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第17話

母さん

『みきお泣かないで・・・ わかったわ じゃあこれからは

 お父さんが酔っ払って帰ってきたときだけ、お願いしてもいい?』


みきお

「うん、その時はボクがちゃんと守ってあげるからね!

 ねぇ母さん、やっぱりこの前顔腫れていたのって・・・」


母さん

『ほら、みきお急いで朝ごはん食べないと学校遅刻しちゃうわよ!』


みきお

「・・・うん、わかった急いで食べてくるね」

(みきおはそれ以上聞いてはいけないような気がしたので、もう聞かないようにしようと心に決めた)



みきお

「じゃあ母さんいってきまーす!」


母さん

『いってらっしゃい』



(午後学校が終わり家に帰ると、何故か かずえ姉さんとたかこ姉さんが

 家の入り口で話してる姿が見えた、なんだか二人とも真剣な表情で

 話している様子だったのでみきおは気づかれないように木の陰からコッソリ近づいてみた)



かずえ姉さん

『父さんまたやったでしょ、母さんは違うって言ってたけど絶対あれは父さんのしわざよ』


たかこ姉さん

『父さん、どうして母さんにそんなことするんだろう・・・』


かずえ姉さん

『母さんから前に聞いたことがあるわ・・・

 父さんは戦争から帰ってきてからまるで別人のようだって・・・

 戦争前は畑や家畜の世話をちゃんとやっていたのに、今は母さん達に任せっきりで、

 自分は博打に狂って帰ってこないし大負けすると、ああやって不機嫌そうに酔っ払って

 帰ってくるって、子供達には見せたくないから、酔っ払って帰って来ないでくれと

 ずーっとお願いしてあったみたいだけど、最近はそれも守ってくれなくなったみたいで・・・

 そのことを、もう一度注意しに行った次の日に母さんはあんなに顔を腫らして

                            入院までするはめになったのよ!』


たかこ姉さん

『父さん、ほんとどうしちゃったんだろう・・・私なんだか怖い』


かずえ姉さん

『私、きっと父さんは酒乱なんだと思うの・・・それと、もうすぐうちの奥の畑

 無くなっちゃうんだって・・・父さんの博打での借金を返す為に売っちゃうんだって』


たかこ姉さん

『このままどんどん畑が無くなったら、食べるものが無くなっちゃうよ』


かずえ姉さん

『だから、私達で何か考えなきゃ!と思ってこうして たかこに相談してるんじゃない!』



(ガサッ)


かずえ姉さん

『何? あ、そこにいるのみきお? みきおなの??』



(ガサガサガサッ)


かずえ姉さん

『やっぱりみきおなのね! みきお! 待ちなさいみきお!』



(みきおは振り返らずに走った・・・ どこへ向って走っているのか・・・

 自分はどうしたらいいのか・・・ 自分には何ができるのか・・・

 どうしてこんなことになってしまったのか・・・

 なぜ母さんがあんな目にあわなければならなかったのか・・・

 大好きだった父さんはどこへいってしまったのか・・・

 頭の中がぐちゃぐちゃで何も答えが見つからない・・・

 みきおは疲れ果てて動けなくなるまで全力で走り続けた・・・

 何も考えられなくなるまでとにかく全力で走り続けた・・・

      そして力尽き倒れ、そのまま感情にまかせ大声で泣いた・・・)




(あれから、父さんが酔っ払って帰ってきた夜は必ずみきおが

 父さんと母さんの間で寝ている・・・ そのせいかわからないが、

 あの日以来父さんの母さんに対する暴力は無くなった。

 しかし相変らず父さんは博打狂いで、とうとう奥の畑もその借金で失ってしまった、

 生活はより厳しくなっていたし、父さんの酒癖の悪さは日を追うごとにひどくなっていき、

 優しかった昔の父さんの面影は薄れ、お酒を飲んでは家の中で暴れることも多くなっていた、

 みきおはなんとも言いがたいモヤモヤした気持ちを押し殺しながら

 元気に毎日を過ごすよう努力していた。

 チビと池で一緒に泳いだり、友達と山の木の実を取りにいったり

 川でカジカや沢蟹をとって焼いて食べたり、田んぼで蛙を捕まえては一緒に跳ねてみたり、

 田んぼ一面に飛び交う蛍の大群を兄さんと眺めていたり、

 降ってくるような満天の星空を走る流れ星に願い事をしたり、

 青空に吸い込まれるように池のほとりで一眠りしたり、

             みきおの夏は青空に浮かぶ雲のようにゆっくりと過ぎていった・・・)





同級生

『みきお!今年の運動会は駆けっこゼッタイに負けないからな!』


みきお

「一緒に走れるといいね!でもボクもゼッタイに負けないよ」


同級生

『今年の運動会もみきおとオレでリレーの選手は決まりだな!』


みきお

「そうだ、今年から高学年の人たちと一緒にリレーが走れるんだよね」


同級生

『そうだよ、順番次第では6年生と走ることになるかもな!』


みきお

「楽しみだなぁ~ ボク速い人とたくさん一緒に走りたいな~」


同級生

『え?6年生にはいくらみきおでも勝てやしないだろ~』


みきお

「ボク、駆けっこだけは誰にも負けたくないんだ・・・6年生にも」


同級生

『・・・すごいな、みきおは』


みきお

「え?何が?」


同級生

『・・・いや、なんでもない そんなことより放課後校庭で一緒に駆けっこの練習しないか?』


みきお

「あ、ごめん 今日も家の手伝いがあるから・・・また今度にしよ!」


同級生

『なぁみきお・・・お前んとこのとしお兄さんが高校辞めて働き出したってほんと?』


みきお

「・・うん、としお兄さんは家のために学校辞めて働いてくれているんだ、だからボクが

 としお兄さんがやっていた馬の世話と畑仕事の手伝いをしなくちゃならなくなっちゃって・・・」


同級生

『みきお・・・大変だな』


みきお

「ううん、全然平気だよ! 馬の世話も畑仕事もボク大好きだから!」


同級生

『・・・そっか、じゃあ暇なときは声をかけてくれよな!

           みきおと駆けっこの練習しておきたいからさ!』


みきお

「うん、ありがとう」


(みきおは学校が終わるとまっすぐ家に帰り、としお兄さんがしていた分のお手伝いを

 全部終わらすとチビを散歩へ連れていき、帰ると晩御飯のお手伝いに片付けのお手伝い・・・

                               と忙しい日々をおくっていた)



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