Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #143
セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #143
ほとんどのゲーム シナリオが進むと出現するバケモノが変わる より強く、賢く、魅力的なものへと メーカーの、ゲームを飽きさせないための配慮 人はどうしても、いいもの、を後にしたがる
だが ここでそんなものはない 出るバケモノに制限がある以上 出方が変化する 理不尽に 背後に いきなりに
「今、居なかったじゃねえか!」
そんな声が聞こえてきそうだが…そうなのだから仕方がない こちらに武器らしい武器はない 身を捩ることで、これを外すことも可能だが……
「ぐぅわあああああぁああっ」
頭を両手で鷲掴みにされて 左右へと無理矢理 振り回される 首と肩の筋肉と骨が悲鳴を上げて、軋む あるはずのない三半規管が強制的に揺れて、視界の先が、遅れて動く
「くっ」
無理矢理 身体を振り回されるのはかなりきつい わがままを言い、言うことを聞かない子供や老人の頭をこんなふうにしたがる奴がいるが…絶対にやめた方がいい 抵抗する気力を失わせることはできるが…無気力になった子供も老人も、世話をするのがさらに困難になるだけだ
振り解こうかどうか、迷う 武器があるなら…手術用メスやナイフ ボタン連打で早く解ける ダメージを減らして復帰 だが、素手だと喰らうダメージは変わらず、逃れた後の対処が難しい
サバイバルホラーなら、ここは『逃れる』一択 だがこちらは『死に戻り』 時間フラグはこれで解消 なら……
ガキッ
そう臆している最中に…首を折られた 視界が横に 画面に…薄い膜がかかったような、いままでにないエフェクト そのまま、首が折れた方へと、身体が勝手に倒れ込んだ
NeckSnapoffDead
「ぎゅわぁわああああああああぁ」
歓喜にうち震えるナース オレの頭の上を跨いで、オレの身体を…腹を上へと向ける ? 緑色? 姿形は全く変わらない…短いスカートの下も真っ黒だが…、大きな胸を震わせるナースの服のエッジの色が薄い緑 そんなのがいたのか…そのまま オレに跨って喰いはじめ……
ない 違った
「ぎゅうううううぅ」
オレの服の襟を掴んだナースが、オレを引きずるように歩き出した カクン カクン 力なく首を振り子のように動かす、哀れな喰い者をご機嫌に運ぶビックフットみたいに、小柄な可愛らしいナースが廊下を進む それを後ろから追う どこへ行くつもりだ? いやまて……
オレのこの元の身体は、オレが死に戻る時はどうなっていた? 死に戻りした直後に再構成されるのか? その時、元のは分解されていたのか? バケモノが一時的に無効化されるのと同じように、透明のエフェクトで消えるのか?
誤魔化されている肝心な死に戻り プレイヤーにはわからないようにされている所 オレが死んで、それなのに意識がある間は、オレの死体はそこに転がったままだ
嫌な予感…もし、もしもだ
身体だけをどこか…そう、死に戻れない箇所にでも置かれて…封じ込められたのなら…オレの死に戻りはどうなる?
身体は関係ないのか? 意識だけが他の身体で戻るのか? どうなるんだ?
「ぐはああああああぁ」
ナースはゆっくりと死体を運ぶ まるでこちらの死に戻りまでの時間がわかっているかのように…ちっ いつのまにか目の端の数字が
79
になっている まず間違いないな これは素数だ 上昇率がそれに沿っている
廊下の角を曲がって ナースがその向こうへと進む 身体をやや左右へと揺らしながら…いったいどこへ行くつもりだ? くそ…もうそろそろ時間が切れる カウントはしてないが…そう思った時
奥の…202の扉が開いている事に気づく ゲームではここは開かない 入れない 以前、この状態でここを覗いた時、内部は灰色な何も作られていない部屋だった その表面は…墨を立ち入れたような黒
「あああぁあああああああ」
そこへと…ナースが迷うことなく オレを引きずって入っていく オレの身体が…頭がそこを超えようとした直前、画面が落ちた




