12-2 始まりの町へ 再会
3話連続予約投稿。昼の部。
「戻らん!」
(あー、さっきから鑑定しているが、強さを求めすぎて覚醒しやすいな。覚醒は一瞬で、戻るのにクールタイム3日だ)
「なん……だ……と!?」
(簡単に言えば3日は少女のままだ)
「これは呪いか?」
(勇者の力が呪いなら、クリーチャーは祝福か?)
「……失言だった。混乱しているようだな」
あれから色々と状況確認をしたが、以上の結論だ。どうも若い頃の活発な力を強く求めて少女になった。まあ、新人坊主も魔法少女も若いし、最近は今は8歳の幼女に負けたからな。若さは欲しいよな。
で、なんやかんやと言うわりに剣が好き。自身の魔法適正も低めではあるがパッシブ維持程度の魔力量は普通にある。強さは剣に宿る。みたいな頑固な思い込みがあっての覚醒だ。
おっさん騎士団長は美少女剣士になった。
苦悩しているのは、どう説明するか、だ。説明には覚醒で一発なのだが、少女に3日縛られる。男は捨ててない様子。
「ダーリン以外はどうでもいいわ」
「パパは男の子だよね?」
(子供産めるけど心は男の子だよ。スライムは心に性別があるのさ)
「あいつ、服がブカブカね。次の町か村で古着でも買わせましょ」
「なっ! 女装しろと!」
「女の子だよ! 今が男装だよね」
「くっ! 動きやすい服は欲しいが……スカートか……」
あー、固定概念強すぎ。パンツルックな女性も多いよね。ってか、女冒険者ってスカートは履かないよ。言わないけどね。
○ ○ ○
「戻れるようになったが、前の服はどうした?」
「売ったわよ。旅に無駄な荷物は不要よ」
「おい! 丈の合う古着は早々ないぞ!」
おっさんの時は2mある巨漢だからな。
「戻らなきゃいいでしょ」
「うぐっ。恥を忍んで勇者に……」
「筋肉だるまにひょろいあいつの服が合うと思う?」
「……古着屋に期待するか」
○ ○ ○
(なあ)
「なぁに、ダーリン」
今は魔法少女にイン。川で潰れるほど磨かれた。
(発展してね?)
「ダーリン生誕の地として流入は止まらないわ」
「パパの故郷だー♪」
ある意味ではスライム人生はここからだな。異世界転移は窒息死、その後はゴブリンにすぐ潰されたからな。あながち間違ってはいない。それだけで大都市に発展するか?
「ここはね初心者冒険者に優しいの。ゴブリンは潰えないから討伐はあるけど、薬草の依頼も多いのよ。保護区もあって定期的に薬草の植栽もされているわ。薬草は育てば保護区を解放して新人冒険者がゴブリンを警戒しながら取るの。過保護な町よ」
新人冒険者の仕事がやらせになってる。もう専門職が栽培しているだけだ。ゴブリンは多いが、ここまでの大都市だ。近場にゴブリン集落なんぞは出来はしまい。
「聞いたことあるよー! ゴブリンとの戦い方も先輩が後輩に指導するって。私も読んだゴブリン退治マニュアルもここが発祥だって聞いたよ! とってもゴブリンの生態を研究してるの」
あー、イラスト付きの重厚な本な。モヒカンの長さでの強さ検証は、年期の入った仕事をしていると思ったよ。肌色カラーチャートは進化後のゴブリンを見極める修行になると人気らしいな。
「旗が立ってるから今日は居るわね」
(旗? あの白地に青の丸。なんだありゃ?)
「あれが娘っ子アンジェの薬局よ」
は?
いや、いやいや。
だって、大都市の中心に建ってる大豪邸……いやビルじゃん。何階建てよ!
「ダーリン。あれは併設されてる病院よ。薬局を囲うように建っているだけよ。昔のままの建物があそこの中心にあって、いま調剤中だから静かにしてねって意味の旗よ」
ますます分からん。調剤に集中したいから大都市に静かにしろって? あー、本当に静かだ。馬車すら止まってる。極端な話だが、手話に筆談までしている。都市が沈黙している。
あっ、旗が降りた。
都市が生き返ったかのように動き出した。これが日常か? おかしくね? 娘っ子の薬局はどうなってんだよ!
「ここで治らぬものは死を迎えよ。そんな格言があるぞ」
「そうね。古傷すら手拭いで顔を拭うように消すわ。思い出の傷すら消えちゃったもの」
なにそのエリクサー。
「まあ、行きましょ」
○ ○ ○
「うっ! スライムさん!」
珍しく魔法少女が僕を譲渡した。
(娘っ子よ。大きくなったな)
「はい! 立派に薬剤師してます!」
(異常なほど発展してるの、何で?)
「お爺様とお婆様が病気を見るのが得意なのです」
(目が悪くて引退した老夫婦が?)
「あれは、ちょちょいっと治しました。現役に復帰ですが、お薬作るよりも患者との交流が好きなようです」
今は併設されてるドーナツ状の病院の中庭みたいな空間。ポカンと広く拓いた薬草園に確かに薬局が存在した。病院の中庭側には窓はなくこの空間だけ大きな壁に切り取られたかのようだ。
(なあ、さっき欠損した患者が担ぎ込まれていたが、治るの?)
「はい、少々お値段は高めですが生えますよ」
(なにそのエリクサー)
「エリクサー? そんな上等な物ではないですよ。症状に合わせて調合します。欠損は薬草や素材が高価なので高いだけですよ」
娘っ子がエリクサーか。鑑定。ふむ、『特級薬剤調合』だったスキルが『神級薬剤調合』になって、他にも更にスキルが増えてる。
「アンジェ、娘のマリアを診てもらえる? 武道大会を見てただろうから分かるでしょ?」
「お願いします!」
「旦那様もそうだけど、スキル暴走はスライムさんが強すぎるからでしょうね。でも、あそこまでの暴走は強いお薬になるわ。診察はお婆様よ。えっと、そこの女の子も診てもらった方がいいわね」
「言っても信じられないだろうが、騎士団「わぁ、スライム師匠!」……ぬっ?」
「あら、旦那様。ゴブリン退治マニュアルの改訂作業は終わったのですか?」
「調査の必要があるね。鉱山ゴブリンの特性がいまいち掴めていないんだ。っと、目の色が変わらない美人たちは安らぐよ。アンジェもスライム師匠に心が向いていて僕の心は痛いけど、仕方がないね」
新人坊主はまだ完全に落とせてないの? どうも元宿主でコミュニティが出来ていそうな。って、ゴブリン退治マニュアルは新人坊主も噛んでいるのか。
「スライムさんがもう少し来なかったらジェシカさんに同行してましたね。恋しかったですよ。ああ、心配しないでください。ちゃんと定期的に帰りますから」
そこまで執着するスライムか? 自分じゃ魅力は分からんが、年一回どこかに消えてしまうスライムに人生かけるなよ。
(しかし、スキルを薬で抑えないといけないほど育てたか? 読書っ子は理解できるが、他はきっかけ程度だろ?)
「スライムさんのスキル習得方法は特殊ですよ。本来なら鍛練の後の結果でスキルになるのです。持ってもいないギフトから覚えると、馴染むまでは薬で成長を阻害して抑えないといけない状況はあります。マリアちゃんと、えっと、そこの女の子にも処方が必要ですね」
なんと! 僕は人に害ある成長をさせていたのか?
「ダーリン。私は薬を飲んでいないわ。あれば役立つけど、なければ修行すればいいのよ。マリアは、ちょっと、強過ぎるから心配なだけよ」
ならいいが。盛りすぎには気を付けよう。
「あのな、さっきも言いかけたが俺は騎士団長だ。スライム師匠の修行は突拍子もなく飛ぶ。スキルでこの姿だ。服がないから戻れないだけで好き好んでこの姿な訳ではない」
「あー、それで僕に似た雰囲気なんだ。あの騎士団長が女の子なんて、スライム師匠もやりすぎです」
(少し盛ったが、スキルにしたのは騎士団長だ。責任は取れんし、本人が望んだんだ。文句言われたくはないな)
「スライムさん、立ち話もここまででお風呂に行きましょう」
玄関先から直行でお風呂に? そこまで汚いか?
「いっぱいぽよぽよしましょ♪ あっ! 年増はアウト?」
(けっこうイケる。いや、娘っ子はそこまで歳じゃないだろ)
娘っ子は20代後半だが、人妻の色気もあり、ご馳走ですな。子供を産んだようには見えないのに醸し出す色香が。
「私も入るわ!」
「パパとお風呂~♪」
おっと、牽制と嫉妬の親子ディフェンス。
「じゃ、旦那様は騎士団長様をお婆様の病棟に案内してね」
「……ああ。でも、旦那の僕が玄関先で追い返されるとは。スライム師匠に嫉妬したい」
「……言ってる時点で嫉妬だ。はぁ、スライムに嫉妬する勇者は格好つかんな」
何か、今世は長く感じるな。とりあえずお風呂らしい。
スライム歴 ~13年2月~13年3月~




