地下駐輪場の神隠し(7)
――…夕方のニュースです。
行方不明となっていた女性5人が、本日午後6時20分ごろ、城賀根町の地下駐輪場にて発見されました。5人はいずれも意識があり、病院に搬送されましたが軽症です。
――…続いてのニュースです。
城賀根町で発生した傷害事件で重傷を負い、意識不明の状態が続いていた10代の女性について、警察は×日、女性が意識を回復したと明らかにしました。現在も……
草臥れたスーツの男は、神社の前にいた。
階段に腰かけた男にそこに袴姿の少年が話しかけている。
「そういえば、傷害事件の子ほぼ後遺症もないらしいです」
そうだろうな、と苦笑いを浮かべる男に少年が笑う。
「いやー!まさかあの子、氏子さんだったなんてね!」
「多分、それだけじゃない」
「ん…?あぁ、他の人を助けてたんでしたね。本当!珍しい!」
そう、桃園遥はとても珍しい存在だった。
酷い目に遭って、霊と呼ばれる状態になった者は大抵強い恨みを持つ。
そして周囲に恨みを撒いてしまう。
自分が酷い目に遭った、ならば他の人も…となることが多い。
それを、
『私みたいに、なって欲しくなかったから』
などとあの少女は言ったのだ。
あまつさえ。
「しかも、貴方を助けようとしたんでしょう?」
あの時、遥が叫ばなければ男は更に大きな怪我を負っていた。
「それはそれは、気に入られもしますよね」
少年が苦笑する。
そして、あぁ!と思い出したように声を上げる。
「彼もお手柄なんじゃないですか?」
彼、というのは悟大のことである。
「あっはっは、悟大の坊っちゃんはな」
珍しく男が声を出して笑う。
『次会っても覚えている!』
そう、彼が言うのは何度目か。
彼は覚えていないが本当に小さな、小学生くらいの時から。
男と会いう度にそう言う。
何度も忘れながら。
ゴォ…と木々が一瞬に荒々しく揺れる。
男があわてて声を抑える。
「ともあれ…お疲れ様です」
少年がにっこりと笑い、男は肩をすくめる。
ジワジワ…と蝉の鳴き声がする
男は腰を上げてチラリと神社の鳥居を見上げる
『白ヶ根神社』
男は小さい頃、この神社に通っていた。
綺麗で小さな女の子、"しーちゃん"と遊ぶために。
そして、しーちゃんがから差し出された手を拒んだ日に彼女が神様と言うような存在だと知った。
自分は目の前の少年以外の記憶から消える。
それは、しーちゃんからの愛でもあり、憎しみの証だ。
独占欲。
男は、怪我が治ったばかりの自分の肩を撫でる。
自分は人間なのか、違うのか、それすらも分からない。
ただ、ここにいる。
そっと目線をはずし、足を動かす。
「それでは、また」
後から少年の声がする。
男は片手をひらりと振るとその場から立ち去っていった。
――地下駐輪場の神隠し 完――
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
シリーズとして続きを書くかは悩み中です。




