地下駐輪場の神隠し(1)
部活で遅くなり急いで、走る。
いつも通り地下駐輪場にへの入り口に足を踏み入れる。
小走り気味に階段を降り通路を曲がる。
角には小ぶりなカーブミラーがあり、自分が小走りに抜けていくのが視界にはいる。
そのまま前を見て、足を踏み出す。
しかし、少し進んだ時後ろに気配を感じる。
(お風呂場でたまに感じるやつみたい…)
そう考えながら、そう感じる理由は何だっけ?と思案する。
どうせ誰もいない。
さっき、カーブミラーにも誰もいなかったし。
そう思いながらも、つい振り返ってしまう。
そうして、桃園 遥が見たのは、塗りつぶしたような赤色だった。
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ジワジワと蝉が鳴いている。
暑い時期にも関わらず、スーツ姿の男が神社の鳥居前に立っている。
草臥れたスーツに擦れた革靴。
頬が痩けた顔色の悪い男が紙のタバコの箱を取り出した。
「ここは神社ですよ」
赤と白の色が目立つ、さも神社の関係者だとわかる袴姿の少年が呆れたように男へと声をかけた。
男はため息をつきながらタバコを箱に戻す。
「調子はどうだ?」
気だるげに男が尋ねる。
少年は首をかしげ、んー…と考えた素振りを見せてから男に苦笑する。
「まずまず、ですかねぇ?」
男は小さく頷き、それはそうと…と話を切り出す。
現在はこの時期にしては日が低く、早朝と言える時間帯だ。
「で、こんな朝っぱらから何だ?」
視線の先で地面を蝉が跳ねている。
ジジジ…ジジジ…
男の手の中でライターの蓋をカチカチを開け閉めしている。
カチ、カチ、カチ…
一瞬、その音が止んだ。
「人が消えるんです」
物騒な言葉と相反して、少年は笑顔を浮かべていた。
「消える?誘拐とかじゃなく?」
男が眉を潜めて尋ねる。
少年が大袈裟に肩を上下させて溜め息を付く。
「はぁ…そんなことで貴方を呼ぶわけないでしょう?」
「文字通り、跡形も無く消えるんです、まるで…」
「神隠しみたいに」
男はその言葉を聞いた瞬間に顔を上げた。
少年は変わらない笑顔で、目を開いて男を見つめる。
ジワジワと夏の音が戻ってくる。
「神隠し…?」
男が言ったその言葉は自分に言い聞かせるかのように呟く。
少年はその言葉に頷きながら答えた。
「だから、貴方に調べて欲しいんですよ」
そう言った少年は怖いくらい綺麗に笑った。




