第十七話 入乱思考 フォーサム
展示式典まで 残り3日。
それは多くの者のタイムリミットだった。
一方は街全体を盛大に賑わう為。
一方はこの街を去るまでの時刻。
一方は父の形見を手にする為。
一方は自分達の目的の礎に。
この式典には多くの思惑、陰謀、そして・・・希望が見えれ隠れしている。
それを全て理解している者は・・・誰もいなかった。
【採掘市街ダンズ 市場】
チヨーに付き合い多くの店を見て回った。
私の用事はほぼ終わり丁度チヨーの買い物も無事に終了した。
名残惜しい、もうお別れなのだと思うと寂しいと感じ始める。
チヨー
「それじゃあこれで、本当に感謝する」
ネーネ
「ううん! 私もすっごく楽しかったから!!」
悲しい気持ちは確かにある、だけど私は今もまだ楽しいし最後までこの気持ちを忘れないようにした。
チヨー
「本来なら前回のお礼も返したいのだけど、ごめんなさい待ってる人がいるの」
ネーネ
「お仲間・・・か、そっかなら仕方ないね、私もきっとお腹空かして待ってるみんながいるから」
手に持ってる買い物袋を見せる。
そっか、チヨーも私と同じように待ってる人がいるのか。
考えてみれば当然か、子供一人でここまで来るなんて容易な事じゃない。
チヨー
「遅くなるとうるさいから」
ネーネ
「わかる!! 特に機嫌が悪くなると手が付けられなくなるからねーー」
チヨー
「そう、ネーネも苦労してるんだね」
ネーネ
「あはは・・・」
ここまで一緒に買い物をして感じていたのはそうゆう事だ。
似た者同士。
そんな波長がチヨーと合っていたんだと思う。
人見知りの私が他の3人以外にここまで親しくなれた理由も頷ける。
チヨー
「それじゃあ・・・次に会った時はしっかりとお礼、させてね」
ネーネ
「うん!! きっとまた何処かで会えるよね!!」
チヨー
「うん、約束・・・きっと必ずまた・・・」
私はチヨーの差し出した手を握った。
冷たくて気持ち良い手、すべすべしていてこのまま頬にもっていきたいくらいだ。
こうして私はこの街で出来た初めての友達と別れを告げたのだった。
チヨーが背を向け遠くへ行くのを手を振りながら見送る。
ネーネ
「あ・・・」
気を抜くとすぐに忘れてしまう。
チヨーとの買い物が楽しくてついつい時間を忘れてしまうことが多々あった。
それをチヨーとお別れをしてようやく思い出した。
ネーネ
「はぁ・・・行こう・・・」
渋々と足を動かした。
チヨーとの約束を胸に・・・私は転ばないように走った。
ネーネ
「んっ!!」
買い物袋は死守した。
・
・
・
【採掘市街ダンズ 市場外】
ヒルメ
「こっちな気がするーーー!!」
私の買い物はすでに終わっている。
なのにヒルメに振り回されてるのは、私の買った物なんかよりももっと良い物があるはず、絶対にあると言い張ったのが原因だ。
もう一度言うが、私の買い物は終わっているのだ。
早くネーネと合流したいのだが、このちんちくりんはそれを許してはくれなかった。
訳の分からない口論をこの子とするのは本当に疲れる為無駄に反論出来ないでいた。
ただ良い提案が浮かぶのを疲れ切った脳を回転させて待っていた。
言い包めるのは簡単だけど、ヒルメはそれを忘れいつも訳の分らんことを言い出すからほどんと意味を為さない。
ヒルメ
「あっ・・・」
お店の前で止まりしゃがみ込む。
私も後ろから覗き込む。
そこはアクセサリーショップだった。
見る限り戦いに使えそうな物はない、ただのオシャレ品か。
ヒルメ
「ふわぁあーー・・・」
一つ手に取り色々な角度から見渡す。
水色のピアスだ。
確かにかわいらしい物なのは認めるけど・・・。
ミニア
「あんたならこっちの色違いの淡い緑の方が合うんじゃないの?」
ヒルメ
「んーー? ・・・ふっ!」
淡い緑のピアスと水色のピアスを二つ手を手に取り比べ、鼻で割った。
しかもめちゃくちゃ馬鹿にされた顔で。
殴りたい。
ヒルメ
「確かにそーーですね、ミニアにしては目の付けどころはいいけどーー・・・これは・・・大切な人に似合うと思ったの」
大切な人ねー。
その人も大変だななんて思う、ヒルメの扱い方というのを今ここで伝授してそのまま持ち帰ってほしい限りだ。
でも・・・可愛い顔するじゃない。
まだ一時間も経ってない付き合いだけど、一番女の子らしい顔をしたと思う。
ヒルメ
「おばちゃん! これ一つ!」
「あいよ、銀貨1枚かね」
ヒルメ
「はーーい・・・はーー・・・い? はい?」
あれあれと自分の体中を触る。
私はその姿を見て察した。
地図のみならずお財布すらこいつ忘れてる。
ヒルメ
「あれーー・・・ちょっと待ってねおばちゃん!! えっとぉ・・・」
ミニア
「はい、これ銀貨2枚」
「はい毎度」
銀貨2枚をお店のおばちゃんに渡した。
それと一緒にここから街の大通へはどう行くのか近いか聞いた。
おばちゃんは指差した方向へまっすぐ行けば行けると教えてくれた。
ミニア
「ありがとうーー、ほら行くわよ」
ヒルメ
「え?・・・う、うん」
呆気にとられてるヒルメを余所に私は先に歩く。
チラッと見た後ろを見ると片手に水色のピアス、もう片方には淡い緑のピアス。
それを目を輝かせながら見つめていた。
前も見ないでぶつかるんじゃないかなんて冷や冷やもしたが特にやめるように言うつもりはなかった。
そしておばちゃんが言った通り街の大通へと到着した。
あれから市場からも離れぶっちゃけ私自身も迷子になっていたのである意味では助かった。
ミニア
「ちょっと? ここならいいんじゃないの?」
ヒルメ
「え?ん?あぁーー・・・おぉおお!!」
あほみたいな顔して大通を見た。
なんでそんなに驚いているのか私にはわからないけど、ここが見覚えのある場所だというのは良くわかった。
ミニア
「んじゃあ後は一人で帰れるわね? それじゃあー」
ヒルメ
「えっ!!? ちょっと待ってよ、これのお金!!」
二つのピアスを見せてきた。
さっきまで大事そうに握って見つめていたのに急に何を言うかと思えば。
ヒルメ
「あのーー・・・すぐには返せないと思うけど、つ、次会った時には必ず返すから!! だから覚えておけよ!!!」
とんでもない勘違いを生みそうな捨て台詞を吐き飛び去った・・・。
その場の街行く人々もこぞって空を見上げた。
ふと私はこんなカズキさんみたいに飛ぶことができるなら最初からやれよなんて思いながら消えていった空を見上げた。
ミニア
「もう・・・会いたくはないかな」
たった数十分の付き合いだけでここまで疲れるのだ。
次に会う機会なんて早々無いだろうし、もうこりごりだ。
今後出会うことのないように私は祈りながらも・・・口は笑みを浮かべていたのだった。
それから急いでネーネと合流した。
驚いた事に二人とも息を荒くしながら同時に集合場所に到着した。
お互い謝りながらも、何かあったのだとお互いに察した。
ネーネは凄くうれしそうな顔だった。
それに比べて私は・・・。
ネーネ
「ミニアもなんかいいことあったの?」
ミニア
「ううんーー! 全然、最悪最低、最高に疲れただけ」
ネーネ
「ふふふっそっか、んじゃあ急いで戻ろうか」
ネーネは私の顔を見て笑っていた。
まるで私の意思なんて関係なく・・・決めつけられてしまった。
・
・
・
【とあるダンズの道中】
ふと何かの気配を感じて振り向いて空を見た。
ヒルメ
「チーーーーちゃーーーーーん!!!!」
思った通りヒーだった。
そう言えば一人で出て行ってから今まで何をやっていたのだろう。
久しぶりにこの私がヒーの事忘れていた事にも軽く驚いた。
改めてヒーを見る。
見たところ予定の買い物はしていないみたいだ。
散歩でもしてきたのだろう。
ヒルメ
「チーちゃんチーちゃん!!」
チヨー
「どうしたのチー」
ヒルメ
「いいからいいからーー動かないでねーー」
何か左耳を弄られてる。
チクッと一瞬痛みを感じたがすぐに収まった。
ヒルメ
「出来たーー!」
チヨー
「・・・?」
左耳に違和感がある。
そしてふとヒーを見ると右耳に何かを付けてる。
淡い緑のピアスだ、凄く似合ってると思う。
チヨー
「あっ・・・」
丁度お店のガラスで見え実際に耳に触れてみた。
私にも同じようなピアスが付けられていた。
色は私が好きな水色の・・・。
ヒルメ
「やっぱり私が思った通り!いやーーそれ以上に可愛いよーー!!」
チヨー
「・・・・・・」
何度も触ってします。
依頼や戦いに支障はないだろうし、もしこれが致命傷になる可能性を考慮する。
付けないほうがいい、もしもの最悪の事態を考えたら付けない方が利口だと考えられる。
けど・・・。
チヨー
「ヒー・・・ありがとう」
ヒルメ
「うん!!!! お揃い!!!!」
私達は笑いながら手を握り一緒に宿へと帰る道を歩いた。
チヨー
「買い物は?」
ヒルメ
「出来なかった!!」
チヨー
「そう・・・お疲れ様」
ヒルメ
「うん!!!」
-----------------------------------------------------------------------------
【採掘市街地ダンズ 外周地改め旧ダンズ】
そろそろかと俺は家へと戻った。
教授とシャヌアは・・・。
シャヌア
「そう・・・それがどうしようもなく嬉しくてでも逆に辛いっていうか・・・」
教授
「分かるわ、私の経験じゃ男なんて子供も大人もないんですもの、私達とは価値観が離れ過ぎてるって考えた方が気が楽よ」
シャヌア
「そうですか・・・、やっぱりそうなんですよね、どうしてもこっちが押し付けてるんじゃないかっていつも悩んでしまって」
教授
「いいのよいいのよ、こっち"の"は押しつけてやらないとすぐに訳わかんないことし出すんだから・・・」
話しに花を咲かせるとはまさにこの事か。
カズキ
「押し付けるなら押し付けて貰いたいものだな、何がとは言わないが」
ゴガガァァ!!!!
二人で同時に殴りかからなくてもいいだろうに・・・。
こんな事態になってなければ日常としてこのままからかったりしてやりたいが、残念な事に急は要する。
まず、教授の話ではシャヌアは『ヴァリアーズ』という特変因子を持った真人らしい。
恐らくそれがハイトスが狙っている理由だと推測された。
まさかそんなものがあるのかと驚いていた。
教授の話では特別な変異因子らしく真素などとは全く関係のない力のようだ。
それは基本的には生まれ持った物であるが、時に特殊な状況下ならその因子が発生するとも言われているらしい。
俺風に言えば固有ステータスみたいな物か。
そしてそれがシャヌアには生まれながらにして持っていたという。
呪い・・・彼女はそう呼んでいたようだ。
自分の回りの人間達が次々と不幸になっていく、親も友人もそしてこの街の人々にロエの両親も。
全てがこのヴァリアーズのせいで起きたことだと彼女は話した。
教授
「けど、それは違ったのよ。シャヌアの特変因子の力は呪いなんかじゃなかった、私の予想では恐らく"警告"自分が大事に思った人間が危機に陥っていると知らせる物、シャヌアは不幸が起こる前兆に目眩が起きて一瞬意識を失う、それが彼女の力」
なるほどね、警告を知らせる為の力。
彼女はその前兆がトラウマになり力を呪いだと思い込んでいたわけか。
どれだけ避けようとしても必ずその前兆は起きてしまう、何故ならそれが本当の不幸なのだから。
前兆が起きると人が死ぬ、それを警告と取らずに変えることのできない運命として受け入れてしまう、ある意味では呪いではあるな。
経験が頭に過ぎって必ず人が死んで行くのであるから。
シャヌア
「まさか・・・そんな物なんて夢にも思わなかったよ、警告か・・・ふっおかしな話だな、それを覆そうと奮闘しても変えることは出来なかったのに・・・」
カズキ
「そうでもないさ・・・ここの住人を見てればわかる、あんたがどれだけ頑張ってきたのかなんて」
この辺の町並みは確かに褒められる物ではない、だがそれでもずっとここで踏ん張ってきたのはこいつの力なのは明白だ。
奴ら、あの男達の面を見れば何となくわかる。
無意識の内にきっと自分のヴァリアーズと戦ったのだろう、それに負けたことを多くこいつは語るが・・・きっとそれ以上に勝ち取った物の方が圧倒的なはずだろう。
警告か・・・ある意味で未来予知に近いのかも知れないがな。
教授
「ね? 私が言った通りでしょ?」
シャヌア
「ふふっ・・・えぇ、そうみたいですね、そう考えると今までの言葉が可愛くも思えますよ」
二人が何故か俺を見て笑ってる。
一体何を吹きこんだか知らないし興味もなければ考えたくもない。
カズキ
「とりあえず、色々わかった。 これからの事を話すぞ、寝てる暇なんてないからな」
シャヌア
「わかってるわよ・・・今度こそ若様を助ける」
教授
「すぐにでもそっちに飛んで行きたいわね、私は」
これからだあと3日。
時間は限られてるし少ない。
出来ること、やらなくちゃいけないことは決して少なくない。
だからこそ、俺達はここで手招いてるわけにはいかないんだ。
-------------------------------------------------------------------------
【採掘市街地ダンズ 遺跡研究施設】
リュゼル
「あぁぁぁぁ・・・辛い・・・」
リュゼル先生は相変わらずソファーから動かないでいた。
俺とダツはなんとかネーネとミニアが帰ってくる前に入ることのできるほどのスペースを確保できたのだが、そこから先はあまりにも地獄だった。
入口には多くの書類が壁を作り一歩踏み出したら全てが倒れ、更にそれが他の積み上げていた物を倒しては部屋をさらに窮屈な姿へと変えていった。
買い物組の二人が戻ってきてようやく部屋の中に改めて入った。
書類の湖を掻き分けながら進み危ないであろう物を一カ所に全て避難させてとりあえず書類を端へ端へと追いやり床を見えるようにしていく作業。
二の次にリュゼル先生の捜索。
部屋中の書類から埋もれている先生を見つけ救出。
ご飯を食べさせて蘇生。
そして部屋の整理に戻る。
明らかにゴミだろう物をミニアが買ってきた袋に詰め込み施設のゴミ収集所へと何往復もして運びだした。
そんな事を続けていたら昼も過ぎてしまい日は落ち夕暮れが空の色を変えていたのだった・・・。
ケイト
「ひとまずこれで・・・終わりかなーー」
ダツ
「あぁあー疲れたー」
ネーネ
「本当に・・・」
ミニア
「最悪な一日だわぁ・・・」
みんな綺麗にした地べたに座りこんでします。
先生はというと、相変わらずソファーから動かないでいた。
昨日の遺跡での先生は一体何処に行ってしまわれたのだろうか。
もはや別の人間であるんじゃないかと疑うレベル。
ダツ
「これじゃあ今日卵の究明は無理じゃね?」
リュゼル
「そうでもないさ・・・そこの装置」
だらんとした手で指差す。
それは先日遺跡で見た者とは全く違う物だった。
大きさも、それどころか建付けてある物だ。
似ているとするなら・・・コンロのような物だということ。
リュゼル
「ギフトボイルに近い物だが、検査を主だった目的で使う物だ・・・昨日作った・・・検査対象が対象だけに苦労したよ・・・」
先生の言葉にみな耳を疑った。
昨日。
つまりは僕達と別れてすぐに作ったということなのか。
あれだけの物を一日で作ったというのか・・・その代償として部屋がとてつもないことにはなっていたけど。
ケイト
「早速使えるんですか?」
リュゼル
「あぁ・・・設定は完璧だ、設定は・・・」
含みがある言葉に僕等は恐怖心を覚える。
遺跡の出来事の事を思うと躊躇してしまう。
ダツ
「まぁ・・・ここでこうしててもな」
ミニア
「そうよね・・・」
ネーネ
「うん、やろう」
卵を風呂敷から取り出す、一緒に先生もやっと起き上がりよろりよろりと装置の前に移動する。
先生の指示通りの場所に卵を置き離れる。
装置の起動スイッチを次々と押していく。
僕達は固唾を飲んで見守った。
リュゼル
「それじゃあ・・・いくよ」
先生がレバーに手をかけ装置を起動させた。
「「「「「うわぁっ!!!!?!?」」」」」
物凄い光が部屋中を覆いつくした。
それだけに留まらずに光りは漏れ研究所全体を覆いつくした。
ボフゥゥン・・・!!!
嫌な音と共に光りは消え去った。
そして装置からは白い煙を出していた。
ケイト
「あははは・・・」
苦笑い・・・予想通り・・・なんて思っていたら。
「一体何が起きたぁああ!!!?!??」
「どうした!!!? 大丈夫か!!??」
「機材の暴走だぁあ!!?!?」
「だが今の光りは何処からだ!!?」
「被害報告を優先しろー!!!」
「私実験がぁああああああああ!!!!!!!!」
部屋の外が物凄く騒がしい・・・。
僕達は顔を見合わせゾッとしていた。
リュゼル
「大丈夫、君達は気にしなくてもいい・・・この部屋の様子を見に来る物好きなんてこの施設にはいないからね」
いやー、心配しているのはそこじゃないと思いますが・・・。
明らかにさっきの光りが原因で騒動が起きている。
しかも失敗に終わってるなんてこれから先が不安しかない。
僕達はこの状況に腰を引かせている中、先生は一人黙々と装置触っていた。
ネーネ
「せ、先生これ以上は流石に」
ケイト
「そ、そうですよ・・・何もそこまでやらなくても」
ダツ
「うんうんうんうん」
ミニア
「私達式典前に追い出されちゃいますよ・・・」
リュゼル
「ん? 何をそんなに縮こまってる? まるで失敗したみたいな顔で」
「「「「えぇ・・・?」」」」
先生の言葉に苦い顔しか出来なかった。
もしかして・・・失敗じゃなくて成功している・・・と?
リュゼル
「全て予定通りさ、問題はない」
まさか・・・この人・・・!?
ケイト
「あの・・・予定通りというのは、この騒動も?」
リュゼル
「あぁ、そうだが?」
いつものように気だるそう猫背で言う。
リュゼル
「こんな物を調べるんだ、割り振りされた電力や真素なんかじゃあ足りるわけないからね、装置だって何度も使うわけではないしね」
さらっととんでもないことを言っているし。
やっぱり僕達は何か、とんでもない過ちを犯しているのではないかと震えていた。
けれど先生は本当に外の事も僕達の事も気にせずに作業を進めていた。
ネーネ
「ねぇーやっぱり・・・」
ミニア
「駄目、ここで起きた事は知らない、私達は知らないいいね?」
ダツ
「賛同」
ケイト
「うん」
僕達は・・・悪い事をしている。
けれどそれは・・・卵を守る為・・・うんそうゆうことにしよう。
これで罪悪感は・・・消えるわけもない。
とは言えここでじっとしていてもしょうがないと思いリュゼル先生のもとに行って装置を見てみる。
リュゼル
「ふむ・・・なるほど・・・これは色々と大変だな」
何かを装置から取り出し確認していた。
結晶石・・・?
ケイト
「それってなんの結晶石ですか?」
リュゼル
「記録用の物、その卵の情報の入った非常に大切なもの」
情報。
つまりさっきの光りはあの卵からじゃなくてこの装置から出た物だったのか。
リュゼル
「この装置はただの大きな計測機、検査と言っただろう?読み取った情報、卵に関する事がわかる物がこれに入ってるということだ」
先生はその結晶石をまた別の装置の水の入れ物に入れた。
少し身構えてしまったがその装置が気になって目を奪われていた、主に下に付いている大きな紙の巻物に。
リュゼル
「それじゃあ、いくぞ」
先生が装置のボタンを押した瞬間に巻物が高速で回転し始めた。
そしてその紙が物凄い勢いで飛び出してきた。
ケイト
「いぃいぃいいいい!!?!?!?!?」
ダツ
「何だこrぶわぁああああ!!!!」
ネーネ
「きゃあぁああああああああー」
ミニア
「うわぁああぁあああああああああ」
なるほど・・・これが紙に溺れて埋まるというやつか。
先生はいつも僕達を沢山驚かしてくれる。
沢山の経験を・・・沢山させて・・くれ・・・る。
・
・
・
それからという物、日は完全に落ちていた。
俺達は何とか手分けをしてとてつもなく長い紙を上手くまとめていた。
ミニア
「ふむふむ・・・」
ミニアは紙に書かれてる文字を読んでた。
先生曰く古代文字に近い物だそうだ、これを出した本人もそこまで詳しくないらしい。
結晶石はなんか読み取れる物を読み取るだけだからであって俺達の知ってる言語に変換はしてくれないらしい。
上手く俺とケイトで紙を引っ張り丸めていた。
ようは装置についていたド太い紙の巻物状態に戻しているということだ。
あまりにでかくて下手に力を入れるとすぐに切れる。
もちろん変えなんて無いので物凄く俺達は慎重にやっていた。
ネーネ
「ご飯出来たよー」
ケイト ダツ
「「止まれーー!!!!」」
入口から入ってくるネーネを静止させる。
何とか止まってくれてホッとしていると。
リュゼル
「あぁーありがとう貰うよ」
ビリッ・・・。
ケイト ダツ
「「せんんん!!!!せぇええええええええ!!!!!」」
僕達は結局この部屋で先生と一緒に徹夜をすることになったのだった・・・。
-------------------------------------------------------------------------
【採掘市街ダンズ 警護団体本部】
ドーンツ
「へっそんなくだらないことを言いにここまで来たのかよ」
コートス
「優先順位1位の彼の安否が一番、それはあなた方の上の者もそう思っているでしょ?」
僕は一人この警護団体本部に来ていた。
内容のすり合わせが大事なのだと思うのに全く聞く耳を持ってくれない。
ロエ君・・・だったか、彼の安否はこちらとしても一番心配することではある。
最悪の場合スリーエッジ一人がここに乗り込んできて壊滅させて彼を奪還してくるなんてことも考えられる。
ドーンツ
「へっくだんね、もしあの生け好かない死んだ魚目野郎が来てもこっちは数でどうにかなるっての」
数・・・部下の数で押し切れるなら苦労はしない。
もっともそんな事で解決できるなら是非とも今すぐにスリーエッジの居場所に赴いて討伐でもなんでもして欲しいくらいだ。
そんな事を考えていると僕の通信結晶が通信を知らせてきた。
コートス
「それではドーンツさん、また明日来ますのでそれまでに人員配置の件お願いしますね」
ドーンツ
「はっ、覚えてはおいてやるよ」
不安しかないが、今はここの警護団体の力が少しでも役に立つことを願うばかりだ。
そして僕は来た通信に応答する。
コートス
「はい・・・はい、何とか大丈夫かと・・・えぇ」
通信相手はいつもの依頼主だ。
今回の状況確認をしにきたのだろう。
ロエ君の安否・・・それから・・・。
コートス
「はい、予定通り彼に例の装置を取り付けてはいます・・・はい、きっとそれで結果が出るでしょう・・・ちなみに彼はその後・・・はいわかりました、聞いていた通りということですね、それでは・・・」
通信が終わった。
罪悪感がないわけではない・・・、けれどこれも一つの結果だ。
不運だったんだ彼は・・・そう思おう。
いつもそうしてきた・・・そう思うようにして気持ちを殺してきた。
今回もまたそれをただ積み重ねるだけだ・・・。
ドーンツ
「装置・・・ねぇー? 俺の知らねーことだなぁー???」
盗み聞きしたドーンツは、すぐにある場所へ向った。
向かう場所は・・・それは、ロエが捉えられてる牢屋だった・・・。
---------------------------------------------------------------------------
【採掘市街地ダンズ 旧ダンズ跡地】
俺は通話していた。
約二日ぶりのみんなの声を聞いていた。
カズキ
「あぁ・・・本当に連絡出来なくてごめんな」
ケイト
「いえ! お仕事お忙しいのであれば仕方ないですよ」
ダツ
「そうだぜ!! こっちはなんも心配ないからよー!」
ネーネ
「そうですよ! 物凄くいっぱい・・・いっぱいお話ししたいことあるんですから!楽しみにしていて下さいね!!」
元気な声が聞こえてつい顔がにやけてしまう。
それにしても本当に何か嬉しい事があったんだな、てっきりクエストをみんなでやっているんだとばかり思っていた。
これはネーネの言う通り帰りの道中は楽しめそうだ。
カズキ
「あれ、ミニアはいるのかい?」
ミニア
「あっ!!! いますよー!!! 元気にしてますよーー!!!」
遅れて声が聞こえた。
また勉強しているのか、勉強熱心で頑張ってるんだな。
それにしても、たた二日会わないで声を聞く事がこんなにも高揚する物なんて思いもしなかった。
また、この子達に力を分けてもらった、ということなのだろう。
カズキ
「それじゃあ、切るね。夜更かしだけはしないようにね、ろくな大人にならないからな」
リュゼル
「うっ・・・」
「「「「はぁーーーーーい!!!!」」」」
通話を切った。
なんか最後に子供達とは別な声が聞こえた気がしたがまぁいい。
あの子達が選んだ人間なら・・・まぁ大丈夫だろう。
シャヌア
「へぇーー・・・そんな人間みたいな顔もちゃんと出来るんだ」
カズキ
「何だ? 茶化しにきたのか? それとも羨ましいのか?」
シャヌア
「羨ましいか・・・確かにそうなのかもな」
空を見上げていた。
俺も一緒に空を見上げてみる。
シャヌア
「なぁ・・・あんたん所の子達、この戦いが終わったら若様と会わせてやれねぇーか?」
カズキ
「唐突だな・・・まぁ何考えてるかわかるけど・・・。別にいいよ、あの子達はそっちのガキと違ってお利口だからな」
シャヌア
「女の子ならまだしも男の子じゃあ勝負にならないだろうなー」
カズキ
「無いな・・・あの二人はほどなわけがないさ」
空を見上げる・・・綺麗な星が多く見える。
沢山輝いてる。
シャヌアもきっと見ているのだろう。
だから思ったんだ。
子供にはあの星々のように常に輝いていて欲しい。
時には泣いたり、苦しんだり、溜め込んだりすることがいっぱいあって輝けない時の方が多いかも知れない。
それでも、俺達大人は勝手なんだ。
何故なら、その輝きが俺達を大人を照らしてくれる。
荒んだ心を照らしてくれるから、大人は子供を見守るんだ。
シャヌア
「もっと・・・頑張るよ私」
カズキ
「あぁ、お互い・・・な」
輝いてもらう為に・・・輝き続けて欲しいと願う為に・・・。
--------------------------------------------------------------------------
ブレレント博物館の式典まで残り 2日
【採掘市街地ダンズ 研究施設】
ミニア
「ん・・・? 朝・・・」
目を擦りながら目を覚ます。
周りを見ると昨日自分書いた紙が散らばっていた。
そうか、文字の解読をしながら寝てしまっていたのか・・・。
ネーネ
「おはよーミニアー、ほっぺ凄い事になってるよ?」
ミニア
「ふあぁあー・・・ほっぺ?」
窓のガラスを覗いて自分の顔を見る。
ネーネの言う通りほっぺにはインクが付いていた。
強く擦って取った。
そして改めて自分の寝ていたところ惨状を見た。
これじゃあリュゼル先生を馬鹿に出来ないな。
ダツ
「飯飯ーー!!」
どうやら最後に起きたのは私だったみたいだ。
思えばみんなが寝た後も少し調べてた事を思い出した。
カズキさんの約束を少し破ってしまった、ろくな大人にならないとは言ってたけど・・・。
リュゼル
「ん? どうした?」
ミニア
「いえ・・・別に」
気を付けよう、本当に気を付けよう。
まさか今日ここにいる人の中で一番最後に起きたのは私。
つまりは・・・・・・気を付けよう。
そうこうしている内にネーネ達が食事を部屋に持ち込んできて朝食が始まった。
なんだかいつも以上に力が入らない、というか食欲が出ない。
これがろくな大人にならない一歩手前なのか・・・。
リュゼル
「だから何故・・・私を見る?」
ミニア
「いえ・・・先生は素敵な人だと思うなー・・・って」
リュゼル
「・・・?」
四の五の言わずに朝食をいつものように平らげた。
そうだ、これからはしっかりと気を付ければ大丈夫!
大丈夫・・・。
食事はしっかりと食べる!
そう決意していた。
それから改めて文字の解析を進めている。
みんなはみんなで色々とやっていた。
ケイトはリュゼル先生に許可を貰って植物やモンスターに関する本を見ている。
ダツは部屋の端で筋トレ。
ネーネはみんなに飲み物を渡したり改めて部屋の掃除や資料の片づけをしていた。
リュゼル先生は・・・・・・この解析紙にはあまり触れずに何かの装置を眺めている。
それは昨日からずっとである。
私が出てきた文字の解析をすると言ってから先生は先生で調べてみると言いそれっきしだった。
ダツ
「んで・・・なんかわかったのかミニア?」
難しいことを平気で言うな相変わらず。
ミニア
「って言われてもわかってるのは、私達が見たあれがすっごく昔って事と・・・この卵が先生の言う通りすっごく特別な真素で形成されたってこと」
ダツ
「ふーーーーん・・・」
ふーんじゃないわよ、殴るわよ本当に。
でも確かにこれには時間がとにかく必要だと改めて思う。
私の両親が残した本と照らし合わせながらやってるからとにかく時間が足りない。
ネーネ
「リュゼル先生の方はどうなんですか?」
ネーネの言葉にみなの目線が移る。
先生は昨日から机に肩肘を乗せた、ぽっぺに手の跡が出来ているのなんてお構いなしにずっと同じ体勢だった。
リュゼル
「そうだね・・・わからないっていうのが感想で・・・私の憶測は・・・」
先生の言葉にみな耳を傾けた。
目を見開き固唾を飲んだ。
リュゼル
「凄い元気だってことだ、君達に似てね。凄く今すぐにでも生まれたいって気迫があると思うよ」
「「「「・・・・・・」」」」
先生の言葉にみな沈黙した。
興味がないわけじゃないが、もっと別な事を期待し過ぎてしまっていた。
たとえば、この子は何とかの種類のモンスターで何が出来て何が得意でとか、どうやれば生まれることが出来るのかとか・・・。
リュゼル
「期待させて悪かったね、私の力なんて所詮その程度だということだ笑ってくれて構わん」
そんな事言うが、私にはそれすらもわからなかったのだから笑うことなんてできない。
そういった些細な事がきっと今後大事になってくる。
今後というのもまずはこの子を卵から孵らせないといけないんだけど・・・。
リュゼル
「あとは、同じような力をぶつければそれが起源になって生まれると思うよ」
「「「「はえぇえええーー!!?!?!!?」」」」
こんなやり取りをいつもしている気がする・・・なんてふと思ってしまった。
みなで先生の机の前に説明を受けようとへばり付いた。
それを見て先生は不思議そうな顔をしていた。
けれどそんな事はお構いなく説明のお願いをみんなでした。
リュゼル
「君達も見ただろ? あのダンジョン最深部でその子が光り輝いたのを、思い出して欲しいがあれはギフトボイルの効果だ、つまり活性化、だけど結果はどうだったかな?」
ケイト
「んーーっと光っただけ」
リュゼル
「そう・・・活性化の為の真素が全く足らなかったのと装置からの真素の共有量が少なかった事がわかった」
ダツ
「それじゃあまた同じようにやれば生まれるってこと?」
リュゼル
「そうゆう訳じゃない、ここで問題なのは、光らせることには成功させたが、最深部の場所を使ってでも光らせることしか出来なかったということになる」
ネーネ
「光らせることには成功・・・? 光らせることしか・・・?」
先生の言葉が・・・私の頭でも理解できた。
ミニア
「そっか・・・! ギフトはどうして何処もダンジョンの奥地、最深部で発生するのか? それは真素が一番特別濃い場所だからなのか」
リュゼル
「そうゆうことだ、つまり人為的に作らない限りあそこが世界で一番の真素が溢れている場所とされている」
ミニア
「だけど・・・それが問題・・・、そんな世界で一番の場所でも孵らせることが出来なかったなら・・・」
それ以上の真素・・・つまりは・・・。
ミニア
「更なるギフト!!!」
リュゼル
「そう、ギフトに含まれた真素を食べさせるのが恐らく近道だろうと思うよ」
「「「「うおおぉおおおおおおおおおぉおお!!!!!」」」」
みんなで歓声を上げた。
まさか・・・まさかそんな事だったんだ。
この子を・・・孵せる!!!
リュゼル
「君達とも真素で繋がっているようだし、危ないと思ったら即座に止めさせればいいってことだけ気を付ければいいさ」
ダツ
「やっぱ繋がってんの!!?」
そんな気はしていた、というか確証はあっただろうに。
リュゼル
「だがまぁ・・・あとはそのギフトをどうすればいいのかが問題だが・・・・・・ふっ2日後にある式典の展示品でも食べさせれば一発かもね」
ケイト
「いやぁそれは流石に・・・」
リュゼル
「何を勘違いしている? 別に物その物を盗む必要はない、ただただその中身、真素を拝借すればいいだけなんだから」
この人こそ一体何を勘違いされているんだ。
その財布は盗んでないよ中身だけだよ理論は。
立派な犯罪だ。
リュゼル
「まぁ・・・後は君達の問題だ、私がこれ以上何か出来るとは思えないが
ね」
「「「「ありがとうございます」」」」
私達はみんなで頭を下げ感謝した。
これだけじゃ感謝をし切れないくらいに感謝した。
これが本当なら、孵す目途がようやくついたのだから。
この子を手にしてからわかる範囲で色々試したがうんともすんとも言わなかった。
ケイト
「やっぱり先生に頼んでよかったです!! 最初は酷いなんて思ってましたけど!!」
ネーネ
「うん! 凄く頼りになります!! だらしない人だと思いましたけど!!」
ダツ
「めちゃくちゃカッコいいじゃん!!! めちゃくちゃダサかったけど!!」
ミニア
「すっごく勉強になりました!! こんな大人にならないようにしないとって考えてましたけど!!!」
リュゼル
「尊敬したいのか貶したいのかはっきりしてほしいのだが・・・」
「「「「「あははははははははははははっははっは!!!!!」」」」」
みんなで笑い合った。
またこうやってみんなで笑い合えた事に感銘を受けてしまった。
ミニア
「先生!! 明日までここで解析していていいですか!!?」
ケイト
「この本とかまだ見ててもいいですか!!?」
ネーネ
「感謝のお礼にご飯作れます!!!」
ダツ
「俺は!!! 俺は・・・いつでも運んでやるよ!!!!」
リュゼル
「・・・・・・ふっ、いいよ、好きに使いなさい」
「「「「やったぁあああーー!!!!」」」」
こうして後2日までの予定が決まった。
卵を孵すのは恐らくこの街を出てからになるだろう、カズキさんにも相談しなくてはいけない。
それまでに私はこの文字の解析をして、いざ生まれた時の事をほんの少しでも理解しておかなくては!!
私はよしっと意気込み改めて巨大な巻物と対峙するのであった・・・。
これも全部リュゼル先生のおかげだ・・・!!
リュゼル
「・・・・・・・・・」
子供達の姿を見て、一人目を瞑り唇を噛み締めた。
その事に・・・子供達は気付くことは、なかった・・・。
-------------------------------------------------------------------------
日は流れ・・・式典までの日付は、誰が何を言おうと止めることは出来ない。
ブレレント博物館の式典まで残り 1日
その式典が始まるまでのカウントダウン。
各々は意気込んでいた。
これから起こることを脳内でイメージしながら。
ただ自らの願いを想いに乗せて・・・。
シャヌア
「・・・必ず若様を」
ドーンツ
「へっ楽しくなりそうじゃねーか・・・」
ロエ
「シャヌア・・・」
コートス
「どうか・・・無事でいてくれ」
ヒルメ
「チーちゃん・・・」
チヨー
「ヒー・・・」
黒ローブ
「スリーエッジ・・・」
ケイト ダツ ネーネ ミニア
「明日・・・ここを出る・・・のか・・・」
リュゼル
「・・・・・・」
カズキ
「はぁ・・・干し肉切らした・・・」




