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Rabbit物語  作者: のん
07章
69/70

9.転送された魔力





「まいッ涼……ッお父さ……ッ……ケイ君はやくッ」



息切れして走るセカイ、



あと一時間もしない内に滅びるだろう、お父さんは言う。



だったら……はやくみんなを――…。





「エリゼ……、行かなきゃ、探さなきゃ


 涼?みんなをお願い、きっとあたしとまいが初めてこのセカイに来たあの穴から逃げ出せる」





「何言ってんだよゆいッ!どこ行くんだ」




「エリゼの所、あんな小さい子ひとり置いてけないッ、はやく行って!


 あたしは大丈夫だからはやくッ」



「待ってゆいッ、あたしゆいと一緒に行く!……だって、双子でしょ?あたしたち」



「まい?……だめだよ


 まいには生きて欲しい、はやく行って?」



「なんで、そんな事言うの?」




「まいッ、行こう!あとはゆいを信じよう」






涼に連れられ皆、あの穴へと走る。




――どうか生きて






    *



走る。なにが原因で、全部わるいのは何かなんて誰にも分からない。



だけどすべてに共通していることは、人間の欲望だ。



これはきっと、あたしたち人間の有触れた欲望に対する報いだ。



だからあたしは、その報いから仲間を守り抜きたい。



仲間だけじゃない。



みんな、みんな……、すくいたい。



あの日救えなかった命はもう戻ってこないけど、今救える命は山ほどある。



息が荒げる、視界が眩んで居場所が特定できない。



「エリゼッ、おねがい返事をしてッ――…」




祈るような気持ちで彼女を探すが、都合よく見つかるはずもない。



残り30分。



だめだ、このままじゃ……なにもかも終わってしまう。



それだけはなんとしても阻止しなきゃ。



頬を冷たいなにかがはしる。



諦めるな、ぜったいに見つかるはず。ぜったい見つけてみせる。



「エリゼッ、どこにいるの?ねえ、お願いだからッエリゼ―――」



はしれない、地割れだ。



なにもかもを引き裂いてゆく、揺れはますます酷くなる一方。



このセカイのタイムリミットは――…残り15分。




この森から、涼たちの所まで、約4k。



決定的に間に合わない、どうすればいいの。



どうしたら……、いまのあたしに何ができる?



あと14分、刻一刻と迫り行く針。



『諦めるな、決定的なものは君のすぐそばにある。


 見つけるんだ、早く』



ジョニーさん?



ねえ何?決定的なものとはイッタイ何?



どこにあるの?何を見つけるの?





思考は考えるよりも早く行動にうつした。



草木が茂る森、ここにあるのは……生きているのはあたし。



ウサギが見え隠れする。



しわくちゃのおばあさんがこちらを伺っている。



どこかで見たことがある、どこだ。どこだ。



記憶を駆けめぐる、ああ。見つけた。




そうか、そうだ。




「アリスさんッ――…」




    *




残り8分。



8分でみんなを救う希望を見つけた。




「お願い、急いでくださいアリスさんッ――…」



「分かっているわ、だけどわたしも歳、ゆい……あなたにも手伝ってもらわなくちゃ」




眠っていたはずの希望の星は、セカイの滅亡と共に目を覚ました。



彼女の使う魔法が彼女を眠りへと導き、このセカイを救うことになる。




「この地を正常に戻すわ、ただしいつかはまた滅びる、今はそれを先延ばしにするだけ。


 わたしの魔力はこんなことしかできない、それにもうすぐわたしの魔力は消滅するわ。


 だからその前に、わたしの魔力をゆい、あなたに転送する」



「転送?」



「そう、それでこのセカイのすべてがあなたによって救われる。


 だけど、デメリットもあるの、あなたの記憶が……ワンダーランドでの記憶はとぶ


 それでもいいのであれば、救えるわ」



このセカイに来て、大切な人と出合えた。



サラちゃんやケイくん、それにお父さん。



……それと涼。



まいとの絆も深まった。



すくなくともあたしは、このセカイにこれて良かったと思う。




それを全て捨ててでもあたしは、このセカイを救いたい。



答えは最初から決まっていた。




「あたしに、魔力を転送してください」




    *



涼side



「早くッ、まずはまいからだ。登るんだ、この穴を」



長いロープをつかって、まいを引き上げる。



なあ、俺はこのままで本当にいいのか?



このセカイの人間ではないゆいがセカイを救い、このセカイの人間である俺が救われ。



そんなの可笑しい、俺はこのまま何もできないのか?



それに、父さんの作り上げたこのセカイを簡単に見捨てるのか?




「お……お父さんッおとうさんも早くッ!はやく来てッ!」



「わたしはここに残る」



「何言ってんのよッ」



「この地でジョニーと作り上げたこの地で、最期を迎えたい」



「馬鹿じゃないのッ!最期なんて言っちゃ駄目、あたしとゆいには、お父さんはお父さんしかいないの!


 お父さんが必要なのッ!」



「まい……」



「死ぬなんて言ったら、許さない


 あたしとゆいも、同じこと思ってると思う、二度と……もう二度とお父さんを失わない」



柏木健作はまいに手をとられ、地上へと上がっていった。



「……涼、行くのか?」



「どうしたケイ、」



「俺、行きたくねえ、たしかにこのセカイは終わってる。


 だけど、だけど……俺にはここしか、ないんだよ。」



分かってる、俺だって同じだ。



俺たちの町は、国は、セカイは。ここにしかない。



簡単に捨てられない




「俺は戻るよ、このセカイに残る」



「涼……、俺もだ」




    *


ゆいside




周りが無重力になってゆく。



不思議な感覚だ、これが魔力というもの。



力がみなぎってゆく、目の前の老婆はへたりこみ




「わたしはまた、眠りにつかなくちゃいけないみたいだねえ


 エリゼを頼むよ?」



永遠の眠りについた。



残り3分。



近くに座る幼い少女は希望に満ち溢れた目であたしを見つめる。




「行こう、エリゼ」





次、最終話です。


めちゃ急展開ー!

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