プロローグ 第Xの選択
「次の世界を選びなさい」
聴きなれた声が頭の中に響く。選びなさいと言われて自ら選択したつもりになるが、いつもそれはすでに決められた結果になっている。気づきはしているが、どうしようもない。
えぬがイメージした世界は3つ。獣の世界。亡き者の世界。渦の世界。今回はどれもどこか危なげなものしか浮かんでこなかった。
私はいつも損ばかりする。まだえぬではなかったときから、ずっとそう。くじはいつもハズレくじ。ドロップはいつもハッカ味。損するという感覚に慣れてしまい、それ以外が考えられない人間になってしまった。誰を恨むでもないし今更どうも感じない。いくつもの普通の中で自分に割り当てられた普通がそれだっただけのことだ。
とりとめのない思考に身を任せていても、いずれは決定しなければいけない。
えぬはとりあえず考えた。獣の世界は弱肉強食の世界。きっと生き延びることは難しいだろう。亡き者の世界は、想像するのも恐ろしい。ハリウッドのゾンビ映画を思い出した。怖いものは苦手だ。残ったのは渦の世界だ。昔テレビかインターネットの動画だかで見た鳴門海峡の渦潮が頭をよぎった。消去法しかなさそうだ。
「決めました」
ため息を押さえ込みながらえぬは言った。
「渦の世界にします。ラーメンのなるとくらいの渦ならいいな」
つぶやきはえぬの頭にしか響かない。次の世界では何を見つけなければならないのか、えぬなりの予想をする前にいつもの眠気が襲ってくる。流れに身を委ねるほど落ち着くことはない。もっとも、今回はそのまま流されるのだけはごめんだと、途切れかけの意識の片隅でえぬは思った。




