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異世界転移 最強の男  作者: 高速発進
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2話 不滅の森

健吾対ザッパ率いる追跡部隊。

「俺にその刃を向けるのであれば死を覚悟しろ」


不滅の森シーダの中で狼族の少女、ミーナを背後に庇う健吾は、ラバス王国追跡部隊のザッパと部隊兵を前に静かに悠然と立つ。


「ナイトウ=ケンゴ・・・・・・その名前の響き、稀人か。まだ存在を隠してた奴がいたとは驚きだ」


稀人。

地球から異世界ステラヴィーガへ転移してきた者を差す。

常人よりも遥かに強力なスキルを年齢、性別問わず有し、人族を救う事から神が遣わした使者「天使」と呼ぶ者もいる。

召喚を確認された稀人は各国の保護を受け、様々な有事で活躍している。

正し、個々人の希望や動機に添わない仕事は拒否される傾向が強く、殆どの国がもて余し気味である。

現在ラバス王国を含む幾つかの国は稀人と共に、人類の敵とされる魔族との戦争や亜人などの他種族の支配する領土への侵攻が頻繁に行われている。

ザッパは健吾の威圧に涼しい顔のまま背中に背負う短槍を手にすると、くるりと回転させ構える。

油断などは一切無く、鋭く此方を睨み付け隙の無い流麗な動作だ。


「2年前の大召喚から今まで何をしていたか知らんが、獣人を庇うってのはどういう了見なんだ。他の稀人はお仲間じゃないのか?」

「警告はしたぞ」


健吾はザッパの問いを無視し、静かな低い姿勢の踏み込みから一瞬で短槍の間合いの内側、懐に入る。

目の前にいるにも関わらず彼の姿を見失い、取り回しが良いとはいえ一瞬で短槍間合いを潰されザッパは慌てて後方へ飛び退くが、ガクンと動きが止まる。

瞬間移動したかの様な錯覚を起こす神速の健吾は左手で短槍の柄を掴み、後退しようとするザッパの動きを固定していた。

無防備な腹部へ右掌底が突き刺さる。

衝撃に強い皮鎧を大きく陥没させ、ザッパは再び後方へ吹き飛ばされた。

更に木々を薙ぎ倒し、先程とは比べ物になら無い距離を飛ばされ、奥深くまで消えた。

突然始まった戦闘について行けなかった健吾を囲む部隊兵は、部隊長が吹き飛ばされたのを見て漸く動き出した。

対象を無力化する事に慣れている動きで、短槍を用い回避する隙間の無い突きを一斉に放つ。

健吾は慌てる事無く、踊る様にステップを踏む。

神速のステップは、回避不可能と思われる槍ぶすまの僅かな隙間に滑り込む。

繰り出される短槍へ優しく手を添え、次々と受け流し全てをかわした。

短槍の包囲を潜り抜けた健吾は兵の背後立つ事となり、皆を驚愕させた。

完成された美しい舞を見ている様で、尻餅を突き座り込むミーナも状況を忘れ息を呑む。


「いきなりやってくれるじゃねーか、テメー!」


吹き飛ばされたザッパ何事も無かったかの様に空中で後転し着地すると、短槍を投擲してきた。

狙いは正確、部隊兵士の槍を回避した直後の健吾にはかわせないと、この場の誰もが思う。

ザッパも必殺を確信し笑みが口元に浮かぶ。

健吾に短槍が到達する寸前、笑みが凍りつく。

背後から飛来する短槍は健吾の完全な死角にも関わらず、半歩左に身体をずらし軸線上から逃れる。

通り抜けた短槍の柄を振り向きもせず、右手で掴みとった。

目を疑う光景に皆が唖然とする中、動きを止めない健吾は右足を軸に回転、短槍の勢いを殺さず円運動でザッパへと、倍以上の速度で振り向き様に投げ返す。

投擲直後の為、前傾姿勢のザッパは上手くかわせず、左肩に突き刺さった。

健吾の凄まじい膂力で放たれた短槍は、刺さったままザッパを三度吹き飛ばし、背後の巨木に縫い止めてしまう。

辛うじて致命傷を避け意識を繋ぎ止めた彼は、左肩からの激痛に呻きながら短槍を抜こうともがくが、深々と刺さった切っ先はびくともしない。


「外したか」


健吾はもがくザッパの姿を見ると不服そうな声を漏らす。


「まだイメージとの差が少しあるな」


確実に仕留める予定だったのだが、僅かに逸れてしまった。

神業とも言える技術にも関わらず、彼は満足していない。


「テメーら何呆けてやがる!動け!」


ザッパの激に思い出したかの様に部隊兵士が慌てて動き出す。

再び健吾へと短槍を向けるが、不規則な動きの光が走りバチンと何かが弾ける音が響くと、痙攣し全身から白い煙を上げ、その場に崩れ落ちてしまった。

動かなくなった部隊兵士を冷やかに見やる健吾は、彼らに右手突き出していた。

五指を広げた右手からは放電の残俟が残り、パリっと音を立てている。


「魔法だと!?詠唱も無しに一瞬で発動なんてあり得ねーぞ!?」


何のイカサマだと喚くザッパ。

健吾は部隊兵士が動く隙を与えず、魔法の電撃を放ったのだ。

威力は凄まじく、兵士が常備している魔法抵抗の護石アミュレットの防御を易々と貫通し、一瞬で殆どをショック死させてしまっていた。


「・・・・・・隊長・・・・・・こ、こいつスキルがおかしい・・・・・・異常です」

「どういう意味だ!解りやすく報告しろ!」


後方に控え、電撃の被害を免れた鑑定のスキルを持つ偵察が役割の兵士。

健吾を鑑定し情報を得ようとした結果、目を疑い思わず震えた声を漏らしてしまう。

引け腰で不明瞭な偵察兵に、動けないザッパは声を荒げる。


「見た事もないスキルを信じられない程大量に持っています!」


偵察兵の脳裏に映るのは、聞いた事もない無数のスキルが羅列されていた。

魔力掌握。

無限成長。

状態異常無効。

神の眼。

身体能力限界無し。

等々。

彼等には知るよしもない事ではあるが、2年前に地球で得たスキルは存在せず、数も5つを遥かに超え所持していた。


「こ、こんな化け物に勝てるわけねえ」


告げられた事実に、動ける部隊兵士は健吾と隊長のザッパに背を向け、森の外へとバラバラに逃走を始めた。


「くそが!王都最強の稀人以上だと!有り得ねえ!」


ザッパはラバス王国本土に、幾人かの稀人と交流があった。

誰もが常人を遥かに上回る強力なスキルを有していても、未知であった事は無い。

ここに来て相対していた稀人の異常性に気付く。

触れてはいけない化け物の尾を踏んでしまったのだと・・・・・・

見捨てて逃げた兵士達の気持ちも分かる。

自身でも真っ先に逃げたいくらいだ。

狩りの興奮から相手の力量を量り間違えたのは、悔やみきれない失策だった。

ここで死ぬのだろうと、一切の慈悲も容赦も無い男のもたらす死を、何処かおかしくなり笑みまで浮かべ、諦めの境地で目を閉じ待つ。

しかし男の気配は一向に近づいてこない。

妙だと感じ目を開けて見れば、健吾は足を止め、静かに周囲を警戒していた。

ややもすると、逃げた兵士達がほうほうの体で息を切らせ戻って来る。

一様にその顔は恐怖に彩られていた。


「・・・・・・時間を掛けすぎたか。奴を呼び寄せてしまった」

「奴ですか・・・・・・?」


健吾の呟きが聞こえたミーナは首を傾げる。

周辺一帯からギチギチという音と、草を分けるガサガサという音が近づいてきた。

音は隙間なく全方位から聞こえ、徐々に気配が濃くなってくる。

ミーナは音と気配に、言い様の無い嫌悪感を感じて震えてしまい、自身の肩を抱く。


「ジャ、ジャイアントスパイダーの群れだ!」


辛うじて声を発する事が出来た兵士の告げた内容に、ミーナは絶望し顔を青ざめさせた。

ジャイアントスパイダー。

背中に紋様の様な2本の赤いラインが特徴の、体長1~2メーターの巨大な蜘蛛の魔物モンスターである。

糸を使った動きの封じ込めや、麻痺毒といった攻撃をしてくるが、単体での能力は低く、ある程度慣れた戦士であれば警戒する必要の無い対象である。

しかし、群れになってしまうと危険度は極端に上がる。

隙間なく一斉に放たれる糸はかわすのが難しく、対処がしずらい。

糸は強靭な粘りと耐久性、さらに熱や火に強いという特性持つ。

波状攻撃を受ければ、逃げる事も出来ずに彼等の餌になってしまうだろう。


「こいつは傑作だ。最後は生きたまま、あいつらに内臓を吸われるのか。残念だったな嬢ちゃん。助かったとおもえば、最後は生き地獄だ」


どんなに強い稀人であろうが、数には勝てない。

ザッパの言葉にミーナは恐怖で震える。

最早音と気配はすぐそばまで来ており、逃げられない。

恐慌状態と化した兵士達の嘆きの叫びの中、遂に先頭の蜘蛛が姿を現した。

最初の一匹が現れたのを皮切りに、次々と赤いラインを背負う巨大な蜘蛛が押し寄せてくる。

魔物との戦闘経験も豊富なザッパも見た事の無い、膨大な数の群れだった。

蠢く蜘蛛により全方位埋め尽くされ、見渡す限りの黒、黒、黒。

キシキシと口元から聞こえる音が森全体に広がっている様な錯覚をもたらし、恐怖と嫌悪感を煽る。


「まだだ・・・・・・」

「な、何がですか?」

「この群れの親が居ない」


迫り来る死に震えながらミーナは、まったくこの状況に動じず静かに立つ健吾を異様に感じつつも、心が頼るべきものを求め声を掛けていた。

健吾の返答に合わせ頭上に巨大な気配が現れ、この場を覆い尽くす影が差した。

次いで、地上を這う蜘蛛に被さる様に巨大な黒い物体が落ちてくる。


「馬鹿な・・・・・・何てデカさだ・・・・・・」


ザッパは信じられないものを見て、かすれた声を出してしまう。

それは、記録が無く、聞いたこともない巨大なジャイアントスパイダーだった。

体長は優に8メーターを超え、目の前に山が降ってきたかの様だ。

姿は通常の個体と差異は無く、背中に紋様の様な赤いラインも同じである。

丸太を連想させる八本の足は、器用に地上の蜘蛛をかわし、一匹も潰していない。

此方を見つめる鏡の様な黒曜の眼に、姿が映っているのが分かってしまい、一層狙われているのを理解してしまう。

しかし、全く動揺の気配を出さない男が一人。


「随分デカくなったな。食いでがありそうだ」


健吾である。

萎縮するどころか、寧ろ闘志が溢れ出ていた。

誰もが絶望する中、彼の狩りが始まる。


次回、対決、巨大蜘蛛ジャイアントスパイダー

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