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Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ  作者: 桜葱詩生


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Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #160


セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #160



仕方がない……


もう一度、薬局から西棟廊下へと抜け出る やはりそこには救急隊員が待っていて、その奥もざわついたやや茶色い闇が()りついていた 階段扉の前には、首にロープを巻きつけて空中に浮いた救急隊員が、独り寂しく吊り下げられ、天井を突き抜けて出るロープがからまった彼の首はまるで、絞首刑にされた大罪人のようにきれいに伸びきっていた 頸椎はその役目を放棄していて用をなさず、その間にある繊維ごと、自らの重さの衝撃で絶ち切らされていた 力は完全に抜けている…が、地面に汚物が抜け落ちた痕跡がない ここではないどこかでそんな風になって、ここまで運ばれた…彼の姿はそのように見えた ここにあるのはただ風鈴のように揺れて、廊下を通るもの、トイレから出てくるもの、階段から何も知らずに出てくるものを待ち構え、手足を絡ませて捕らえるべく伸ばし、脅かすためだけのクラゲのような物理的トラップ(存在)でしかない


その足元にもモップはない 落としたとしたらここ 早くも片付けられてしまったか…意外と対処が早い ならGをもっと先に対処するべきだ


角に集中している扉を確認 1階男子トイレ…ここに入ると3階の女子トイレへと抜けれた 3階のリドルルームへはそうやって挑む 女子トイレは開かなかった…が、女性は男性に比べ、排泄欲を我慢できない 緊急事態に陥った女性なら、無条件でここの扉は開くのだろう…エマリアがそうなのか? 確かめることがまた増えた 薬局から西棟廊下へと抜け出ると、医師も腕を吊った女性も出てこなかった 比較的安易な条件判明


西棟階段扉 どこかのものと同じような凹凸のないテクスチャー ドアノブもなく平面 開けられない 手術準備室 上にある灯が、『使用中』から『手術中』へと変化 違いはないからこちらも無視 表面(おもてめん)でもこの有様か…薬局の通路から抜け出たこちらの廊下なら、その先へと行けそうだが…Gのカーテンを潜るつもりはない 出てくるバカが来る前に早々に立ち去る…どんな奴が来るのか…確かめる気もない


受付と薬局の端を結ぶ仮想的境界線 そこを抜け出るとやはり周囲の雰囲気が切り替わった 色合いも景観も何も表面(おもてめん)のまま、前の表面(おもてめん)に…この些細な違いにたぶん、意味はない 意図はあるのだろうが…そんなことを気にする間もなく、明らかに変わったその景観に戸惑った 弟が走り出そうとして…その集団にしり込みしてやめて、仲良く手を繋いだ母娘(おやこ)が、子供を庇いながら迷惑そうにその群れの横を避けて来た いつの間にか受付に人が群がっている 大盛況だ


受付カウンター。そこに大量の客が並んでいた。理路整然と、ドミノのように、等間隔に並んだ人の群れ。病院に来た患者たちが、正面玄関からカウンターへと長蛇の列を形成していた。平和ボケした国の並び方ではあるまいし…自己主張と自己利益を求めることに関心の強い海外で、こんな風に規則正しく時間を待つ、という状況には違和感しかない。老人、親子連れ、若者に女性、そこに並ぶそれぞれは、どこかしらに怪我を負っていて、具合が悪そうで、血を口から溢れさせ、首から上がなく、体液を漏れさせ、胴に裂傷を負い、片腕がなく、足がもぎれていても難なく立ち、どこかの部位に欠損があるようだった…外から見えない内側にも。目があるものの瞳は虚ろで、顔が焼けただれて見るも無残に平らになった男性が発する体表現も、同様に虚無が含まれていた。どこも見ておらず、ただなにかの救いを求めて、そこに整列し前を向いた、いまにも吐きそうな顔色になった亡者の群れ。身体を前後させ、よろめき、唸りながら、ただそこに並ぶそれらはどう見ても…アイドルの握手会に並ぶファンのようだ。


そして…何度目かの後悔か?


正面玄関がそれらで封鎖された


何かの間違いで政府の失態が露わになり、それに怯えた人々が、出先機関や銀行に押し寄せ、群衆と化して我先にと、自分の分だけは確保しようと身動きが取れなくなった状態の出入口…それなのにそこから先、カウンターへと至る列はきれいに一列に矛盾なく並ぶ。そんな奴らの集合によって玄関ロビーが埋まり、どこへも抜け出せなくなっていた。人と人の間にほんの少しの隙間。だがそれさえも流動的に動き、次の瞬間には人で塞がれ、ロビーからは、ロビーへは、人が外へと出ることも、そこに入って行くこともできないような混乱と混沌に酔わされていた。息苦しさに喘ぐ。酸素が薄くなっただけではない、それ以外の要因がロビーのどこかにあって、そのなにか? が原因で眩暈が引き起こされるような、はた迷惑な幻惑。現にここにいる奴らはオレ以外、呼吸をまともにしているような気配が一切ない。金魚だってもっと口パクをする。ただ口をぼんやりと開けて…あるものは口を閉じて、無言でそこに居続けて、自分の順番だ、と暗黙の了解的に理解して、カウンターに向かう列へと整列していく。


まあ…確かにナースはアイドル 入院中の唯一の心の支え だが何もここまで熱狂的にならなくても……



「あ! マイケルさん! マイケル・ミドルパーカーさん! ちょっと待ってください…お話しがあります……」



そんな風にいきなりナースがオレを呼び止めた…受付にいた全員のナースが一斉に、ハウリングを起こして、不協和音を発声させて その声に握手(悪手)を求めるために並んだものたちの挙動が変化した 睨み付けられる…ちょっと待ってくれ 名前は個人情報 モザイクがかかるんじゃないのか? オレへの情報保護はどうなっているんだ……


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