13話 第一試合
今回の話から五話ほど戦闘が続きます。
それに基づきキャラも二十人ほど追加されるので、話が終わり次第、キャラ一覧のような物を出そうと考えています。
弾二四高校のジャージは学年によって色が違う。
毎年色が変わるが、今年の一年は黄色である。
制服とは打って変わって、黒色のジャージに黄色のラインが左胸から真下に伸び、腹部にもぐるりと一周ラインが伸びる。
下のジャージも左側にラインがあり、腰から足首まで一直線に伸びている。
そして、このジャージにもダンジョン制覇を意味する塔の紋様が右胸に刻まれている。
ジャージに着替えた那月達は指示通り訓練棟に向かう。
試験の時とは違って、小さく区切られた訓練棟内。それでも一年A組全二十名が入っても、百分の一も満たされないのだから、どれだけ広いのかが伺える。
訓練棟内には既に音淵先生の姿があり、那月達に気づくと早速模擬試合のルールを説明する。
「ルールは簡単だ。時間無制限でスキル有り、武器自由の対人戦。殺しはなしだが、殺す気でやれ。やらねぇ奴には罰がある。以上、健闘を祈る」
説明を終えると、音淵先生は手元のメモの様なものを確認すると、顔を上げ、二人の人物を交互に見る。
「では第一試合。紅城、薫風、段に上がれ」
名前を呼ばれた紅蓮は一瞬、驚いた顔をする。
「お、早速俺か……」
「負けんなよ、紅蓮」
「頑張ってね、紅蓮!」
「負けるかよ……じゃあ行ってくるわ」
そう言うと紅蓮は那月と日奏の元を離れ、闘技場の様な段に上がる。
同じく反対側から、緑髪を靡かせた爽やか少年が段に上がる。
手には短剣が二つ握られている。もちろん木剣である。
紅蓮も右手に刀身の長い木剣を下げ、相手が段に上がるのを待つ。
二人が段に上がった事を確認すると、音淵先生が改めて注意事項をいう。
「もう一度言うが、本気でやれ。闘技場には結界が張ってあるから攻撃が外まで来ることはない。心配せず、相手にだけ集中しろ。いいな?」
「うす」
「はい」
二人の確認を得たところで、音淵先生が試合開始を告げる。
「では、第一試合。紅城 紅蓮vs薫風 颯。レディ、スタート!」
開始の合図と同時に両者の足が動く。
「なぁ、日奏。薫風って強いのか?」
「うん。強いと思う。薫風 颯、スキルは《加速》。自分の動きを加速させるスキルだね。戦闘スタイルはスピードを乗せた重たい攻撃と、速さによる手数の多さかな」
日奏の説明の通り、二人の戦闘はやや颯が有利といった感じだ。
紅蓮は何とか捌いているが、颯の手数の多さに押されている。
「紅蓮のやつ、不利なのか?」
「んー……分からない。でも紅蓮のスキル《剣師》も負けてないよ。単純に剣の扱いが上手くなるスキルだけど、その単純さ故に強くもある。剣に関してはこのクラスで一番強いはずだよ。ほら」
日奏に促されるままに紅蓮に目を向けると、今度は紅蓮が押している。
押されるだけだったはずの紅蓮が颯が加速する前に一撃を入れる事で、颯の手数を封じているのだ。
紅蓮が再度、颯の行き先を予測して一撃を入れると、颯は後ろに跳び、紅蓮と距離をとる。
「やるね、紅城君」
「お前もなかなかやるじゃねぇか」
「まぁ、まだまだ、本気じゃないけどね」
「へぇ、じゃあ見せてくれよお前の本気」
激しい剣戟を繰り広げていたにも関わらず、息一つ切らしていない二人は不敵な笑みを浮かべ合う。
「そうだね、そろそろ本気で行かないと……退学は嫌だからね」
「同感だ」
「それじゃ、《加速》」
「ーーッ!」
颯がその言葉を口にした瞬間、紅蓮の目から颯の姿が消えた。
直後、左から飛んでくる斬撃を紅蓮は身を捩ることで回避する。
「へぇ、それも避けるんだ」
「……何とかな」
「じゃあ次はどうかなッ!」
加速し続ける颯。
その攻撃を一つ一つ、紅蓮は捌く。
ほとんど同時に飛んでくる左右の斬撃を紅蓮は持ち前のセンスだけで受け流す。
しかし、守る事は出来ても、攻撃に転じる隙がない。
「ほらほら、守ってばっかじゃ勝てないよ!」
「言ってろ……りゃあぁぁ!!」
紅蓮は驚くべき、反射神経で颯の剣を上になぎ払う。
重い一撃を食らった颯は一瞬身体が宙に浮く。
その瞬間を紅蓮は逃さず、振り上げた木剣を流れるままに振り下ろす。
「はッ!!」
「ーーッ!」
気合いの乗った剣が目の前に迫る颯。
しかし、何とか着いたつま先で地面を蹴ることでそれを避ける。
「はぁ、はぁ、やるね……」
「お前もなかなかやるじゃねぇか」
「はぁはぁ、まさか、僕のスピードに……はぁ、合わせるなんて……」
「まぁな、次ももっかい当ててやるよ」
「ふぅ、やれるもんなら……《加速》!」
再び、颯はスキルを使用する。
しかし、今回は直ぐに攻撃に移るのでは無く、紅蓮の周りをグルグルと回っている。
徐々に加速する颯は最高速度に達すると、勢いのまま、紅蓮に突撃する。
颯の腕力にスピードを乗せた斬撃には流石の紅蓮も剣ごと腕を弾かれる。
「くッーーー」
「ーーりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃぁぁ!!」
その隙を逃さずに颯は追撃を加える。
一撃、また一撃と颯の攻撃が紅蓮の体にダメージを与える。
「はぁ、はぁ、どうした!紅蓮君!僕の、攻撃を、はぁ、弾くんじゃ、ないのかい!?」
「…………………」
紅蓮は颯の言葉には返事を返さず、ただ黙々と攻撃を捌いていく。
「はぁ、はぁ、はぁ、ほら!ほら!ほら!」
「………………」
ただ黙々と。
「あぁ!ぁあ!がぁぁ!!はぁ、あぁ!!」
「………………」
黙々と。
その時を待つ。
「ーーいい加減にしろ!」
「ーーッ!?ここぉぉ!!!」
そして、その時、颯の動きが大振りになるその瞬間を狙って、紅蓮は短剣の腹に斬撃を加える。
重たい一撃は颯の短剣を吹き飛ばし、続けて紅蓮は颯の喉元に剣先を突きつける。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、負け、ました」
「……いい試合だった」
二人が握手をしたのを確認すると、音淵先生は試合終了を告げる。
「試合終了!勝者、紅城 紅蓮。二人ともよくやった。下がっていいぞ」
その言葉に、二人は同じく側から段を下りる。
「それにしても、よく俺の動きに着いてこれたな……」
「まぁ、確かに最初は受けるだけでいっぱいだったわ」
「じゃあ、どうして」
「お前、体力無いだろ」
「な、!」
「一定時間加速すると、徐々に速度が落ちていた。だから、俺はお前に勝てた」
その事を伝えると颯は声を上げて笑った。
「アハハハハハ!負けた負けた!まさか一度弾かれた時から、いやもっと前から俺の負けは決まってたのかよ!」
「いや、確かに勝ったのは俺だが、お前にその弱点がなかったら危ない所だった。それに剣の腕も伸びしろがあったよ」
「ありがと、紅城君」
「紅蓮でいいよ」
「じゃあ僕も颯と呼んでくれ」
「おうよ」
二人は互いを見て笑うと那月と日奏の元へ戻ってくる。
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