第十五話 不変真素 ジーンテルマス
ブレレント博物館の展示式典まであと4日。
そんな大事な日を前にロエは誘拐されてしまった。
敵はアンリバンデット、ロエを取り戻すには指定した時間と場所にとある物を持ってくることだった。
カズキは最初に犯人だと疑われるも誤解を解き考えていた。
敵の目的。
そしてアンリバンデットの裏に暗躍しているものを・・・。
四人の子供達はリュゼルの遺跡調査の手伝いとしてダンズの外へと出ていた。
リュゼルからギフトボイルの件を聞きながら遺跡の奥へと向かっていった。
本来ならモンスターもほぼ居ない予定だったのだが、次々と襲撃にあい・・・最後には、大型のモンスターと対峙するはめになってしまった。
【採掘市街地ダンズ 外周地】
教授
「ギフト使用者の制限?」
俺は教授に連絡を取っていた。
内容は、ギフトを利用する際の規約のようなものがあるのか、というものだ。
俺の仮設・・・ギフトには条件、ルールのような物が実話あるのではないか・・・。
カズキ
「たとえば、ギフトの力を最大限利用するには、そのギフト取得者が自ら使わないといけない、なんていう制限だ」
教授
「確かにそういった話しは良く耳にするわ、基本的にギフトは取得者・・・ギフトを生成した人間の真素を取り込み形成する、ギフトをもし最大限利用するなんて話ならその生成者が使うのが普通とは思うけど」
珍しく言葉を詰まらせている。
恐らくこんな事こいつには十数年前に解明しているようなものだろうしな。
教授
「何が言いたいのかわからないわね、生成者以外がそのギフトを使用しても制限が掛かるなんて気が付かないレベルよ、それにギフトの最大限・・・リミッターを外しての実験なんて計測も何も無いわ」
カズキ
「別に問題はリミッターを外すどうこうじゃないんだ、問題は・・・」
やっぱり現代の技術だと計測は不可能。
教授がそう言っているなら間違いないのだろうが、俺が聞きたいのは・・・。
カズキ
「問題は・・・その生成者には"家族"が含まれるのかということだ」
教授
「っ・・・!? つまりは血縁関係ってこと?」
そう、俺が知りたいのはそこだ。
仮にギフトのリミッターを外した力を横奪できたとして、それを完全に使用、再現するには何かしらの条件が必要なんではないか。
子供達がギフトを手にしてから少し噂を聞くようにした。
ギフトの物自体にはその生成者の力が入り込んでいる可能性が非常に高いこと。
あの四人が各自の武器を新たに形成、元の形を維持して生成されたのは偶然では無くこれに当てはまるから。
他の人の話でもそうだ、もし生成されたギフトが自分に合う物ではない場合最悪手放すなんて言う可能性もある。
だが、そんな話は聞いたことがない。
教授
「そうね・・・あんたの言う通りよ、可能だと思うわ」
ここから先はギフト、というよりも人間一人一人にある真素に関する話しになる。
教授
「人には種族関係なく真素が流れているのはわかるわね? そのパターンはもちろん人によって違う、同じ人間なんていない。 けれど・・・」
カズキ
「家族・・・自分の親や子供となると話しが変わる・・・か?」
教授
「そう、もちろん微々たる物と言う人も多くはいるけど、顔が似ている、血液の遺伝子パターンが似ている、そう言ったのは全て根底に真素が絡んでいるからとされているわ」
カズキ
「真素が先に分け与えられてから、人間の血や肉を形成している?」
教授
「平たく言えばそうね、そう考えればギフトも似たような物なのかもね」
自らの真素を分け与えてから別の物を生成する。
子供が作られる工程と同じようにギフトが生成される可能性がある。
カズキ
「つまりは・・・」
教授
「答えは、肯定・・・。仮説ではあるけど、自分の真素に近い人間、親子くらい近ければあんたの言うものは・・・・・・まさか」
ようやく気が付いてくれたみたいだ。
ロエが誘拐された理由は十中八九それだろう。
だが、それだけではきっとない。
カズキ
「恐らく奴らがそれに気が付いたのはつい最近だろう、話せば長くなるが確実だ」
教授
「・・・・・・横奪、複製、集約、リミッターの解除・・・それらに必要な条件・・・人の真素『ジーンテルマス』か」
またもや聞いたことの無い言葉。
だが何だ? 教授が妙な雰囲気を醸し出したが。
教授
「だとしたら、計測が必要になる。各ギフトの真素からジーンテルマスを探知する技術、そこから導き出した真素を一人一人当てはめる・・・いや、不要か生成者のジーンテルマスを採取する? 条件がまだ不明慮、物体に宿る真素の質量を鑑みるに・・・」
カズキ
「・・・ぇ?」
完全に自分の世界に入ったなこいつ・・・。
まぁいいや、折り紙付きの情報もらえれば問題ない。
俺はそっと端末の通信を切った。
カズキ
「ふぅ・・・となると」
敵がロエを誘拐した理由はロエの真素、正確にはロエの真素にある血縁データ。
ギフトを生成した際に使われたジーンテルマス。
これが目的ということか。
これだけ知れれば十分だ。
恐らく奴らはロエを殺すことは恐らく無いのがわかった。
これをシャヌア・・・いや、教えたところで話しが通じるとは思えない。
だがこの仮説が正しければ、奴ら・・・。
ハイトスが裏にいる可能性が高まった。
「あぁ!! あんたぁー!! おぉーーい!!」
丁度頭の中が整理出来た時だった。
一人の男が、俺に手を振りながら声をかけてきた。
その男の様子は・・・あまりよろしい物ではないと、すぐに察した。
「シャヌアさんが・・・!! ひ、一人で!!!」
カズキ
「・・・ちっ」
--------------------------------------------------------------------------
【採掘市街ダンズ付近 遺跡】
ブアァアアアアアアアァアアアアアアアアアァアアア!!!!!!
ケイト
「くぅぅ!!!」
ネーネ
「ケイト!!一回下がって回復を!!」
岩の大型のモンスター。
本体から6本の岩の触手のような物が生えてる。
さっきからケイトとダツの攻撃が全てその岩触手で防がれてしまっている。
私達後衛の術技でもダメージが通ってるようにも感じない。
ダツ
「くっそぉ! こいつの攻撃自体はおせぇから何とかできっけど・・・」
ミニア
「私の強化術技でもう一回お願いできるダツ!?」
ミニアがダツにスパイカーアップで強化向上させる。
すぐさまダツはモンスターの凄きを掻い潜る攻撃を仕掛ける。
ダツ
「アイアンフィストォオー!!!」
モンスターの本体にダツの術技が届いた・・・。
ブアァアアアアアアアァアアアアアアアアアァアアア!!!!!!
ダツ
「ちっくしょ・・・!!」
ケイト
「ダツ!!」
ダツはすぐに距離を離しケイトはその間に入り触手攻撃を防ぐ。
重い一撃、ケイトは耐えてはいるが、こちらの決定打を与えられない中であの攻撃が続いては・・・。
ブアァアアアアアアアァアアアアアアアアアァアアア!!!!!!
また大きな咆哮。
けど、今回は違う・・・本体の口の空間が歪む・・・。
あれは・・・遠距離攻撃!!
ネーネ
「みんな集まって!! ライトバインド!!」
みんなに号令をかけ私はモンスター目掛けて拘束術技を放つ。
少しでも相手の術技の発動さえ遅らせれば・・・それが狙い。
ミニア
「相殺! いいね!」
ネーネ
「うん!!」
ミニアと一緒に術技を準備する。
ブアァアアアアアアアァアアアアアアアアアァアアア!!!!!!
雄叫びと共に辺りの岩が一つに集約し更に大きな岩を作り出した。
ダツ
「来るぞ!!」
巨大な岩は私達目掛けて発射される。
ケイト
「ディフェンドプロテクション!!!」
ネーネ
「タイダルンショット!!」
ミニア
「エアァアショットォオー!!!」
ケイトの光りの盾で岩の動きが抑え込まれてその好きに私達の術技が岩へと直撃し破壊した。
あんな攻撃くらったら元も子もない。
すぐさま私はケイトに治癒術技をかける。
ここまで押されるのも久しぶり、そんな事を考えてしまう。
それもそうだ・・・今は・・・カズキさんが・・・。
ネーネ
(ううん! 今は考えちゃだめ・・・! まだ負けたわけでもない!)
しっかりと敵を見極める。
まだこちらには奥の手のエレメタルキーがある。
奥の手を確実な物にする為に、敵をまず見極めるのが先決。
ケイト
「ダツ、同時に行こう・・・同じ場所に攻撃だ」
ダツ
「・・・・・・わかった、合わせる援護頼むぞ」
ネーネ ミニア
「「うんっ!!」
意を決しみな所定の位置に動き出す。
ケイトとダツは左右に展開。
私とミニアで攻撃し二人が仕掛けるまでの時間を稼ぐ為にモンスターの注意を引き付ける。
ネーネ
「ぅう・・・!」
攻撃をフロラで弾いては避ける。
ミニアも同じようにしモンスターの猛攻を凌いでる。
本来なら私達は遠くから攻撃するのが専門ではある、ただ中には遠距離術技が効果が無い敵もいる。
その為の作戦、私達を囮に前衛の二人が一気にダメージを取る。
ダツ
「ケイト!!!」
ケイト
「うんっ!!!」
二人の掛声が重なる。
それを聞き私達も一度距離を取り体勢を整える。
ケイトとダツが一気にモンスターへと直進した。
ケイト
「ここだぁあ!!!」
ケイトの一撃がモンスターの本体へと通った。
剣を突き刺し届いた・・・。
はずだった。
ケイト
「っ・・・!」
ダツ
「あとは任せろ!!! アイアンフィストォォー!!」
ガァアァアアアアアアンッ!!!!
ダツの拳と本体の岩がぶつかり物凄い音を出した。
衝撃時の風圧がここまで到達してきた。
一撃は大きい、間違いなくダツの攻撃も確実に通ったはずだった。
ブアァアアアアアアアァアアアアアアアアアァアアア!!!!!!
ネーネ
「そんな・・・無傷!?」
ミニア
「嘘でしょ!?」
モンスターは暴れ出した。
けれど、これはダメージが入ったからではない。
みながそう感じ取っていた。
ケイトの攻撃もダツの攻撃も一切通していない。
ケイト
「・・・・・・」
ダツ
「なんなんだよあいつ! 気色悪いな、さっきから本当にただの岩殴ってるみてぇじゃん」
こういったモンスターは必ず何かしらの弱点がある。
大体が固い本体の中にある物を破壊すれば一撃で倒せる。
けども、このモンスターは何か違う・・・。
ネーネ
「・・・来たっ!!」
6本の触手が一斉に襲いかかってくる。
全員散開し各自攻撃を防いでいる。
防戦一方。
負けることはないにしても・・・どうやって勝てば・・・。
リュゼル
「君等は・・・何を・・・してるんだ?」
「「「「えっ・・・?」」」」
遠目で見ていたリュゼルさんが口を開いた。
急にどうしたのだろうか、何をしているって・・・?
ミニア
「この大型モンスターの倒し方知ってるんですか!!?」
リュゼル
「大型・・・? 君等はこれが大型に見えるのか」
言っている意味がわからない・・・現に今目の前には大きな本体から触手が・・・。
え、まさか・・・これは・・・。
敵の攻撃を避けながらリュゼルさんの近くへ背を向けて着地した。
リュゼル
「思いこみ・・・君達のように経験が豊富な冒険者だからこそ陥ることのある事だな」
ネーネ
「まさか・・・あれってもしかして・・・」
リュゼルさんの言葉から考えられること、試す価値は大いにある。
私は懐からエレメタルキーを取り出し起動させた。
【アクア オン】
【コネクト リンクイン】
フロラに差し込み水の力を増幅させた。
リュゼル
「なるほど、目の前で見るとそうなっているのか真素の起源である7属性を一つにまとめる・・・不要な物を排除し必要な真素のみを凝縮安定させ、その凝縮した真素の流れを逃がさないように・・・」
ネーネ
「あ、あのぉ・・・危ないですよ・・・」
近付いてきた私が言うのもなんだが、急に目の前に立たれてフロラを・・・正確にはエレメタルキーをジロジロと見るのはやめて頂きたい。
リュゼルさんには目の前を退いてもらい、私は前へと踏み込んだ。
そして同時に触手の一つが私目掛けて攻撃を仕掛けに突っ込んできた。
好都合だった。
ネーネ
「っ!」
突撃攻撃を寸前で避ける。
私はすぐさまフロラを振りかざす。
ネーネ
「タイダルン・・・ショット!!!!」
一気にフロラを振り下ろし術技を触手へとぶつける。
この至近距離なら威力の減退は無い。
エレメタルキーも使って威力は・・・。
ブアァアアアアアアアァアアア!!??アァアアアア?!!?!?
触手が破壊された瞬間雄叫びを上げた。
ダツ
「攻撃が・・・効いた!?」
ケイト
「そうか・・・本体は・・・」
この触手が本体!
私達の勘違いであの中央にある巨大な岩が本体だと思い込んでいた。
リュゼル
「ブロックスネーク・・・一体一体はそれほどの力を持つことは無いけども、こいつ習性は多くの群れを作り出し自らを大きく見せること、君等が攻撃していた本体は、云わば威嚇の為に作り出されたダミーさ」
自らを大きく見せる為のダミー。
そんなモンスターがいたなんて。
モンスターも本能的に知恵を付けている・・・ということなのかな。
一体じゃあ勝てないから複数で、敵に自分は強い、大きいと見せる為に工夫しているのか。
ダツ
「ならもう怖いもんはねぇぜ!!」
ケイト
「あと5つ! 一気に壊そう!」
ミニア
「オッケェーー!!」
全員がエレメタルキーを取り出し起動させ武器に差し込んでいく。
ケイトは風、ダツは火、ミニアは雷だ。
私もみんなに動きを合わせる為、すぐに前線へと走る。
リュゼル
「起動した瞬間に大気中の真素を取り込むそれも無作為にではなく各装置に必要な分を・・・あの鍵、もしかして・・・」
ブアァアアアアアアアァアアアアアアアアアァアアア!!!!!!
触手が一斉に襲いかかってくる。
だけど、私達はしっかりと待ち構えてる!
ダツ
「フレイミー!!! ナックルゥゥー!!!」
ダツの拳が炎を纏い突撃を仕掛ける触手に向け叩きつける。
一撃で粉砕。
残り4!
ケイト
「ウィンディ・・・スラッシュ!!」
風を纏ったケイトの剣が触手刻み付けた。
乱撃、切り刻まれた箇所から形を消していき崩れ落ちていった。
残り3!!
ミニア
「雷鳴一光!! エレキスウェーーーブ!!!」
杖から放たれた雷撃が次々と触手の岩を砕いていく。
ミニアの術技は砕く岩が無くなるまで続いた。
残り2!!!
ネーネ
「さっきと同じように・・・タイダルンショット!!!」
さっきの耐久を見ても至近距離じゃなくても大丈夫だ。
このエレメタルキーとフロラの力があれば・・・。
一撃で破壊できる!!
残り・・・1。
ブアァアアアアアアアァアアアアアアアアアァアアア!!!!!!
ネーネ
「・・・あっ!」
なんて・・・。
しょうもないミスを・・・ここにきて・・・。
最後の触手が・・・。
巨大な咆哮と共にリュゼルさんに・・・!!
ネーネ
「逃げて!!! リュゼルさあぁああああん!!!!!」
リュゼル
「・・・・・・」
リュゼルさんはただ襲いかかる触手を見つめていた・・・。
リュゼル
「っ・・・!」
懐から何かを複数取り出し、触手へと放り投げた。
ゴォオンッ!!!ゴォオンッ!!!ゴォオンッ!!!ゴォオンッ!!!ゴォオンッ!!!
ネーネ
「っ!!」
ケイト
「何だこの音っ!!」
ダツ
「うるせぇえ!?!?」
ミニア
「み、見えない!!!」
全員その場で耳を抑え目を閉じた。
複数の爆音と同時に強烈な光が辺りを覆いつくした。
私達は、それが治まるまでその場で動けなかった・・・。
リュゼル
「もう大丈夫だぞ」
リュゼルさんの声だ。
伏せていた僕達に声を変えてくれた。
顔を上げ辺りを確認すると、そこにはもうあのブロックスネークは居なくなっていた。
ナザ
「すっげ」
ミニア
「うん・・・一撃?」
あの光弾?のようなものはきっとリュゼルさんがやったもの。
大型とは言えないにしろ、あんなモンスターを一撃でリュゼルさんは倒した。
私達はその場で呆けてしまっていた。
リュゼル
「研究の応用だ、護身用に作った物で有限だし、材料も安くないし・・・何より面倒で疲れる」
護身用って・・・もしかしてこれを人間相手にも使うなんて機会があるのか。
私は・・・変に勘ぐらないようにした。
そんな呆気にとられている私達なんてお構いなしにリュゼルさんは先へと進む。
私達もすぐに立ち上がり後を追う。
ケイト
「あの・・・研究者さんや学者さんってみんな持ってる物なんですか?」
リュゼル
「物は自体は人それぞれだろうね、中には下手な冒険者よりも強い人もいる、武器も防具も過剰だと言い張って一切手にしない・・・私の昔の先生だったりね」
先生・・・。
つまりはリュゼルさんのお師匠さんみたいなものか。
あの教授さんもそうだけど、研究者さんも学者さんもやっぱり自分の身は自分で守るっていうのがあるのか。
リュゼル
「護衛なんて聞こえは良いが、融通も利かないしお金ばかりかかるなら自分で全部やった方が効率も何もかもが・・・ってのが先生の教えでね・・・だとしてもあの人は別格だから、忘れてくれていい」
ネーネ
「あっ・・・」
リュゼル
「ん? どうかしたか?」
ダツ
「今・・・なぁ!」
ミニア
「うん! 笑った!!」
リュゼル
「・・・・・・? 私が?」
みんなリュゼルさんの話よりもリュゼルさんが笑ったことに夢中になってしまった。
いつもは気ダルそうにしていて表情を動かすのも面倒なんて雰囲気を出しているのに。
今、先生の話題を出した時一瞬口が笑った。
ケイト
「リュゼルさんの先生ってどんな人なんですか!?」
リュゼル
「どんな・・・金髪で身長が当時の私より低くて、重力系の術技が使えて・・・全部私に押しつけて、私が何か言うといつも論破してきて、紅茶の入れ方にうるさくて、少しでも身長の事に関するとすぐ怒って、機嫌直すのも遅くて、私よりも見た目が幼い癖にいつも上から目線で・・・」
ダツ
「え・・・ぁ・・・えーっと・・・」
これは・・・また・・・変な事に触れてしまったのかな。
リュゼル
「全部人任せにしてお礼をいつも要求する癖に自分は一切お礼なんてしない癖に朝が飛んでもなく弱い癖に夜はいつもうるさい癖に用があると叩き起こす癖に自分が壊した時は何ともない癖に私が何か壊すとめちゃくちゃ怒る癖に・・・」
ネーネ
「あは・・・あはは・・・」
もう苦笑いしか出なかった。
一応それでも先へは進んでくれているのでなんとか・・・なんとかなるのかな?
・
・
・
【採掘市街ダンズ付近 遺跡最深部】
無事に私達はリュゼルさんの目的である最深部にある大部屋に到着できた。
あの後休憩を挟むなどの提案を意外にも受けてくれてリュゼルさんの先生へのトラウマ? のような物は解消された。
その後も多くの事を聞いた。
特に今日ここに用があったのはそのギフトボイルの完成の為の鉱石がこの遺跡の最深部でしか取れないということで来たらしい。
ここまで来たからには私達もリュゼルさんのお手伝いをということで改めて同行させてもらう事にした。
ミニア
「扉は開けっぱなしなんだね」
リュゼル
「基本的にはギフトも無いもぬけの殻、特別な物と言ったら私のような変わり者の研究者が尋ねるくらいなもんさ」
一応自分が変わり者って自覚はあるんだと思ったが口に出さないでおいた。
念の為に辺りを警戒すると言いケイト、ダツ、ネーネの三人は最深部の大部屋の中を見回る。
私は卵を背にリュゼルさんのお手伝いだ。
とは言っても荷物を置き部屋の中央で何かの装置を取り出しそれを置いただけだった。
ミニア
「これ・・・なんですか?」
リュゼル
「ギフトボイルさ」
ミニア
「これがですか????」
目の前にあるのは小型のコンロのような物だった。
本当にこんな物でギフトの活性化ができるかとまたも呆気にとられている。
リュゼル
「装置なんてそんな物だ、これでも大きい方だよ。そのエレメタルキーに比べればね」
確かに・・・それもそうか。
今自分が手元にあるこの鍵だって結局こんなに小さいのにも関わらずとてつもない力を発揮すると考えると頷ける。
それどころかこれを作った教授さんがとてつもなく凄いって改めて実感してしまった。
ミニア
「あれ? そう言えばここには鉱石を取りに来たのでは?」
リュゼル
「そうだよ」
ミニア
「なのに・・・ギフトボイルが必要なんです?」
リュゼル
「そうだよ」
ミニア
「もしかして・・・ここで完成させちゃったり・・・?」
リュゼル
「そうだよ」
ミニア
「ここでまさかまさか初動実験をしちゃったりしちゃったり????」
リュゼル
「そうだよ、研究所は何かとうるさいからね」
ミニア
「・・・・・・」
冷や汗が出た。
ヤバいどうしよう。
何となく物凄い嫌な予感しか湧いてこない。
別にリュゼルさんの研究が失敗するなんて考えてなんかないと思うと感じてはいる憶測はあると信じてはいるんだけども。
リュゼル
「・・・、おーーい剣士君、そこ鉱石をこっちに持ってきてくれ」
ケイト
「え・・・は、はーーーい!!」
もう完成間際だからなのか大声を出すほどに力が入ってる。
本当にやるんだー・・・。
ケイトがリュゼルさんの注文の品を持ってきたと同時にダツとネーネも一緒に戻ってきた。
様子を見るにモンスターとかの警戒は不要ってことだ。
それだけでもかなり安心だ。
リュゼル
「さて・・・」
ケイトから鉱石を受け取り早速ギフトボイルを起動しようと・・・する?
ミニア
「えちょっと待ってくださいよリュゼルさん!!」
リュゼル
「え? どうした」
ミニア
「どうしたってなんか一言ないんですか!??」
私は一人慌てふためいていた。
他の三人は状況が飲み込めていないようで、リュゼルさんとすっごく距離を取る私両方に視線をやる。
リュゼル
「よくわからない子だ・・・」
ミニア
「あっ!!!?」
装置に鉱石をはめリュゼルさんはギフトボイルの起動ボタンに手を伸ばした。
私一人その場で背を向け卵を前に抱え屈んだ。
ボォォォオオフゥゥウウウンッッ!!!!!
何か物凄い鈍い音がした。
私はそっと・・・ゆっくりと目を開けながら後ろを見る。
そこには何とも言い難い色取り取りの煙が充満していた。
ミニア
「だ、大丈夫ーー・・・?」
すると煙の中から何かが聞こえた。
ケイト
「ぼふっ!!!!」
ネーネ
「けほっ!けほっ・・・!!」
ダツ
「おぉぉおえぇえええ!!!!」
よかった・・・とりあえず無事みたいだ。
次第に煙も引き状況がよくわか・・・ぷっ!
ミニア
「何それみんな!!! ぷぷぷっふふふあはははははっはお腹痛い!!!ははははあぁああーははっはっはっはっはっは!!!」
中には色取り取りの煙を被ったみんなが姿を現した。
もちろんリュゼルさんも同じようにとても面白い格好で茫然と佇んでいた。
ケイト
「なっ・・・なんだこれ!! ダツ・・・ぷっ!!それ・・・なんだよぉおお!!あはははははは!!!」
ダツ
「お前も自分の顔見てみろよぉぉ!!!あははははは!!馬鹿みたいな面しってぞ!!! かはははははっはっはっはっはっは!!!」
ネーネ
「ミニアーーー!!! もう!!! 逃げないでーー!!! わかってたんでしょぉぉおーー!!!」
ミニア
「やめてーー!!! ちょっと来ないでよぉぉおーー!!!」
ネーネが私を追いかけ回す。
絶対に抱き付いてきて私にも変な色の模様付けさせる気だ!!
ケイトとダツはその場で倒れ込みただただ笑い転げていた。
あはははははははっはははっははは!!!!
・
・
・
この子達は一体何故こんなにも笑っているのだ・・・。
私にはわからないでいた。
笑いが起きるのは決まって私の実験が失敗した時だ。
ただ最近ではそれすらも無くなっていた。
カラフルな両手を見る。
たしかにこれは間違いなく失敗だ。
鉱石の力不足か、それとも調整が甘かったのか。
そんなもの、すぐにでも解決する。
なんだ・・・この気持ち・・・。
はしゃいでる子供達を見る。
何がそんなに楽しいんだ、実験は失敗したのに。
『忘れちゃダメよ、あれはあなたが作った笑顔なんだから』
それは大切な・・・大切な先生からの言葉だ。
忘れてはいけない。
私はそれをバネにしてここまで来た。
リュゼル
「・・・・・・ふふ」
さっきの子供達の言葉を思い出す。
私が笑った・・・と。
笑った・・・ただ口角が少し上がっただけの現象だ。
それに対して子供達は物凄く喜んだ。
笑顔になっていた。
私が、本当に作りたい物。
それをあの子達は・・・私にくれた。
思い出させてくれた。
忘れていた・・・先生の言葉を。
もう一度、しっかりと子供達を見る。
最初は便利に使ってやろうなんて事も考えた。
世間知らずの子供、そんな事を少し考えてしまっていた。
それでもこの子達は何だかんだ言って私のお願いを聞いてくれていた。
この子達は・・・一体。
いや、それが子供なのか・・・違う。
そうゆう人達。
大人も子供も関係ない・・・か。
私の研究は・・・もっと・・・もっと。
ミニア
「リュゼルさん!いやリュゼル先生ー!」
リュゼル
「・・・っ!?」
今この子は・・・。
ダツ
「おいいな! リュゼル先生!次は何するんだ!!」
ネーネ
「もう爆発はこりごりですからね、先生!」
ケイト
「もっともっと色々教えてくださいよ! リュゼル先生!」
私が・・・先生?
この子達は・・・まだ出会って間もないのに。
私なんかを・・・。
リュゼル
「・・・・・・」
前髪が邪魔でよく見えない。
右手でかき上げた。
「「「「あっ・・・!」」」」
髪を上げたのは・・・何年振りだろうか。
顔から一気にかきあげてしまったからか実験の粉末が付着した手がさらに顔を汚すのがよくわかった。
だけど、そんな事はお構いなしに・・・見えた。
よく・・・見えた。
子供達の顔が・・・。
ダツ
「ぷははははははっはははははははっは!!!」
ケイト
「笑い過ぎだよダツ!! ふふふふはははははは!!!」
ミニア
「失礼過ぎでしょ男子!!ぷぷぷくくくぅくっくくっく!!!」
ネーネ
「ミニアだって笑っ・・て!! ふふふっふ!!!」
また・・・笑った。
これでもかってくらいに・・・。
私は・・・笑われてる・・・。
よく・・・わかる。
リュゼル
「ふ・・・ふふふふ、あはははは・・・」
笑い方がぎこちない。
そんな気がしたけども笑ってしまった。
本当に髪を上げたどころかこんなに笑ったのはいつぶりだろうか・・・。
こんなに・・・楽しい気持ちになったのはいつぶりだろうか・・・。
「「「「「あははははははっはっははははははっはは!!!!!!」」」」」
ここは本来大型モンスターが居た場所。
そんな場所が子供四人と大人一人の笑い声で満ちていた。
反響している笑い声も物凄く心地よく聞こえた。
こんなにも・・・心地よい物だった・・・。
ムクッ・・・!
笑いに夢中で子供達は気付かなかった。
笑っているのは5人だけではなかった・・・5人と1匹だったことを。
---------------------------------------------------------------------------
【とあるダンズ外周地】
シャヌア
「出てこい! いるのはわかってるんだよ!!」
外周地の廃棄された屋敷で私は大声を張り上げた。
ここが奴ら、若様を連れだした犯人がいる場所だというのはわかっている。
コートス
「まさか・・・ここがわかるとは驚きましたよ」
二階から男が一人顔を出した。
眼鏡をかけた冴えない男、だが油断はしない。
私はあのカズキとか言う男で懲りている、下手な油断は命取りだ。
シャヌア
「住み家にする場所を考えるべきだったね、こっちの領域で作ってくれるなら話が早いってもんさ」
このダンズ全体は私達の庭も同然。
少しでも異変があればすぐにでもわかるってもんさ。
コートス
「それもそうですよね・・・何となくそんな気はしていたんですがね・・・」
シャヌア
「てめぇなんかと話すつもりはねぇーんだよ!! さっさと若様を返しやがれ!!!」
バンッ!!!
大きな音が響いた。
左の扉から人影が・・・二つ。
シャヌア
「若っ!!」
???
「おぉーっと動くんじゃねーぞぉおー? お前さんの若様とやらがどうなってもしらねぇーぞん??」
大柄の男がロープで縛りあげている若様を放り投げる。
この男は知っている・・・国から派遣されたこの街の警備団体の一番隊隊長。
シャヌア
「ドーンツ!!!」
ドーンツ
「だから動くんじゃねーっての! それとも何か? そんなにこいつを殺してほしいってのかん?」
コートス
「ドーンツさん! お忘れではないでしょうね!?」
ドーンツ
「はっ! わかってるよー! けぇっ・・・だがなぁ・・・」
ドーンツという男が若様を踏みつける。
ロエ
「っ!!」
ドーンツ
「殺さなきゃ問題はねーだろ??? 殺さなきゃなぁあー!!!」
シャヌア
「貴様ぁぁああ!!!!」
蛇腹剣を手に取りドーンツへと踏み込む・・・だが。
見えない何かが私の目の前を遮った・・・。
遮・・・・・・。
シャヌア
「が、ぐっ・・・ぁぁ・・・」
私はたまらずその場に膝をついてしまっていた。
やられた・・・?
見えなかった何かに。
私の防御壁を突破して・・・一体、どうして・・・。
顔を上げた。
そこには・・・見たことのない黒ローブが一人。
黒ローブ
「致命傷確認、攻撃完了」
シャヌア
「何を・・・した!!」
黒ローブ
「回答、防御不可術技の応用」
意味わかんねぇ、しかもこいつ良く見たらひょろひょろなガタイの女かよ。
くそ、余計にムカつく!!
ドーンツ
「ふふふはははははは!!! ダンズの女鬼も形無しだなぁ!!! おんめぇえーのその姿が見たかったんだよんんん!!!!」
ドーンツの奴・・・!!
ドーンツ
「足らねぇえええのさ!!! おめぇえらを街の淵の淵に追いやり、餓死寸前にまで追い詰めてもよぉぉ!!! 気に食わなくて気に食わなくてしょうがねぇええんだよぉお!!!」
ロエ
「もうやめろ!!! 僕はどうなってもいい! けどシャヌアにだけは・・・!!!」
ドーンツ
「だから・・・それがぁああ!!!」
ドーンツの右足が地面を蹴った。
宙を浮く足は勢いよく・・・若様の顔に・・・直撃した。
ドーンツ
「気に食わないってって・・・いってんだろうがぁあああよぉぉおぉ!!!! どんなにどんなに追い詰めても追い詰めてもおめぇええらいけしゃあぁあしゃぁああと笑い呆けやがってよぉぉ!!!」
シャヌア
「くぅっ・・・!」
黒ローブ
「停止要求、拒否する場合は攻撃行動へ移行」
ドーンツ
「だからいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもぉおぉぉぉん!!!!!」
何度も何度もドーンツは若様を蹴る。
腹部を何度も何度も同じ場所を何度も・・・。
だけど・・・。
ドーンツ
「泣けよ・・・喚けよ・・・なんでおめぇはいつも!!!!!」
ドスッ!!!!
勢いを付けた蹴りがまた若様の腹部へと入った。
それでも若様は・・・耐えていた。
コートス
「ドーンツさん、これ以上は・・・!」
ドーンツ
「うるせぇえええ!!! こいつのジーンテルマだかが必要なのはわかってんだよぉ! いいか!!こいつはな・・・この程度じゃあ死なねーんだよん・・・なぁあロエお坊ちゃまぁあ!!??」
この程度・・・。
そうなんだ・・・いつも、いつも若様は耐えてらっしゃった。
シャヌア
「やめろぉぉお!!!」
黒ローブ
「攻撃遂行」
あの日からずっと・・・ロエ様のお父様とお母様がお亡くなりになってからずっと・・・。
この街が奴ら・・・警備団体に乗っ取られてからもずっと。
シャヌア
「ぐあぁああああ!!!!」
違う・・・。
あの時だってそうだ。
あたいが・・・初めてあなたとお会いしたあの日から・・・。
ずっと恐怖を見せないでいました・・・。
あんなにも震えていたのに。
シャヌア
「若・・・様ぁ・・・!!」
あなたはいつも・・・。
ロエ
「シャヌ・・・ア・・・」
シャヌア
「っ!!!」
地面に体を打ちながらも若様を見つめる。
またあなたは・・・。
ロエ
「いつも・・・」
泣きじゃくりたいはずだ。
投げ出したいはずだ。
諦めたいはずだ。
なのに・・・。
どうして・・・!!!!
ロエ
「助けてくれて・・・ありがとう」
駄目・・・!
駄目!駄目・・・!
シャヌア
「だめぇえええええ!!!!」
誰か止めて。
お願いだから・・・!
誰でもいいから、あたいはどうなってもいい!!
お願い・・・!!
ボォォオォオオオオオオオォォォオオオンッッ!!!!!!!
カズキ
「・・・悪いが、邪魔するぞ」
あたいの願いは・・・届いた。
新たに『好き を 求めた者達 の 今世界 物語 ~好きを求めた異世界物語外伝~』を新規小説として作成致しました。
こちらにはシャヌアとロエの過去を投稿させて頂きました。
短編となっていますがこちらも合わせてよろしくお願い致します。




