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無能おっさんの異世界奮闘記  作者: 成田力太
第2章 サムウライ村救済編
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第36話 リアル弱体化魔法

勝利宣言が終わるや否やアイが高速移動し、凡太の目の前にやってくる。

既に恐怖状態ではなかった。試合が終わったと同時に解いたのだろう。


「ごめん。少し遅れたわ。でも結構似合っているわよ、その姿」


アイがいつものように凡太に絡んでくる。


「似合い過ぎてこっちも困っていたんだ。そろそろイメチェンしたいから助けていただけるとありがたい」

「…しょうがないわね」

少し表情を緩めながら優しくギロチンの拘束を解こうとするアイ。

だが、それをアークがよしとするはずもなく、ご乱心を発動する。


「ええい、勝手に拘束を解こうとするな」

「嫌よ。疲れたし、家にさっさと帰って休みたいもの。だからこの男をさっさと回収させてもらうわ」

「だから勝手なことは許さんぞ。そうだ、皆の者この女を拘束せよ!」

そう言うと観客席にいたサムウライの村人達がアイの下に集まる。その数20人ほど。


「さすがにこの数は骨が折れそうね。ごめん。もう少し待ってて」

「どれだけでも待つさ」


アイは20人に囲まれつつも乱戦に入る。

そして、圧倒的数の差、そして実力差があるにもかかわらずなんとか持ち堪えているようだ。


違和感。


なぜ試合後で疲労している小娘を仕留めるのに精鋭軍団がてこずっているのか?

なぜ精鋭軍団の動きがいつもより鈍いのか?

なぜ小娘があの圧倒的強さのノーキンとほぼ互角にやり合えたのか?


「貴様、もしかして何か仕掛けおったな」

「さて、何のことでしょう?」

しらばくれる凡太。時間稼ぎだ。


「弱体化魔法はそもそも無効化されるはず…」


「だが、皆の様子はまさに弱体化のそれだ。まさかスキルか?」

「ハズレ」

そう言って自身のスキルボードを指でちょんちょんと示す凡太。

アークは急いでそれを確認するが弱体化の要因となるものは見当たらない。

確認できたのはこの男が無能のままである事実だけだった。


「くそぉ、何だ、何が弱体化の要因だ」


暴れ出すアークを見て凡太が返答する。


「糖尿病だよ」


「トウニョウ…?なんだその魔法は?」

「魔法じゃないよ。俺の世界で流行っている病気のことさ。まぁ毒のようなものかな」

「毒なら魔法ですぐに解毒できるはずだ」

「即効性の毒ならね。残念ながらこれは遅延性だ」

「しかし、どうやってその毒を…まさかあのブレドーか!?」

「正解」


この病気の面白い所は血管内で腫物を発生させ血流を遅くしたり、血管内がより閉鎖的になれば血管を内側から破壊できるという点だ。血流がめちゃくちゃ悪くなることで、栄養分の運搬がうまくいかなくなり、代謝(合成・分解)ができなくなるので結果的に体力回復量が減る。さらに脂肪蓄積による炎症効果(毒状態)のおまけつきだ。こうなれば、体は回復しないどころか、炎症によりどんどん体力が削られていくのだ。まさにリアル弱体化魔法だ。


そして、それを促してくれるものが糖質。

ムギコは米より糖質も高く優秀。

そして菓子ブレドーでは高糖質のサットウを大量に使えるからさらに優秀だ。

凡太はかつて読んでいた本である大手菓子メーカーの社長がインタビューの際「絶対に自社の製品は食べない。体に悪いということを知り尽くしているから」と返答した箇所を思い出していた。


ともかく凡太の思惑通りに“弱体化”が成されたわけである。


(まぁ今回のは3ヶ月間だから正確には“糖尿病もどき”だけどね)


自分の強欲が生んだ失態を恥じるどころか周りのものに八つ当たりしだすアーク。

そしてその八つ当たりの対象は凡太にも及んだ。


「もとはと言えば貴様がいけないのだ。もういい。ここで処刑してくれるわ!」


そう言っていきなりギロチンを降ろすアーク。


「この状況だと“仕方なく死ぬ”という条件には当てはまらない。無駄死にだ。まずいな…」


周りを見るが、アイは乱戦中。

バンガルは今ギロチンが降ろされたことに気付いたばかり。


「万事休すか…」


その時、


ザンッ!


どこからか放たれた斬空波によってギロチンの刃が吹っ飛ぶ。

そして闘技場の凡太側の観客席と丁度向かい側で立つ男が一人。


あれは――


「モーブ!!」 凡太が半泣きになりながら叫ぶ。

(これからは“仮”は返上で真の親友に昇格だ!)


「すまんな。参入タイミングを決め兼ねていていたんだ」

高速移動し、凡太の前へ。そしてすぐに拘束を解いてくれた。


「さすがですね。良いタイミングでした」

アイが乱戦ながらも褒め称える。


「さてここからは微力ながら俺も助太刀させてもらおう」


(モーブの強者の空気感が3ヶ月前とは比べ物にならないくらい増している。この男どれだけ密な修行を積んでいたんだ?)


そうして乱戦中のアイに助太刀するや否や3、4人を一瞬で切り伏せた。見事な峰打ちだ、撃たれた相手は気絶している。

そのあまりの強さをみて乱心したのか、アークの身の回りを守っていた護衛兵が1人だけ乱戦に加わった。


「何、あの圧倒的主人公感。負ける気がしないんですけど」

少しジェラシーを感じつつ、圧倒的不利な状況から圧倒的有利な状況に変わりつつことに興奮していた。


遅れてバンガルも駆けつけてきた。

そしてアークの周りの護衛兵4人を蹴散らす。

彼らも遅延性弱体化の犠牲者であったためバンガルでもすんなりと倒せた。


「大丈夫か?」

「ええ、この通り余裕です」


「さぁアーク覚悟しろよ」

「…些細な出来心だったんだよ。だから許せ」

「出来心で関係のない人を巻き込むな」 ドスッ!

「ぐっ…」


バンガルの峰打ちで気絶するアーク。


終わった。


かに思われたが、アークの姿が変化していく。

見たこともない魔物に変化した。

どうやら影武者だったようだ。


そして、乱戦を見事に制圧したアイとモーブがこちらにやって来た。

傍観者を演じていたムサシマルもやって来て、闘技場での戦いは幕を閉じた。


アークの行方という疑問を残して。

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