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オズマ戦記  作者: 葱龍
七章 転生者大戦 最終篇
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第九十四話「エルマの里」



背の高い木々が生い茂り、日の光を遮り続ける森の中を女王たちは一歩ずつ進んでいた。

森の中にあるとされるエルマの里へ向かう人員は女王のほかに護衛の兵が二名にコウ、ツバキ、シドの計六人と必要最低限だ。

と言うのも、ルトヴァーニャは今25万世帯もの避難民を抱えている。

大勢で森に赴けばそれだけ護りが手薄になり避難民たちを危険にさらす羽目になる。

それだけは何としても避けたかった。


「ねぇ、これから会いに行くエルマってどんな人たちなの?

 人間に友好的ではないとは聞いたけど」


「既に顔は見てるはずだよ。正嗣が連れてたブロンドの女…あいつが多分、エルマだ」


「でもそれは、ごく一部の例でしょう?男や子供のエルマだっつているだろうし…」


「そりゃそう…だ!」


コウは突然左腕を振りかざした。

すると木の上から何かが落ちてきた。

人だ。黒装束姿の人が降ってきた。

両手足を赤黒い糸で雁字搦めにされている為抵抗の心配はない。


そしてこの黒装束を一瞬の内に絡めとったのは異能『デス・ストリングス』。

かつてエタニティに属していた殺人鬼クドーが使っていた物だ。

コウがクドーの命を奪った事でその所有権はコウに移ったものの、

コウ自身は忌み嫌っていた相手の力と言う事で禁じ手として封印していた。

それがここに来て何の躊躇もなく使い出したのは、闇の勇者として目覚め物の考え方に変化が訪れた事に起因するのだろう。


「アルバスの差し金か。いつ頃からつけていた?」


「貴様のその能力…まるでクドーの……!?」


「質問してるのはこっちだ。」


そう言いながらコウは黒装束の頭を鷲掴みにする。


「コウさん!無抵抗の相手にこんな真似…」


「こいつはこっちの動きを探っているんだ!見逃せばこっちの身が危うい」


シドに目配せした後、コウは再び黒装束に向き直り、


「もう一度聞く。いつ頃からつけていた?」


「お、お前たちが、森に入ったあたりから…」


「まずいな。既にデストラにこちらの動きを感づかれてるかもしれない」


「急ぎましょう。民がこれ以上危険に晒される前に」


女王一行は森の奥へ進むそのペースを更に速める事にした。

が、


「待った。その前に…」


コウは三度(みたび)黒装束に向き直ると、


「お前、名前は?」


「こ、答えるわけには…」


「嘘つけなんかあんだろ!?親がつけた名前がよぉ」


「…クーゲル。」


「じゃあ…『クーゲル、今日見たことは一つ残らず忘れろ』」


クーゲル、と名乗った黒装束の頭上で燈色の光が弾けて霧散。

するとクーゲルは糸の切れた操り人形のようにパタリとその場に崩れ落ちる。


「何をしたの?」女王が問う。


「異界より来た者のみが扱える力…『異能』です。

 この力は魔法に似てはいますがその源は根本から異なり、故に魔法で防ぐことはできません」


「それはつまり、異能を持つ者は異能を持つ者にしか倒せないと言う事ですか?」


「そうだと言いたい所ですが、熟練した腕前を持つ者ならば対処は可能です。

 事実リゼル王女も過去に一度異能を持つ者『転生者』と戦いこれに勝利しています」


「リゼルが…。とにかく、その転生者をどうにかしない事にはルトヴァーニャ奪回は夢のまた夢ですね」


「その為の俺たち、その為のリゼル騎士団なんです。…もうリゼルはいないけれど。話はこれで終わりです、行きましょう。」


「はい」



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しばらく森を進んでいると茂る木々の数が徐々に少なくなってきている事にシドが気付いた。


「近いです。里」


「そう。何があるか解りません。皆さんお気をつけて」


警戒しつつ、更に森の奥へ進むと、戦闘を進むツバキの行く手を遮る様に一本の矢が飛来し、ツバキの足の一寸手前に突き刺さった。

ツバキが驚き顔を上げると、木の上から弓を構えこちらを威嚇する二人の人影が。

耳が横に大きく伸びている。エルマだ。


「ルヨッユナ!ルヨッメタッ・ミハサア・ヌ・リノヒ・ラ・ナリ!!」


聞いた事のない言語で怒鳴るエルマ。

何を言っているのか理解できるものなどその場には一人としていなかった。


「えぇと…プリーズスピークジャパニーズ(にほんごはなしてくれ)。」


ほとんど当てずっぽうに近い形で英語で答えるコウ。

だが二人のエルマに通じる筈もなく、矢を放たれる。


「参ったな。英語も通じないとなればもうお手上げだぞ」


「せめてこちらに敵対の意志がない事だけでも伝えないと…」


シドのぼやきに女王が同意のまなざしを向けていると、


「コハヌヤ!!」


再び未知の言語が響き渡ると2人のエルマは急に警戒を解き始めた。

よほど偉い立場の相手で、かつ戦うなとでも命令したのだろう。

声の主は悠然とした足並みで女王の前に歩み出てきた。

またしてもエルマだ。しかも先に出くわした弓矢使いのエルマよりも年食ってるように見える。


「申し訳ありません。私の仲間が大変無礼な真似を…」


驚くほど流暢で、コウや女王にも理解できる言語を話す目の前のエルマにコウは驚かされた。


「あなたは一体…?」


「自己紹介がまだでしたね。私の名はゴンドルド。エルマ族の将校を務めさせております。

 里の方へご案内します。ついて来て下さい。」



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生い茂る木々の上に小屋ほどの大きさの家が幾つも建てられ、その中心には大きめの井戸が据えられている。

如何にも世俗から離れて暮らす種族の住む里らしいが、かつて訪れた智龍の谷とは違い外界から来る者を拒絶する空気がここにはあった。


ゴンドルドと名乗った男は隔たり無く接し里まで案内してくれたが、

彼だけが特別なのかそれとも罠なのかは解らない。


「こちらです」


ゴンドルドの案内によりコウ達は一際大きな屋敷にたどり着いた。

どうやらここが族長の家らしい。


屋敷の扉が開け放たれ、中から腰まで伸びた顎髭と長髪を蓄えた細身の男が現れた。


「紹介しましょう。エルマ族の現族長アスカトール・ウォン・エルマ様です」


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