第十話 自分達だけの旅立ち
冒険者見習いの僕達四人の初めての大規模クエストは終わりを告げた。
僕達四人だけでギフトへ向ったが、そこに待ち受けていたのは卵だった。
その卵の記憶の体験後に卵と我慢比べをした僕達は無事に卵と和解が出来た。
そしてダンジョンの入口へと突然移動した僕達を待ち受けていたのは以前と同じようにギフトを付け狙う大人達だった。
為す術の無い僕達。
それを救ってくれたのは以前に見たことのある光り輝く蒼い翼を持つ竜と仮面を付けた二人の女の人だった。
圧倒的な力で大人達の軍勢を薙ぎ倒し、僕達はなんとか助かったのだった・・・。
【冒険者ギルド スタンバ館】
クエストから帰った次の日。
カズキさんと一緒に僕達はスタンバに出頭していた。
いつぞやのように状況説明の為にとエイジルトさんに呼ばれたのだ。
エイジルト
「んんーーー・・・まぁ状況はわかりました」
不思議とエイジルトさんは凄く疲れているように感じた。
寝不足なのかことある事に飲み物を口にしていた。
あれは以前カズキさんが飲んでいた黒いコーヒーという飲み物に似ている物だと思う。
一度口にしたことがあるけど、あまりの苦さに僕達は好きになれなかった。
エイジルト
「あぁー参りましたねー、その卵がギフトの物ですかー・・・そうですか」
ケイト
「は・・・はい・・・」
僕達もあの後ずっと卵と一緒だった。
交代で持つ人を変えると決め常に一緒にいた。
カズキさんにだけは昨日の夜宿屋で事情を説明して一緒にいることを納得してくれた。
エイジルト
「んんーーーー・・・まぁわかりました、ひとまず子供等はありがとう、また下で待ってくれますか?」
退室を命じられた。
例の如くカズキさんはそのままということだ。
一人一人出入り口でお辞儀をしてみんな退室していった。
・
・
・
エイジルト
「はぁ・・・」
カズキ
「珍しく、酷い顔してるじゃないか」
みんなが退室してから大きなため息を吐くエイジルトのおっさん。
コーヒーを片手に俺を睨む。
カズキ
「そんな顔される覚えはないだろうに」
俺はエイジルトのおっさんの依頼を完全に完遂した。
内容はここ最近の見習い冒険者を使った悪質なクエスト達成によるギフト獲得だ。
依頼を調査、紐解いていくと黒幕の目的に辿りついていた。
それはギフトアイテムの収集だ。
最近多いギフトのアイテムを誰かが集め回っているということがわかった。
あの武器狩りのムッドという冒険者もその黒幕の一人。
奴は多くの冒険者を闇討ちで襲いギフトアイテムを次々と奪い集めていた。
その報告と今回俺が受けた見習い冒険者の件が噛み合ったのだ。
あの子達を護衛していれば必ず武器狩りが接触してくるともわかっていたし、あの子達が大規模クエスト中に襲われる可能性が高いこともわかっていた。
エイジルト
「確かに無事事件は解決したと言えますがね・・・」
エイジルトが寂しげな顔をする。
それもそうか、今回の黒幕。
この町の領主であるブムットという男はエイジルトの昔ながらの付き合いだったそうだ。
その馴染みがハイトスの一員になってしまったことが悲しいのだろう。
人の弱みに付け込むのが上手いハイトス。
つまりブムット領主も、何かしらの事情があったのだろう。
そんな物に手を出してしまった末路だ。
カズキ
「ブムット領主だけじゃなくて、ギルド関係者の多くも共犯者。 あんたの睨んだ通りだったな」
エイジルト
「えぇ・・・ただその規模が予想以上に多かったのは失態でしたよ。 幹部連中にもハイトスの魔の手が差し向けられていた事から今はもうギルド全体が大騒ぎですからねー」
大規模クエストの主催者である領主とギルド関係者が裏で糸を引きギフトアイテムを持っている冒険者達をかき集めていた。
今回の件は大失敗に終わったが、成功すればあの卵と一緒に大量のギフトアイテムを手にする算段だったんだろう。
あの後奪われたアイテムはしっかりと持ち主やその仲間達へと手渡した。
返すことが出来なかった物はこのスタンバで厳重に保管する事になったらしい。
カズキ
「んで、今回のクエストは?」
エイジルト
「依頼主が悪行の為に冒険者達を利用したとされ破棄と本部が判断、それに連なる出来事は全て不問に処す、だそうですよ」
カズキ
「ならあの卵、ギフトアイテムはあの子達の物ってことだな」
元々のクエストが無くなった、無かった物とされるなら今回のあの子達の行動も罪にはならないってことか。
報酬は貰えないがなんとか後ろ指を立てられるような事はなさそうで安心した。
エイジルト
「ただ・・・今回のあの子達の件が上層部の耳に入ると色々と面倒事になりそうですがね」
つまりあの子達の活躍が変に注目を浴び、夢にも願っていた冒険者になるだろう。
だが、それと同時に最年少冒険者パーティーの大活躍なんていう今回の件を水に流したいギルド本部としては難しい顔をせざるおえない。
エイジルトのおっさんとしてはあの子達の為にも冒険者にして上げたい気持ちがあるが、それを容認してしまうと変な勢力に目を付けられ兼ねない。
そんな葛藤というところだろう。
エイジルト
「はぁ・・・」
カズキ
「あの子達が聞いたら喜びそうではあるからな」
どうしたものかとハイペースでコーヒーを口にしている。
不眠不休で動き続けているのがよくわかる。
エイジルト
「仕方ありませんか・・・カズキ君」
カズキ
「え?」
急俺へと振る。
そしてあの子達の処置を、俺に話した・・・。
つまり俺からあの子達に話せ、そうゆうことなんだろう・・・。
・
・
・
私達はみんなでまたタルシナ牛乳を口にしながら軽食を取っていた。
ダツ
「なぁーネーネ、こいつって何か食べなくていいのかな?」
ダツが近付き私が抱えている卵にパンを近付ける。
もちろん何の反応もない。
ミニア
「んんーーーー・・・」
ミニアは両親の形見というの大きな本と睨めっこをしていた。
昨日の夜からずっと本を解読しようと奮闘していた。
ミニアはどうやら私達が見たこの卵の記憶の光景に覚えがあるみたいと話した。
詳しくはまだわからないから話せないからと、昨日からずっと勉強をしていた。
カズキ
「おまたせー、悪いないつも待たせて」
ケイト
「いえ、特にやることも決めてないですから」
昨日の大規模クエストからの今日。
流石に私達も気持ちは晴れやかで元気なのだが、みんな体はヘトヘトで本当は一日中フカフカのベッドで休みたいという気持ちを押し殺してここまで来た。
そして私達は、カズキさんから色々な事を聞いた。
今回の裏で起きていた事件。
大規模クエストの本当の目的。
黒幕が領主のブムットさんだった事を。
みんな黙ってカズキさんの話に耳を傾けていた。
報酬が無い件なども教えてもらいみんながっかりしていると。
カズキ
「逆にそのおかげでその卵は、みんなの物ってわけだ」
ミニア
「あっ! そうか! クエスト自体無くなったから!!」
ケイト
「あの規約もなかった事になるんですね!!」」
みんな大はしゃぎで喜んだ。
口には出していなかったがみんな不安でいっぱいだったのだろう。
ダツ
「これで俺達も冒険者になれるかも知れないんだよぁあー!!?」
今回の件は確かに無くなったけども、私達の噂は小さくではあるが流れていた。
今朝朝食を取った定食屋のおばさんが知っていたくらいだ。
もしかしたらこのまま今日私達は・・・!
カズキ
「あぁー・・・それなんだけど・・・」
ケイト ダツ ネーネ ミニア
「「「「えっ?」」」」
カズキさんが気まずそうな顔で私達に話した。
私達は無事に冒険者見習いから卒業できた。
だた・・・。
ケイト ダツ ネーネ ミニア
「「「「冒険者"預かり"!!?!??!」」」」
カズキ
「う・・・うん」
どうやら私達は特例の特例の処置が為されたようだった。
カズキさんの話しによれば冒険者見習い以上冒険者未満というとても中東半端な位置に属するもののようだ。
内容も実に中途半端で、クエストの報酬などは冒険者と同じ様に受け取ることが出来るようになった。
が、クエストの受注が特殊になり決められた同行者が一緒の場合に限り自由に受けることが出来るという物らしい。
ミニア
「つまりそれって・・・」
カズキ
「俺・・・みたい」
ダツ
「それってつまり・・・!」
私達・・・またカズキさんと・・・。
カズキ
「俺達・・・また一緒だなってことだね」
難しい笑みで答えるカズキさん。
ケイト ダツ ネーネ ミニア
「「「「やっっっっったぁああああああああああ!!!!!」」」」
大声で叫んだ。
私達はただ喜んだ。
みんな立ち上がり雄叫びを上げていた。
またカズキさんと一緒にいられる。
今後も一緒に旅が出来ると、喜び震えていた。
「喜んでる所ごめんなさいね、冒険者預かりの書類出来たから、みんな食べ終わったらこっちに来てね」
ケイト ダツ ネーネ ミニア
「「「「はい!!!! ありがとうございます!!!」」」」
受付のお姉さんの言葉にみんな一斉に料理を口へと放り込み出す。
カズキさんから落ち着いて食べるように注意をされながらもみんなその場の乗りで料理を急いで食べつくしてた・・・。
・
・
・
「はい、こちらに記入をお願いしまねケイト君」
僕は何故か四人の代表として書類を書かされている。
こうゆうことはいつも僕に押しつけてくる。
愚痴を溢しながらも僕はしっかりと書類を読みサインをしていく。
するとカズキさんの説明が詳しく書いてあった。
僕達はエイジルトさん直轄の預かりとしての扱いになるようで、その第1号であるカズキさんが特例同行者として扱われるようだ。
つまりはエイジルトさんが僕達を冒険者預かりとして推薦してくれたことがわかった。
さらに詳しく見ると、僕達に何の非もなく危害を加える者がいる場合はエイジルトさん、及びギルド関係者への敵対行動と見なし対処するとも書かれている。
これはエイジルトさんやギルドの人達が僕達を守ってくれるということで間違いないだろう。
少なくても敵対者に対しては無抵抗でいる必要が無くなる。
そっか、預かりという名前が付いたけど、これは僕達を守る為だったりの配慮で出来ているものだとよくわかった。
「大丈夫?」
ケイト
「はい! 大丈夫です!」
色々と考え事をしてしまった。
僕は更に読み込み、さらに書類にサインしていき、手続きは終わった。
「はい、お疲れ様。 それと冒険者見習い卒業おめでとう、預かりっていう特例だけど、これはみんなが成長している証拠。 影ながら応援させてもらうわ」
ケイト ダツ ネーネ ミニア
「「「「はい!! ありがとうございます!!!」」」」
こうして僕達は見習いを卒業し預かりとなった。
受付のお姉さんの言う通り、僕達は確実に成長しているんだ。
思った通りの結果ではなかった。
だけどカズキさんが語ってくれた。
これは僕達の成長が予想を超える速度だった為にギルドが大慌てしてしまったのだと。
だから今回はこれで許してという物だと。
その言葉に僕達は喜び胸を張るようにした。
そして今後も、もっと頑張っていこうと、誓ったのだった。
・
・
・
【北西の町ウェイス 宿屋】
冒険者預かりになってスタンバを後にした僕達はカズキさんの提案で一度宿屋に戻り話し合いをすることにした。
いつもの部屋に戻るとカズキさんはインカムを宙浮かし、団長さん、教授さん、記録さんともう一人の声と話していた。
カズキ
「姫様だな」
教授
「姫ね」
記録
「適確ですね姫様」
姫
「んぇー・・・わかった・・・」
姫様ということになったらしい。
確かに声だけを聞いていても間違いなくそう言った気品のある声だと僕達も納得した。
改めてカズキさんを含めた五人に僕達が見た今はダツが抱えてる卵の記憶を報告していた。
見たことのない場所だったこと。
そこには多くの生き物達が人間達に襲われ滅んでいき、立派な角と翼を生やした狼が死に物狂いでこの卵を守りあのギフトに隠したと。
教授
「そう・・・やっぱり私の仮説は合ってそうだわ」
ミニア
「何か知ってるんですか!?」
ミニアが教授さんの言葉に食い付いた。
大きな本を片手に勉強しているが何一つ成果がないと悔やんでいたミニアにとって教授さんの言葉は助けになるだろうが。
教授
「そうね・・・ミニア、あなたは自分で探りたいって目をしてるけど違う?」
ミニア
「え・・・あぁ・・・それはそうなんですけど・・・」
見抜かれたようにミニアはごもる。
確かに僕達は知ってる、ミニアの両親がそういった考古学の研究に世界中を旅していた人だったと。
その形見であるミニアが今持っている本達をミニアは大事にしていることも僕達は知っていた。
カズキ
「意地悪はいいが、俺達にもわかるように説明してほしいんだが?」
教授
「ふん・・・そうね、まぁ仮説だからそれを念頭においてくれれば話すわ」
そうして教授さんは話してくれた。
主にギフトが現れるであろう条件の仮説だ。
ギフトとは太古昔にあったとされる力が眠る場所。
その力は現代からしたら強力な物が多くある為に公には近年までは秘匿されていたようだ。
知れ渡ってしまったら大事になるから。
団長
「そう・・・だよね」
カズキ
「間違いないな・・・」
カズキさんは何かを思い出すかのように難しい顔をしていた。
そしてそんなギフトがつい最近活性化してしまったことを改めて話してくれた。
その条件や場所なども不明とされているが、教授さんはそれには必ず太古の力が関係していると教えてくれた。
教授
「発生条件はまだ不明だけど、その力が眠る場所にダンジョンが出来てモンスター達が住みつくようになってると私は考えてるわ」
つまりダンジョンの先にギフトがあるのでは無く、ギフトがある場所にダンジョンが形成される。
だからダンジョンには多くの種類が存在し、形成されたダンジョンには必ずギフトがあるということらしい。
太古の力為せる技だと、教授さんは溜息を吐いた。
確かに、僕達のパートナーやこの卵を見てもそれだけの力があると感じる。
実際にそれが手元にある僕達からしたら納得のいく話しだ。
ダツ
「じゃあ! あいつらってそれ集めて何をしようとしてたんですか!?」
ネーネ
「そうだよね、絶対にお金儲けとかそうゆう感じじゃなかったもんね」
僕達を襲った人達。
最初はカズキさんに助けて貰い、今回は竜使いの方々に助けてもらったが。
明らかに盗賊などのような毛色の物じゃなかったのは確かだった。
組織立った動きでギフトアイテムを収集しているように思えた。
カズキ
「んんーー・・・それはなぁー」
カズキさんが難しい顔をしていた。
物凄く言い難いようなことなのだろうか、それとも僕達にはあまり知ってほしくないような事なのか。
姫様
「良いではないですか? 今さら隠す必要もないでしょうし、この子達は云わば狙われる可能性のある当事者さん達ですから」
姫様がまた僕達に手を差し伸べてくれた。
それでもとカズキさんは顔をしかめる。
悩み続けるカズキさんを見て僕は口を開いた。
ケイト
「あの・・・その、僕達・・・この卵を守りたいんです!」
ネーネ
「そ・・・そうなんです!」
唐突の告白でカズキさんは驚いていた。
そして真剣な顔で僕達の話を聞いてくれた。
ダツ
「俺達、まだあんちゃんみたいに強くないと思うんだけどさ・・・それでもこいつ守ったあの親子の気持ちを引き継ぎたいんだ!」
四人で話し合ったわけじゃない。
ただあの記憶の光景を見た者なら誰しもが思う気持ちを僕達は語る。
ミニア
「この子が見せた物はきっと過去の現実だと思うの! きっとずっと寂しかったんだと思う、だから・・・!」
今ここで投げ出したくない。
この卵・・・この子はきっと僕達が守らなきゃいけない存在なんだと。
あのギフトで僕達の事を待っていたのではないのかと。
ケイト
「もし・・・この子を奪おうとする奴が居たら、僕達が倒します!」
みんな気持ちは一緒だ。
この子だけは絶対に守り抜きたい。
その為にも情報を知りたい。
敵を。
この卵を狙ってくるかも知れない敵を。
カズキ
「・・・・・・」
カズキさんは目を瞑り考え出した。
さっきまでの悩みとは違う、腕を組みたくさん考えてくれている。
そして答えは出た。
カズキ
「わかった・・・話そう」
ケイト
「あ・・・ありがとう・・・ございます!!!」
みんなカズキさんに頭を下げた。
これは僕達四人の話ではない。
この卵を守りたいという気持ちの話だった。
ただ僕達はカズキさんに感謝し続けた。
そうして、僕達は多くの事を教えてもらった。
異教徒組織ハイトス。
何度も耳にした事はある
有名な狂信者の集まりだと。
そのハイトスが最近ギフトをあらゆる手段で手に入れようと活動してるいるらしい。
今回の黒幕であったブムット領主もその一味だったと驚かされた。
そしてそれは世界中で起きているようで先日ナイクネス帝国の王女殿下であるユミィーリア様が世界中に注意勧告をしたようだった。
だけどその結果はあまり芳しくない物だったらしくて聞き届かなかったらしい。
ネーネ
「もしかして・・・北陸の英雄・・・」
姫様
「そうです、今や英雄と呼ばれる人達に私達は協力してハイトスの対処に世界中で回っているところなんです」
ダツ
「え!? あんちゃん達仲間なの!?」
記録
「正確には、北陸の英雄達から依頼を受けて活動している。 というところです、正確には・・・」
そうだったのか。
こんなに強い人達なんだから何かしらあると思ったけど、あの英雄達が知り合いとして後ろ居たのか。
なんか凄く納得してしまった。
カズキ
「だから俺もこうしてこの町に来たってわけだ、エイジルトのおっさん経由ではあるけど、基本的には対ハイトスパーティーだと思ってくれていい」
対異教徒組織の対策がカズキさん達の目的。
つまりギフトアイテムをハイトスに渡さないように動いている。
・・・・・・・・・・。
話しの規模が大き過ぎて僕達は黙ってしまった。
敵は異教徒達。
そしてこの子を狙ってくる可能性がある。
カズキさん達はその対策をしている人達。
世界規模で暗躍している組織に立ち向かおうとしていると。
ケイト
「・・・・・・」
僕達は・・・。
僕達は、何が・・・出来るのだろうか。
団長
「・・・・・・、みんな! いろんなお話ししてちょっと疲れちゃったでしょ? よかったらお昼にしたらどうかな?」
団長さんの言葉でみんな我に帰る。
時間を見ると確かにお昼時の良い時間だった。
みんな顔を見合わせ昼食を取ろうと頷いた。
団長
「気を付けて行っておいでー・・・!」
優しい見送りの言葉を背に、僕達は部屋を後にした・・・。
・
・
・
カズキ
「ぁぁ・・・」
呻いた。
なんだか気持ちが沈んでいくようだ。
姫様
「あの子達には、純粋に冒険者としてただ旅を楽しんでもらいたかった、ですか?」
カズキ
「そんな所だけど・・・やっぱりあの子達の成長速度は凄いとしか言えない」
もう自分達が守りたい物を作ったんだ。
それは力を持つ者が必ず手にする物。
それは必ず自分に更なる力を与えてくれる大事な物。
あの子達は、もうそれを手にしたんだ。
カズキ
「本当に難しい・・・少し目を離すとすぐに先に行く」
団長
「凄いよね、子供の成長って・・・少なくても私達の成長速度の何十倍も早いもんね」
全員がしみじみと感じていた、あの子達の成長速度に。
だからこそ不安が同時に襲ってくる。
勢いのある成長は、先にある壁にぶつかって怪我をする可能性があるからだ。
その怪我に倒れ立ち直れない事があるのを俺は知っている。
きっとそれはあの子達にも訪れる、確実に。
教授
「なら、しっかりと支えてあげないといけないわね」
姫様
「そうですね、あの子達が更なる未来を切り開いてもらう為にも」
記録
「今を固める必要がある、ということですね」
だとしたら、全ては簡単だ。
どんなことをしてでもあの子達を守る。
あの卵を守ろうとするあの子達を・・・。
団長
「出来るよ・・・私達だって、あの子達に負けないもん」
カズキ
「そう・・・だな・・・」
成し遂げられる。
俺達ならあの子達を。
培ってきた物をあの子達が積み上げる物に捧げる。
いいじゃないか。
きっとそれは素敵な事だ・・・。
・
・
・
【北西の町ウェイス 大広場】
僕達はいつもの定食屋で昼食を取った。
その後フラフラと町を歩いていた。
大広場にある噴水近くでぼーっとしていた。
みんなさっきの事を考えている。
カズキさん達がそういった人達なのかを知った。
凄い人達だった・・・。
これからはそのカズキさんと一緒に旅が出来ると浮れていたのに、急にカズキさん達が遠くの存在に思えた。
ミニア
「なんか・・・凄い事になっちゃったね」
ネーネ
「うん・・・」
ミニアの抱える卵を見る。
この子を守りたいという気持ちに変わりはない。
だけど、その為には戦わないといけない。
異教徒と呼ばれる者達と。
昨日まで僕達はただの冒険者見習いだった。
それがここに来て想像の出来ない物を目の当たりにさせられている気持ちになっていた。
どれだけ悩んでも答えは出なかった・・・。
そんな時だった・・・。
一人の男が僕達目掛けて駆け寄ってきた。
もの凄い速度で。
「その卵!! もらったぁあああー!!!!」
ケイト
「っ・・・!!?」
ミニアに向けて刃物を片手に飛び込んできた。
すぐさま盾を構え術技を発動しようとしたが。
「エアインパクトォオ!!!」
大声で術技が唱えられた。
そして同時に襲いかかってきた男の人は吹き飛び壁へと激突した。
衝撃で身動きが取れないでいるところに次々と先輩冒険者達が男の人を取り押さえていた。
「がははは、大丈夫か坊主共!!」
一人の大柄の男の人が笑いながら僕達の方へと歩みよる。
その後ろにはもう一人の男の人。
この人はたしか・・・。
「おや、あの蒼い衣の男はいないのですか?」
ケイト
「カズキさん・・・ですか?」
「そうか、カズキというのですね。 彼には感謝もせずにいたのでね」
そうこの人は山脈ダンジョンの最深部で倒れていた人だ。
カズキさんにリーダーさんを助けてほしいと言った人。
無事に回復したんだ。
「がははは、こいつが世話になったと聞いてお前達を探してたんだが。随分物騒な奴に狙われたもんだな」
ネーネ
「あ! た、助けてもらってありがとうございます!」
全員で頭を下げ感謝をする。
それを見て更にリーダーさんは高笑いをした。
「まぁこれで借りは返した、ということでいいでしょうかね」
「そうか? この坊主達の借りはどうするんだ? がははははっ!!」
ダンジョンで見た時は凄く気難しそうな人かと思っていたのに。
意外に陽気で少し戸惑う。
「では返しついでに伝えておきますよ、その卵。きっとギフトアイテムでしょう? それを付け狙う者が多くいると聞いております」
ダツ
「えぇ!? もう知れ渡ってるんですか!?」
「はい、どうやら異教徒の連中のようですよ」
もうこの子の事を狙ってきているというのか・・・。
カズキさん達の話しを聞いて早々にこんな事になったのか。
「でもまぁ、リーダーが手を出さなくても大丈夫だったとは思いますがね」
「がはははは、言うな言うな! がはははは!!」
ケイト
「え・・・それって?」
キョトンとした顔をした僕に続けて語ってくれた。
「君達はその卵を大事にしている、そしてそれを守る強さも持っている、力ではないものをね」
力ではない・・・もの。
「胸を張れ坊主共! 見習いだろうと預かりだがなんだか知らないが、お前達はお前達、強いは強い、何も変わりやしねーんだよ」
ミニア
「変わらない・・・」
僕達は・・・僕達・・・。
強いは・・・強い。
僕達はリーダーさんの言葉を真に受けていた。
分かり辛いとリーダーは怒られているが、僕達にはその言葉が身に染みていた。
その言葉が・・・僕達の背を押してくれたんだ。
ケイト ダツ ネーネ ミニア
「「「「ありがとうございます!!!!」」」」
「おぉ? おうよ!! がはははははははっ!!!!」
そして僕達はすぐさまみなさんに改めて助けてもらった事の感謝を伝えその場を後にした。
もう決まった。
今回の話し合いは必要なかった。
先輩達に合わせてお礼をした。
それだけで僕達の気持ちは確認し合えた。
きっとみんな同じ気持ちだ。
いつものように、同じ気持ちを抱いていた・・・。
カズキ
「本当に・・・目を離すと、あっという間だな・・・」
---------------------------------------------------------------------------
【冒険者ギルド スタンバ館】
カズキ
「大規模クエスト!! 結果は良くないがみんなお疲れ様!! 乾杯!!!」
うぉぉおぉぉぉぉぉおぉおおおおおおおおおおおぉおおぉっぉおぉお!!!!!!
あれから夜になって僕達はスタンバへと足を運んでいた。
どうやら大規模クエスト終了のお疲れ会を開催するからクエストに参加した人達は強制参加だということで僕達も一緒に出席した。
スタンバの貸切ということでみんな飲食を楽しんでいた。
そして僕達も・・・。
「おぉおぉぉお!! 噂のルーキースター!!!」
「期待の新星!! 冒険者の未来は明るいっぜえええええ!!!」
「こらぁ! 飲んだくれ達は近付くなーぁあ!!」
僕達は多くの先輩達に囲まれていた。
受付のお姉さんも一緒に食事を共にしているという名目で僕達を酔った冒険者さん達から守ってくれていた。
「あぁあああ!! ネーネちゃんもミニアちゃんもかわいぃぃいい!!!ずっと話しかけたかったのぉおぉ!!」
「そうなのぉおお!! お姉さん達のパーティーに来てくれてもいいのよぉおぅううー!!」
ネーネ
「ぐ・・・ぐるしい・・・」
ミニア
「前が・・見えない・・・」
ネーネとミニアは冒険者のお姉様方に拉致られている。
胸を押し付けられて拘束されていた。
ダツ
「おっらぁああぁああああ!!! 負けねぇええぞぞ!!!」
「坊主!!! 度胸だけは褒めてやる!! うおおおぉぉおお!!!」
ダツはダツで他の冒険者のお兄さんと腕相撲をしている。
圧倒的に負けると思われたがギフトアイテムのおかげか何故か拮抗していた。
それではズルでは・・・。
そんな僕は卵を大事に抱えながらもその光景を見て楽しんでいた。
みんなが先輩冒険者さん達に溶け込んでいた。
みなさんも僕達を冒険者の一員、ギルドの一員だと認めてくれている証拠だ。
それを感じただけでも凄く嬉しかった。
ケイト
「あっ・・・」
ふと視線にカズキさんが映った。
遠くでエイジルトさんと二人で飲んでいた。
僕は意を決して二人の所へ向かおうと先輩冒険者さん達を掻い潜り向かった。
エイジルト
「おや、ケイト君楽しんでるかい?」
ケイト
「はい! ただちょっとこの子が危ないかなと思ってはははは・・・」
そうですか、と僕の同席を許してくれた。
何を話していたかを勇気を出して聞いてみた。
エイジルト
「いやねぇ・・・このカズキ君と君達が被るなって話しをしていたんですよ」
カズキ
「あははは・・・」
カズキさん・・・と?
苦笑いの反応をするカズキさんを見ると信憑性を増してしまった。
エイジルト
「彼が見習い冒険者であり続ける理由・・・知りたくないですか?」
ケイト
「教えて・・・くれるんですか?」
細かい詳細は控えてエイジルトさんは語ってくれた。
それはある事件がきっかけでカズキさんは冒険者になることが出来なかったようだ。
だけど、カズキさんは多くの人を救った。
力を示してしまったことからギルドも下手にカズキさんを無視できない状態だったらしい。
カズキ
「それで、このおっさんの下で馬車馬のように働かされてるってわけ」
エイジルト
「はははは、一体どっちが馬車馬のように働かされてるいるのかわかりませんね」
エイジルトさんは続けて話した。
カズキさんはカズキさんで多くの事に顔を出しその度に多くの人間を救ったようだけど、その規模があまりにもデカイ為にその上司であるエイジルトさんは寝ずに後処理をさせられていたと話す。
エイジルト
「君達もくれぐれも頼むよ・・・私はこんな一つ爆弾を抱えるので手一杯なのだから・・・」
ケイト
「き、気を付けます・・・」
カズキ
「そう・・・気を付けた方がいい、このおっさん何倍返ししてくるかわかったもんじゃないから」
二人の言葉をしっかりと真に受けた。
出来るだけ迷惑をかけないように頑張ろうと思った。
エイジルト
「それにしてもいいのかい? 特例同行者がカズキ君だけで」
ケイト
「はい・・・色々考えはしたんですが・・・」
今後はハイトスが僕達を狙ってくる可能性が凄く高い。
エイジルトさんはその事を考えカズキさん以外にも何名かの先輩冒険者さん達を付けることを進めてくれた。
だけど、僕達はそれを断った。
思惑は色々ある。
けど一番は、僕達がこの子を守らないといけないと感じたからだ。
僕達が守らないと意味がない。
もっと強くなる必要がある。
その為にも僕達は、出来るだけ僕達だけで、今まで通りでいたい。
そう望んだんだ。
守る為に、戦いたいとカズキさん達と一緒に。
僕達はそうカズキさん達に伝えて、それがエイジルトさんの耳に伝わったようだ。
エイジルト
「わかりました、お節介をしてしまった。ということですね」
ケイト
「いえ!! お気持ちは嬉しかったんですけど、すみません我がまま言ってしまい」
けどそれが、今後の僕達の在り方。
僕達が求めたものなんだ・・・。
ネーネ
「ケイトォオオオー!!!助けてーぇええ・・・」
ネーネの助けを求める声が届いた。
振り向いて見ると何人ものお姉さん達に囲まれていた。
さっきよりも増えてるように思えたのは気のせいか。
僕は二人にお辞儀をしてネーネ達の下へと向かったのだった・・・。
・
・
・
エイジルト
「君に感化されすぎでは?」
カズキ
「まさか・・・何もしてないよ、本当に」
一人はみんなの為にと無我夢中に考えて、頑張る剣士。
一人はがむしゃらにみんなを守ろうとしていた格闘家。
一人は年上だからとみんな支えようと努力する技術師。
一人は泣き虫ながらもみんなの無事を祈る神官見習い。
そんな子達。
それがただ成長しただけだ。
そう・・・ただそれだけなんだ・・・。
-----------------------------------------------------------------------------
【北西の町ウェイス 出入り門】
次の日。
僕達は荷馬車に必要な荷物を積み、町を出る。
そう、新しいクエストだ。
「気を付けて行ってこいよぉおー!!」
「危なくなったらすぐに帰ってきてらっしゃぁあーい!!!」
多くの先輩冒険者さん達が見送りに来ていた。
こんな事は今までなかったのに、昨日のお祭り騒ぎでみなさんと仲良くなれたからだ。
ケイト ダツ ネーネ ミニア
「「「「いってきまぁあーっす!!!!」」」」
荷馬車の後部から手を振り先輩達に応えた。
改めて実感していた。
僕達はまだ冒険者の端くれなんだと。
多くの人に支えられて頑張れるんだと。
これからもっと多くの人に支えてもらうことになるだろう。
たくさん迷惑もかけるかもしれない。
だからこそ、僕達はもっと強くなろうという気持ちになる。
どれだけ時間が掛かろうと、必ず恩返しをしたい。
支えてくれた一人一人に、僕達が出来ることなんて今は何も思い付かない。
それでも期待されているというプレッシャーよりもその期待を背負って前へ進みたい。
それが今の僕達に出来ることだから・・・。
ケイト
「みんな!」
ダツ
「よっしゃぁ!!」
ネーネ
「うん!」
ミニア
「はいよ!」
みんなの手が合わさる。
お互いの目を合わせ笑い合う。
そして重ねた手を上げる準備をして・・・。
ケイト ダツ ネーネ ミニア
「「「「えい!えい!おぉおー!!!!」」」」
僕達の手は同時に、一緒に掲げられた・・・!




