瞬間、地面がひび割れる。



サナミ

「アタック!!」


ナザ

「グランドバスター!!」



ナザの攻撃は全て顔面へと放たれ直撃している。

だがデーモンは怯むこともない。



サナミ

「ディフェンダーアップ!! ヒーリングミスト!」


カズキ

「ヒーリングケア」



駄目だやはり手が足りない。

確かに騎士団だからこそ持ち堪えている部分はある。


防御は二人係りでないと受け止めきれない、そうなる攻撃力が落ちる。

回復を空けると防御が辛くなる。




ガッッギィイン!!!!!!





アニレナ

「ぐっっそぉぉおお!!!


クリル

「ざけんなぁあああ!」



また一撃が重くなった。

二人も受け止めて立っていられるので精一杯だ。



サナミ

「アタック! 回復の時間を稼いで!」



ナザ

「グランドォオ!! なっ・・・」



攻撃に移るナザの目とデーモンの目が合った。

その瞬間左手で薙ぎ払うようにナザを叩き落した。



サナミ

「ナザ君!!!」



デーモン

「ぐおぉお!!!」



もう一発来る!

タンク二人の回復がまだ追いついていない。



ガッッギィイン!!!!!! ガッッギィイン!!!!!!



アニレナ

「っぐぐぐうぐう!!!!!」


クリル

「こ・・・いつ・・・!」



抵抗できずに吹き飛ばれた。

このままじゃ追撃されて二人は。



カズキ

「っ!!」



悩む前に体が動いていた。


デーモンの顔面へ一気に飛び出す



カズキ

「フリューゲル!」


時間を稼ぐ。

こいつを転倒でもさせれればいい。


俺の全力を振り絞ってでもやり遂げなくては!



カズキ

「フィンガアァアー!!」



両手でデーモンの顔を抑えこむ。



カズキ

「うぅううぅう!!!」



動きは止まっている。

だがそこからは。



カズキ

「倒れろぉお・・・1」



何とか押し倒そうとするが、ぴくりともしない。

もっと、もっと強く、体中の力を右手に集めてもっと。



カズキ

「ぐおぉおお!!!!」



もっと・・・もっと・・・。



アニレナ

「あいつ!馬鹿!!!」


クリル

「逃げろ!!」



呼びかけが耳に入った時には遅かった。

デーモンの左手が俺を捕まえた。



カズキ

「がはぁあ!!!」



ぎちぎちと潰されていく。

抵抗しようにもこの手枷が邪魔だ。



サナミ

「そんなっ! 総攻撃!絶対に助けて!!」



ヘイトを俺から向かせる為に全員動いた。

だが、どの攻撃もデーモンを振り向かせるほどのものではない。


まるで嘲笑うかのようにデーモンは、握った左腕を振り上げた。




サナミ

「やめて・・・やめて!!!!」





掲げられた左腕は、建物へと振り下ろされた。



サナミ

「駄目ぇえええええ!!!!!」

























よく・・・。






寝たか・・・?







デーモン

「っ!!!??」



自ら振り下ろした左手が光りだした。


蒼く・・・。



ナザ

「あの・・・光り」




サナミ

「ごめんね、君に頼っちゃって・・・」」




デーモンは驚き左手を開らいた。

自分の手には先ほど潰した人間がいるはず。


だが潰した人間はそこに立っていた。


胸が光り、何かが飛びだした瞬間、それは人間の両腕の手枷を破壊した。



右手を空へ掲げた。

飛び出された物・・・剣を握りしめた。






カズキ

「おはよう・・・ミツバ」




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