12話 初授業
翌日目が覚めると、那月は知らない天井に迎えられる。
「……んん……そうか、俺弾校の寮にこしてきたんだった」
ベットから起き上がり、部屋から出る。
部屋には洗面台がなかった為、取り敢えずリビングに行って、誰かに聞こうと考えたのだ。
先生が言うには一階が共同スペースで、二階以上がプライベートスペースになっているという。
つまり、階段を下りれば目的のリビングがある一階に着くという事だ。
那月は階段を下り、一階に下りる。
どうやら那月の部屋は二階にあるようで、階段を一階降りるだけで昨晩通った廊下に出た。
そこで、ふと疑問が頭をよぎる。
「あれ?そういえば俺、昨日どうやって部屋まで行ったんだ?記憶が飛んでーーー」
考え事をしていたせいか、那月のお腹に衝撃が走る。
直後、目の前からドス、という何かが倒れる音がする。
見ると紫髪で、右眼が紫、左眼が灰色のオッドアイの少女が尻もちを着いている。
少女はおでこをぐしぐしと掌でかいていたが、那月の声に顔を上げる。
「お、おい大丈夫か?」
「……………(こくん)」
少女は那月をぼーっと見たあと、こくんと首を縦に振る。
「そうか……悪かったな」
「…………………………(かくん)」
「ど、どうした?」
少女は那月をぼーっと見たあと、かくんと首を斜めに傾げる。
「あぁもう!ほれ、立った立った!」
「…………………………」
那月は頭をかくと、少女の脇を掴み、持ち上げ立たせる。
少女は那月をぼーっと見たあと、ぼーっとリビングの方へ歩いていった。
「なんだったんだ?」
「あれは無花果 結夢だな。いつもぼーっとしてて、何考えてっかわからんやつだな」
「うおっ!紅蓮……いたなら声かけろよ」
「おはよ、那月。いやぁ、お前が朝から無花果と見つめあってるからさ」
「誤解だ!」
「分かってるって。んな事より昨日は大丈夫だったか?気絶したお前を部屋まで運ぶのすげぇ疲れた」
紅蓮は肩を回して、疲れたアピールをしてくる。
那月は先程の疑問が意図せず解決した事に、つい呆けてしまう。
結果紅蓮を見つめるような感じになってしまう。
「な、なんだよ……まさか本命は俺……!?」
「違ぇよ!何バカ言ってんだ!」
「バカはてめぇら二人だ…」
那月が紅蓮のボケにツッコミを入れると、後ろから声が聞こえる。
振り返ると、そこには翔の姿があった。
翔は那月と目が合うと、チッと舌打ちをする。
「階段の前で騒ぎやがって、邪魔だ」
「んだと!」
「んだよ……!」
「…………」
「…………」
那月と翔が睨み合いを続けていると、また別の声が後ろから聞こえる。
「まぁまぁ、二人とも落ち着いてよ。ほら朝だし……ね?」
柔らかい声の主は日奏である。
日奏の仲介によってその場は何事も無く収まる。
「ふん……」
「悪いな」
「うんん。気にしないで。それより、おはよう那月」
「おう、おはよう日奏」
那月と日奏は軽い挨拶をする。
それを呆然と眺める紅蓮はふと我に返り、那月の首を掴み、日奏と少し、距離を取る。
「お、おい、誰だあの子、お前知り合いか?というか知り合いだよな、呼び捨てだし……紹介しろよ」
「え、お、おう」
那月は日奏に紅蓮のことを軽く紹介する。
「へぇ、那月の友達……じゃあ、僕とも仲良くしてもらえると助かるな、紅蓮くん!」
「お、おう…こちらこそよろしく。それと紅蓮でいいよ」
「分かったよ、紅蓮。僕も日奏って呼んでね」
「……ボクっ娘かぁ」
「?」
紅蓮は小さく呟くと、目を細めて日奏に質問をする。
「ところで日奏ちゃんは那月とどういう関係?」
「ち、ちゃん?……ええと、那月とは友達だよ……大切な、友達……」
頬を少し赤らめる日奏。
「ちきしょう!どうしてだ!どうして那月には彼女がいるのに!俺にはいねぇんだぁぁ!!!」
「おい、紅蓮何言ってんだよ……彼女?なんの事だ?」
「とぼけんじゃねえよ!日奏ちゃんみたいな可愛い娘が頬を赤くして、「友達」なんて……友達以上以外有り得るか!?」
「なんだよその謎理論……というお前は誤解をしてる。日奏は……男だ!」
「…………………………………………は!?え?え?」
紅蓮は日奏を指差し、視線を日奏と那月を往復させる。
紅蓮が言わんとしている事は那月にもよく分かった。
日奏を初見で男だと見抜ける人はほぼほぼいないないだろう。
今だって、日奏は黄色のモコモコとしたパジャマを着ている。
更に自分が女だと思われていた事に対して、ぷりぷりと怒る姿はそこら辺の底辺の女性より余程可愛い。
「ちょっと、どういうこと!もしかして紅蓮、僕の事女の子だと思ったの?僕はどこからどう見ても男だよ!心外だなぁ」
「え、あ、すまねぇ?」
「那月も!」
「え、おれ?」
「そう!さっきの口ぶり、那月も最初僕の事女の子だと思ってたんでしょ!……あ!昨日の朝の質問ってそういう事だったんだね!」
「ぎく!……い、いやぁ……最初から男だと思ってたぞ……」
「ほんとかなぁ」
疑いの目を向けていたが、まいっか、と日奏はくるりと回り、那月と紅蓮を背中越しに見ると
「それより、もうすぐ朝食の時間だよ」
そう言ってリビングへ向けて歩き出す。
やはり仕草の一つ一つに可愛いが隠れているのはどうしてなのだろうか。
「お、おう。いくぞ紅蓮」
「え、あ、そうだな」
那月と紅蓮はその後を急いで追った。
「おし、今日はお前らの実力を見るために模擬試合をする」
初めての授業で、音淵先生は開口一番そう告げた。
「シャア!試合来たぁ!!翔!俺と勝負しろ!」
「言われなくても、俺もその気だ。お前にやっと膝をつかせられる……」
「ふん、やってみろ」
「こっちのセリフだ……!」
那月と翔の間に火花が散る。
「あぁ、そこ。残念だが、対戦はこちらで決めさせて貰ってる。もちろんまだ言わないがな」
「ちぇ、じゃあ俺翔希望。嫌だけど」
「同じく、那月希望。不本意ながら」
「…………」
「…………」
再び火花。
音淵先生は二人を無視して、試合の概要を説明する。
「まぁ、さっきも言ったが今回の模擬試合は実力を見るのが目的だ。よって、スキルをつかうのもあり。相手を教えないのも、相手のスキルに臨機応変に対応する実力を見るためだ。……何度も言うが実力を見るための試合だ。いないとは思うが手を抜くようなバカはうちにはいらない。退学、という可能性も考えとけよ」
退学。その言葉に生徒全員が固まる。
そして、一斉に首を縦に振る。
それを見た音淵先生はうんと頷き、教室から出ていこうとする。
「んじゃ、各自ジャージに着替えて、訓練棟に集合」
先生はそう言い残すと、確かに教室から出ていった。
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