Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #194
※なにかが足りない表現のところがあるように感じた方は正常かもしれません そのうち直します(7月最終週はムリかも知れませんが)
セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #194
誰も答えることのない疑問を口実に、纏わりつく不安を紛らわせる…目の前で起こったいくつもの不可解で不安定な不確定さが、なにかの謎解きのように、どこが違う? と嘲笑する。動画での間違い探し…しかも元の映像とは、人物が取る行動も、内面に抱える心情も、言うセリフも、なにもかもが全く異なる画面から、隠された正解を答えろ、と恫喝めいた責められ方で。挑戦できるのは1回こっきり…あまりにものムリゲーにオレの方が笑う。録画させろ、人間てのは流れていく時間の中からは自分が気になっているものしか目に入らないシステムを採用している…あまりにも多くの情報に相対するとパンクする、でないのなら攻略ウィキ…はねえんだったな。
真実? そんなものは要らない。答える気もない…どうせ意味なんてないんだろうしな。死んだ人間が生きている人間を襲う、呪う、殺す、喰う…訳の分からない行動に意味を見出すのが人間、意味を付けるのが人間…そうすることで安心したがるのが人、わかるのはそのことだけで、そのことさえ分かっていれば、語らなくとも相手を理解できる。目的には理由があるが、行動には理由がない…目的を達成するために起こすのが行動、だから目的が分からないとあらゆるこの世の意味は理解できない。
13の…ひとり多いな、14のゴースト…かスピリットがふたりを並べ、首を垂れる。それぞれ異なる、惨い、後悔を残して殺された人間が、自身の救済を、魂の救いを求めて、自分が殺されたのと同じ殺し方で生きている人間を99人ずつ、殺して、魂を奪う…そんなGhostをひとつのところに閉じ込め、さらに欲望高い人間が自身の願望を叶えるために、彼らの邪で救いようのない願いさえ、横取りしようと画策する…よくある話し、面白くもねえ…いや、リメイクはどれもオススメ……。そんな想定は的外れだとでもいうような、異なる物事が目の前で執り行われ、姿を現す。
病院1階、そこに潜み存在するものどもが、ジュディとマイケルを取り囲むように円形に集う。あるものは片膝をついて、膝をつくのが辛そうな老人はただ、立ったままで、両手を、片手で、胸の前で、顎の下で、結び祈る。
「私がやろう……」
円形に広がったスポットライトの淡い光の中、独り、深い祈りと小さな、誰も聞いていないような深い祈りの言葉をつぶやいていた黒人のおっさんが、顔を上げて、深い笑みを湛えてそういった…やる? その言葉に誰もが顔を上げて困惑した表情で眉を顰め、兄弟がその表情を真似ようとして、うまくできなくて声に出さずに歯を見せて笑った。
「ふたり同時に、だ。ほかのものでは祈りが足りないだろう…私が適任だ」
そう微笑みながら、自分自身に言い聞かせるように言葉を続けたおっさんは皆の顔を、ひとりひとり見て、ひとりひとり、目線を合わせて、それ以上、語ることなく諭していった。誰もが辛い苦しい、寂しいといった顔でおっさんと視線を交わし、だが誰一人、なんの声もかけなかった。何人かは、雨を葉陰でやり過ごす小鳥のように口を噤み、関わり合いにはならない、というように顔を背け、何か言葉にしようと口を開けた女性たちが、結局何を話したらいいのかわからなくて、肩から力を抜く…その心情を兄が上手に真似る。
「おばあさんがまだ来てないよ」
自分だけが気づいてた、みんなほかの事に気を取られてて、気付いてないでしょ? しょうがないなあ、というような口と肩と腰に手を当てた兄が、周りの大人を諭すような大人びた感じでそういった。それにさえ微笑みで返したおっさんは、さらに諭すように、みんなに語る。
「あのものは来ない、この青年に会うことさえ嫌がるだろうから……」
「そんなこと、アタシがいついった?」
暗闇を割って、車椅子の車輪が回る音に乗って、件の老婆が皆の輪の中に入ってきた…その車輪の音に紛れ込むように、どこかの重い引き戸が締まる音がした。女性の悲鳴のような高いキー。暗くてよく見えないが…第二診察室? いままで開いていた扉といえばそこしかな…それどころではなかった。目の前の出来事に集中するあまり、進行していた罠に気がつかなった…出られない。スポットライトから闇の方へと出られなくされていた…黒より深い黒でもねえのに。いつの間にかできあがっていた光と闇の区切り、その境界に弾かれるように、逆向きの漏斗のような円錐から外へと出れない…天井にライトもなにもねえのにな。閉じ込められる…たぶん、オレだけ。光の中に位置していたほかの奴らは普通にスポットライトを外れ、背後の闇の中に入り込み、反対側から何食わぬ顔で現れ、また消えていく…出入りを繰り返す。それに…いまこの廊下には何人いる? 廊下に棲まう住人の背後、その闇の中、光の中に入ってこない、ただ傍観し見学している奴らが…連なって立っているのが、ライトの反射でうっすらと浮かび上がっているのが見えた。なんだこいつら? いつからいた?
無表情で並び立つ、待つ人々…ナース、入院患者、子供に青年、老人に医師までもが…何人も、何十人もその後ろに並び、連なり、オレたちを取り囲んでいる。
16人の出演者…それに従うように周りに揃う顔色の悪い人の群れ。宗教改革で見直される前の、悪徳と同じ数の出演者が舞台上、雁首を揃え…その外、暗闇の中に病院の廊下では絶対に並びきれない、というぐらいの数の人々が…壁が楕円に伸びて、鍾乳洞の中の巨大神殿のような間を作り、そのできた空きに、列をなしてきれいに整列する。光の中に集ったものどもにはそれは見えていない? あえて無視をしている? ないものとして、彼らは演技を続ける。
床に並べられたふたりを見て、歪に口の端を上げ、小さく嘆息した老婆が、おっさんと同じに、皆の顔を一瞥するように見回し、反対に睥睨した。相手の心理を見抜くような悪態でもって、居丈高に叱る。
「なんだい…どいつもこいつも、葬式みたいな顔して…そんなにここを出ていきたくないのならほかの階に行きな。あっちでも助けてくれるだろうよ…あたしゃあんなのになるのは、ごめんだけどね」
あんなのに? その言葉にその場に集う何人かが、ばつが悪そうに、顔を背けた…光の後ろに控えて、入れ替わるのを待つように揃う奴らはマネキンのように動かない。出ていく? 確かに、ただ出ていっただけではだめなんだが……。
「しかしだな……」
「しかしもへったくれもあるかい」
おっさんのちょうど正面に陣取った老婆は、骸骨のような白い、細い骨と皮だけの、なのにでっかい指輪を付けた指を持ち上げて、指差し諭す…指先から目に見えない、呪いの光線、でも出しているような姿勢で。
「あんたがいなくなったら誰がこいつらを導くんだい? ほかの誰ができるってんだい? これだから老人てのはいやなんだよ。分かってねえ…みんな、あんたがいたからここにいるんだろ? そんぐらい気づいてやんな、その頭にはまだ脳みそが入ってんだろう? カラカラになっちまってるかもしれないけどな……」
そんな決めつけに似た言葉には困った顔で応えるしかない…おっさんがそんな風に反応すると、それを見習うように子供たちが真似をして、母親とお気に入りのナースに嗜まれ、そっぽを向く。たいていの老婆というのは容赦がない、自分を棚の上の饅頭のさらに上にある神棚に乗り上げて、物事を話す。その後も、老い先短い、だの、いい加減いいだろう、だの、様々な理由を論った老婆は、自分だけは先が見えている、というような態度と踏ん反り方で会議を邪魔する、肩書上司のように一方的に話しを進めた。車椅子に乗ったまま、マイケルを蹴っ飛ばそうと短い脚を無理に伸ばし体勢を崩し、転げ落ちそうになったのを、SPに抑えられて……。




