第41話「文学少女、図書室の貸出カードに暗号詩を忍ばせていた」
今回は“図書室の貸出カード詩”!
一見なんでもない紙の記録にこっそり言葉を仕込む、詩音先輩らしい静かな文学テロです。
読書するたび、誰かと詩でつながっていくって素敵ですね。
秋の午後、こよりが何気なく図書室で本を借りようとしたときのこと。
借りた本は、詩音先輩も愛読していたという詩集『風と階段の音楽』。
「……貸出カード、まだ手書きなんだ。なんか懐かしいよね」
「この図書室、紙の文化が生きてるからねぇ。なんか落ち着く」
そう言って、こよりがふと貸出カードをめくったそのとき。
「……ん?」
そこに書かれていた文字――明らかに借り主名ではない、短い詩が記されていた。
『名前を書くたびに 私はここにいたって思える
誰かが次に読んだとき わたしの名前も、読まれる』
「……これ、詩音先輩の筆跡だ……!」
驚いて、他の本も確認してみると――
なんと、複数の本の貸出カードに、詩の断片が紛れているのが発覚。
しかも、それぞれの詩には**1文字ずつ“記号のようなマーク”**がついていた。
「え、ちょっと待って……これ並べたら、もしかして――暗号詩……?」
3人でカードを照らし合わせると、
見事にマーク順で読むことで、ひとつの長い詩になることが判明。
『誰かに読まれる日を待って
本の奥に こっそり隠した声があります
ページをめくるたび
あなたの心の奥に わたしが届いていたらいいな』
「もうやだ……図書室にまで仕込まれてたなんて……!」
「借りるだけで詩が読めるって、もはや文学付きブックレンタル……」
「いや、“図書詩”っていうジャンルを生み出してるよこの人……」
しかも、ラストの詩にはこう締めくくられていた。
『もしあなたがこの詩を読み終えたら、
本の奥に、自分の“いちばん好きな一文”を残してね。
それが、次の誰かの詩になるから。』
図書委員の後輩いわく、卒業直前に「こっそり混ぜておいて」とだけ頼まれたらしい。
その日から、貸出カードの裏には
生徒たちの“お気に入りの一文”が少しずつ書き込まれていくようになった。
図書室は静かに、でも確実に、詩の交差点となっていった。
今日の一句:
「名を書いて 本の奥にも 詩を残す」
次回、第42話「文学少女、非常階段に“落ち込んだとき専用の詩”を貼っていた」
人知れず泣きに来た人のための言葉――学校の影に光る、やさしい詩の話。




