↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ  作者: 桜葱詩生


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

170/212

Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #161


セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #161



「マイケルさん、伝言があります。待ってください」



もちろん、ナースたちにそんな気遣いはない。それはこちらが勝手にそう意味付けただけで、相手に因果は及ばない。局所性は小さな範囲にのみ現れる。そこから逸脱できないのなら、あらゆるものは気がつかず、気づけない。それを(なじ)っても、咎めても、そう期待する方が間違っているから、解決せず、ただ、理不尽に怒られた、という感情記憶の残滓(ざんし)(くすぶ)る。それは言語的でも明示的でもなく、空間的、状況的感染力をもって周囲に伝播する。その影響力が、手続きを待つこいつら(ファン)に伝わって、そちらを肯定し、こちらを非難する空気ができあがり…エコーチェンバーが成立する。


ただの連絡事項 状況を配慮する必要はない ただ仕事をこなす 表層と深層 自身と他人


どちらに重点を置くか? で重要視される心理選択はそのたびに切り替わる ひとつ芯がある、とかいう人間でも、メタ認知ができないのなら、ここからは逃れることはできない



カウンターの奥にいたナースたち全員が一斉に再度、そうオレを呼んだ…伝言? この病院に知り合いなどいない そのやや甘えたようなASMR()に、ナース目当てで並んでいた集団(ファンたち)が、一斉に興味と憤りを混ぜ合わせたような視線で、オレへと顔を巡らせた なんだ?こいつ?おれたちのナース(アイドル)に馴れ馴れしくしやがって…とでもいうような、義憤と衝動に満ちた凝視 モテ期の到来したラノベの主人公が陥るテンプレ展開…だが、ここにそんなものはない 完全な死亡フラグにしか聞こえない



数の暴力は肩書(権力)よりも強い だからどのトップも、民衆が群れ集まらないように画策する 能力のないものになればなるほど、分断と孤独と孤立を引き起こそうと躍起になる…自身の味方は多く、相手の救援は皆無に 群衆とは、理性を失った人の集団 一対多の前ではどんな約束事も意味をなさない



松葉杖を得る時も確か、名前を呼ばれた 名前が隠されていないのはオレへ聞かせたくない、なにか? がそこに含まれているからだが…ほかの奴に聞かせてもいい、という逆説にはならない…とは思うのだが、そんなことを声高にいったところで無駄 集中する視線に耐える


ナースの呼ぶ声を無視するわけにもいかず かといって呑気にこちらから出向くわけにもいかず 周囲に持ち上がる雰囲気は徐々に険しくなっていく 集団から少しだけ離れて、薬局入り口の横で邪魔になることを承知でそこで待つ なのに、肝心のナースが受付から出てこねえ 這いよる罠にかけられた気配 このまま無視して立ち退いても、こちらから待機列に割り込んでも、何かしらのフラグが立つ そんな不運が体に染みついて、離れていかない 時間フラグの解消? このタイミングで? イベント中でもカウントは続き、目一杯となっている、随分と長く遭遇していないそれが業を煮やして癇癪を起した? 人格がある訳でもあるまいし……


カウンターに並んだ患者ども(ファン)は、何かの手続きを終えると同時に、次々とそこを立ち去っていった ほぼ全員がエレベーターの前で残って、残りが西棟へと向かい、待合室へと入り、何人かが…階段へと入って行った…そこの鍵は開いているようだ エレベーターホールに人がある程度の数、待つようになると、前兆もなになく不意に小さな警告音が鳴って、その扉がゆっくりと開いた エレベーターがこの階へと移動してきたような振動も動作音もまったくなかったが 我先にとそこで待った人々が乗り込んでいく プレス機が作動するような音 閉じていくような圧迫感 なにか固いものが無理な力で押し潰されていく過程で生じる熱の余波とエアが抜けるような振動 少し残った扉の隙間から、鮮血が廊下へと漏れ出すように吐きだされて 静かに普通に機械式の扉が閉じ切った うめき声も 非難する声も 何もなくただ静かに そこに並んだ人々はそうされていった 廊下に余った血液はすぐに床へと吸い込まれ、エレベーターはやはり『IV 階』へと、途中の階に止まることなく、直行していった エレベーターホールに人が()まると、また挙動も振動も気配も何もなくただ扉が開き…そんなことが繰り返された


………


お前ら オレに関心を向けている場合じゃないと思うんだが…認識できない物事に対する人の行動はほんとうに不可解だ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。