Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #001
※2016/05/05本文の表情を書き直しました←まだ 書きはじめていない時期を指定しています(汗)
※2026/05/09まえがき 表現を修正しました
※2026/05/10最終採用分を投稿しました
※2026/05/28またまた改稿しました
※2026/06/07何度目かの改稿か?
※2026/07/02置き換えました 気に入らない個所は直してます
セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #01
薄闇色が往来しはじめる、逢魔ヶ刻。宵闇のベールが垂れこめ、視線をぼやかせる。
交通量の多い幹線道路、その横断歩道、渡りはじめたそこへ、まるでこちらが見えていないかのように、急ハンドルを切った自動車が小さな悲鳴を上げて入って来た。柱の死角、そのさらに向こうにいたオレに気づいた愚か者が慌てて、ブレーキをかける。何事もなく平穏に生きている人が、驚いて振り返るほど高く響いた悲鳴を上げて、オレのすぐ横で止まった自動車は、不満げに不遜にふてぶてしい顔をしたまま、毒を吐き、スマホを耳につけたまま離さない従者が、自身の正当性を主張するように、盛大にクラクションを鳴らした。沸点に達した焦気と、鼻につく焼けた匂い、けたたましい音の洪水の相乗効果が無遠慮にばら撒かれ、周囲の闇がさらに増したような錯覚を起こす。ほかの物事で正当に評価されないものに限って、他者を下に従えたがる。その心理的欲圧に抗うこともできずに、空いた車の窓から顔を出して大声で訳の分からない、いい訳を叫んだ御者を無視して、残りを渡る。一瞥もくれてやる必要もない小石以下の存在…半分も進みきらないうちに車を急発進させた従者はまた、大きな声でなにか訳のわからない主張を怒鳴って、薄紫に沈んでいく道を去っていった。気にすることもない…正義は常にそれぞれにある、判断は常に第三者に委ねられ、当事者のどちらかは常に無視されるようにこの世はできている。それがどちらになるかは…面倒だからいい。
交差点、4差路。十字に区切られた大動脈は血液たる車両の往来が盛んで、交差の先、角にあるコンビニエンスストアの駐車場にも何台もの車が、酸素を乗せ換えて立ち去る前の赤血球のように、その流れに乗りこむタイミングを見計らっている。
そこを横切る。
幹線道路はやや湾曲して走っている。直線してきた盲者はこのスペースが、先へとつながる直線に見えて、信号があることに気つかずに直進しようと、駐車場を突っ切ろうとする…認識錯誤による視野狭窄、闇が近いものなら、なおさら、そう見える。
その錯覚を起こした愚かな御者がまた、慌てたようにクラクションを鳴らす。間違った方へ進入しようとした直後、そこが間違いだと気づいて、そこにいるオレに気づいて、慌ててハンドルを元のルートへと戻そうとしつつ、ふたつの物事をいっぺんにできない慌てぶりで、減速できずに、しかし、自分は間違っていない、と庇おうと主張して、ほぼ真横を通り過ぎていく。肘を少し、出していたのなら、引っ掛けられ、転びそうなぐらい、近い距離を。吼えるような風が通り過ぎていく。頬を引き裂くみたいに。
その時、オレの目の端に赤い明かりが光った。コンビニの駐車場、そこに止まっていた一台の車が不意にバックをしはじめる。危険を告知するテールランプ。その車は、真後ろにいるオレに気づかずになぜか、一時停止もせず、確認してもいないかのように一気に下がり出した。それを避けようと車道側に寄る。
寄ったのはいい…バックした車は、まるでなにかの間違いを起こしたようにスピードを上げた。愚直に、真っ直ぐに、こちらへと突っ込んでくる。
それに気づいて…避けようとして、どこへ? と思わず立ち止まってしまった。
前方からも車、薄闇が進む中、帰宅を急ぐのか、恐怖を感じるほどのスピードで、オレが今居るここを真っ直ぐな道だと信じて、前へと進む…誰もいない、平坦な直線道路、とでもいうように。これは…避けられない。
運命には、避けられるものと避けられないものとがある。
両方の車ががほぼ同時にオレを襲った。逃れる時間も場所も、そんな反射神経なんか、持ち合わせていないオレに逃れる手段はない。後ろに行こうが、左に逃げようが、安全なところなんかこの世界にはほぼ、無え。全部、塞がれている。
その瞬間……、
そうか、オレはこの世界から弾かれたのか……、
そう思った。
+CollisionDead
◇◆◇◆◇
瞼にキスをされるような感覚で、目が覚めた。
ここで、
「知らない天井だ」
とかいえたらオタクなんだろうが…もちろん、そういおうとして…その天井の有様に一瞬だけ、息が止まった。
黒、赤、褐色…薄い灯りのぼやけた視界の向こう、生理的に嫌悪する色が、わざと目について気分を害するように、浮く。つい今しがた感じた、鉄が擦れる臭いが急に鼻についた。吐く息が白い、なのにどこか生暖かい。
血のような錆。劣化したような黒。天井にまで届く、液体を噴出させて撒き散らしたような悲惨の痕…色合いから見て、かなり昔にそうなったはずなのに、そこからはいまもいくつもの雫が滴り落ち、壁の隙間から滲み出た液体が、床まで長い黒い滝の染みを作る…赤黒く見えたのは、オレの目に入った雫のせいか? 痛みはない、ただ違和感、ものすごく高い目薬を差したような爽快感が眼球を洗う。
天井いっぱいに…いや、目の前にはそれしかない。雨漏りが酷い屋内? それにしても酷いな…どこだここは?
頭だけが動く、頭だけを動かす。
すぐ左手は窓、そのこちら側に斜めに走る格子が嵌められている。それはまるで、ここからはもう出られない、とでも教えるように、異様な存在感を放つ。
牢屋? 刑務所? 何の罪でオレは捕らえられた? それならオレを罵倒していったやつのほうを……。
一瞬だけそう考え、おかしいと気づく。記憶が途切れる直前……、
轢かれた、それは間違いない。どちらの車にかはわからないが…それで病院に担ぎ込まれた? こんな病院に? もっとマシなところがいくつもあっただろうに…少なくとも、人が住まう地域の周りには、救急医療を行う大病院を置く習性がひとにはある。それなのにこんなところに連れ込まれるとは…なんてツイていないのか。事故を起こした奴はまともな保険に入っていなかったに違いない。
そう考えて…いや、これはこれでラッキーか? と考え直す。人にはいろいろな、不具合、ごたごた、そんなものがある…そうとも考えて、また思い直す。
どう見てもここは正気じゃない。
さらに改め直す、
どこだろうと、どこであろうと、現実だろうと、正気じゃなかろうと、どこも地獄であることに変わりはないな、と……。
※2026/05/10今回の投稿が最終採版です たぶん
この作品は当初 新聞掲載の日間小説を基本に毎日1000文字を目標に投稿していたため エピソード01〜20か30までは表現などを大幅にカットしていました でないと入らないので 現在 それはもうあきらめたのでこのカタチと相成りました すいませ
※2026/05/21さらに改訂しました 何やってるんでしょうね? ※2026/06/07さらに改稿しました さあ…つぎはいつか?




