第26話 美遷麗ノ金色
平穏は保たれた。
正唱和団は壊滅、式典での市民への被害もほぼなかった。
元々は帝国軍への反抗ということもあり事無きを得ていた。
第2近衛騎士団も今回の一件、主に副団長単独の犯行であるという面で処罰は少なかったという。
そして帝国にとって一番の問題は、評議会メリエイスの一部活動停止というものだ。
公けな情報公開は避けているが人々には囁かれていた。
ユミィーリア王女殿下が評議会の悪性を正したと。
市民達の目には式典での王女の姿が目に焼き付いていた。
悪と戦う王女の姿が噂を呼び更に多くの称賛する声を上げた。
【王都ナイクネス 王城 王の間】
国王との謁見。
王女は国王に公的謁見で事態の説明をした。
今回の式典の襲撃の予知、正唱和団壊滅への運び、そして黒幕の評議会
。
ワードン
「我が娘ユミィーリアよ、よくぞやってくれた」
ユミィーリア
「とんでもありませんお父様、これも帝国の為、市民の為あってこそです」
娘と父。
血の繋がっている間柄だからこその礼儀。
王族ならばなおさらの行い。
ワードン
「そうか、ならば褒美をやろう。 申せ」
久しぶりの父との会話。
何故だろうか、凄く機嫌良いように感じる。
日頃から評議会に苛立ちを感じていたと聞いたことはあるが、それがここまでなのかと思ってしまう。
ユミィーリア
「それでは、お言葉に甘えて・・・」
私はご褒美を貰った。
それは私の今後を大きく左右するもの、人生の分岐点でもあった。
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【帝国軍士官学校大型集会施設 メインステージ】
「王女殿下ぁあああ!!」
「王女様素敵ぃいいい!!」
あれから数日が経ち改めて式典が行われた。
ユミィーリア
「この度は皆さん、この士官学校の創立記念式典に来ていただきありがとうございます」
檀上で一人、人々に語りかける。
ユミィーリア
「この場を御借りして、少しだけお話しさせて頂ければと思います」
王女の真面目な声に会場が息を呑んだ。
今まで聞いたことのないような王女の声に戸惑っている者もいた。
ユミィーリア
「私は、無変遷ノ金色。多くの人からそう呼ばれることが多くありました。
ですが、私はこの名をあまり良い意味で捉えていませんでした。
無変遷・・・一切変わることのないもの、そんな自分に苛立ちすら覚える時期もありました。
だったらと、変わろうと何かをした時には周りに迷惑をかけてしまうことも多かったです」
全て事実だ。
第5騎士団だけではない、多くの人に迷惑をかけていた。
それに嫌悪感も抱き余計に恐れてしまった。
怖かった、自分が苦しむならまだいい。
だけど好きな人達、周囲に居てくれる人が笑顔で心配ないと言ってくれるのが堪らなく辛かった。
ユミィーリア
「そんな日々を送っていた毎日に、ある方が私にきっかけをくれたのです。
最初のその方は私を王女とは知らずに接していました、私という人間をただの少女だと思い接してくれました。
そのきっかけは単純な物でした、それは。
好きな物。
他人が決めたわけではない、人から与えられた物じゃない、理屈じゃない、ただ純粋な想い。
自分がたまらなく好きな物、ただそのことを気付かせてくれました」
ただ自分の好きなもの。
優劣なんてない、比べる物ではない。
ただ純粋な気持ちで感じ取った物。
ユミィーリア
「それからたくさんのことを考えました。
色々な事を考えました、考えれば考えるほど自分がいかに間違っていたことに気付かされました。
その純粋な気持ちを・・・自分の想いを。
私が考えていた私を。
ここにいる方々の中にもたくさんいると思うんです、自分が好き好きでたまらない想い。
なのに目の前からその想いがどんどん遠ざかっているような事が。
何をどうしていいのかわからない程悩んでる人が」
観客達に目を向ける。
この言葉は、正唱和団に向けた言葉だ。
ふと思ったのだ、彼等は私と同じなのではと。
自分の想いや信念、夢を前に出す事が上手く出来ない人。
臆病になり、周りに感化されて好きな物を好きと言えない自分に苦しむ自分。
ユミィーリア
「私は・・・そんな自分が嫌でした。
弱い、力がない、無力、自分には出来ない。
そんなのは関係ないんです、必要なのは・・・。
ただ踏み出す、一歩です」
抽象的だ。
けどそれでいい、自分に向き合うことのできる人はきっとわかる。
一人でもわかってくれればいや、記憶の片隅にでも置いてくれればそれでいい。
ユミィーリア
「その一歩を踏み出す勇気、気力、体力、時間、たくさん使うと思います。
ですが、それに弱いも強いも関係ありません、比べる必要なんてありません。
積み重ねてきた物は必ずあります、自信を持つ必要もありません、その経験はきっと裏切らない、いつか誇りに思う日がきっと来ます。
だから・・・それがきっと・・・」
なんだっていいんだ。
たった少しでもいい、その少しが重要なんだ。
また躓くかも知れない、転んだら痛いかもしれない。
それよりももっと怖いのは、一生変わらないでいること。
ユミィーリア
「あなたの景色を、変えるきっかけになります」
自分が変わる。
それは本当にただ結果なのかも知れない。
変わるのは景色だ。
歩めば必ず景色が変わる、それ一番重要なのだとわかった、教えてくれた。
変わらなかった景色での経験もきっと無駄にはならない。
ユミィーリア
「最後に・・・そういった勇気をもって踏み出した人達、子供達に手を差し伸べて下さい。
話しを聞いて上げてください。
もしまた、そう言った想いや夢を悪用する人がいる場合は、私が・・・私達が容赦しません。
それだけは、覚悟しておいてください」
一礼して檀上を後にする。
王女が退散した会場は、静寂に包まれていた。
中には静かに泣いている者。
下を向き考え込む者。
ただ上を見上げる者。
多くの者が・・・王女の言葉を受け止めていた。
シュリー
「素敵ね・・・あの子」
カズキ
「あぁ、凄いと思う」
シュリーと共に警護の為遠くから見守っていた。
だが、二人して彼女の言葉を聞きいってしまっていた。
シュリー
「あそこまで変わるものなのね、人間」
カズキ
「いや、元々そうゆう子だった・・・ってだけだろうきっと」
そう、俺が最初に出会った時。
王女だと知らなかった時だ。
彼女の澄んだ瞳の前に俺は願いを叶えてしまった。
純粋な気持ちという物を凄く強く感じたからだ。
それが彼女の力。
ただの暴力には決して意味を為さない物かもしれない、討つことも守ることもできない無力な力。
だとしても、その叶えたい歩み、願う強さ、想う力。
それはきっと、どんな暴力にも引きを取らない、彼女だけの武器だ。
今それに気付いた彼女は・・・きっと無敵なのだろう。
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そう俺とミツバは、笑っていた。
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【ユミィーリア別荘 ダンス晩餐会 会場】
記念式典のその夜には、前回の埋め合わせということで改めて晩餐会が開かれた。
前回は室内でのパーティーだったが、今回は外で執り行われた。
どうしても多くの人と触れ合いたいということで開始時間も早めている。
パーティーはもう始まっており今では王女に少しでもお話しをしたいと言う人が押し寄せ長蛇の列が出来上がっていた。
これも今日の式典の影響だろう。
もともとファンだと言っていた者達はさらに、そうでもなかった人達はファンになったと聞く。
カズキ
「まるでアイドルの握手会だな」
ナザ
「なんだそれ? アイドル?」
カズキ
「あーまあ簡単に言うとみんなに愛される有名人ってこと」
適当に口走ってしまった。
だが、間違ってないだろう、今ならみんな大好きな王女様とお話しできるというんだ。
第5騎士はさしずめ握手会の列整理をするスタッフというところか。
フェーチス
「でも、よかったよね、サナミさんも第5騎士に復帰したし、その第5騎士団のみんなもまた王女殿下の騎士に戻って」
フェーチスの言う通り。
話しによれば第2騎士のトクスト団長が自ら王女の騎士の取り下げを進言したらしい。
自分の至らない所で王女を危険な目にあわせあまつさえ窮屈な思いをさせてしまったと。
王女は何も言わなかったが、自動的に第5騎士団がその任を引き継ぐ、取り戻した。
ナザ
「にしても、式典の話ってあれ、カズキだろ?」
フェーチス
「あぁー! やっぱそうだよね?」
話題の矛先が俺に向いた。
どうして急にそんな事を言い出すんだ。
カズキ
「知らないし、それを言うならヴェアリアスのみんなじゃないのか? 所詮一人の言葉より、みんなの言葉の方が効くに決まってるだろ」
また適当な事を言った。
だが、そうかもと二人は納得していた、言ってみるもんだと思った。
シュリー
「ふーーん、それはそれは随分と謙遜な言葉ね」
もっと厄介なのが絡んできた。
さっき飲み物探しに消えたと思ったのに。
シュリー
「で、あんた。 話してたあの商会組合の件、どうすんのよ」
カズキ
「どうって、別にどうもしないが」
商会組合の話。
それは俺が前もって考えていた事の一つ、評議会を潰した後の動きだ。
シュリー
「元老院経由で弱小の村へ援助を呼びかけられてるんだけど、これもあんたの差し金でしょどうせ」
ある意味間違っていなかった。
商会組合とはセイトーさん経由で多くの事を伝えた。
評議会が潰れて物資の流通が良くなる。
以前より動けないでいた貧困に苦しむ村への流通だ。
どうやら上手く話しがいっているらしく、商会としても大きな利益を上げているようだ。
先日セイトーさんからも感謝されたばかりだ。
カズキ
「でも、元老院からシュリーに何言われたんだ?」
シュリー
「急かされてるのよ、いち早く鍵の開発に着手してくれ、あれこれ注文するわ、無駄にこうしろああしろだのうるさいったらないわ」
言われてみれば最近はサンリーでずっと部屋に籠もりっぱなしだったのはそれだったのか。
シュリーも大変だな。
シュリー
「あんた・・・他人事みたいな顔してるけどねぇ!!」
ネシー
「シュリーさーーん」
遠くから一人の少女が手を振りながら近づいてきた。
これは神の恵みだ、シュリーから逃げれる。
シュリー
「ネシー? あなたもう大丈夫なの?」
ネシー
「はい! お陰様で、あれから自警団とか兵士さんとかから色々大変でしたが、何とか家族一致団結で事無きを得ました」
今回の功労者である彼女。
兄が亡くなり気が落ちている最中でお国様からの事情聴取やら何やらで大変だったそうだ。
王女殿下の力を借りればすぐに済む話だったのだが彼女は断った。
どうやらこの問題は家族の問題、兄を失ってしまったのは両親と自分の責任だと言い力を合わせてなんとかしたいと自分から言ってきたのだ。
カズキ
「本当に凄いな君は・・・」
ネシー
「ありがとうございます! それでシュリーさん折り入ってお願いがあるんですが、あちらで私の友人達と一緒によかったらどうですか」
シュリー
「ぇ・・・」
ドスッ!
背中を叩いた。
変な顔するな、日頃の欝憤が溜まってるのはわかるが、折角のお誘いの賑やかな席でそんな顔をするんじゃないよ。
ネシー
「あ、もしかしてすみませんお邪魔でしたか・・・」
カズキ
「いや、こいつ最近研究ばっかだったから。よかったら労って上げて」
ネシー
「そうだったんですね、わかりました、私頑張ってエスコートします!」
シュリー
(ギラリッ・・・!)
だからそんな顔をしても駄目です。
せっかくのご指名だ行ってきなさい。
ドスッ!
ネシー
「あっちにですねシュリーさんが好きそうなの集めておきましたので!」
手を引いて連行されていった。
観念したか、それでいい。
でも、シュリーには本当に息抜きになるのは間違いないだろう。
年齢は違うが、見た目が近くて学者関係でもない少女達に慕われる機会も早々ないだろうし。
周りを見たらナザとフェーチスは二人仲良く料理を頬張っていた。
レイドラは王女殿下の近くで約束をしていたというデザートを永遠と食べている。
流石に止める理由もないし、ずっと俺に付き添ってくれてたからいい機会だと思い任せた。
クリル
「おい、死に目」
レイドラにまた友達が出来た。
そう考えると非常によろしいと思う。
クリル
「おい!てば!」
やっぱり竜というだけで少し距離を置かれることも多い。
だからこそ、こうゆう寄り添ってくれる人はしっかりと大事にするべきだなうん。
ゴスッ!!!
カズキ
「ぐぇ・・・」
急に横腹が痛んだ。
何があったのかと下を見たら小さいエルフが一人ド近距離にいた。
何故か凄く不機嫌そうな顔をしている。
クリル
「お前またわざとやってるだろ!」
カズキ
「また? あぁー・・・ん?」
一体何のことだか。
しかもまたというのはどうも2度目のようだが心当たりがない。
クリル
「なんなんだよ!人が真面目に感謝してやろうと思って来たのによ!」
カズキ
「感謝? 誰が?・・・お前が?」
なんでだ更に顔を膨らませ不機嫌になっていく。
何故、何でだ、どうしてだ。
感謝されてるんじゃないのか。
クリル
「だから! お前が色々手回してくれたからこうして殿下とまた一緒になれたって感謝しようとしたのに何なんだよお前!!」
カズキ
「何だよって何だよ」
感謝したいのか怒鳴りたいのかどっちかにして欲しいもんだが、一体なんなんだ。
クリル
「ったく! もう知らねぇよべぇえええええええーー!!!」
下を大きく出してあっかんベーされた。
そうかこの世界にもあれあるのか、意外だ。
アニレナ
「まあそう邪険にしないでくれや」
今度はマッチョアマゾネスのアニレナか。
今日はやけに絡まれるな。
カズキ
「邪険って・・・別にしたつもりはないんだが」
アニレナ
「ガハハハハッだろうな」
今度は笑われ者にされてる。
アニレナ
「ほれ」
カズキ
「ん、ありがとう」
カーンッ・・・。
シャンパンを貰い、乾杯する。
だがこっちはこの見た目で凄く社交性のあるお方だと思うわけ。
ある意味一番親しみやすいとは思う。
アニレナ
「あたしからした意外なんだよ、クリルがうち等意外にあーやって興味持って感謝するのによ」
カズキ
「意外ねー・・・」
何となくわからんでもない。
どうせツンケンして周りから距離を置かれちゃうタイプってのは見ていればわかるし、印象にも残る。
アニレナ
「出来れば、仲良くしてやってくれれば文句はねーさ」
カズキ
「過保護過ぎないか流石に、もちろん嫌いではないから安心してくれ」
がはははっ、とまた笑う。
上を向いての高笑いが凄く、様になってるなこいつ。
アニレナ
「あいつも言ってたがあたしからも感謝するよ。殿下の為に色々動いてくれてよ」
カズキ
「んーー、あいつも勘違いしてるけど。俺は別に王女殿下の為にやったわけじゃない」
実際その通りだ。
結果的に王女や問題事の解決に繋がった。
改めて考えても俺は本当に何もやっていないと思う。
カズキ
「正唱和も式典も評議会も全部俺は殆ど傍観してただけだしな」
それこそヴェアリアスのメンバーと第5騎士の連中のお手柄だろうと思う。
評議会に関して言えばあれは全部王女殿下の力があってこその物だし。
みんながみんなから感謝されるのは、どうもピンとこない。
アニレナ
「大小関係ないんだよ、お前結構みみっちいんだな」
カズキ
「図体の大きさには敵わんよ」
アニレナ
「がははははっ、こりゃ一本取られたわ」
よく笑う。
あの宿屋でも確かに笑っていたが、また違う余裕のある笑い。
本当に嬉しいんだな、殿下の傍に戻れたのが。
アニレナ
「ここだけの話だがよ、お前を騎士団のゆいつの男として招き入れたいって集まりが騎士団にあってよ」
カズキ
「勘弁してくれ、絶対に嫌だ」
そんな目のやり場に困ること絶対に嫌だ。
全員が全員アニレナみたいなマッチョ共なら・・・いやもっと嫌だわ。
アニレナ
「そいつは残念だな、あんたになら抱かれてもいいと思ったんだがよー! がはははははっ!!!」
なんてとんでもない事を言うんだこの日焼けマッチョは。
高笑いしながらどっかいくし。
周りの令嬢達もこっちみてひそひそしてるし。
最悪だ。
カズキ
「はぁ・・・溜息しかでない」
令嬢のひそひそ話だけじゃ飽き足らないのか。
別なところからも話声が聞こえる。
「アニレナさんも狙ってるのかしら」
「さっきクリル副団長も声をかけてました」
「サナミ様だけでなくみんな・・・」
「え・・・もしかして私達も?」
「えっ!!? 待って!心の準備が!」
「やだ!意識しちゃう」
カズキ
(わざと聞こえるようにしてるのか、こいつら)
はぁ・・・。
飯でも食べよう。
そうだ、恐らくみんな酔ってる、うん酔ってるんだきっと。
もしかしたら俺も空腹で幻聴が聞こえるのかも知れないんだそうに違いない。
テーブルに並ぶ料理を眺めながら皿に取る。
あっちの世界のホテルの新年会や忘年会、同僚の結婚式。
そんな機会でしかこういった模様物は味わったこと無い。
そして丁度晩餐会はダンスパーティーへと変わる時が来たようだ。
音楽が変わりムードを作り上げていた。
みな異性と手を取り元々広がっている中央へと向かっていく。
そういった興味も特にない。
今日は呼ばれたから来ただけだし、正直なところ早くサンリーに帰ってクレエスさんと今後の打ち合わせをしたい物だが・・・。
ニーネ
「さぁ!皆さん! ダンスの時間になりました! 王女殿下の謁見もまだの人も多いと思いますが! 申し訳ありません一時中止です! 何故なら王女殿下も1曲踊りたい! そう申したからです」
おぉーー、と会場が沸いた。
それに来賓の人達は納得したのか拍手で答えていたが。
ユミィーリア
「えっ・・・ちょっと!ニーネ!? どうゆうこ」
ニーネ
「心配いりませんって1曲だけ、1曲だけですちょっとだけ」
ユミィーリア
「な、何言ってんの・・・そんな踊りたい人なんて・・・」
ニーネ
「あ、今見た・・・見ましたよね? ねぇ?」
ユミィーリア
「あ!違っ!これは・・・!」
遠目で見てるが何かトラブルか?
なんか完全に王女が拒んでるように見えるんだが。
まあ関係ないだろうと、皿に盛った料理を手に持ち口に運ぼうとした瞬間だった・・・。
ガシッ!!!
急に脇を固められた。
気配が全く無く、忍びよられた。
バラエ
「どもどもっす~、ささ! こちらにどぞどぞ~」
カズキ
「あ・・・?」
口を大きく開けたみっともない状態で3人掛かりで連行されていく。
両手に花、後ろにも花。
今は花より団子の気分なんだが。
中央近くで背中を押され、正確には蹴られて解放された。
当然変な注目を浴びる。
一体何が・・・なんて無粋なことは考えていない、まさかとは想像してしまう・・・。
サナミ
「さぁ・・・殿下」
ユミィーリア
「サーちゃんまで・・・で、でもいいの?」
小さい声でささやく。
サナミがエスコートする手が一瞬止まる。
サナミ
「・・・・・・ナニヲイッテルンデス?」
ユミィーリア
「そっか~・・・じゃあご褒美として頂きます」
手を取った。
サーちゃんの手が妙に汗ばんでいるの面白くて少し笑ってしまった。
そして手を引かれながら中央にきた、そこにはちょっと難しい顔をしたあの方が居た。
カズキ
「・・・・・・」
王女がサナミさんに連れられて目の前まで来た。
手を離しこちらまで歩いてくる、やっぱりこうなるか。
ならもう観念するしかないか。
カズキ
「・・・よろしくかったら」
お辞儀をしながら手を差し出す。
こうゆう時のちゃんとした作法なんて知らない。
それっぽくやればいいだろうという奴だ、普通に王女殿下に失礼じゃなきゃいいが。
ユミィーリア
「喜んで」
差し出した手を取った。
まるでそれを待っていたかの様に音楽が更に盛り上がった。
王女の腰に手を回し踊る。
ユミィーリア
「あの・・・すみませんでした、その洋服」
カズキ
「別に気にしてない、忙しい身なのもわかってる」
ユミィーリア
「それも・・・あるんですが・・・」
気まずそうな顔をする。
本当に気にしてない、以前盗ん・・・頂いたローブを羽織って参加している。
それでも他の面々と比べてしまうとあまりこの場に不相応かもしれないが。
ユミィーリア
「改めてありがとうございます、カズキ様。私達を救ってくれて」
今日は本当に感謝される日のようだ。
流石に王女に言われたら濁すのも失礼だと思い黙った。
ユミィーリア
「私も、カズキ様のおかげで前へ進めるような気がしました」
カズキ
「そうか」
今日の式典でも言っていたきっかけの話。
俺は確かにきっかけだった、だけど実際に前へ進んだのは彼女自身の力だ。
カズキ
「でも大事なのはこれから、君の今の気持ちを更に大きくしていく為にももっと頑張らないとね」
ユミィーリア
「はい・・・でも私はもう一人じゃない、いえ一人だけで考えるのはもうやめたので」
王女が周りに視線をやる。
第5騎士団。
そう彼女は一人じゃない、常に周りには信頼の出来る部下であり、愛すべき友人達。
彼女達がまた王女と手を取り合って共に前へと、未来へと進んでいく。
ユミィーリア
「それに・・・もっともっと自分の好きを・・・知りたくもなりましたし」
カズキ
「ん? ・・・そっか、大切にしないといけない物がいっぱい出来たもんな」
元々大切な物。
短い期間だったが失って初めて大切な物がどれだけ自分にとって掛け替えの無い物だったか。
それを再認識したのだろう。
ユミィーリア
「それ・・・だけじゃないですけど」
カズキ
「・・・・・・どうした顔赤いぞ」
ユミィーリア
「なっ・・・! なんでもないです!」
流石に疲労が溜まってるのだろうか。
確かにここ最近はずっと働き詰めだと聞いていた。
風邪でも引いたら大変だ。
カズキ
「最後にいい思い出が出来たよありがとう、俺達がサンリーに帰っても元気でいるんだぞ」
音楽がダンスの終わりを告げようとしていた。
ユミィーリア
「ふふふ、 そう・・・かもしれませんね」
カズキ
「え? どうゆう?」
手を離されお辞儀をされた。
1曲の音楽が終わった。
短いように感じたのは、俺も楽しんでいたからか。
ユミィーリア
「それでは、引き続きお楽しみください」
そうして、俺に背を向け王女は去っていった。
取り残されるような形で俺はその場に佇んでいた。
そして彼女の言葉の真意は・・・数日後に判明したのだった。
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【復興支援の村 サンリー】
ユミィーリア
「この度この復古支援の村の大使として帝国王都より参りました。
ユミィーリア・エールス・ナイクネスです。
今後は皆様と共にこの村の発展と共に多くの人へ手を差し伸べれるように尽力していきますのでよろしくお願い致します」
パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!
カズキ
「・・・・・・え?」
野暮用も重なり今朝知った。
そこには王女とクー村長と握手をしている姿があった。
セイトー
「ちょっとぉおお!!! カズキはん!カズキはん!!? なんで教えてくれんかったのや!! こうしちゃいられん!!」
商談の為に一緒にきたセイトーが荷馬車に急いで戻っていった。
パァアアァアンッッ!!
シュリー
「ちょっとあんた何ぼさっとしてんのよ」
頭を叩かれた。
振り向くとシュリーを見ると宙に浮かんでいる大量の料理がそこにあった。
カズキ
「あの・・・聞いてないんだけど」
シュリー
「知らないわよ、いいからあんたも手伝いなさいよ」
ミュー
「あ、カズキさんこれ!お願いします!」
大きな料理を手渡された。
そして俺は王女への歓声が上がっている中言われた通りに料理を運んでいった。
カズキ
「はえ?」
ヴェアリアスのメンバーはせっせと宴の準備を進めていた。
よく見たらそれだけではなかった。
バラエ
「あ! ちょっと失礼するっすー!」
アニレナ
「邪魔だよ!」
何故かエプロン姿の第5騎士達もみな料理を運んでいた。
本当に俺一人が取り残されているような状況だ。
カズキ
「あっ・・・!」
通りすがりの一人の手を取る。
サナミ
「ん? どうしたの?」
カズキ
「え・・・どうって、これなんですか」
軽装のエプロン姿のサナミさん、凄く良い。
カズキ
「じゃなくて・・・王女殿下のことですよ、俺一切聞いてないし」
サナミ
「んーーー! まあそうゆう時もあるんじゃないかな!」
物凄い笑顔で言われた。
そして今気が付いた。
俺はハメられたんだ。
最近妙に村から外出する事が多いこと任せられると思っていたが、まさかこれを隠す為か。
完全にやられた。
サナミ
「ふふっ・・・ヴェアリアスの新メンバー、仲良くしようね」
カズキ
「え?」
新メンバー?
嘘だろ、まさか・・・。
ユミィーリア
「ん?・・・ふふ」
目線が合った瞬間笑みで返された。
俺は巷の噂を思い出した。
再式典後のユミィーリア王女殿下の通り名。
帝国市民は多くの人が口にした。
まるで美しい変遷を遂げた麗しい金色。
美遷麗 ノ 金色 。
彼女の存在全てが無変遷から解き放たれたと。
これからの彼女のみならず、帝国の明るい未来を期待を人々は期待していた。
カズキ
「はぁ・・・ふっ」
確かにやられた。
こんな楽しそうな未来は、期待せざるおえないな。
サナミ
「カズキさん、早くしないと挨拶終わっちゃうよ」
手を握られ引っ張られた。
引っ張る人間の顔は良く見えないけど、凄く楽しそうだと思った。
もしかしたら、今この状況を心の底から喜んでいるのは彼女なのかも知れない。
軍記違反、騎士団停止処分などからの解放からでは、無い。
自分が思い描いた以上の未来が、今ここにあることに。
彼女はただ純粋に喜んでいるのだろう。




