19、魔王城からの脱出・前編
「…暇」
小屋を移動させ、味噌や醤油などの調味料類を作り、武器や魔道具のメンテナンスも終わった。東大陸発展計画も構想を練り上げ全て紙に書いて纏めてしまった。後のことはエスラルさんがやってくれる。欲しい本は全て手に入れて読み終えてしまった。1日で行けるダンジョンは全て網羅してしまった。つまり、
水野冬香はとても暇していた。
「戦場は膠着状態。見に行ったところで面白そうなことも起きない…暇。」
「そんなに暇してんだったら城下町行けば?」
「城下町?」
出来上がった魔道具を回収しに来ていた政宗が溜息まじりに提案した。
その発想はなかった。
「ああ。ここから走って10分くらいで着くし、東大陸って人間も普通に暮らしてるからフード被れば誰にもバレないしな。金は持ってるだろ?いろいろ面白いものがあるからいい暇つぶしになる。」
「城下町、城下町か。いいね。近くにドラゴンの気配があるし面白そう!行ってくる。」
「え、ちょっと待て!今ドラゴンって…」
善は急げ。私は急いで準備を進め、家を出た。
…城下町に向かっているドラゴンは城下町方向に飛んでいるだけで目的地が城下町、というか魔王城であるはずがないだろう。
………たとえ今魔王城の上にドラゴンがいるのが見えても目的地であるはずがない。ドラゴンが魔王城の上空で暴れているのは幻覚だ。
…そうであって欲しい。
城下町を見下ろせる木の上で止まり、確認すると、買い物どころじゃない悲惨な状況になっていた。
魔王城は半壊し、人々は我先にと逃げている。そしてドラゴンを狩るために魔王城から出てくる騎士の人々とそれに紛れて街の外へと向けて走る智紀達。
…智紀、達!?
いやいや、あいつらなに逃げてるんだよ。
まあ勇者とその仲間達だからね。魔王を倒さなくちゃいけないのはわかるしまだ弱いし地下牢に入れられてたのは知ってるけど、逃げたところでお前ら何するんだよ。
智紀の事だから、『冬香をエスラルの魔の手から救う!』的なことを思っているんだろう。ただ、力不足なことは分かっているはずだからおそらく西大陸に行って、滅んだ帝国以外の国に援助をお願いしにいくのだろう。…まだ帝国は滅んでいないのだけれど。
そしてダンジョンなんかに潜って力をつけてからまた東大陸に来るはずだ。
もはや目標が変わってるし、他のクラスメイト達がかわいそうだ。
……あ、優がこっちに気づいた。手振ってる。
この事件の主犯お前だな。
笑顔で手振られても騙されないよ。
サイコパスマッドサイエンティスト、お前が満面の笑みを浮かべているときは大抵良からぬことを考えている時だ。…むしろ実行している時と言ったほうがいいかもしれない。一番よくないやつ。
閑話休題。
智紀達は森に入っていった。その先の山脈を抜けて真っ直ぐ進んだ先に港がある。西大陸に行ける最短ルートを進むようだ。
さて、この東大陸に生息する魔物は西大陸のよりも数段強い。まだレベル60くらいしかない智紀達は誰1人死ぬことなく魔物の大群を抜けて、西大陸にたどり着くことだできるのだろうか?
正直に言うと、出来ないこともないが難しい。
智紀達が西大陸に行けないのは私にとってとても都合が悪い。
はあ。…バレないようにサポートするか。
私は仮面と気配隠蔽の付与がされた外套を纏って、智紀達の方へ駆けて行った。
読んでくださりありがとうございます。
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最近猛威をふるっているコロナウイルスが心配ですね。
皆さんもお気をつけください。




