第21話「文学少女、生徒会選挙の立候補演説で散文詩を朗読する」
今回は生徒会選挙という“堅い行事”に、詩音先輩が風を吹かせます。
マニフェストなし、数字なし、それでも伝わった“本気の言葉”の力。
選挙で詩を読んだ候補者、後にも先にも彼女だけでしょう。
季節は冬へと移りゆき――
生徒会選挙の季節がやってきた。
体育館には全校生徒が集まり、厳かな空気が流れている。
「ねぇ、詩音先輩が立候補してるってマジ!?」
「生徒会長!? いやいや、向いてなさそうにも思えるし……めっちゃ向いてそうにも思えるし……」
「いや、“校則は感情”とか言い出したらどうすんの!?」
そして迎えた詩音先輩の番。
他の立候補者たちは堂々と「○○を改善します!」「○○の制度を見直します!」といった“公約”を述べていたが――
詩音先輩は、ステージ中央に立ち、ゆっくりと一枚の紙を広げる。
「立候補理由と、わたしの思いを、詩に込めてお話しします」
そして、静かに語り始める。
『誰かが落とした落とし物を、
誰かが拾う。
それは規則でも義務でもなく、
小さな優しさのバトン。』
『生徒会という名の箱に、
ただ決まりごとを詰めるだけじゃなく、
あたたかさが、少しだけ、あるといいなと思いました。』
「お、おお……!? 演説っていうか……なんだこれ……」
『“変える”より、“気づく”。
“治す”より、“寄り添う”。
校舎の隅に落ちてる、誰かのため息に。』
「……え、なんか泣きそう……」
「選挙演説って……詩でもいいんだ……」
生徒たちは、ざわつくどころか、じっと耳を傾けていた。
体育館の空気が、少しだけ温かくなる。
そして最後に、詩音先輩は言った。
「制度は変えられないこともあるかもしれません。
でも、言葉なら、きっと届く。
――それが、わたしの“できること”です」
演説が終わると、しばらく静寂が続いた。
そして、自然とわき上がる拍手。
こよりたちは、思わず見つめ合う。
「ねえ、あたし、この人に投票するわ」
「なんか……決める理由って、数字じゃないんだね」
「……言葉って、選ばせる力あるんだ……」
結果は――後日発表。
だが、誰の心にも、あの演説(という名の詩)は残っていた。
今日の一句:
「決めるとき 数字よりまず 言葉きく」
次回、第22話「文学少女、卒業アルバムのコメントを本気の詩で提出する」
“たのしかったです!”じゃ終わらない!? 最後の一ページも、詩音先輩は本気です!




