第24話 創立記念式典
ネシーという伯爵令嬢のもたらした情報により事態は急変した。
ヴェアリアスと第5騎士団で多くの情報を手に入れていた。
そんな時にネシー嬢が誘拐された。
シュリーは一報を受け単身で敵の潜伏先へと乗り込む。
だが、時すでに遅く、ネシー嬢の兄は殺されてしまっていた。
敵はいわく付きの術技を使う者達と対峙していたが。
シュリーの相手にはならなかった。
それからは後に聞いた話だが自警団が到着し、誘拐された令嬢を保護。
第5騎士団が事態の収拾に努めたとされているようだ。
【王都ナイクネス エイジルト邸】
エイジルト
「なるほど、正唱和団・・・ですか」
直接エイジルトの家へと押し掛けた。
どうやらエイジルトも立派な貴族のようだが、王都には居座らずギルド関係の人間としてベルデラに腰を落ち着かせた人間。
意外だったようなそうでもないようなと、自分の中では変な気分だった。
ただでさえ掴みきれない人間だ。
カズキ
「やっぱり心当たりがあったのか?」
エイジルト
「いーえー、正式名称は今初めて聞きましたよ」
とは言っても俺も道中にシュリーから聞いたくらいで詳しいことまでは聞いていないが、大体は予想がつく。
エイジルト
「それでー、これですか?」
ある書類を一枚エイジルトへと渡した。
それは先日ニーネさんから頂いた物だ。
カズキ
「あぁ、明日執り行なわれるユミィーリア王女殿下の記念式典だ」
エイジルト
「存じていましたが・・・もしやカズキ君、とんでもない事考えてませんか?」
エイジルトがどう想像しているのかわからない。
だがやらなくてはならない。
俺が考える最悪なケースを回避する為に。
エイジルト
「だとしても、一端の冒険者ギルドの人間の私には何もできませんよ」
カズキ
「何言ってるんだ?」
机でコーヒーを飲んでいるエイジルトへ詰め寄る。
そして今まさに手に取っているコーヒーを奪い飲む。
カズキ
「俺はあんたに・・・報告をしているだけ、そういう関係だろ?」
一気に飲み干し、空のコップを返す。
エイジルトは空のコップを悲しそうに見つめる。
まるでこちらの話を聞いていないようだ。
エイジルト
「そーですが・・・はぁ、くれぐれも厄介事は起こさないようにお願いしたいところですが?」
カズキ
「善処します、冒険者の見習いなりに」
ポーチから大きめの小箱を取り出し、エイジルトに差し出す。
中には、フタヤ村での採れたてのヒーコの実を俺の最新技術を取り入れて作り上げた粉末状のコーヒーが入っている。
カズキ
「最新作、よかったら如何ですか?」
エイジルト
「おほぉ~・・・これはお裾分けというやつですか、仕方ありません。人の、善意はを無下にしてはいけませんからね」
エイジルトはそれを受け取った。
それじゃあ、と俺は屋敷を後にした。
エイジルト
「これはこれは・・・上質な物で・・・早く誰かに自慢しなくは」
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【開発発展街ヴォル 元老院館】
エイジルトに話しをした後、すぐにヴォルへと飛んだ。
本当ならレイドラを休ませてやる予定だったが。
レイドラ
「終わったらいっぱいデザートを頂ければ問題ありません!!」
一番の食わせ者はこいつなのかも知れない。
そうしてヴォルに到着後すぐに元老院の館へと向かった。
「カズキ様、急にどうされました」
すぐにある事を持ち掛けた。
シュリーが戦った正唱和団の使った術技とその機械だ。
シュリーの話しでは、術技の威力と性能はまさに本物に近く、スクロールなどで会得し始めた者ではないと断言していた。
その情報を聞いた時シュリーも少なからず気付いていたかも知れない。
だがこの件は俺に任せてほしいと伝え、ネシーのそばにいてあげるように伝えた。
『はぁ!!? お姉ちゃんって、誰n!!!』
そして思い当たることと言えばこれしかなかった。
カズキ
「ヌーター・ハーテライシュの研究情報が誰かしらに渡ってしまっている可能性・・・もしくは」
「なっ!! ちょ! カズキ様、ここは元老院本館ですよ。そんなこと大声で・・・」
慌てふためき周りに人がいないか確認しながら俺に近づく。
そう、研究情報は全て非道とされる違法物。
もしそんな物が、破棄したはずなのに出てきてしまった場合の矛先は、学者や世界の発展に貢献を目的としたこの元老院になる。
カズキ
「だから・・・な? お父さん?」
書類を手渡した。
内容は非常に素敵な物だ。
赤子が生まれる際の必要事項を明確に記載した物だ。
生む際の最適な病院のピックアップ、タルシナ村からの乳製品のお取り寄せ規約書、出産時そして出産後の奥さんへのケアに大事なこと。
そして赤子と暮らす上での住宅物件の情報。
「こ、これは・・・?」
カズキ
「じゃあそうゆうことで、奥さんを支えてやれよー・・・」
背を見せ手を振り去った。
彼の奥さんが最近赤子を身籠ったことは前々から知っていた。
そしてその御祝を陰ながら考えていてら出来てしまった副産物。
効果はどうかわからんが、何かしらの役に立つとは思わなかった。
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【第2都市ベルデラ 商会組合ベルデラ支部】
ここには元々あった待ち合わせをしていた。
商会館に入るのは初めてだ。
冒険者ギルドとはまた違った雰囲気の場所だった。
俺はそこの一階にある飲食店、簡単に言うとカフェだ。
この店特製の紅茶をごちそうになっていた。
シュリーの入れてくれた紅茶の方が好みかも。
そしてレイドラには休憩の意味も込めデザートをいくつか注文しておいた。
セイトー
「はぁ、はぁ、はぁ・・・カズキはん。おまたせしてほんますんまえん」
息を切らしながらセイトーさんが走ってきた。
確かに時間が惜しいが、やはり急かしてしまう姿を見るのは心苦しい。
カズキ
「いや、逆に申し訳ないですついでに休憩させて頂いていたんで」
セイトーは書類一式を片手に向かい側のイスに座る。
同時に店員が寄ってきたので飲み物も注文した。
セイトー
「いやーほんま、大したお方ですよカズキはん」
早速称賛の言葉だ。
という事は恐らく頼んでいた調べ物が予想通りだったのだろう。
セイトーさんの頼んだ飲み物が手元に届き、話しが始まる。
セイトー
「どんぴしゃでしたわ、カズキはんの読み通り。連続殺人の被害者達、やっぱりやってましたよ」
カズキ
「そうでしたか、となると例の件も?」
セイトー
「いやそれが、流石に商会組合としてもどうにかしたいようですが相手が相手なもので」
流石に難しいか。
商会組合は国境を越えて運営する大組織。
帝国支部だけではやはり動くことは難しいってことか。
セイトー
「ただですね、それ相応の方からの申請さえあればすぐにでも動きます。 上に掛け合った時に手応えはありました」
商会組合としても今回の件が痛手になっていると言う。
もしどうにか出来ることがあればすぐにでも動きたいが、重い腰はそう簡単には上がらないということか。
それ相応の方・・・。
カズキ
「なら、このまま計画通りにお願いしていいですか」
セイトー
「ほう、心当たりがおありで?」
カズキ
「ないですよ、ただ作ろうかな。とは思ってます」
自信に満ちた笑みで返した。
それを見たセイトーも何やらいやしい目つきで笑う。
カズキ
「じゃあその資料・・・貰って」
セイトー
「カズキはん、いけませんよ? わてら協力関係者、そんな方から報酬をせびるなんてけったいな真似はできまへん。ただ・・・」
安心が欲しい。
確かにセイトーさんへはかなり俺の仮定の話しを多くしていた。
だが、これからやろうとしていることに関しては、ついさっき思い付き自然と結びついた物。
彼はそれが知りたくてうずうずしている、そういう目だ。
カズキ
「だから言ったでしょう、作るって・・・仕方ないから教えてあげます。あくまで予定・・・ですけど」
セイトーさんにおおざっぱではあるが今後の行動とそれに連なる未来を周りに聞こえないようにこっそり伝えた。
そう、これはあくまで予定。
俺の中にある妄想を言葉にしたまでのもの。
確実性なんて皆無に等しい。
だが、実現したいと願う。
実現すれば絶対に良い方向へと向かうこと間違いない物だ。
セイトー
「ほえぇええーー!!」
仰天していた。
普通なら考えられないだろう。
貴族や平民、帝国騎士だろうとそれを実現するのは難しいだろう。
だが俺なら・・・ヴェアリアスなら出来る。
セイトー
「なるほど・・・わかりました、そん時はすぐにご連絡下さいませよ? セイトー組は大手を振るい駆け付けいたしますので」
それはつまり、他の人には出来るだけ内緒にしておいてということだろう。
書類一式を渡される。
もちろんだ、それはそれで余計な大事にはしたくない。
どうしても大きな事になるのは間違いないからである。
セイトー
「ほな、わてはここいらで。そんな話し聞いたら身体が疼いて仕方ありませんわ」
そしてセイトーさんは着た道を戻っていくようにして帰っていった。
根っからの商売人。
だからこそ信用が出来るし、今後も期待したいとも思う。
カズキ
「そろそろ行くぞー」
レイドラ
「えっ!? ちょ、ちょっと待って下さいマイロード」
残りのデザートを急いで食べようとする。
そんなに急ぐと、という前に喉を詰まらせていた。
仕方ない奴笑みをこぼし俺達は少しだけまた休憩に勤しんだ。
レイドラの休憩も終わり、俺達は王都へと戻ることにした。
その最中にセイトーさんからもらった資料を確認していた。
カズキ
「やっぱり・・・あったか」
それは一人の男の情報だった。
男の情報には人材派遣に関することが書かれていた。
その中に派遣先の不正申請と意図的な悪性ある人事異動の疑いとも書かれていた。
カズキ
「よし・・・だとしたら確実に奴らは来る」
正唱和団が次に狙うのはこの人だ。
そう確信しクレエスへと通信をかける。
カズキ
「もしもし、カズキだけど。うんその資料今から転送するからFAX・・・んーっと文字転送結晶で確認をお願い」
元々クレエスさんには色々とまとめて貰っていた。
俺の想像が実現した場合に想定される事象。
それに関する資料集めと連絡。
セイトーさんや元老院の人間、そしてエイジルトにも俺の手が届かない所全ての対応をお願いしていた。
これが終わったら労いが必要だと思いながら後で考えておくことにした。
カズキ
「そう・・・ヴェアリアス、あと第5騎士団の方々にも説明をお願いします。 誘拐事件の後で疲れてるとは思うけどこの件は、みんなの力が絶対に必要になるから」
クレエス
「・・・・・・かしこまりました、それではすぐに手配致します」
それだけ言い通信は終わった。
クレエスさんには本当に頭が上がらない。
これからの事を1からみんなに説明をさせてしまう。
俺がみんなの前で伝えるのもいい、だが俺には早急にやらねばならないことがある。
レイドラ
「マイロード」
カズキ
「ん、どした?」
レイドラ
「絶対に上手くいきますよ!」
そっか、ある意味こいつは全部知っている。
こいつだけじゃない俺の胸の中でずっと俺達を見守っているミツバも。
絶対にやってみせる。
成功失敗じゃないと学んだ。
勇気を一つ。
せっかくの勇気だ、大きくいかなきゃ損だ。
今日の夕暮れの空は俺達の未来を暗示しているかのようにとても輝いて見えた、そんな気がした。
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【王都ナイクネス 宿屋】
ヴェアリアスと第5騎士の主要メンバーは、カズキの要請で集まっていた。
だがその張本人はいない。
変わりにと、サンリーにいるクレエスが代行を務め通信越しに説明をしようとしていた。
少し大きめの通信結晶をスピーカー代わりにみなに聞こえるようにして。
クレエス
「では、皆様御集り頂いたと判断して早速説明に移らせて頂きたいと思います」
まだネシー令嬢の件もしっかりと済んでいない状態なのにも関わらずクレエスは話す。
ここに集められたメンバーは、一体何があるのかと誰も詳細を聞かされていない状態である為妙な空気が漂っていた。
クレエス
「まず、最初に皆様がネシー様の件からお疲れであることも考慮したい所ですが急を要する事態である事を前持ってお伝えしておきます」
見えないみなの顔の表情とはお構いなく話しを進めていった。
だが、みなは時間が無いからこういった処置に出ていると考え真剣に耳を差し出していた。
フェーチス
「記念式典って明日の?」
ニーネ
「ってことは先日のあれ・・・って」
ニーネが顔を赤らめた。
そう、先日カズキがニーネに言い寄ってきた際の内容だ。
一応みなには話したのだが、どうしてそんな事をカズキが調べているのか皆目見当つかなかったという。
クレエス
「今回この記念式典には、ユミィーリア王女殿下がご出席されます。そして一緒に第2近衛騎士団も」
その名前が出た瞬間に場が凍った。
第2近衛騎士団、自分達第5近衛騎士団から王女殿下奪った奴らだ。
クレエス
「今式典においてユミィーリア王女殿下ならびにその関係者が正唱和団から襲われる可能性があると、カズキ様はお調べになりました」
クリル
「マジかよ!!」
士官学校の創立記念式典。
それは多くの関係者や著名人が来賓する場であり、それなりの規模の大きな物。
そんな所で反政府行動が目論んでいるなんて情報は誰も考えていなかった。
第5騎士団でも驚きを隠せないでいた。
ニーネ
「ちょっと待って下さい! そんな所にのこのこ出てくるなんて殆んど自殺行為に等しいですよ」
シュリー
「いや、奴らはやるわ」
シュリーが鋭く断言した。
この中でゆういつ正唱和団と一戦交えたシュリーだからこその言えた。
正唱和団はそんな大舞台を絶対に見過ごさない。
理性では抑えられないはずだ、と確信できる。
それこそそんな大舞台で何かを成し遂げた時、それは正唱和団という集いを公定してしまうような物に等しい。
それを声に呼びかければ、奴らの歯止めは壊れ止まらない。
クレエス
「カズキ様よりお受けした我々ヴェアリアスの作戦目標については一つだけです。「ユミィーリア王女殿下の絶対死守と保護」です」
サナミ
「保護・・・ですか」
クレエス
「はい、作戦目標に関する推測と遂行するに当たる内容も何個か提示されている物がありますのでご説明してもよろしいでしょうか」
みなクレエスの言葉を聞き逃さないようにしているが、あまりに唐突な事が多すぎて整理が追いついていない様子。
そんな中フェーチスは話しを聞いていながらもみなにお茶を振るまっていた。
シュリー
「絶対死守・・・そして保護」
サナミ
「目標の推測か・・・」
二人は口に手を当て自分の中に落とし込んでいた。
カズキの話しが本当である場合を想定した場合を。
何が起き、何をしていくのか。
カズキの考え読み解きながら自分の情報と照らし合わせる。
他の面々はまだピンと来ていない様子ではあるが、事態の深刻さは感じ取っていた。
クレエス
「皆様よろしいでしょうか?」
クレエスの催促にサナミもシュリーも顔上げた。
そしてみなの顔を見てクレエスに続けてもらうようにお願いした。
クレエス
「承知しました・・・」
それからは長い作戦会議になった。
次の日、もっと言えば数時間後には記念式典が始まってしまう。
それまでに詰めれることは詰め、話し合い、確実性の高い物にしたいと考えていた。
時間が惜しい。
クレエスが最初に言った通りネシー令嬢の件に浸っている時間はなかった・・・。
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【王都ナイクネス ユミィーリア別荘】
明日は帝国にとっての大事な式典。
その打ち合わせが今行われている。
自分がそれに参加し式を盛り上がること間違いないと、第2騎士団の方々は言う。
あまりにもピンと来ない。
というよりもただ自分は用意された原稿を読み段取りに沿った事をすればそれでいいという内容。
それだけの為に打ち合わせということでずっと同じ所で居座っている。
トクスト
「では、明日の式典。どうぞよろしくお願い致します」
ユミィーリア
「はい・・・」
第2騎士の方々次々と退出していった。
私の身辺警護の配置、その際の心構え、想定されるトラブルにおいての対処法など永遠と同じような会話をしていた。
あまりに退屈だった。
第5騎士団のみんなと比べる。
大体は紅茶やお菓子を片手に他愛ない雑談をしながら決めていき司会のニーネさんがおろおろしてサーちゃんが治めて話し会って笑いあう。
そんな日々を私は楽しんでいた。
今となって気付く。
人は失ってから気付くことが多いとよく言うがその通りだ。
カチャッ・・・。
そうか、もう日も落ちて夜になっていたのか。
それに気付かないほどにいたなんて。
夜風が吹く。
冷たくて気持ちがいい。
夜空を見上げるといつも思い出す。
あの時の夜空、カズキさん達と見た雲の上での夜空。
ただ一言。
カズキさんへお願いしたからこそ見れたあの景色。
今でも目に刻まれている。
だからこそ、今まで見ていた場所からの夜空もまた変わって感じる。
カタカタッ・・・。
強い夜風に窓が揺れる。
今日はどうも風が騒がしいように感じた。
何かの前触れにも感じる。
そんな予感を感じ取った。
窓を開けたまま振り返る。
先ほどまで居た人達はもういない、恐らくもう解散し警備の者達に任せて帰宅したのだろう。
そんな事を考えながらまた彼女達の事を思い出していた。
こんな日は一度解散した後またみんなで集まってまた談笑をしていた日もあった。
大切な日が明日に控えているのに、まだ喋り足りないのかと笑いあった。
ユミィーリア
「ふふっ・・・未練がましい、のかな」
ふと今日は窓を開けたまま過ごそうと思った。
この気持ちのいい夜風を入れて就寝するのも悪くないだろう。
サーちゃんが知ったら風邪引くと怒られそうではある。
やっぱりみんなの事を考えると自然と笑みが浮かぶ。
まだ眠気は全然ないけれど、と寝る準備をしようと足を動かした瞬間・・・。
カズキ
「不用心ですよ、窓なんか開けたままだと」
前へと行く足が止まった。
聞きなれた声、あれから忘れることのできなかった声。
もしかしたら一番に聞きたかった声が聞こえた。
ユミィーリア
「と、盗賊さんに攫われてしまうからですか?」
まだ振り向いてはいけない。
何故かは自分にもわからない。
カズキ
「いえ、先を越されたら困るのですよ。デートのお誘いを」
またこの人は、紳士を気取っているのか。
私は知っている、この人がみんなの前で私が王女殿下と知った時の顔を。
その後にみんなにタコ殴りにあっていたことを。
なのに、またそんな言葉を私に投げかける。
あの時のように・・・。
一息付き、ゆっくりと振り向いた。
そこには窓から手を差し伸べる男性がいた。
幻覚ではなかった。
カズキ
「さぁ・・・お手をどうぞ」
今度は違う。
お願いされた。
私の無理なお願いではない、今度はお願いされた。
そんな手を・・・取らないわけにはいかない。
きっと今日の夜の空は一段と綺麗だと思う。
また違う夜空が見れると・・・期待を胸に、その手を取った。
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【王都ナイクネス 帝国軍士官学校大型集会施設】
デカイ。
近くの高台から見下ろしているが、そんな感想しか出せなかった。
まるでコンサート会場という感じのところだった。
前の世界の日本武道館くらいあるんじゃないのか。
クレエス
「カズキ様、各員配置につきました」
カズキ
「報告ありがとうございます、あとはみんなに任せて俺は俺の仕事をします」
通信終わる。
あとはみんな次第、その後は俺が全て終わらせる。
そして必ずいつもの優しい平穏に・・・。
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【帝国軍士官学校大型集会施設 野外】
第5騎士団は野外の警備を任命されていた。
もちろん第5騎士のみならず帝国兵士達も多く警備班として投入されている。
「な、何なんですかねあの耳についてるやつ」
「さぁ・・・なんかのお守りじゃね?」
第5騎士団全員にはシュリーが研究開発しカズキが精製したインカムを各自に配られていた。
真素の消費を省エネに省エネを重ねた自信作である。
アニレナ
「なんだか、少し緊張するねー」
クリル
「珍しいなお前が緊張なんて」
二人も野外での警備である。
外からは中の様子は見れないだが。
ピ!ピピッ・・・。
全体に通信が響く。
バラエ
「こちらバラエっすー、優先順位1位を透視越しに確認、真素探知による本人確認も済んでます。オーバー」
通信が切れた。
第5騎士達の緊張感が更に増した。
アニレナ
「にしてもいいなこれー、インカムだっけか? 直接耳に付いてそう簡単に取れないし、外からの音も阻害されてねーしな」
クリル
「ったく呑気な事言うなよな」
アニレナ
「そうでもしなきゃ暇だろう?」
そう、まだ彼女達は動けない。
というよりも事態が発生がした時に全てを賭けている。
その準備も十二分にした、トラブルの可能性も前もって潰し、いかに円滑に進むかという事を思う存分話した。
クレエスから今回の作戦の全容を聞いてから今まで睡眠以外はほぼその時間に費やした。
最初のきっかけはカズキかもしれない。
だけど、全体の細かなことは全てみんなで決めたことだ。
アニレナ
「お、そろそろ始まるぞ」
いよいよ式典が始まる時間だ。
そしてこれから正唱和団が動き出す時間でもある。
バラエ
「こちらバラエー、えーっともう何人かそれっぽいの補足しておいたんで、数は約30近くっすねー」
ナザ
「こちらナザ、俺も会場内で20近く補足した。思った以上に多いぞこれ」
わかっていた数字よりも多い。
現在会場内で補足している人物は正唱和団に属するであろう人物達である。
昨日のネシー誘拐事件の際に使われた奇妙な術技達。
その正体は機械による物だった。
自警団が到着する前に何個か回収しシュリーがすぐに解明しその真素の余波を感知できる小型の望遠鏡を作り少数だがカズキが量産した。
それを通して人を見るとその機械の反応を感知でき所持者が判明するという物で各班のリーダーに手渡してた。
ナザとバラエが会場内で偵察を行っている。
アニレナ
「んじゃあ段取り通りやるよ、あたし等茶組は、外からの人間の対処いいね?」
「「「「はい!!」」」」
クリル
「私達緑組は突入係だ、事態が発生したらすぐさま目標地点に向かういいね?」
「「「了解です、副団長!」」」
副団長。
やっぱり自分はそれが合っていると笑う。
先日まで団長代理だったが、やっぱり団長はサナミ様じゃなきゃ。
クリル
「おっしお前ら!!気合入れるぞ!!!」
我らの剣は王女殿下の為に!!!。
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【帝国軍士官学校大型集会施設 控え室】
王女殿下の控え室は、第2騎士団が厳重警備されている為立ち入ることはおろか、王女自身が抜け出すことは出来ない厳重体制だった。
控え室にはトクスト団長が一人王女とも同行している状況だ。
ムロエ
「トクスト団長、時間です」
トクスト
「では、王女殿下こちらに・・・」
手を差し出すが、王女殿下はその手を取らず自らの足で歩いた。
彼の力は借りない、そう言うかのように進んだ。
トクスト
「・・・・・・」
ムロエ
「団長・・・、行きましょう」
王女殿下の後ろを付ける形で二人もメイン会場へと向かった。
トクスト
「なぁムロエ、今朝から王女殿下の様子変じゃないか?」
朝目覚めの時間からほぼずっと一緒にいる。
着替えも自分が部屋を伺った時にはもう済んでいた。
よっぽど今日の式典に力を入れられていると思ったが。
ムロエ
「考えすぎですよきっと、トクスト様も疲れていられるからでは?」
トクスト
「・・・そうかもな」
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【帝国軍士官学校大型集会施設 メイン会場】
外では花火が打ちあがっていた。
つまりそれは式典の開始を意味する合図だ。
ナザ
「始まっちまったか・・・」
シュリー
「・・・・・・」
準備も済ませた。
自分にやれることをしたつもりだ。
まだ詰めが甘い所もあるかも知れない、それでも昨日の自分は最高のポテンシャルで準備に挑めた。
あとはそれを無下にしないように今日の本番を動くだけだ。
シュリー
「じゃあナザ、予定通りお願いね」
ナザ
「了解です博士! ご武運を」
握られた拳を出された。
これはよくカズキとナザがやっている物だ。
意気込みの儀式、そんな物は子供騙しだと馬鹿にしていた。
だけど今は。
トンッ・・・。
シュリー
「あんたもぬかるんじゃないわよ」
ナザと別れ予定地点に向かう。
自分の役目はこの作戦に置いてかなり重要な役割だ。
失敗は許されない。
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチッ。
会場ではオープニングセレモニーが始まっていた。
流れる音楽。
湧きあがる拍手。
そしてメインステージには司会進行の男が現れ拍手は止む。
これからの式典の進行等の説明を行う。
会場の観客の多くは王都市民。
王女殿下を一目見ようと遠くから来ている者達もいるという。
それだけユミィーリア王女の効力は王女自らが思っているよりも予想を遥かに上回っている。
「それでは、開会の挨拶の御一人目をご紹介したいと思います。本校、帝国士官学校、現理事長ですみなさん盛大な拍手で御持て成し下さい!!」
司会の言葉通りに観客は盛大な拍手で会場を震わせた。
理事長がメインステージへと足を運び、拍手は徐々に小さくなった。
「皆様、本日は我が校の創立記念式典に足を運んで頂き誠にありがとうございます」
一人目の挨拶。
つまり、二人目というのは女王殿下の事である。
「私の立場上こんなことを言ってはいけないと思いますが、皆様のお目当ての方の前にこの老いぼれのお話しを少しばかり聞いて頂ければと思います」
会場が少し笑った。
バラエ
「はははっ、いやーその通りっすよねー」
バラエも笑っていた。
言わずもみなが王女殿下の登場を今か今かと待ち望んでいる。
理事長の話しも聞いているが、どうしても気持ちはそちら向いてしますのだ。
ナザ
「なんかいい人そうなのにな・・・」
ナザは普通に聞き入ってしまっていた。
もちろん会場の偵察は怠らない程度にまだ起きぬ事態前の会場の雰囲気を楽しんでいた。
だがそれも・・・また終わりを告げようとしていた。
「では、私のお話しはこれくらいで。後のこの方にお任せしましょう」
理事長がステージの中央を明け渡した。
それを合図に司会進行がみなが待ち望んでいた名前を呼ぶ。
「それでは皆様大変長らくお待たせ致しました。 本日の式典にお忙しい中お越し下さいました。ユミィーリア・エールス・ナイクネス王女殿下!! どうぞ檀上へとお越し下さい!!」
パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!。
今日一番の歓声と拍手が巻き起こった。
観客の中には王女殿下の名前を叫ぶ者も多くいる中、ついにその姿を現した。
ユミィーリア
「・・・・・・・」
笑顔と綺麗な挨拶で会場をさらに沸かせた。
歓声はさらに大きくなり、拍手の音も大きさを増した。
檀上へ上がり、理事長に一礼を・・・・・・した瞬間だった。
「逆族の王女殿下!!! 覚悟ぉおお!!!!」
会場から3人の男達が檀上へと飛びこんできた。
ステージ前で警護している人間は間に合わない。
トクスト
「王女殿下!!!!!!」
舞台裏で見守っていた第2団長とも距離があり間に合わない。
3人の男達は理事長含め王女を襲うとしていた。
ユミィーリア
「アサルトステップ!」
「何・・・!!?」
男達は驚愕した。
王女が理事長と共に消えた。
違う、瞬間移動した。
「おぉ・・・!?」
ユミィーリア?
「申し訳ありません理事長、その場から動かないようお願いします」
それだけを告げ、王女は二本の剣出現させた。
その姿に襲おうとした3人は一瞬驚きを隠せないでいたがすぐに襲いかかってきた。
ユミィーリア?
「バレット ナイトレイ・ヴォルグ」
パァアアアン!!!
剣をガンモードに変形させ襲い掛かる者に弾丸を食らわせた。
弾丸は貫通し悲鳴と共に意識を失わせた。
「こ、このぉおお!!!」
小さなナイフを片手に突撃してくる。
だが、片方の剣でナイフを払い除け一撃を加えた。
糸が切れたようにもう一人も撃退した。
「くっ!! こいつだけでも、ウィンドショット!!!」
最後の一人が理事長目掛けて術技を放った。
当然理事長には防ぐ手立てはない。
ユミィーリア?
「ナイトレイスラッシュッ!」」
ガキィイイン!!!!
金属音がぶつかる音が響いた。
理事長の間に入り剣の一振りで術技を跳ね退けた。
ユミィーリア?
「大丈夫ですか理事長!!」
背中に理事長を庇う形で襲撃者を見る。
「あ、ありがとう・・・き、君はいったい」
トクスト
「はぁああああ!!」
舞台袖からトクストが走ってきて最後の襲撃者を討ち取った。
トクスト
「王女殿下!ご無事ですか!?」
ユミィーリア?
「そんな事はいいです! 市民の誘導と理事長の護衛を!急いで!!」
まるで怒鳴るようにトクストへと指示を出す。
その姿にトクストは唖然としてしまっていた。
「ぐわぁああああああ!!!」
「王女と理事を討ち取れ!!!」
第2騎士達が次々とやられていく。
会場は大パニックに陥っていた。
逃げ纏う市民。
次々とテロリストは警備の兵士達に襲いかかる。
ユミィーリア?
「早く指揮を取って!! このままだと全滅する!!」
何処から取り出したのかクリル達と同じ王女は耳にインカムを付けた。
ユミィーリア?
「バラエ!」
バラエ
「補足出来てまーす! いつでもいけるっす!!」
インカム越しに確認し二本の剣ガンモードへと変形させ両手を突き出す。
ユミィーリア?
「マルチツイン ナイトレイヴォルグ!!」
術技を唱えると同時に引き金を引く。
その瞬間銃口から無数の弾丸が発射され戦う騎士団をすり抜け襲撃者達を
次々と撃退していった。
ユミィーリア?
「はぁ、はぁ、はぁこれだけの数流石に・・・何をしているのですか!!トクスト第2団長!!」
王女の勇姿に圧倒されずっと同じところで慌てふためいていた。
そんなトクストの事などお構い無く襲撃者は檀上へと上がろうとしていた。
「王女殿下、ご覚悟を!!!!」
クリル
「近付くんじゃねぇえゴミがぁああ!!!!」
檀上へ上がろうとした瞬間襲撃者は、クリルに吹き飛ばされていた。
クリル
「緑組目標地点に到着!! 遅くなってすみませんでした団ち・・・王女殿下!!」
ユミィーリア?
「ありがとうクリル、これでこっちは大丈夫そう。 他のみんなは理事長を守って!!」
クリルと共に来た緑組の騎士達へと指示を出す。
はい!勢いのある返事と共に理事長の周囲に陣形を作る。
ユミィーリア?
「こちら黒組、予定通り優先順位1位の死守に成功。このまま防衛行動に入ります」
インカム越しにみなに作戦の第一段階の成功の報告をした。
それに呼応するようにみなの士気が上がった。
アニレナ
「こちら茶組!! 何とか正面の入口はなんとか死守してっけど、何人か抜けてる気を付けてくれ!!」
正面防衛のアニレナからの報告。
そうか、やっぱりそれだけの団員をかき集めてきたのか。
おまけに例の機械のせいで並大抵の兵士ではやられてしまう。
まだ第5騎士団の負傷者は出ていないが時間の問題か。
クリル
「おい! 第2!! お前らもうちょっと頑張れや!!!」
トクスト
「な、何を!! 貴様!!」
ムロエ
「トクスト様!! 第2騎士団の損害が激しすぎます! 王女殿下達を連れて撤退の指示を!!」
クリル
「こんな状況で何処に逃げるんだ!!」
言い争いが起きてしまっている。
だが、ある意味これも想定内ではある。
ユミィーリア?
「私達はここで襲撃者・・・正唱和団の撃退をするのがいいかと思われますが」
ムロエ
「な、何故その名を・・・」
ユミィーリア?
「第2団長! ご判断下さい!」
現行責任者は第2騎士団長のトクストである。
王女が全てを決めることは出来ないでいる現状、彼に判断を仰ぐしかない。
トクスト
「くぅ・・・現状を守り襲撃者を撃退する! 第2騎士団は密集陣形を取れ! 負傷者を守りつつ迎撃するんだ!!」
ようやくトクストの指示が飛んだ。
だが、想定よりも第2騎士達も損耗が激しく応戦するので精一杯だ。
ナザ
「こちら銅組!! 優先順位第3位を発見!!遅くなってすまん!これより対応する!」
ユミィーリア?
(よし! 間に合った)
ナザの声がインカムに届いた瞬間に全員の士気が更に上がった。
ナザ
「てめぇーが小隊長だな!!」
雑魚は片付け残りはただ一人。
目的はこいつの持つ通信結晶。
「ちぃ!! ストレートボム!!!」
かざした右手から大きな球体がナザ目掛けて放たれた。
避けること無く弓を引く。
ナザ
「ブレイヴバスタァアアー!!」
放たれた球体へ術技を撃ち込み、相殺した。
そして土煙りの中一気に距離を詰める。
「こいつ!!」
視界にナザの姿は移らない、周りを見渡すが土煙りで何も見えないでいた。
ナザ
「こっちだおらぁああ!!」
弓で直接斬りかかった。
博士とカズキが自分の為に作ってくれた途中の弓。
弓に特殊な柔軟性のある刃を取り付けすぐに近接に対応出来るようにしたナザ専用の特注品だ。
斬り込みは直撃、一撃で敵を撃退した。
ナザ
「こちら銅組! 今から通信結晶の情報を灰組へ送ります!」
シュリー
「了解、いつでもいいわ」
優先順位3位。
それは敵小隊長の通信結晶だ。
この通信結晶はある特定の真素の周波を使って通信出来るようにした物。
恐らく世界中で作られる物は私が作った物の所詮は簡易版。
周波数を図るのは精々私くらいだ。
だからこの作戦が取れた。
シュリー
「こちら灰組、銅組からの情報受諾し解析・・・優先順位2位を発見」
このライフルの力も相まって周波数の解析は容易に出来た。
本来ならそれ相応の機材が必要なのだが、まるでこれを予期していたのか、ライフルにその機材の機能の付与が簡単に出来た。
シュリー
「灰組、これより優先順位2位を仕留める」
これも新たな機能の付与だ。
自分の開発した壁越しでも見える小型望遠鏡を取り付けることで真素の力が引き出されこのライフルに凄く馴染んだ。
『だからそれスコープって言うんだよ・・・理由なんてないってだから』
カズキがまたうるさかったのを思い出しながらも、スコープ越しに対象を確認した。
都合が良い、対象は椅子に座っている。
シュリー
「バレット グラビティ・コア」
ボルトアクションで弾丸を装填する。
スコープをじっくりと見つめ、引き金を引く。
パァアァァアアアァアアアアアアンンッ!!!!!!!!
激しい銃声と共に弾丸が発射された。
弾丸は対象までの障害物をすり抜けていった。
そして・・・スコープ越しで優先順位2位がパタリと倒れるのを確認した。
シュリー
「こちら灰組、優先順位2位を仕留めた。作戦は成功、繰り返すわ、作戦成功よ」
優先順位2位。
それは相手の指揮官だ。
ナザが倒した小隊長の通信結晶から指揮官を焙り出した。
これでもう敵の指揮系統はもう無いに等しい。
撤退しないのであれば有象無象の奴らだ。
ユミィーリア?
「シュリー!」
流石だ、ナザ君からの報告から1分も掛けずに私達の作戦を成功させたんだもん。
やっぱり凄いよシュリーは。
クリム
「おっしゃぁあああー!!!」
アニレナ
「相手の指揮官をやったぞぉおお!!!おらぁああもう一踏ん張り!!」
みんなの士気は最高峰まで上がっていた。
そして正唱和団も徐々にその勢いを失っていった。
クリル
「おらどうしたぁ! てめぇらの指揮官はもういねぇーぞ!!」
堂々と宣言した。
それを聞いた襲撃者達は動きを鈍らせていた。
クリルのハッタリ、そう捉える者も多くいた。
だがクリルのみならず、他の騎士達の士気の上がり具合を見ているとそれが事実なのでは勘ぐってしまう。
「小隊長!!」
「くぅ・・・本部と連絡が取れん」
ただでさえ寄せ集めの軍隊もどき、少しでも崩れたらおしまいだった。
次々とやられていく同志達を見ながら本部と連絡が取れないか何度も試みるが応答はない。
もちろんシュリーの狙撃で残りの副官達も同じ目に会わせていた。
「駄目だ・・・連絡が・・・一切取れない」
小隊長達が次々と青ざめていった。
「無理だ・・・もう無理だぁあああ!!」
「撤退だ!! 撤退ぃいいい!!」
ついに悲鳴を上げながら背を向け逃げ始めた。
次々と敗走をしていく、もちろん最後まで戦おうとしている者少なからずいた。
だが一人逃げ、それを見た者が一緒になって逃げ始め。
一人、また一人とどんどん戦場から脱兎の如く逃げていく正唱和団。
アニレナの守っていた正面防衛も次々と敗走兵を生んでいた。
「アニレナさん敵が・・・!」
アニレナ
「追わなくていいよ・・・残党処理したら負傷兵の救護!いいね!!」
作戦成功。
自分達が準備していた通りに事が運んだ。
ナザ
「おっしゃぁあああああ!!!!!!」
一人雄叫びをあげるナザ。
シュリー
「ふぅ・・・、カズキ?うんわかった。そうねまた半日分で許してあげるわ、じゃ」
今度はこちらから切ってやった。
ユミィーリア?
「はぁ・・・作戦成功、私達の勝利よ」
「「「「「やったぁあー!!!」」」」」
第5騎士団の子達も凄く喜んでいる。
それもそうだ、この時の為にみんな鍛練を積んでいたんだもの。
「では私達が理事長を避難誘導致します!」
「こちらどうぞ!」
喜んですぐに職務を全うした、本当に偉い子達だ。
私達の完全作戦勝ちだ。
トスッ・・・。
誰かに抱きつかれた。
下を見て抱き付いた子を見る。
クリル
「んんーーー・・・!!!」
騎士の子達に見えないようになのか、誰にも見えないようになのか。
クリルは抱きついて泣いちゃっていた。
そうだよね、本当にずーーっと気にしてたんだよね。
頭を優しく撫でてあげた。
ユミィーリア?
「よく頑張ったね、クリル。 本当によく頑張った」
こうしてヴェアリアスと第5騎士団の合同作戦は、大成功。
大勝利で幕を下ろしたのだった。
「ふざけるなぁああああ!!!!」
それは、唐突な叫びだった。




