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第七話

挿絵(By みてみん)

ヒワイダー幹部のキモ・オジロンと戦う三人の魔法少女



「さぁ~て、まずは誰のうなじから、オジロンの唾付けちゃおうかな♥」


どこまでもキモいこのヒワイダーの幹部は、

魔法少女達の戦意を喪失させるような言葉を呟いた。


すぐにそれにカレンと亜子が反応する。


「え、ちょ、コイツの唾とかあり得ないんだけど。

 本当、戦うの嫌過ぎる(汗」


「ってか、よく見たら何か体から湯気出てるし。

 臭そう・・・って言うか、この妙な匂い、原因コイツじゃない?」


しかし、さくらだけは以外にも冷静だった。


「二人とも、キモさにかまけて相手の本質を見失っちゃダメだよ。

 キモさとか抜きにして、コイツ多分かなり強いでしょ。

 本気で行かなきゃ、多分私達が負ける。そうだよね?」


さくらの言葉に、亜子が冷静さを取り戻す。


「確かにそうね。

 さくらさん、凄いわね・・私達よりも一学年下なのに、

 本当に魔法少女に覚醒してから物凄い成長してるっぽい。」


カレンも同じく、さくらの言葉で冷静になった。


「そうだったわね。いや、でもそれにしてもこの匂い・・・

 ちょっと、我慢しながら戦うには結構キツいかも・・・。」


それは確かにボクも感じていた。

かなり強めの胃液の中に腐った卵を混ぜたような匂いが辺りに立ち込め

オジロンがここに現れてからその匂いがドンドン強くなっている。


「お~、魔法少女達、オジロンの匂いで鼻が妊娠しちゃうかもね?

 グェヘヘヘ・・・・」


凄まじい量の涎だ。

地面に落ちたそれは、石の表面を溶かして少し窪みを作っている。

アレに当たったら臭さと共に強烈なダメージを喰らいそうだ。

ボクはただただ、自分が直接戦う立場で無くて良かったと思った。

だけど同時に、彼女達に対して申し訳無さも感じた。

ボクが見ているだけの中で、彼女達はアイツを倒さないといけない。

戦うと言う事はあの臭い液体に触れてしまう可能性も高くなる。

彼女達の心痛を思うと泣きたくなって来た。


「さぁ~てと、それじゃあオジロンパンチで、皆の子宮を壊しちゃうゾ☆

 最初、誰が壊されたいかな~?ホラ、手ぇ上げて~?」


全員の顔が引きつっていた。

しかし、そんな好き放題言わせ続けている状況に耐えかねて、

亜子が魔法を放った。


「ブラック・ジョーカーブラスター!!!!」


黒い閃光がオジロン目掛けて物凄い勢いで放たれ、頭部に命中した。


「ぐぉぉ、よくもやってくれたなぁ~?」


続けてカレンも魔法を放つ。


「ホワイト・スパークルアロー!!!!」


白い矢が放たれ、オジロンの今度は後頭部を狙う。

オジロンは手で防ごうとしたが、後ろ側だから見えず、

それも見事に命中した。


「ぐ、ぐぐ・・・ふざけやがってぇ~!!」


更にはさくらが下からオジロンの腹部を狙う。


「チェリーブロッサム・シューティングスター!!」


桃色の閃光がオジロンの腹部目掛けて放たれ、それもまた見事に命中。

あまりの威力にオジロンが腹部を抑え込みうずくまった。


「ぐ、ぐのぉぉぉぉ、何だこの、お前らどうせまだ全員処女だろ~?

 オジロンはなぁ、オジロンは経験豊富なんだゾ~?

 週18回は風俗に通ってるんだからな~!!

 それを、それを・・!!もしオジロンに何かあったら、

 お気に入りの嬢達はこれからどうやって稼げば良いんだぁ?」


ワケのわからない勝手な事を言いながらも、ダメージは積み上がり、

起き上がる様子が無い。


「よし、このまま一気に畳みかけるわよ!!」


亜子が言った。


その瞬間━━


「ブブブブブゥ~~~~~~!!!!!」


突然オジロンが、強烈な屁を放った。


それを嗅いだ途端、三人が一斉に気絶してしまった。


「オジロンの事をここまで痛め付けて、もう絶対に許さないゾ。

 魔法少女三人とも、ヒワイダー達の性奴隷にしてやるからな。」


オジロンがさくらの上半身を起こし、キスしようとした。

ヤバい、絶対に阻止しないと。

だけど、このマスコットの体では攻撃の方法が無い。

一体、どうすれば・・・。


・・・・・!!


その時、ボクの意識だけがスゥーっと体から抜け出した。

明らかにマスコットの体から魂が抜けたように、視野が高くなる。

見ると両手がある。人間の体も足もある。これは、人間の体だ。


何がどうなったのかはわからないけれど、ボクは人間の体を手にした。

いわゆる、マスコットの人間体化と言うヤツだろうか。

ボクが好きで見ていた日曜朝の魔法少女アニメにもそう言えば、

こんな設定があった気がする。

と言う事は多分、顔はイケメンなんだろう。

だけど鏡は無かったし、何より今は彼女達を助ける事が先決だ。


見ると、手には剣を握っていた。

凄く都合が良いけれど、コレはきっと僕が望んだから具現化したんだ。

そうしてご都合主義を解釈して、ボクはオジロンに向けて切りかかった。


「ハァァァァッァァァァ!!!!!」



画像挿絵(By みてみん)

魔法少女達のピンチに人間化するオタポン



瞬間、お互いに何が起きたかわからなかった。

だけど確かに切っ先はオジロンに命中して、身体を切り裂いていた。


一気に腐臭が爆発する。

彼女達が気絶している事が幸いだ。

しかしこれだけの腐臭、不幸にも起きてしまったら、

そのあまりの衝撃にワケがわからないままにまた気絶するかも知れない。


ヒワイダーの幹部を、やっつけた。このボクが。

ボクは自分の手を見つめ、現実感が無いまま、少し震えた。


オジロンは自壊し、やがては砕け散った。

しばらく異臭は周囲を漂ったが、やがては霧散して行った。


しばらくするとボクの体はまたマスコットになっていた。

そしてようやく三人が起き出した。


さくら

「ふぇ?私、何してたんだっけ・・・。

 あ、オジロン!!アレ?居ない・・・。」


ボクが倒したんだよ、と言うと、

同時に起き出した二人もビックリしていた。


カレン

「え、え?

 オタポン、人間になれたの?って言うか、それって偶然?

 いやでも何か、どんな人間だったのか見たかったなぁ。」


亜子

「あぁ、たまに居るよね、強い思いが具現化して人間化するマスコット。

 だけどあまりそれをクセになると戻れなくなるから気を付けて。

 あくまで今のあなたはマスコットが本体だから、仮の姿になり過ぎると

 いずれその姿のまま戻れなくなって消滅してしまうからね。」


亜子から言われた事にドキッとして、ボクはなるべく人間化はしないよう、

と言ってもどうやってなるのかもわからないけれど、そう思った。




それにしたって、本当に壮絶だった。

もしあの時に僕が人間化しなければ、全員全滅していた。

亜子から天才的だと言われたさくらだって、気絶していた。

それだけヨクボーンの上の方は強いと言う事なのか。

果たしてあの子達だけでヨクボーンに勝つ事は出来るのだろうか。

ボクはとても不安になった。

オジロンはヒワイダーの幹部と名乗っていた。

という事は、ヒワイダーにもトップが居て、更には他の

ハッカイやマネカネ等の組織にも幹部やトップが居て、

そしてもしかしたらヨクボーンという統合的な本体組織があって、

そこには更に強い幹部がいて、トップのボスが居て・・・。

そんな事を考え始めるとボクは眩暈がして来た。

彼女達以外にも魔法少女はいるのかも知れない。

いや、以前のハッカイが駅前に現れた時にも既に魔法少女が居た。

と言う事は、別に3人じゃなくても他にもたくさんいる魔法少女達が

少しずつヨクボーンを弱体化してくれればそれで良い。

そうだ、別に3人だけで全てを何とかしなくても良いじゃないか。

ボクはさくらにその事を伝えた。


「え、私達以外の魔法少女もいるから、その子達に任せて、

 私達はもっと活動を控えるべきだって?

 そんな、どこにいるのか、どれだけ居るのかもわからない

 他の魔法少女達をアテにして、その子達に任せて最後に願いだけを

 叶えるなんて、そんなに上手く行くとも思えないんだよね。

 これは私が魔法少女になってから自然と考えている事なんだけどさ、

 やっぱり一人一人が全力で目の前の敵に立ち向かわないとさ、

 全ての魔法少女達が他人任せにしていたら、ヨクボーンは無くならない。

 だから私達は自分の手が届く範囲で現れた事を知った敵とは戦うの。

 これは魔法少女になった人にしかわからない事かも知れないけれど。

 他人任せになんてしたくないの。私は私に出来る事をやりたい。」


さくらの思いは凄かった。

そしてそれは他の二人も同じなんだろう。

彼女達が命を賭けてまで戦う理由。

それは願いが叶うと言う、わかり易いゴールにある飴では無くて、

そのプロセスにもあるのかも知れないと思った。


魔法は言葉だけを聞くとファンタジーだ。

だけどこの文字の中にある「魔」は決して甘いものでは無いはずだ。

傍目から見ているとご都合主義で様々な便利技が次々と出て来る。

彼女達は別にそれを本で習ったりしたわけでは無くて、

勘と言うか本能でやっていると聞いた。

元々は何の力も無かった普通の女の子がある日突然、

ちょっとしたキッカケで魔法少女になってしまう。

そこには叶えたい願いがあるのだが、それにしたって

命を賭けてまで叶えたい願いなのだろうか。

兄弟や姉妹の失踪や死なんて、もしボクなら、そりゃ悲しいけど

起こってしまった事は仕方ないのだし、警察とかに任せたり

自分には自分の人生があるのだから、それを生きるべきだと思った。

だけど彼女達はそこに全てを注ぎ込んでいる。

若いがゆえの判断力の欠如?

だけど覚悟はボクなんかよりもよほど決まっているように思う。

一体何が彼女達をそうさせるのか。

もしかすると彼女達は魔法少女になるために生まれて、

その運命から逃れる事は出来ないんじゃないか。

そんな事を考えてしまっていた。


さくら

「どうしたの、オタポン。何か考え事かな?

 もし悩み事なら、中学生だけど私で良ければ相談乗るよ?」


あぁ、そうか。この子達は、真っすぐなんだ。

ボクみたいに変な計算とかはしない。

ただどこまでも、自分の選んだ道に迷いが無い。

いや、あるのかも知れないけれど、生前のボクのように

そこから逸れてしまったり逃げたりをしない。

迷い悩みながらも、最後には自分の選んだ道へと戻り、

それを全うする生き方の覚悟を決めているんだ。

カレンや亜子から言われた『あなたって子供っぽい』。

彼女達からすれば全然覚悟が決まっていないボクは

そんな風に映っていたのかも知れない。


さくら

「ねぇ、オタポン。悩み事があるならさ、神社行こうよ。

 神様にお願いごとをするとね、必ず叶えてくれるんだよ。

 ほら、行こう?」


神頼み、そんなもの。ボクは信じていない。

前回の人生で、いつだって助けてくれなかったじゃないか。

イジめられて辛かった時、ボクは神様に祈った。

だけど、決して助けてはくれなかった。

そんなものに今更すがる気は━━━


「さ、行こ、オタポン!」


さくらはボクを胸に抱きかかえて家を出てしまった。

こんな時、ぬいぐるみサイズである事が恨めしい。

だけど夜風に当たりながら彼女の胸の中で

本当に心地良い匂いと振動、そして心臓の温かさ。

それらに触れているうちに神様にすがりたくなった。


「ホラ、お賽銭は私が出してあげるからさ、

 オタポンはオタポンの願い事を祈るんだよ?」


自分の娘であっても全然おかしくはない歳の女の子に促されて

ボクは神様に祈った。


『神様、どうか、どうかこの子達が幸せでありますように。

 たとえ途中にどれだけ辛い戦いがあっても、

 最後には願い事が叶い、報われて幸せになりますよに。』


さくら

「ね、オタポン。願い事は人に言っちゃダメなんだけどさ、

 私、オタポンやカレンさんや亜子さんの事を祈ったよ。

 自分の願い事って叶わないんだって。

 代わりに人の事を願うと叶い易いって、聞いた事があるよ。」


彼女のどこまでも純粋な思いに触れて、ボクはきっと生前よりも

少しマシな人間になれているような気がした。

最初は美少女の胸の匂いと興奮して嗅ぎまくっていたけれど、

今は不思議と落ち着ける場所になっていて温かさを感じられる。

そして何より、美少女達にだってそれぞれの悩みがあり、

だけど真剣に生きてる。

そんな彼女達の事を、単なる性欲で消費して終わりたくない。

ボクは明らかに転生前の人生とは違う経験をしている事に気付いた。

魔法少女は関わる人の心までも浄化してしまうのか。

本当にどこまでも不思議な魅力を持った存在だな、とボクは思った。




彼女と共に帰り道の中で、ボクは温かく幸せな気持ちだった。

ふと、街頭ニュースに目が行く。


『魔法少女狩り、始まる。心当たりの方は警察まで。』


何だって!?

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