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文学少女、やっぱりまたやらかしてる  作者: たむ


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22/50

第22話「文学少女、卒業アルバムのコメントを本気の詩で提出する」

今回は“卒業アルバムのひとこと欄”すら詩にしてしまう詩音先輩。

感謝や思い出を超えて、“時間の重み”まで紡いでしまう彼女の言葉は、

やっぱり最後までぶれませんでした。

冬の終わりが近づき、廊下には“さよなら”の予感が漂い始めたころ。

教室では担任の先生が卒業アルバム用の原稿を配っていた。


「はい、みんな~、卒アルの“ひとことコメント”書くやつねー。

『楽しかったです!』とか『ありがとう!』とか、自由に書いてOKだよ~」


「よっしゃ、無難に『3年間ありがとう!』でいくか~」

「『一生の宝物』って書くやつ、だいたい3日後に忘れる説」

「私は絵文字で乗り切る予定です」


そんな中――

ひとりだけ、原稿用紙が足りないと職員室に取りに行った人がいた。


もちろん、詩音先輩である。


彼女の提出した“コメント”は、なんと便箋4枚。


しかも、そこに書かれていたのは……


『校舎の窓は、毎日同じように見えて

毎日、違う空を映していた。』


『廊下のすみっこで、何度も泣いた。

誰にも見つからなかった涙が、

ちゃんと“わたし”を育ててくれた。』


『さよならは、別れじゃない。

たぶんこれは、

“昨日のわたし”への卒業証書。』


「……っ、これ……卒アルのコメントに載せるには、重すぎない!?」

「感情が詰まりすぎてて、もはや“詩集あとがき”じゃん!!」


先生も困惑気味に言う。


「いや、素晴らしいとは思うんだけどね?

“ひとこと”コメントじゃなくて、これはもう“ひとだくだく”だから……」


校内では瞬く間に噂になり――

「詩音先輩の卒アルコメント、ヤバいらしい」

「っていうか読むと泣くって聞いた」

「“あの窓は今日で最後”って一文で、私もうだめだった……」


生徒たちはこっそりコピーして保存しはじめる始末。


「卒業アルバムじゃなくて、個人詩集に載せるべきレベル……」

「でも、うまく言えないけど……この文章が、いちばん“卒業”って感じがする」


そんな声が、教室中に広がっていく。


そして後日、印刷所の特別対応で、詩音先輩の詩は“別ページ”に全文掲載されることが決定。


「なんか……最後のページ、泣ける気がする……」

「アルバムの中に、ちゃんと“物語”があるんだね」

今日の一句:

「ひとことが いつしか胸の 本棚に」


次回、第23話「文学少女、下駄箱の靴にメッセージ短詩を差し入れてる」

卒業シーズンの靴箱に、名もなき言葉の花束を――!? 校内がほんのり文学迷宮に!

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