拝啓 10月28日 主演のアンナ・パーカー 様へ
アンナさん、お手紙ありがとうございます。
怪盗ルブランからの予告状、そして地下保管庫での消失事件……。とってもわくわくする謎解きですね。アンナさんが「劇団マールの主役」として一生懸命守ろうとしたその健気な姿、目に浮かぶようです。
さて、今回のお便りですが私も少々悩みました。今回アンナさんが求めているのは答えではなくヒントですから。誰がルブランでどうやって盗んだのかを示せばよいというわけではない。であるならば、私がすべきことは、アンナさんの教えてくれた手がかりを整理すること。アンナさんに怪盗ルブランの正体と手口に気が付いていただくことですね。
まず、前提を確認しましょうか。
【前提】
・地下保管庫の入口は一つであり、それ以外の出入口はない。
・24日に紅いサファイアを地下保管庫のキャビネットの中に納めた。
・地下に灯りは無くランタンだけが頼りだった。
・鍵は間違いなく締められていた。
・最後に保管庫にいたのはマールさん。
・保管直後に紅いサファイアを持ち出した人間はいない。
・扉が開かれるまで、できる限り監視していた。
・25日に扉は開かれた。
これはほぼ間違いない、動かせない事実です。
そして、結果も示しておきましょう
【結果】
・紅いサファイアが地下保管庫のキャビネットから消えた。
・その後、全員で保管庫を探してみたが、見つからなかった。
こうやって、どういう状況で何が起こったのかを整理しておくことはとても大切なんですよ。たまに前提が崩れたりすることもあるのですが、基本的には前提を踏まえて、結果をもたらすにはどうすればいいのかを想像するゲームですね。
そして、ここで最初のヒントをお伝えします。アンナさんのお手紙を読んでいて思わず唸った部分がありました。黒い紙のトラップです。実に素晴らしい。暗所に居て、ランタンの灯りだけで扉の隙間に黒い紙が挟まっているなんて気が付ける人は稀ですからね。扉を安全に突破する難易度が格段に跳ね上がりました。これは鍵を何とかして手に入れて、アンナさんが眠っている間に入ったという可能性への強い反論です。ならば、ここは難しく考えず前提に加えてみましょう。
【前提】
・地下保管庫の入口は一つであり、それ以外の出入口はない。
・24日に紅いサファイアを地下保管庫のキャビネットの中に納めた。
・地下に灯りは無くランタンだけが頼りだった。
・鍵は間違いなく締められていた。
・最後に保管庫にいたのはマールさん
・保管直後に紅いサファイアを持ち出した人間はいない。
・扉が開かれるまで、できる限り監視していた。
・25日に扉は開かれた。
★扉が閉められてから開かれるまでの間は犯行が不可能だった。(仮)
非情に強力な前提です。これで犯行がいつ行われたのか分かりやすくなりました。
それでは、これらを踏まえて【結果】をもたらすにはどうすればいいのかを想像してみましょう。ここはセンスが問われますが、訓練すれば結構できるようになります。コツは頭を柔らかくして、どれだけ馬鹿馬鹿しいことでも、考えられることすべて出来るだけ書き出してみること。頑張ってみてください。
試しに例を挙げてみましょう。
【方法】
・キャビネットにカラクリがあって、中で紅いサファイアが移動した
・25日にルイくんが一瞬の隙をついてキャビネットから取り出した
・ジェーンさんがアンナさんのトラップを見破って扉を突破して盗み出した
これらは、論理的に不可能だと言い切れる誤った案です。そして、アンナさんがたくさん想像してたくさん出た案の中で論理的に否定(こういう理由があるから不可能だと言い切ることが)できない案があったとしたら、それは真実に最も近い、追求するべき推理です。それを見つけてみてください。
最後に、大ヒントを差し上げます。
【結果】
・紅いサファイアが地下保管庫のキャビネットから消えた。
・その後、全員で保管庫を探してみたが、見つからなかった。
アンナさんがキャビネットを確認して、紅いサファイアが無くなっていると大慌てした時なんですが、この段階ではまだ“紅いサファイアが地下保管庫から持ち出された後”とは言い切れない、とだけお伝えしましょう。なぜかは、前提をよく見て考えればわかるはずです。
アンナさんなら必ず真相にたどり着けますよ。がんばってください。
根を上げるようでしたらまたご連絡ください。
では、また。
敬具
ライラ(そろそろ冬眠したい) より




