第二二話 静寂閉鎖 スプラクア
水の国スプラクア。
土の国の東に位置する国家、そこはあらゆる争い事がほぼ無い国として多くの者に支持されている。
治安もよく貧困もない。
そんな国にナイクネス王女殿下のユミィーリアが向かうことになった。
もちろんユミィーリアが向かうところにはサナミ率いる騎士団も同行する。
そんな説明を父親であるナイクネス国王のワードンから聞いているとヴェアリアスの面々も向かうような言葉を添えた。
ユミィーリアにまだその意図を理解していなかったが今も各地で役目を果たしているヴェアリアスを収集した。
そこには、カズキと共に苦難を乗り越えた四人の子供達の姿もあった。
一緒に行きたい、その願望を解き放ち子供達はカズキの伸ばした手を取ったのだった。
水の国へ向う、それは決してカズキ達だけではなかった事を現段階でみなわかっていなかった。
【とある辺境の地のダンジョン】
荒野と森林が入り乱れる土地、そこで三人の人間がモンスターと戦っていた。
ヒルメ
「これでーー・・・最後っ!!」
ヒルメの大斧が大型モンスターを吹き飛ばし息の根を止めた。
それみな確認し戦いが終わったのだと肩の力を抜いていた。
チヨー
「ふぅ・・・お疲れ様」
ヒルメ
「えへへへーー」
373
「作戦終了、内容勝利と断定」
全員がほぼ無傷の勝利だった。
チヨーと373がヒルメを援護するという形が彼女達のスタンダードになりつつあった。
始めて会ったのはあのダンズでの騒動、カズキ・スリーエッジと対峙し撤退してからヒルメとチヨーの二人には373が常に同行するようになっていた。
ヒルメ
「いやーー今日も楽チン楽チン」
チヨー
「うん、373のおかげ」
373
「任務を遂行したのみ、二人の力を支援したまで」
相変わらず表情をあまり出さない。
というよりもフードを深くまた被っている為詳しくは見えない。
ヒルメ
「せっかくならそのフード取ればいいーーじゃん、ダメなの?」
373
「・・・・・・・・・、特別指示を受諾していない、却下」
かなり悩んでヒルメの提案は却下された。
それでもヒルメは食い下がるように373に近付き駄々をこねた。
チヨーはそれを止めることはなかった、むしろ考え事をしていた、そこまでの事なのかと。
何か顔を見られたらまずい事がある、そんな事情があるのか。
チヨー
「無理強いはしないけど、誰も居ない時くらいは?」
373
「・・・・・・・・・」
また長く373は悩んだ。
微動だにせず一言も喋らないでいた、二人もこれ以上は駄目かと諦めた時。
スルッ・・・。
373はフードを取った。
やっぱり表情からは何も読み取ることは出来ないでいた。
だがその行動に二人は目を大きくして反応してしまった。
ヒルメ
「やっぱそっちの方がいいーーよーー!」
チヨー
「うん、当分一緒ならこっちの方がいい」
373
「・・・・・・了承、気配を感知しない場合のみ実行する」
ツンッ・・・ツンツンッ・・・。
チヨー ヒルメ
「「おぉーー・・・」」
373
「状況・・・不明」
ヒルメとチヨーは373のほっぺたを突いていた。
373にはその行動が一体何なのか理解が及ばなかった。
二人は単純に好奇心の行動だった、他愛もなければ悪気も無い。
単純に彼女を肌を触れてみたかった、そんな理由しかなかった。
チヨー
「肌・・・意外に奇麗・・・」
ヒルメ
「やっぱずっとフード被ってたからーー? 何かしてるの?」
373
「返答難・・・不明慮な言葉、具体的な言葉を要求」
ヒルメ
「んーー、わかんないから聞いたんだよねーー」
373
「返答不能」
まだ二人は373の肌にこれでもかという勢いで触れていた。
そんな時373が動いた。
それに驚き二人は両手を前に出し謝罪をし始めた。
373
「規定時間経過」
373は懐から何かのジェムを二人に渡した。
赤く光る物だった、鉱石を基に作られた物のようだった。
チヨー
「そっかもう時間か」
ヒルメ
「あーーい、いただきまーーす」
二人は373からジェムを慣れた手つきで受け取り胸に当てた。
ジェムはその瞬間に光りを強めた。
同時にチヨーとヒルメも同じように光りを輝いていた。
373はそれをただ見守っていた、何も言わずに無言で。
チヨー
「んぅ・・・ぁ・・くぅ・・・」
ヒルメ
「はぁ・・・んっ・・ぁあ・・・」
二人の息が荒くなっていた。
それでもジェムを胸から取ることはなくむしろ早く終わらせようと強く当てていた。
ジェムが更に光り二人を包み込んでいく。
最後まで二人は荒い息を口から吐き、言葉にならない物を吐いていた。
これが・・・二人には必要な事、それを理解している。
それを続けなければならない、そう昔に誓ってしまったから・・・。
チヨー
「はぁー・・・ふぅ・・・」
ヒルメ
「あぁぁあーー、今日も効くーー」
二人はジェムを胸から離した。
先ほどまで光っていたジェムはその輝きを失っていた。
何も言わずに373は手を差し出す、それを見た二人は使用済みのジェムを手渡した。
373
「次回時刻は10時間後、再度申告をこちらからする」
ヒルメ
「助かるーー、373がいれば忘れて苦しむことないからねーー」
チヨー
「それはヒーだけ」
ヒルメ
「そだっけ??」
二人は笑みを浮かべていた。
他愛無い会話が楽しかったからだ。
あの戦い、スリーエッジとの戦いからかなり立つが最初の頃は主にヒルメが荒れていた。
次は勝てる、負けたわけじゃない、あいつは絶対にぶっ殺す。
そればかり口にしていた。
久しぶりの敗北にヒルメは悔しい思いが爆発していた、それはチヨーも同じだったがヒルメほど荒れることはなかった。
少しでもヒルメの気持ちがわかってしまったからこそチヨーは力強く止めることも出来なかった。
だがそれをしっかりと引き留め、治めることが出来たのは373だった。
チヨー
「それじゃあ・・・行こう」
ヒルメ
「ういーー!」
373
「了解」
3人は宿へと向かう為に歩み出す。
チヨーとヒルメの二人が前を歩く、その後ろを373が少し距離を置き付いて行く。
これがここ数週間の彼女達の形へと変わっていた。
多くの人間と共闘することはたくさんあった。
けれど、二人は不思議な気持ちでいた、ここまで一緒にいた者はいなかったと。
確かに373は普通な人間とは言い辛い、だがそれがある意味で二人と波長が合ったのかもしれない。
そんな変わってしまった形を自然と受け入れていた自分達がいた。
チヨー
「・・・ヒー」
ヒルメ
「うん、わかってるーー」
373
「・・・?」
前を歩く二人が急に止まり後ろを振り返り373を見る。
優しい笑みを浮かべて。
チヨー ヒルメ
「「ありがとうね、373!」」
373
「・・・・・・」
スルッ・・・。
ヒルメ
「あっ!!! 照れた!! フード被ったもん!」
373
「否定、人間の気配感知、推測では近隣住人」
ヒルメ
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ! 絶対!!!ぜーーーーーったい照れたって!!ねぇ??ねぇねぇぇー!!??」
チヨー
「ヒー、それくらいにしてあげたら?」
ヒルメ
「いやいやいやいやいやいや!! それはないよおぉーーー!!!」
宿までの道のりは、来る時以上に賑やかだった。
二人は勝手に思っていた。
まさか"三人"がこうして笑いながら宿に帰ることが出来るとは・・・と。
・
・
・
コートス
「はい・・・かしこまりました、はい・・・それは問題ありません373が常に付いてます。はい、わかっております」
通信結晶を両手に持ち耳に当てコートスは物腰の低い体勢で会話をしていた。
通信相手の声を出来るだけ外部へと聞こえないようにする配慮。
コートス
「かしこまりました・・・では、『スプラクア』で」
それを最後の言葉に、コートスは通信を切った。
そしていつものように大きなため息を吐いていた。
コートス
「これで・・・、そうだ・・・これで、全て終わるんだ」
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【復興支援村 サンリー】
ケイト ダツ ネーネ ミニア
「「「「すっげぇええええええ!!!!」」」」
レイドラから降りた子供達は口を大きくして驚いていた。
いつもと一緒に旅をしていた身としては変わらない反応に見えたけど、自分が住んでいて自分も発展に関わった村を驚いてくれるのはやっぱり嬉しい物だ。
とは言っても確かに俺自身も驚いてる部分はあった。
少し数カ月留守にしていただけなのにサンリーがとてつもない速度で発展していた。
石で積み上げられた見張り台、しかもただの石ではなくあれは鉱石に似たかなり特別性の物。
あんな物騒な物少なくても俺が村を出た時には確実になかっただろうに・・・。
ナザ
「何突っ立ってんだーー」
フェーチス
「早く行くよーー!」
ナザとフェーチスが村の門の前で手を振り俺含めて子供達に呼びかけた。
すぐにナザとフェーチスのもとへと駆け寄った。
門の前には見知った顔があった。
門番と目があった瞬間。
「帰ってきたぞおおおおーー!!!!」
「子供達も一緒だぁあああ!!! 伝令!!伝令!!!!」
ビクリと俺は子供達と一緒に驚いてしまった。
なんだ一体と身構えてしまった。
ふとナザとフェーチスを見るが二人はただ苦笑いを浮かべていただけだった。
二人の反応を見るに・・・嫌な予感しかしなかった。
「うおおぉおおおお!!! おもてなしだぁああああ!!!」
「野郎共ぉおお宴の時間だ!!」
「「「「「わぁああああああああああ!!!!!」」」」」
村からぞろぞろと人々が押し寄せてきた。
そして何故か行列は道を作りだした。
ダツ
「これってさ・・・歓迎されてるのか?」
ケイト
「た・・・多分・・・」
子供めちゃくちゃ引いてるじゃねーか。
まさか連れてきたのは失敗だったか。
どうしてか拍手喝采が起きていた。
用意でもしていたのか訳の分からない紙吹雪まで散らし始めた。
そして子供達の背中を押して村の中へと足を踏み入れた。
「「「「「ようこそ!!!復興支援の町サンリーへ!!!!」」」」」
カズキ
「・・・・・・はぁ?」
今こいつら今、町って言ったか?
まさか・・・。
ナザ
「あぁー言ってなかったけ?」
フェーチス
「ついこの間かなー? 国に出してた申請が通って町に上がったんだよ」
カズキ
「聞いてねぇーけど」
その村から町へのクラスアップ条件はこの際聞かないが、それでもそれ相応の条件は絶対にあるはずだ。
最低でも人間の数。
しかもそう簡単な数じゃないはずだ、それがたった数カ月でこうまでなるのか。
改めて村、もとい町の中を見る。
基本は俺の覚えているサンリーとさほど変わらないように見えるのだが、目を細め遠くを見るとそれはもはや別世界だった。
俺の知っているサンリーは知らずに発展を遂げていた・・・。
「「「「「さぁ!!みな様ごゆっくりとー!!!!」」」」」
ネーネ
「え・・あ・・・は、はい」
ミニア
「お、お邪魔しまー・・・す」
さっきもそうだったがこいつらまさかこの為だけに練習しただろ。
どんだけ暇なんだよ、そんな村から町に変わるほどの事が起きてるさなかでこんなくだらないことを練習してたのか。
逆にとてつもない恐怖感が湧いてくる。
そんな事で唖然としていると、さらに見知った顔の人間が人の波の中から現れた。
クレエス
「どうも皆さん、初めまして・・・ではありませんね、私は、冒険者ギルドより派遣されています、クレエスと申します。 この町では主にヴェアリアスの秘書兼実務、最近では記録係を押し付けらコホンッ、務めさせて頂いていた者です」
クレエスさんの登場にみなが固まっていた。
しかも今一瞬めちゃくちゃ睨まれた、あれそんなに根に持ってたの?
うわぁ・・・俺後で何されるんだろう、飲み物には細心の注意を払おう。
ケイト
「記録係って・・・」
ダツ
「もしかして・・・!!!」
ネーネ ミニア
「「あの時の記録係さんですか!!!??」」
クレエス
「はい、正確にはダンズの作戦にも通信中央伝令でいたのですが・・・まぁ顔を合わせるのは初めてで間違いないですね」
クレエスさんの登場に子供達は目を輝かせてすぐに近寄っていた。
あの時の思い出話をするように語っていた、感謝の言葉、あの時のアドバイスで今はどうしているなど、子供達はクレエスさんの下で永遠と語れるような勢いでしゃべっていた。
ミュー
「はいはいはいはい!! みんなもう満足しましたよねー!? 解散解散!」
そしてクレエスさんの後ろから犬人族の女性が手を叩きながら人混みをかき分けて現れた。
それ聞いて次々と人々は散るのだが、まだ町民は影ながら子供達を見守っている物達もちらほらと居た。
ミュー
「本当にごめんないねみんな、初めまして、私はミュー。この町の村長の孫で、サンリーの村長代理もさせて貰ってます、今日はみんなの案内役を任されてます! よろしくね」
村長の孫、村長代理。
そして案内役。
色んな言葉を耳にして子供達はもはや驚くことすら出来ないでいた。
ただただ目を点にしてミューの言葉を受け感謝をするしかなかった。
ケイト ダツ ネーネ ミニア
「「「「あ、ありがとうございます!!よろしくお願いします!!」」」」
それでもしっかりと礼儀正しく頭を下げお礼を言っている。
なんだろうこの気持ち。
子供を知人に紹介した時の親の気持ちというやつか、なんか鼻が高い気持ちになる。
ミュー
「それじゃあ・・・、あっ」
カズキ
「ん? ふっ・・・」
目が合ったのでとりあえず笑みを浮かべておいた。
ミューは俺を見て言葉を詰まらせていた。
とは言え、これだけサンリーを大きくしたのは恐らくミューの功績はでかいだろう。
元々彼女には人と人の架け橋になる才能がずば抜けてあった。
俺達が一番最初にサンリーでお世話になっていた時も住民達と俺達の間を取り持ってくれて自然に溶け込ませてくれた。
その才能がまさかここまでサンリーを大きくするなんて、少なくても俺には出来ない。
カズキ
「ミュー!」
ミュー
「は・・・はい!!?」
カズキ
「子供達をよろしく、ミューにお願い出来るなら俺も安心だ」
ミュー
「は・・・は、はい!!! 私も・・・ソウイッテモラエルダケデワタシモウレシイデス」
ネーネ
「・・・・・・っ!?」
何故か急に下を向き始めた。
参ったな、クレエスさんみたいにまた怒られるかの。
実際子供達を任せられるのはミューが一番適任だし・・・当たり前だけど忙しいもんな絶対。
フェーチス
「あはは・・・これは酷いね」
ナザ
「騎士団の人達と学者見習いの子達と町民の人達が湧くわけだ・・・」
クレエス
「最近では国外にも発症していると火の国のトゥトゥー氏より情報を貰ってます」
フェーチス
「あはは最低」
ナザ
「最初は羨ましいなんて思って悪かったよ、うん」
どうしてナザは俺の肩に手をやるんだ。
どうしてフェーチスは笑顔でゴミを見る目をするんだ。
どうしてクレエスさんは大きなため息をつくんだ。
あまり詮索しない方がいいだろう・・・詮索したら何かとてつもない事が起きる気がする。
だから俺は・・・建物の上で俺達を見ている騎士団の連中と学者見習いの子達の方を見るのをやめて正解だった。
ニーネ
「くっ先手を取られてしまったか・・・!!」
ネシー
「撤退!みんな撤退するよー!!」
何故だろう・・・留守にしていた間に一体何があったのか気になるけれど知りたくない自分がいる。
きっと俺が居ない間にサンリーでは、色々あったんだろうな・・・そう納得したのだった。
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【復興支援町サンリー ヴェアリアス本部兼カズキマイハウス 自室】
カズキ
「ぁぁああああ・・・我が家ぁぁ・・・」
到着早々ベッドに倒れた。
改めて俺はこのベッドの心地を味わっていなかったのだろうか。
たしかリベーダムに向かってだったけかな?
違う・・・火の国のジャパニアで起きた小さい騒動からだったか、そこでで調子取り戻してそのままリベーダムに向かって子供達と出会った・・・と。
カズキ
「あぁあぁあ・・・」
オヤジ臭い声を上げてします。
サンリーへ帰ってきた理由など忘れてしまいそうになるくらいに身体から力が抜けていく。
枕に顔を埋める。
つい最近干したばかりなのか、良い匂いがする。
冷静に考えてみれば俺が居ない間は部屋を誰かが掃除していたのか?
でもまぁありがたい限りだ。
おかげでこうして満喫できるのだから・・・。
ユミィーリア
「あのー・・・」
カズキ
「おーユミィ殿下様ーお久しぶりーー」
そろりと顔を出したユミィに対して俺は枕を抱きかかえたまま返事をした。
絶対に王都内でこんな事したら不敬罪で殺されてもおかしくない。
けれどここは俺の部屋だ。
いわばここは俺の国だ、何人足りとも国王である俺を断罪する権利は誰にもない!!!
ユミィーリア
「みんな下で集まってるんですけど・・・・・・」
カズキ
「へぇそうかーー・・・ごめん今この枕の匂いが俺を離さないんだ」
ユミィーリア
「えっ!!? に、匂いですか・・・そそ、そうですか・・なら・・仕方ないです・・・よねぇ~・・・」
また現れた時のようにゆっくりと姿をフェードアウトさせていった。
なんか顔が赤かった気がしたが疲労だろう。
少し心配になる。
だがしかし!!
今の俺にはそれ以上にこの枕という化け物!
そして眠気というモンスター!!
これらが国王である俺に最終決戦を挑んできている。
バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタッ!!!!!
何か下から凄い音が聞こえた気がしたが気にしない。
くっ! なんて強い奴らなんだ!!
こいつら心まで俺を支配するつもりなのか!!
このままでは・・・このままでは・・・!!
カズキ
「負けちゃう~~~・・・」
シュリー
「私が負かしてやるわよぉおおお!!!! 永遠にねぇええー!!!!」
サナミ
「ねぇ!! 何したの!!!ねぇえー!!!何をしたのおぉおー!!!」
うつ伏せになっている俺に飛び蹴りを食らわせそのままゲシゲシと蹴り続けるシュリー。
めちゃくちゃ強い握力で握る潰れるんじゃないかと俺の肩を掴み左右に揺らすサナミさん。
枕は取り上げられ俺への暴力は続く。
まさかこんな簡単にもあの化け物とモンスターを一瞬にして葬るなんて・・・。
シュリー
「死ね!最低!死ね!屑っ!死ね!タラシ!死ね!馬鹿!死ね!死に目!死ね!子供好き!死ね」
サナミ
「もうお願いだからぁああ!!これ以上はもう駄目なのぉお!!!やめてあげてよぉお!!えぇえっぇえんっ!!!」
シュリーのそれただの暴言と悪口じゃんか・・・どうしてそこまで言われなくちゃいけないんだ。
サナミさんに至っては意味不明に泣いてるし。
部屋の外ではナザとフェーチスは大爆笑しているしクレエスは写真撮ってるし・・・写真なんで!!!?
そんな三人の隅からユミィーリア王女殿下が赤面して覗いてるし。
俺の王国は・・・時を短く崩壊したのだった・・・。
・
・
・
【復興支援町サンリー ヴェアリアス本部兼カズキマイハウス 居間】
ユミィーリア
「コホンッ・・・! それではみなさん改めて集まってくれてありがとうございます」
あれから数分ようやく話しが前に進む。
表情を落ち着かせ一人立ち上がって説明をするユミィーリア。
一体誰のせい・・・・・・なんでみんな俺を睨む。
はい俺のせいですねはい・・・。
そんな馬鹿なことを思っているがユミィの話は進んでいた。
クレエスさんがみんなに書類を回した。
全員へ資料が回る事を確認したユミィが再び話し始めた。
ユミィーリア
「こちらは今朝方私が王都でお父様から受けた物をクレエス様に訂正修正をして頂いた物です」
ナザ
「なんだこれ? スプラクア??」
俺も資料に目を通す。
内容は至ってシンプルな物だった。
スプラクアからナイクネスへの招待状だ。
先方の出席者には国族である『陸棚水晶』と呼ばれる王女が出席すると書いている。
シュリー
「あのスプラクアの陸棚水晶『ターゼ・ビズス・スプラクア』ねー・・・随分と珍しい奴が出てきたじゃないの?」
ユミィーリア
「はい、彼女は基本的に公な場には姿を見せないことで有名です。それを町の一大行事の出席者として参加されるなんて前代未聞なんです」
前代未聞か。
噂で少し聞いたことがあったようななかったようなくらいの曖昧の情報しかない。
元々閉鎖的な国なんていう印象しかなかったからか、ふーんとしか感想しか出ない。
資料を読み続けるとそのターゼとか言う王女がうちの王女様に招待状を出したと。
しかも遠まわしに。
直接ユミィを指名するのでは無くさりげなく訪問するのはユミィになるよな書き出しの原文だ。
ナザ
「まぁ・・・くせーな」
サナミ
「うん、これはまだ騎士団全体にも伝えてはないんだ」
フェーチス
「え? じゃあどうして私達が先に??」
フェーチスの疑問はもっともだ。
形はどうあれユミィへの招待状であるんだからナイクネスとスプラクアの問題。
俺達ヴェアリアスがそれに介入する必要性を感じられない。
ユミィーリア
「フェーチスの言う通りです、これは本来私とターゼ王女の問題だと私も最初は思いました。ですがお父様・・・国王陛下がみなさんの事を口にしたのです」
カズキ
「ふーーん・・・あの国王がねぇ」
一度だけ会って色々問題を起こした俺だから言える。
あの人が娘愛しさに俺達みたいなゴロツキを護衛に任命するなんて思えない。
となると・・・。
ナザが言う通り一気に臭くなる。
あのおっかねぇパパがわざわざ俺達をご指名するなんて何か無いわけがない。
ユミィーリア
「ここから先は私もここへ帰ってきてからわかったことなんですが、シュリー様よろしいですか?」
シュリー
「はぁ・・・仕方ないわね」
ユミィーリアが席へと座ったと同じタイミングでシュリーが立ち上がった。
それと一緒にまた新たな資料が配られた。
シュリー
「ユミィの話を聞いて見習いの子達に急いで探らせた物よ」
サナミ
「学者さんの派遣記録?」
レイドラ
「わぁーー凄いいっぱい・・・!」
レイドラと同じ感想を抱いた。
ページ数がとんでもない量だ、めくってもめくっても学者の名前が消えることを知らない。
このとんでもない量を短時間で調べ上げた見習いの子達もすげぇなおい。
シュリー
「ただこの資料を見ただけじゃわからないかもしれないから簡単に説明すると、これのほとんどは偽装、実際にはその派遣先なんて存在しなかったのよ」
カズキ
「・・・・・偽装ねぇ」
よく見るとちょくちょくレ点でチェックが入ってる。
これがシュリーの言う偽装した学者の名前ってことか。
偽装する必要がある、つまりは学者達を正規の手続きで派遣したと思わせる必要があったと。
サナミ
「派遣先の偽装・・・じゃあまさかスプラクアに??」
シュリー
「そうゆうこと。スプラクアにちょくちょく行ってた子達に聞いた話ではそこら中うろうろしてたみたいよ?見たことあるような学者共が・・・それも随分前から」
はぁーあ、キナ臭い匂いが香ばしい犯罪の香りへと大変身だ。
シュリーの話しでは、派遣元である元老院の情報を改ざんした形跡もあったと話す。
情報を改ざん、存在しない派遣先、それが学者の行方を眩ませて、何処にいたかと思えば今まで学者とは縁もゆかりも少ない水の国スプラクア。
これはもう駄目だうん、おしまいだ。
ユミィーリア
「そしてその学者さん達を目撃した町が『セカンエンデ』、私招待された町です」
ナザ
「うぅーわ・・・」
カズキ
「結びついちゃったーーすごーーい」
心の中で拍手を送る。
俺はとてつもない顔をしているだろうと確信している。
元々元老院ではその偽装の事を公にしたくない、したら元老院自体の信用問題に関わるから当然だ。
だけど、放っておくわけにもいかない。
恐らくネシー等にここまで情報提供したのは・・・・・・子供は元気に生まれたかなあの人。
そんで今回踏み込んだことが出来たきっかけはユミィの招待状。
しかもその招待先は元老院で問題視していた町であるセカンエンデ。
こんなの笑いしか出ない。
カズキ
「うん!行かない方がいい、どう考えたって罠だろこれ」
ユミィーリア
「わかってるもーんそんなの・・・・・・ふんっ」
口を尖らせて拗ねてる。
わかってるからこそ騎士団よりも先に俺達に相談をしたというわけか。
変に大事にするよりも先に相談する、成長と言っていいのだろうと勝手に思う。
だがそれとこれとでは話しが別だ。
そんな何がいるかわからん化け物達が口を大きく開けて待ってる所にうちの大将を笑顔でお送りするほど俺も落ちぶれてない。
サナミさんも同じ意見なのだろう、さっきからほぼ黙って資料に目を向けてわざと発言を控えてる。
という事は本当に困ってるのは間違いないか。
改めて資料に目をやる。
すると一番の身落としを俺は口にした。
カズキ
「で、この"一大行事"ってなんだよ、原文の方には書いてないみたいだけど?」
ユミィーリア
「それは私も知りたいところです、しょうもないもてなしでも考えてるんですよきっと」
サナミ
「ユミィ・・・口調」
ユミィーリア
「はっ・・・」
口を押さえて顔を赤くして恥ずかしがってる。
何なんだこの情緒不安定な生き物は。
にしても、不明な一大行事か・・・。
もうそうゆうことはもうこりごりだっての・・・ついこの間ダンズで起きたばかりだぞお前。
みんなが口を紡ぎ出した時だった。
クレエスさんが手を上げ発言を求めた。
もちろん誰も却下する訳も無くクレエスさんは静かに立ち上がり告げた。
クレエス
「確定情報ではありませんが、その一大行事に関するであろう情報があります」
珍しくふわふわしている。
みんながクレエスさんに注目していた。
するととんでもない言葉が、みんなの身体を凍らせたのだった。
クレエス
「生きた人間の生贄です」
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【復興支援サンリー】
ミューさんに連れられて僕達5人はサンリーの町を歩いていた。
見るところ見るところがあまりにも自分達の知識とはかけ離れている物が多かった。
足を進めれば進めるほどにミューさんにこれは何かあれはなんのかと質問攻めしていた。
ミューさんは嫌な顔なんて一切せずに僕達の質問を聞いて答えてくれていた。
そうしてタルシナからここまで大変だったんじゃないかということで一つのお店に立ち寄った。
ネーネ
「ミューさん!! あの、北陸の英雄さんっていらっしゃるんですか!?」
ミュー
「ふぇ!? え??」
またかと僕達は苦笑いをしていた。
ネーネはサンリーに到着してからというものソワソワしていたのは誰の目から見ても明らかだった。
それがようやくと言わんばかりに爆発していた。
ネーネの問に少し悩んだ顔をしてミューさんは答えた。
ミュー
「んーーー・・・いると言えばいるし、いないと言えばいないかなー」
ミニア
「なんですかそれー」
はぐらかされた、という感じではなかった。
ミューさんは優しい笑みを浮かべてその理由を答えてくれた。
ミュー
「なんて言えばいいかなー・・・この町には多分、北陸の英雄って呼ばれる人はいっぱいいるのかなーってこと」
ダツ
「いっぱい?? 何それー?」
ミュー
「私もどう言えばいいかわからないけど、ネーネちゃんが言うその人、きっとこういうと思うんだよね・・・」
息を整えミューさんはその人の真似をしているかのような目つきをし始めた。
ミュー
「俺が英雄なんて呼ばれてるのは、本当の英雄をみんな知らないからだ、真の英雄って言うのは、それを支え続けてくれる村のみんな・・・そしてそのみんなを支えている、キミノコトダトオモウヨォ・・・」
急に最後のところの声量が一気に落ちて聞こえなかった。
というか何で赤面してるんだろうか、ミューさんは僕達に顔を隠すようにして下を向いていた。
ダツ
「ふーーん、なんかあんちゃんみてぇーな人だな」
ケイト
「そうだね、僕もそう思った」
そう、つまりはこの町に住む一人一人が同じように言うのではないかと僕は思った。
一人の英雄なんかよりもみんなで一つの英雄像を作り出した。
もちろんその人が注目の的になると思うけど、きっとそれは自然とそうなってしまっただけだと。
サナミさん、シュリーさん、もしかしたら目の前のミューさんにカズキさんだって。
その可能性があったのかもしれない。
けれどみんなは口を揃えて言うんだ。
自分は英雄なんかじゃない、みんながいたから出来たことなんだと。
ネーネ
「そっか・・・うん! そうですよね!」
ネーネが気を落としたかと思ったらすぐに立ち直っていた。
改めてこの町を見るとみんなが目を輝かして生きているのがわかる。
きっと色々な苦労、僕なんかじゃ想像も出来ないようなことがたくさんあったに違いない。
けれどそれは北陸の英雄のように注目されることはない、けれどみんなは別に構わないんだ。
何故なら、そんな英雄さんがみんなをしっかりと見ていて知っているから。
誰が何を言おうと、世間が注目しなくても、そのたった一人がみてくれていればそれでいいと。
きっとそう思っているのだろう。
それは凄く、カッコいいな。
もちろん僕達にも・・・それは当てはまるんだ。
僕達が思う僕達だけの英雄・・・。
ケイト
「はぁ・・・なんかそう思うと、シスターとマザー元気かなー?」
ネーネ
「私もそれ思った・・・あれから仕送りや手紙は書いてるけど」
ダツ
「それなーー、なんかこう言われちゃうと考えちゃうよなー」
ミニア
「本当よねー・・・マザーもシスターもきっと今も頑張ってるんだろうしねー」
ヘスティア
「アン??」
特別な意味もなくヘスティアの頭をなでた。
そうだ、シスターやマザーにもヘスティアを見てもらいたい。
僕達が頑張ってきたんだと数少ない、胸を張れる事を。
ケイト
「うん! 行こう!」
ミニア
「よーーし! 私達は私達のってことで!」
ネーネ
「里帰り、だね!」
みんなの気持ちは同じだ。
シスター達に会いに行く、僕達がお世話になった孤児院に。
きっと喜んでくれるに違いない、僕達が少し成長した所を見てもらいたいから!
ダツ
「でもさー、どうやって行くよ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ミュー
「ん???」
あまりの唐突な考えに自らが置かれている状況を理解していなかった。
そうだった・・・今は僕達カズキさんの監視下で動くことが前提の冒険者預かりだ。
じゃあカズキさんにお願いして一緒に来てもらう?
それはもちろんカズキさんという素晴らしい方が知り合いということも自慢したいなんて思わない訳がない。
だけど・・・。
ミニア
「絶対無理だよねー、だって用事があるからレイドラさんがカズキさんを迎えに来たんだから」
ネーネ
「うん、多分今もお話し合いしてるんだと思う」
ミュー
「あはは・・・、そこは遠いの?」
ミューさんの質問に僕達は暗い沈黙で答えた。
今ここがナイクネス大陸だと考えると一度リベーダムに戻ってそこから今度はグライブへ向ってそれから更に東に・・・。
改めて僕達は荷馬車も無くよくリベーダムまで行けたものだと関心してしまう。
まぁあの頃はお金はなかったけど、山のような時間があったし僕達だけの旅だったから出来たことだった・・・。
まだまだ自分達は子供であることを自覚させられる。
みんなで大きなため息をついてしまう。
これが世の中難しいことだらけなんだと言われる所以。
僕達なんかじゃ、思い通りになるはずもないか・・・。
ゴドフ
「おおおーーー、お前ら本当に来てたのか」
ケイト
「え・・・? あぁああ!!! ゴドフさん!!」
ダツ
「本当だゴドフのおっちゃん!! 久しぶりじゃん!」
ここへ来て本当の顔見知りと出会えた。
とは言ってもあの時一度ウェイスで顔を合わせただけだったけれど、何故かほっとしていた。
たった一度でも顔見知りの人がいると人間ここまで晴れやかな気持ちになるもんなんだ。
ゴドフ
「どうした? 全員で浮かない顔して、財布でも落としたか?」
ネーネ
「いえ・・・それが・・・」
ミニア
「悩みに悩んでるというか・・・」
僕達はここへ来て多くを見てミューさんの言葉を受けて考えさせられていたことを全てゴドフさんに伝えた。
その間にミューさんが落ち込んでしまったが、これは僕達が気付くことが出来なかった事をミューさんが気付かせたことであるとお伝えした。
するとすぐに笑顔を取り戻してくれて、飲み物を奢ってもらった。
なんか凄く悪い気がしたけど、これ以上言ったら混乱しそうだと思い踏み止まった。
ゴドフ
「なるほどなー・・・お前らも苦労してるんだな」
ケイト
「いやー、それほどでも・・・」
ゴドフさんは全て真剣な顔で聞いてくれた。
間違いなく顔見知りでなかったらここまで話せなかったであろう。
ウェイスで会えて本当によかった。
ゴドフ
「そんな幼い歳でよくもまぁ・・・、なんだが俺が恥ずかしくなるな」
ダツ
「はえ? どゆこと??」
ゴドフ
「聞きたいか? 少し長くなるが? 俺とカズキの奴が初めて会った時の話だ」
みんな息を呑んだ。
ゴドフさんとカズキさんの出会い話・・・。
僕達は好奇心に負けていた、それが自分達の為になるかなんてもちろんわからない。
けど、ここでそれを聞き逃したらいけない気がした。
だから四人全員が首を縦に振りゴドフさんにお願いした。
ゴドフ
「そうだなー・・・、俺の話は丁度お前達がもしこのままいった場合の悪い例にいいだろう・・・」
そうしてゴドフさんは笑いながら僕達に語ってくれたのだった。
自分は元々ジャパニア出身で奥さんと一緒に鍛冶屋を経営していた。
だけどそれはあまりに唐突に崩壊してしまった。
奥さんの死。
それがゴドフさんの人生を狂わせてしまい、僕達の悪い未来の始まりだとゴドフさんは言った。
ゴドフ
「俺はずっと嫁の死を乗り越えることができずに引きずってたんだ、それが招いた結果・・・わかるか?」
ゴドフさんは僕達に問題を出すかのように振ってくれた。
だけど、みな考えるも答えは出せないでいた。
誰かの死・・・それを引きずってしまい招いた結果。
ゴドフ
「単純な話だ、人との繋がりを完全に断つんだよ・・・誰彼構わずな」
ケイト ダツ ネーネ ミニア
「「「「っ!!?」」」」
ゴドフさんの言葉に僕達は言葉を失っていた。
それはあまりにも僕等4人に刺さった言葉だった。
人との繋がり断とうとする、人との関わりを避ける・・・。
それは・・・・・・。
ゴドフ
「・・・・・・・・・、だけどな!!」
ゴドフさんが立ち上がって僕達を見た。
それに反応して僕達はゴドフさんを見上げた。
両手を大きく広げたゴドフさんが一番の笑顔を見せて僕達に言った。
ゴドフ
「そんなの知るか馬鹿って言った奴がいた! さぁー誰だろうな??そんな常識も良識も皆無な奴、普通いると思うか?」
あっ・・・・・・。
ゴドフ
「そいつ、俺に最初なんて言ったと思う?「こんな面したおっさんがこんな綺麗な硬貨袋持つ訳ないだろ」だぞ??」
ミニア
「ふふふっ・・・」
ゴドフ
「おーい!今笑ったのは誰だ!?」
ネーネ
「で、でも! ふふふっゴドフさんが笑わせるのが悪いですよ!」
ゴドフ
「本当に言ったんだぞあの野郎、まぁ口に出したわけじゃないが、絶対に顔にはそう書いてあった」
確かにあの人ならそう言ってもおかしくないし、それを読み取ることが出来てもおかしくない。
間違いなく本当の話だ、疑うつもりなんてなかったけれど確信を持てる。
けれど、それは・・・僕達も同じだ。
そうだ・・・・・・一体何を悩んでいたんだ。
ダツ
「でもその後何があったの!? それだけであんな仲良くなるもんなの??」
ゴドフ
「ふっ、簡単だよ、俺もあいつも単純だったってだけだ」
ゴドフさんが一枚の写真をテーブルに置いた。
それにはゴドフさんと僕達と同じくらいの身長の・・・・・・奥さん??
ゴドフ
「これ見てあいつ「犯罪は良くないぞおっさん」だとよ」
確かに・・・・・・流石に笑うのもカズキさんに同感するのも失礼だと思い僕達は変な顔をして反応を消した。
だけど、ゴドフさんはその写真を見ながらまるで当時を思い出すように優しい目をしていた。
そしてさらに教えてくれた・・・。
ゴドフ
「そんであいつ・・・泣いてくれたんだよ、まるで枯れ果てた俺の荒んだ心に水をやるようにな」
泣いた・・・・・・。
あの人が・・・。
何処までも僕達を先導してくれて、常に僕達を後ろからしっかりと見てくれて・・・凄く強いあの人が・・・。
この写真を見て・・・カズキさんが泣いた。
あのカズキさんがどういった思い出この写真を見たのか、どうゆう気持ちを抱いたのか・・・その涙は一体、どういう意味なのか。
僕には・・・わからない。
けれど・・・もしかしたら・・・もしかしたら同じなのかも知れない。
ゴドフさんの写真を見た時に抱いた事、それは単純な対抗心だった。
僕にも同じように大切な仲間がいる、掛け替えの無い者達が。
ダツ。
ネーネ。
ミニア。
そしてヘスティア。
もし・・・もしも・・・この4人が・・・4人が僕の前から突然いなくなったりしたら・・・・。
ゴドフ
「お前達も同じってことか・・・」
僕達も同じ・・・?
涙を流してるわけではない・・・だけど、もしかしたらその時のカズキさんと同じ顔をしていた。
ゴドフさんはそう言いたいのかもしれない、いやそう言っているんだ。
それは僕だけじゃなくて他の4人も同じだった。
ゴドフ
「少しは役にたったか? つまり、お前達は俺みたいな事にならないようにする為に、どうすればいいかもうわかるな?」
一気に迷いの霧が晴れた。
ゴドフさんはきっとこう言っているんだ。
そんな小さいことで悩んで縮こまるな。
ゴドフ
「今は変に遠慮するな、それが絶対癖になる、それがもっともっと人との距離を遠ざけちまう」
そして最後には塞ぎ込む。
そうなったらもう・・・手を差し伸べてくれる人を待つしかなくなってしまう。
カズキさんのような人を・・・待つだけに・・・!!
ガタンッ!
ガタンッ!
ガタンッ!
ガタンッ!
僕達は一斉に立ち上がった。
それを見たゴドフさんは満足気の表情をしていた。
そうだ・・・また考えてしまっていた。
子供だから、経験が無いから、世の中を知らないから。
そんなのはもう・・・。
ケイト ダツ ネーネ ミニア
「「「「うんざりだ・・・、ですね!!」」」」
ゴドフさんは僕達の言葉に驚いていた。
流石に僕達の口からこの言葉が出るとは思わなかったのだろう。
そうカズキさんがたまに口に出す言葉だ。
あらゆるしがらみがある時に使える言葉、それがどうした、知らない、くだらない、面白くない。
そんな時に使うのかはわからない、けど今の僕達にはこの言葉が一番しっくりきているのは間違いなかった。
みんな顔を見合わせた。
もう今からでもカズキさんの所に乗り込もう。
その勢いがみんなからも感じ取れていた・・・が。
ミュー
「わぁああああぁああああああああああんっ!!!!!」
ミューさんの大号泣。
目線は一瞬で奪われた。
ミュー
「ゴドフざん!!! ごめんなざい!! ただのガラの悪い強面さんなんて思っててごめんなざいでじだぁああ!!!」
それを見て僕達は・・・一気に熱が冷めたかのように冷静になり・・・。
「「「「「あははははははっはははっは!!!!!」」」」」
みんなで笑った。
ゴドフさんも一緒に笑った。
そう、これが僕等だ。
これが一番・・・いいんだ、これを大切にしなくちゃいけないんだ。




