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転生して聖女見習いになったと思ったら何故か毒手の親戚みたいなトンチキ拳法を極める流れになってるんですけど!?  作者: 悠戯


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22.痛がるガール


 なんと、マー君の正体は本物の王子様だったのです。


 あらあら、ビックリ。

 事実は小説より奇なりとはよく言ったもの。

 その事実をどうにかこうにか呑み込んだわたしは……、



「ははーっ、数々のご無礼どうかお許しください!」



 とりあえず、土下座っておきました。

 まさかの本日二度目。

 土下座る、意外と使いどころがある言葉ですね。



「あの、どうか頭を上げて下さい。というか、それは何に対しての謝罪なんです?」


「ええと、これまで馴れ馴れしく接してたのとか、お手伝いと称して恩の押し売りをしては食べ物を奢らせてたのとか、あとはまあ色々ですね」



 隣りに院長先生がいる状況で詳しく説明するわけにもいきませんが、つい半日ほど前にマー君を殺しかけてしまったのが特にヤバいでしょうか。なにしろ、事は王族に対する殺人未遂。この国の法律をさほど知っているわけではないですけど、どう考えてもバレたらタダでは済みません。



「ええと、普段のことなら全然気にしてないですし……いえ、むしろボクとしてはりっちゃんさんと仲良くしてもらって嬉しかったというか」


「へへっ、ありがてぇ。さっすがマクスウェル王子殿下は御心が広いでやんすねぇ……っ」


「あの、できれば喋り方も普段通りにしてもらえると……りっちゃんさんさえ迷惑でなければ、これまで通りに『マー君』と呼んでもらえないでしょうか?」


「あ、はい。じゃあ、おふざけはこのへんで」



 相手が権力者だと判明したせいで、ついつい謎の三下ムーブを披露してしまいましたが、向こうが望んでの上ならば不敬罪に問われたりはしないでしょう。

 というか、正体を偽っていたとはいえ、マー君の普段の言動の大半は彼の素の振る舞いのはず。つまりは人懐っこくお手伝い好きのワンコ少年であるわけで、そんな彼が些細な非礼を理由に他人を罰したりするところなど想像が付きません。



「さて、それでは何から話しましょう? ボク達について聞きたいことは多々あるかと思いますが」


「そりゃ疑問は尽きませんけど、あまりに謎が多すぎて逆に何を聞けばいいか分からないというのが正直なところですねぇ。そもそも、なんで今日このタイミングでカミングアウトしたのかも分かりませんし」



 彼の善良な性格上、日頃から付き合いのある相手に正体を隠していたことを密かに心苦しく思っていたというのは、まあ理由の一つではあるにしても街が魔物に襲われた日の夜に訪ねてくるほどかというと疑問です。


 王子様……じゃなかった。本当は影武者だというレイさん同伴なら、別に今でなくとも信じるに足る根拠にはなったでしょう。そんな急ぐ理由がどこにあったのかというと、



「はい、かえって藪蛇になるかもとは思ったんですけど、というか既になっているようなんですけど。理由は、りっちゃんさんを守るためですね」


「はい、わたしを? 何から?」



 近隣の魔物の掃討はほぼ済んでいるはずですし、そもそも修道院の建物内にまで例のトゲトゲが侵入して来られるとも思いません。わざわざ守りに来ていただいてなんですが、いったい彼らはどこの何からわたしを守りにきたのだろうか、なんて。


 その答えはマー君が口を開く前に明らかになりました。

 というか、その推定脅威に大きな手のひらで頭をガッシリと掴まれて、頭蓋骨が本当に砕けるんじゃないかというアイアンクローを喰らいました。



「ぐわあぁぁぁあああ!? 院長先生、急に何をするんですか!? まさか、とうとうボケ……いたた痛だだたたぁっ!」


「やかましい!」


「ぎゃああああっ、本当に潰れる! 頭がグチャってなりますから!?」



 このマッチョ老婆、いったい握力が何百キロあるんでしょう。

 人間の頭蓋骨どころか鉄球だって握り潰してしまえそうです。



「ま、まあまあ大聖女様。どうかそのあたりで気をお鎮めください……」


「そうですよっ、マー君の言う通りで……あの、こんな時につかぬことを伺いますが、その大聖女さんというのは?」


「あれ、りっちゃんさんはご存知なかったんですか? こちらの修道院にいらっしゃる癒しの御業を修められた聖女様方。その頂点に立たれる院長さんは、大聖女様として国内外から多くの尊敬を集める御方なんですよ」


「へえ、聖女? この大酒飲みのファンキーなお婆ちゃんが? ぷぷっ、そんな似合わな……ぐぎゃわぁぁぁ!?」


「似合わなくて悪かったね! ったく、誰が言い始めたか知らないけど聖女なんて呼ばれ方、こっ恥ずかしいったらありゃしない」



 このままだと本当に頭がグチャっとなってしまうのでは。そろそろ本気で生命の危機を覚え始めた頃になってから解放してもらえましたが、まだまだ危機は去っていません。むしろ、ここからが本番でした。



「ねえ、金髪。アンタ……『使った』ね?」


「な、なな、何をでしょう?」



 ははぁ、流石に事情が呑み込めてきましたよ。

 マー君達が何からわたしを守りにきてくれたのかも。いや、そもそも毒手モドキの無断使用がバレたのは、彼らが馬鹿正直に訪ねてきたのが原因っぽいんですけど。



「いや、違くて。違うんですよ」



 何も違わないのですけど、立場上おとなしく罪を認めるわけにはいきません。

 仮に殺人未遂犯だとしても、割とマシなほうの殺人未遂犯であるはずです。

 幸いこちらには権力という素敵な武器を持って加勢に来てくれたお友達もいることですし、一世一代の言い逃れを始めるといたしましょうか。


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― 新着の感想 ―
ババァの握力はウマ娘並み。φ(・ω・`)
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