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オズマ戦記  作者: 葱龍
七章 転生者大戦 最終篇
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第百十三話「ラストバトル PART5 -最後の勝利者-」

右手に聖剣ペンドラゴン、左手に魔剣ランスロットを握りしめたコウは、

何故か微動だにせずアルバスの方をじっと睨んでばかりいた。

いや、視界はアルバスを見据えてはいたが意識はアルバスの方には向いていなかった。


『久しぶりだと言いたい所だが…何故魔剣まで握っている!

 私か魔剣か、どちらかを捨てろ』


『無理よ…。どっちか捨てたらこの子、アルバス・ロアに勝てなくなる』


『勝つために闇の力の権化たる魔剣まで使ったとなれば本末転倒だろう』


『つまらないプライドの為に死ぬ方がよっぽど本末転倒じゃない!』


『つまらないとはなんだ!!』


『あぁーもううるさい!!喧嘩してる暇あったら黙って俺に力を貸せ!!

でなきゃまとめて武器屋に売っちまうぞ!!』


『……解った。少しだけ力を貸してやろう』


流石に売りに出されるのは困るのかあっさりと承諾してくれた聖剣ペンドラゴン。

と、そこにアルバスが斬りかかる。


「る゛っ!!?」


アルバスの攻撃をコウは魔剣で受け止め、すかさず聖剣で斬りつける。

一度距離をとるとアルバスは再び距離を詰め、横薙ぎに魔剣を振るうが、

コウは今度は聖剣の刃が真下を向くように構えてこれを防御。

魔剣の柄をアルバスの頭に叩きつけ、二振りの剣でXの字を描く様にアルバスを切り裂く。


「…なるほど。少しは出来る様になった。だが!」


アルバスは左の手刀に闇の魔法を纏わせると、それをコウの脇腹に突き刺した。


「これはゲームでも試合でもなく殺し合いだ。正攻法だけで勝てると思うな」


だがコウは脇腹を刺されてるにも関わらず苦悶の表情を浮かべるどころかむしろ笑っていた。

狼狽え、手刀を引き抜くアルバス。コウが口に含んでいる魔宝石の力により脇腹の傷がみるみる塞がっていく。


「…そんな事、微塵も思っちゃいないさ」


「そう言えば魔宝石のおかげで常時回復できるんだったな」


「だけだと思うか?」


反撃に聖剣を斬り上げるコウ。

アルバスは僅かに上体を逸らしかわそうとするが、その太刀筋はアルバスが想像してた以上に速い。


「ッ!?」


アルバスは首を右に傾け頭を切り裂かれるのを回避したが、聖剣の切っ先はアルバスの頬を僅かに引き裂いた。


「一瞬の間にこれほどのパワーアップを…信じられん…!?いや、あり得ない訳ではないか…!

 何せ小妻コウ、貴様の異能は!!」


「その通りだ。俺の異能は傷つき、そしてその傷が癒え再び立ち上がる度に力を増す能力!!

 今の俺の力がお前に遠く及ばないと言うのなら、」


コウは聖剣の切っ先をアルバスに突き付け、


「お前に近づけるまで強くなり続けるまでだ!!」


「強くなり続けるだと?バカめ…いくら研鑽を積もうと、私の域に達する事など出来る物か!!」


言いながら斬りかかるアルバス。

袈裟斬り、右回転斬り、逆袈裟、剣を宙に放ってからの二連蹴りと剣を再び掴んでからの唐竹割り。

目まぐるしい連続攻撃を放つがコウはこれらを全て捌ききり、返す手の要領で両の剣で突きを繰り出しアルバスを突き飛ばした。

その衝撃たるや凄まじく、アルバスは300マル―ル(30km)後方へ吹き飛ばされた!


「くぅっ!!」


アルバスは咄嗟に身を翻し前方へ跳躍。

それと同時に自らの異能を使い急加速をかけた。


「!?お前それ…重ねがけも出来んのかよ!!」


再び肉薄する転生者二人。

火花を散らしながら繰り広げられる激しい剣戟は既に音速の域に達していた。

甲高い金属音と共に迸る衝撃波が周囲の建造物を一つ、また一つと切り裂いていく。


「やるじゃないか!異能の二乗作用により9倍の力となった私とここまで戦えるとは!!

だがそれでも私を超えるには至らんがな!!」


「越える!絶対に越えてみせる!!この世界とこの世界に生きる人たちの為に!!!」


コウを膝蹴りで吹き飛ばすアルバス。コウは歯を食いしばり魔宝石を吐き出すのを何とか防いだ。


「解らんな。貴様も私と同じでこの世界にとっては部外者!

 命を賭して守る義理などない筈だ!!」


言いながらアルバスは両の手で作り出した闇色の光球をコウ目掛け撃ち出す。


「侵略して支配する義理はもっとねぇよ!!」


コウは吹き飛びながら聖剣をアルバス目掛け投げつける。

聖剣は闇色の高級を切り裂くが、アルバスは上体を捻り聖剣を回避した。


「自分から聖剣を投げ捨てるとはバカな奴!!」


アルバスにはそれが、破れかぶれ同然の愚策に見えたのだろう。

だが!聖剣は突如として180度反転!再びアルバス目掛け飛来した!!


「なにっ!!?」


聖剣はアルバスの背中を貫通し腹から刃が突き出るが、


「グッ…!…ぅぅぅア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!」


アルバスはすぐさま聖剣を引き抜き放り投げると、傷口を闇の炎で焼き出血を防いだ。


「ッハァ…!ハァッ…!ハァッ…!!まさか聖剣をこの様に扱うとは…」


「そっちこそ、そんな風に出血を防ぐとはな…」


とは言え先程の一撃でアルバスはかなり失血したのは間違いない。

アルバスは手強くとも無敵ではない。やりようはある筈だ。


「おおっ!!」


コウが聖剣を手元に呼び寄せると再び肉薄し、剣戟を繰り広げるコウとアルバス。

アルバスは徐々に剣を振るうスピードを上げ、

切っ先が掠め傷が癒える毎にコウのスピードが徐々に上がっていき、

やがて二人は光の速さに達した。


アルバスの攻撃を避けようとしたコウは勢い余ってデストラの国境を飛び越え大和まで移動してしまい、アルバスもそれを追い大和へ到着。

そこで再び剣戟を繰り広げるがその最中にコウが新幹線『もりさき』と激突。

そのままルスナまで吹っ飛ばされアルバスもコウを追うのであった。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■



「2人が何処行ったのかまだ解らないんですか!?」


依然横たわるザルディンを揺すりリゼルが問う。

コウがアルバスと戦っている間に回復魔法を使い傷を癒す事は出来たが、

ザルディンもモアザも再び戦いに参加するだけの体力はまだ戻ってはいなかった。

いや、仮に体力が戻っていても既に光の速さに達したコウとアルバスについていくのは実質不可能であろう。


「すまない。彼らは既に…私達が探知できる範囲外に戦いの場を移してしまった様だ…」


「範囲外って…ほんの一瞬で?」


「今やあの二人は一秒の間に地球を七周半できる速さ…つまり光と同等の速さを手にしている。

 捉えられないのも無理はない」


そう言って現れたのはマサツグだ。


「そんな…それが本当なら、コウに力を貸す事が出来ない……!」


「俺の様な転生者でなくとも修業を積めば光速に至る事は可能かもしれないが、そんな時間的余裕は今は無い。

 今の俺達が出来る事と言ったら…祈る事くらいだろうな」


そこに駆け寄ってくる人影が三つ。

カイルたちだ。


「姫様!ご無事で!!」


「ええ。コウのおかげで。そちらの首尾は?」


「敵戦力の無力化はほぼ完了しました。…そのコウの姿が見えないようですが」


「彼は今…アルバスと戦っています。正真正銘、これが最後の戦いになる…」


「勝算は?」


「勝算がどうとかじゃない。勝ってくれなきゃ僕たちが困りますよ」


亡霊戦士を倒し元の肉体に戻ったシド達も合流したその時、

リゼル達の前で突如爆風が巻き起こる。

その中心にいたのは…コウとアルバス!!


「…ッハァ……!はぁっ…!まさかお前と世界一周旅行をする羽目になろうとはな…!!」


「しょうがねぇだろ、光速のスピードにまだ慣れていないんだからよ」


「コウ!」


「大丈夫だリゼル!すぐに終わらせてやる!!」


アルバスに斬りかかるコウ。

聖剣と魔剣による目まぐるしい連続攻撃がアルバスを襲う。


「凄い…あのアルバス・ロアが手も足も出ない!」


一方的に切り刻まれるアルバスとコウの猛攻に驚嘆するスタン。

それに一種の違和感を感じたのはリゼルだった。


「だがおかしいわね…。私達を相手に驚異的な力を発揮していたアルバスが

 あそこまで一方的にやられるなんて」


「おそらくはアルバス自身の異能が原因だろう」


そう話を切り出したのはマサツグだ。


「どういう事?」


「アルバスが本来持っていた異能は3分の間自身の力を3倍に強化する能力だが、

 この能力は重複すると言う特徴があって、能力を発動した状態で更に能力を発動し、

 『重ねがけ』をする事によって力を3倍以上にまで高め、持続時間も伸ばす事が出来る…。」


「…何故、貴方がそれを知っているの?」


リゼルにそう聞かれるとマサツグはこめかみを軽くトントンとつつき、


「この星が教えてくれたんだ。『賢者』として覚醒した俺にはそれが出来る…。

 能力の重ねがけが出来る性質上アルバスの異能は一見完全無欠に思えるが一つ致命的な弱点がある。

 反動だ。」


「反動?」


「重い物を持ち上げたり激しい運動をした後腕や脚に激痛が走る時があるだろう?

 アルバスの異能も使った後は使用者の身体に負荷がかかり動く事さえ困難になる。

 そして今アルバスの身体には、3倍どころではない甚大な負荷がかかっている」


「その事は、誰に言われるでもなくアルバス自身が解っていた事だろう?」


と、ミハイルは指摘し、更に「それを承知で重ねがけをしたのは…」と付け加えた。


「それだけ、コウとの勝負は負けられなかったのだろう。

 世界の行く末を左右する者として、男として…。」


「!?見て!!」


エルが指さした先、コウに斬りつけられ続けていたアルバスが歯を食いしばり、握りこぶしを作っているのがかすかに見えた。


「調子に……乗るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


アルバス怒りの右フックがコウの頬を抉る。

そのあまりの衝撃にコウは思わず口に含んでいた魔宝石を吐き出してしまった。

更にアルバスはコウの顔面に膝蹴りを叩きこむ。

コウが仰向けに倒れたのを確認すると、アルバスはトドメとばかりに魔剣を逆手に構え…

魔剣の切っ先をコウの左胸に突き刺した!!


「!?」


「ッ!イヤアアアアァァァァァァァァァァァァァ!!!!」


絶望的な光景にリゼルは悲鳴を上げずにはいられなかった。


「いくら傷つき立ち上がる度強くなる異能を持とうと、心臓を貫かれてしまっては立ち上がれまい!!」


コウにトドメを刺すとアルバスはリゼル達の方へ振り返り、魔剣の切っ先を向ける。


「順序は多少入れ替わってしまったが、貴様らもすぐ小妻コウの後を追わせてやろう!!」


カイルとスタンが咄嗟にシャインとシャッテを庇う。

かつての仲間の命ですら平気で奪う男。幼子を手にかける事にすら躊躇しないと踏んだのだろう。


「我々騎士を殺めるのは一向に構わん!だが彼女らを手にかけるのはやめてもらおう!!」


「この状況で己の命より女子供の命を優先するとは流石の騎士道精神だな!

 だがその女どもは既に戦術レベルの力を有している事は明白!!

 見逃す理由などない!!!」


カイルの思った通りだったが、かと言ってアルバスの暴挙を許す訳にもいかない。

しかし今アルバスに叶う者はこの場には1人といない。

となれば、頼みの綱は一つしかなかった。


「………コウ…!目を覚ませコウ…!!」


それは、コウが復活するのを信じる事だった。

再起不能となった者に呼びかけるなど、傍目には気が触れた様に見えるやも知れないが、


「立てコウ!!」


「兄ちゃん起きて!!」


「アルバスは任せろって言ってたじゃない!!」


「貴方がやろうとしてる事は誰しもができる事じゃない!!」


他の者たちもカイルの意図を汲んでか一斉にコウに呼びかけ始めた。


「…何をやっている?死人に語りかけても何も変わらんと言うのに」


「兄ちゃんは死んでないやい!!」


「コウが簡単に死ぬ様なやわな男じゃないって事は、一緒に戦ってきた私達が一番よく知っている!!」


「約束したんだ…必ずみんなで帰るって!!」


「ええい五月蠅い!ガキみたいにギャアギャア騒ぐんじゃない!!

小妻コウは死んだ!俺が殺した!それが現実だ!!認めないと言うなら地獄へ行って確かめろ!!」


そう言うとアルバスは左腕を頭上高く掲げ、左掌に赤黒い魔力の球を生み出すとそれは瞬く間に巨大化。

これをぶつけられたらリゼル達は塵も残さず消滅させられる事であろう。


リゼルは眼を閉じ、手を合わせて祈った。

コウの復活を。


「お願い。目を覚まして‥‥!コウ…ッ!!」


「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


アルバスが今まさに闇の魔法で全てを消し去らんとしたその時、何者かがアルバスの左手首を掴みこれを阻止した。

アルバスが振り返った先には…小妻コウ!!


「…アルバス、もうこれ以上人を傷つけるな」


アルバスは掴む手を振りほどき一度距離をとる。


「何故だ…なぜ生きている…!?心臓を突き刺したはずだ!!生きていられる筈がない!!」


「お前が俺の心臓を突き刺そうとした瞬間、俺は瞬時に身を逸らして心臓と肺が貫かれるのを何とか免れた…。

 出血がひどくて意識は朦朧としていたがな」


「何故だ!?何故そうまでして立ち向かう!!ただ俺の邪魔をしたいが為ではない…。

 一体何がお前を突き動かすと言うんだ!!!!」


「今まで自分の力を自分以外の為に使った事のないお前には絶対に解るまい。

 俺には俺を!俺の勝利を信じてくれる仲間がいる!!そんな仲間たちと共に生きたい世界がある!!

 その世界を護る為にも…お前を………倒す!!!」


そう言ってコウは聖剣と魔剣を引き寄せると、左手の魔剣を順手持ち、右手の聖剣を逆手持ちにし右腰だめに構えた。

それが必殺技の予備動作である事を瞬時に見抜いたアルバスは、


「何を企んでるか知らんが食らえ!!」


コウ目掛け魔法弾を放つが、放たれた魔法弾がコウを直撃する事は無く、寸前で別の者が放った魔法弾により打ち消された。

相殺の魔法弾を放ったのは…シャッテだ!


「この期に及んでまだジャマをするか!雑魚の分際で!」


「いくらでも邪魔するよ。あんたの考える世界、全然楽しくなさそうだから!!

 みんな!!」


シャッテの合図と共にコウ以外の全員がアルバス目掛け集中砲火。


「ッ……!火力を集中させたとて、そんな豆鉄砲では足止めが精一杯!!

 ただの時間稼ぎだ!!」


しかしリゼルは余裕の笑みを浮かべ、


「当然よ。…それが目的だもの」


その一言に全てを察したアルバスは焦り、コウの姿を探し、左手にその姿を捉えた。

両手に携えた剣は既に眩い輝きを放ち、今まさに必殺の一撃が放たれようとしている。


「チィッ!!」


アルバスは破れかぶれ同然に魔剣を投げつけ、一瞬遅れて魔法弾を放つが、

コウは身を低くして魔剣と魔法弾の両方を回避し、そのままアルバス目掛けダッシュ。

その初速は速く、アルバスでさえ避ける事も防御する事も叶わない。


速い、とアルバスが言う暇も無くコウの必殺の一撃が炸裂し、アルバスの身体は空高く舞い上がった。

数秒ほど滞空した後きりもみしながら地面に激突するアルバス。


「必殺…カオストラッシュ…!!」


コウはアルバスの方へ振り返ると彼の元へと歩み寄ると、彼に手を差し伸べ、


「安心しろ、殺しはしない。アンタには、この戦争を引き起こした責任を取ってもらわないと…」


「だから生かしておくと…?フッ…フフフフフ………。甘いぞ小妻コウ!!!!」


アルバスは右腕に魔力を帯させると、それを自分の胸に思い切り突き刺した!!、


「!!?」


コウはすぐにアルバスの喉元に指をあて、具合を確かめるが時すでに遅し。

即死だった。


「なんで…何でだよ……!何でこう言う事になるんだよ‥…!!馬鹿野郎が…!」


コウは哀しかった。

アルバスが死んだ事にではなく、人の上に立つ者の責務よりも死を選んだアルバスの選択が。


「…終わったの……?」


「ああ。納得できる形ではないが、最高責任者亡き今もうデストラとエタニティは組織としての機能を失った。

 この戦い、俺達の勝利だ…!」


カイルの言葉の通りだ。

アルバスは死に、幹部も死んだ今もはやエタニティはかつての様に世界を支配するどころか火付けすらできる状態ではない。


時に真龍歴2018年桃の月22日(日本の暦で言うと3月22日)。

デストラ元首相マウザンディア暗殺に始まり世界全土を巻き込んだ、

後に「転生者大戦」と呼ばれる事になる戦争は

首謀者アルバス・ロアの自決と言う形で幕を下ろした。


次回を以て転生者大戦編及び第一部は完結です。

しかし小妻コウの冒険はまた終わりません。

もうちょっとだけ続くのです

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