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世界を歩く少女 えぬ  作者: tomo
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の乃かとマヤちゃん

「の乃ちゃん、昨日のことなんだけど」


ワンピースを着たマヤちゃんが言いました。確かにの乃かの目を見ていたのですが、ずっと向こうの景色を見ているような、そんな目のしていました。


「の乃ちゃんのお父さん、わたしの新しいお父さんなんだって。だから、もうの乃ちゃんのお父さんじゃないんだって。残念ね」


マヤちゃんは意地悪するときの顔でそう言いました。


「の乃ちゃんの家じゃなくて、マヤの家を選んだんだって、マヤたちの家族が選ばれたの。の乃ちゃん、かわいそーう」


意地悪顔でしたが、声は震えていました。の乃かは自分のことをあまりかわいそうとは思いませんでした。お父さんのことはどんどん嫌いになっていたところだったからです。だから、せいせいしていました。反対に、マヤちゃんのことが少しかわいそうになりました。いつもの乃かのことをいじめるのは嫌でしたが、これからお父さんとどんなふうにくらすのか考えたら、かわいそうになりました。


「ずっと、黙ってて、しゃべることもできないの」と言われたので、「マヤちゃんのお父さんはどこにいっちゃったの」と聞きました。


「そんなこと」


マヤちゃんは言葉を詰まらせました。


「そんなこと、どうだって、の乃ちゃんみたいな子どもには関係ないでしょ」


マヤちゃんも子どもだよと言いたかったのですが、もっと怒らせてしまいそうだったのでやめました。きっとマヤちゃんもマヤちゃんのお母さんに同じように関係ないと言われたんだと思います。の乃かもよく口癖とかがうつるからです。


「選ばれなかったからの乃ちゃんの負けだね。マヤの勝ち」


そう言って、マヤちゃんは自分の席に戻っていきました。その後、マヤちゃんは近くの友達とひそひそ話を始めました。の乃かのほうを何度も見てきました。すこし嫌な気持ちでしたが、きっと新しくお父さんが来てたいへんなんだろうと思って、の乃かはガマンしました。


それからもマヤちゃんとその友達からいじめられることがありました。机に落書きをされたり、無視やひそひそ話をされたりしました。一番ひどかったのが、帰り道ではさみで突然後ろ髪を切られたことです。あっという間の出来事だったので、驚きました。


「マヤはね、美容師になるの。お母さんの髪を切ってあげるんだ。その練習」


と言ってましたが、急に切るのはやめてほしいなと思いました。の乃かはしばらく髪を切ってなかったので、まあいいかと思いました。触ってるみるとちょっとだけしか切れてなかったので「はさみ貸して」と言って自分で後ろ髪を短く切ってしまいました。


「マヤちゃん、返すね」と言ってはさみさを返しました。そのとき、マヤちゃんの手に丸い火傷の痕が見えました。煙草をぎゅっとつけられたときの痕です。の乃かも泣き止まないときにお父さんにされたことがありました。


きっとお父さんだろうなと思って、マヤちゃんのことが心配になりました。このクラスでマヤちゃんがつらいのがわかってるのはたぶんの乃かだけです。


結局マヤちゃんは「の乃ちゃん気持ち悪い」といって行ってしまいました。できるなら、マヤちゃんとは、お友達になりたいと、初めて思いました。

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