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無能おっさんの異世界奮闘記  作者: 成田力太
第2章 サムウライ村救済編
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35/360

第35話 本当の勝因

審判によるアイの勝利宣言。

バンガルとカレンがそれを聞き喜んでいた。


「やったー!アイさんやりましたね」

「そうだな」

(バンガルさんがうずうずしている。そうか戦闘に興味がない私に気を遣って解説したかったのをずっと我慢していたんだ。この人が教えたがりの性格していたのを忘れていたわ。秘書失格ね)


そう考えたカレンが辺りに質問を投げかける。


「そういえば、今回アイさんが勝てた要因は何だったんでしょうか。戦闘について疎いから全然わかりませんでした。どこかに分かりやすく解説してくれる親切な方はいらっしゃらないかなぁ」

「しょうがないな。俺でよければ解説してやるよ」

仕方なくを装いつつ、投げられた餌(質問)に素早く食いつくバンガル。

よほど解説したかったのであろう。

そしてそれを見事に釣り上げ、仕事を一つやり遂げたかのように達成感を味わう釣り師カレン。


「まず、最初に言っておきたいのがアイの勝率は最初から0%に近かったという点だ。」

「どうしてですか?結果的に勝っているじゃないですか。それなら40~60%勝率があってもおかしくないのではないですか?」

「待て待て、慌てるな。その辺りも説明を聞いていれば納得するはずだから。まずは一通り聞いてくれ」

聞き専になるカレン。それを確認し、説専になったバンガルが解説開始。


「そもそもノーキンほどの実力者ならアイの二重斬空波、三重斬空波も簡単にかわせたんだ。あの技は直撃時に合体させ威力を高めるものだから、はじめから動き回って直撃位置を常にずらすように立ち回れば、まず当たらないんだよ」


ふむふむと頷くカレン。バンガルの解説は続く。


「ところがノーキンは相殺やカウンターにこだわった。これは彼の性格というか趣味みたいなものだろうな。相手の技と勝負してみたいっていう闘争好奇心の様な。一応アイもこの性格の予想をしていたんだろう。だからこそ最初に二重斬空波を放って仮説の立証を行ったんだ。このとき全力の方の斬空波を“二重”に使わなかったのは切り札として隠す為とノーキンなら肉体強化を使って防御する可能性が高く致命傷を与えられないと判断したからだろう」

「待ってください。ということはノーキンさんには何をやっても致命傷を与えられないじゃないですか。回避と肉体強化の2つの選択肢がつねにありますし」

「その通り。最初に勝率が0%に近いと言った理由はそれだよ。最初の様子見の段階で、ノーキンは全力状態でなくても二重斬空波に耐えた。だからこの時点で勝つ為の選択肢はノーキンに肉体強化をさせない状況をつくりだすことしかなかったんだよ」

「ノーキンさんの性格ではまずその隙はつくらないでしょうね」

「そうだな。で、カレンならこの状況でどう戦おうとする?」

「私がですか?うーん。負けがほぼ濃厚だとわかっているからちょっと手を抜いて自分が傷つかないように時間を稼いで負けていたと思います」

「そうだな。普通はそうする。だが、それだとノーキンの性格上すぐに排除されていただろう。手を抜くことは“つまらぬもの”だからな」

「あっ…確かに」

「だからアイは最初から最後まで時間を稼ぐために全力で回避したり、迎撃していたのさ」

「だとするとすごいですね。いつ現れるか、いや現れることすらないかもしれない隙がいつか現れると信じてずっと全力で回避してたわけですよね。そんな雲を掴むようなことを考えながらよく精神を持たせられたものです」

「そう、そこが今回の試合の見どころだったんだよ!」

興奮したように食い気味で言うバンガル。

「アイはどちらかというと逃げ腰で最後まで足掻くような性格じゃなかった。それをたった3か月間で真逆の性格にするって凄いことじゃないか?」

「ええ、革命的です」

そう言って興奮しながらある男の方をみる二人。

「でも最後は運が味方してくれてよかったですね。ノーキンさんが隙をつくってくれましたから」

「確かに勝因は運だったが、運の手に入れ方が違う」

「といいますと?」

「アイが壁と”極”と”乱”に囲まれ、絶体絶命の時があっただろ?試合開始時からその時までアイは運を待つ姿勢だったんだ。ところが、その時何があったかは分からないが急に自分から運を拾いに行く姿勢に切り替わった」

「・・・?」

「自らが囮になることでノーキンを少し混乱させ、畳みかけるように回復魔法をかけておき、混乱させたのを見計らって肉体強化ができないほどの隙を最後の”三重”でつくって見せた」

「圧巻ですね。だとすると、隙をアイさんからつくりに行ったということですか」

「その通り。ちょっと面白いなと思ったのが、隙=運とした時、アイが自らの力で運をつくりだしたようになるところ」

「確かに面白いですね。今まで運は待つだけのものだと思っていたものが、自分から取りに行くことができるということですし、選択肢が増えて未来に希望が持てます」


運話に花を咲かせる二人。


「さっきはアイの勝因が運だと言ったが少し訂正させてくれ。運を拾う為、諦めずに最後まで足掻き切ったアイの執念が一番の勝因だと思う。あと運はそんなに生易しいものじゃない。運はいつ・どこで・どの瞬間に落ちてくるかわからない。結局はそれを信じてどこまでも足掻き抜いた奴がようやくそれを拾う資格を得るといった難しいものなんだよ。だから初めから諦めているような奴には運は拾いにくいし、運がたとえその瞬間に落ちてきたとしても気づかないんだよ。拾う準備(足掻き)ができていないからね」

「勝因はアイさんの執念か…。納得です。・・・あれ?でも、その執念はアイさんには3ヶ月前まではなかったものですよね?となると、本当の勝因は――」


カレンはある男の方を見た。


「そういうことだ」


バンガルもカレンと同じ男の方をみた。


二人の中で本当の勝因が一致した。

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