8
ルーファスも異世界転生かー。
スマホ知ってるー?という問いに、王宮の輪舞曲知ってるー?で返されたから、ほぼお仲間確定だよね?
おお、一気に親近感湧いてきたけれど、置かれた状況的に和やかには出来ないかもねぇ。
「知ってるわ。この世界はそのゲームの世界、だものね」
「……キミも、あのgameをしたのデスネ。そして、この世界へ生まれ変わった」
あ、やっぱりルーファスも生まれ変わったっていう認識か。
「そうね。前世の記憶があるのは、ゲームをクリアした少し後までですけれど……」
「私もだ。それ以降はオモイだせない」
そうなのよねぇ。
いつ死んだのか分からないから、生まれ変わりだとは思うんだけどなんかちょっと微妙なんだよね。
しかも私、一回戻ってるからね元の世界に。
そんでもって、次回作をクリアしたらまたこっちに戻ってきてるし、よく分からない状態だわ。
……ところで、気になることが一つ。
この世界の元は乙女ゲームだ。
つまり、プレイヤーの対象は主に女性だと思う。
で、目の前にいるルーファスは男性である。
中の人どっちだこれ。
女性が男性、または男性が女性に生まれ変わるなんて漫画でも小説でも二次創作でもよく見たやつー!面白いよね!……で済ませられるならいいけど、別の性別って実際辛そう。
でも別に対象が女性だからって女性だけがやるわけじゃないよね。てことは元の世界でも男性って事もあり得るか。
そういや中学時代の同級生も、卒業式に告白される系恋愛シミュレーションにはまってたりしてたわ。しかもロックバンド大好きバンギャルが。未だに彼女がギャルゲーにはまった理由が私には分からない。
誰がどんなゲームをやろうが、男向けとか女向けとか関係ないか。
それにしても、私の悪役令嬢もだけど、攻略対象者に生まれ変わるのも嫌だね。お互い難儀よねぇ。
しかも波乱万丈なルーファスかぁ……
ヒロインが王子兄ルートに行くと死亡フラグが立つ私よりはマシ……なのか?
「キミは、どうするつもり?gameの内容と大分チガウ展開になっていると思うんだが」
「そうですねぇ。でも違うと言えば違うかもしれませんけれど、一応流れ的には私がクリアしたエンディングに向かう感じはします」
私がルーファスの婚約者になっちゃったっていう余計なイベントが追加されたようなもんだけど、王宮にヒロインと王子とルーファスがいるし、その内王子が暗殺されて話は進むんじゃないかな。
私というイレギュラーな存在がストーリーにどう影響を及ぼすのか分からんけど。
「私がルーファスの婚約者なってしまった事で、どう変わるのか分かりませんけれどね。本来、私と貴方が会うのはもっと後半になってからでしたし」
しかもその直後ベアトリーチェは死ぬからね。
このまま王子兄ルートで進むとするなら死ぬ運命かもしれないけれど、ルーファスが私と同じように転生してきているのなら、ちょっとは違う展開になるかもしれないなぁ。それを期待したい。私はオタクパラダイスに生きるんだ。ジョセフィーヌを庇って死ぬなら本望だけど、ヒロインを庇うなんて絶対しないぞ。
「……私が知っているendingでは、キミと私が婚約者にナルものもありましたよ」
「え?!」
まさか、ルーファスの中の人は王子兄ルート以外でクリアしたの?!
ていうか、他のルートは私生きてるんだー良かったー!どのルートか分からないけど良かったー!
そうだよねー。私が死ぬのはきっと前作を王子ルートでクリアした後、王子兄ルートを選んだからだよね。じゃなきゃ私は王子の婚約者のままでいるはずだもの。
……ん?王子の婚約者のままのはずが、何故に王子兄のルーファスと婚約?
「あの、私は幼い頃から王子の婚約者だったので、多分どのルートでも王子の婚約者としていますよね?ヒロインが王子を選ばなければ婚約破棄なんて事にはならず、婚約者のままだと思うんですけど」
ヒロインが王子にちょっかい出したから婚約破棄になったわけで、王子がヒロインとくっつかなければ婚約破棄の理由もなく、婚約者のままのはず。
ヒロインさえ関わらなければ、王子は婚約破棄という自分の首を絞めるような事をするはずがない。
と、いう事は。
「……私がルーファスと婚約するのって、王子ルートですか?」
「そうです。王子routeで私と婚約するんです」
「マジか」
私は王宮の輪舞曲では王子兄ルートしかやってないけど、王子ルートのままだったら、私は王子兄と婚約するって事になってたのか!
じゃあ今は王子ルート?このままいけばヒロインと王子が無事にくっついて穏便に終われるのかな?
いやいや、あのヒロインの目は物語っていた。私は見ていたよ!
このルーファスに一目惚れフォーリンラブしたってね!
「えーっと、実はですね。私はこのゲームのエンディングは1つしか見ていないので、他のルートは知らないんですよ」
「そうなのでスカ?私は一通りclearしたと思うので、大体分かりますけれど」
なんと。マジかすげーな。
私なんか1つクリアするので限界だよ。
「しかし現状、私がこの国に来たリユウがどのrouteともチガッていたので、今後どうなるのか分からないです」
ん?理由がどのルートとも違う?
一通りクリアしていたなら、王子が婚約破棄をしたせいで連れてこられたっていう展開もあるんじゃないかな。
それに、王子ルートって事は私は婚約破棄された後のわけだし。
それならルーファスがこの国に来た理由は同じだと思うんだけど、エンディングは王子エンドでも経緯が違ったりすることもあるのかな?やりこんだわけじゃないから分からないなぁ。
「……ちなみに、キミはどのrouteですか?」
「私?あー……本人を目の前に言いづらいんですけど、王子兄ルートです」
貴方とヒロインくっつけましたごめんなさい。
ゲームの中で最初の内はヒロイン苦手でしたよね。しつこく言い寄ってすみませんでした。
「王子兄route……え?」
「後半は乙女ゲームらしからぬ殺伐としたストーリーでした」
「私が攻略対象?」
「え?ええ。そうでしたけれど」
「そんなバカな。どうやって?!」
「え?」
「Rufusは攻略対象ではなかったデスよ?!」
「は?!」
待って待ってちょっと待った。
「ルート分岐に気が付かなかったとかでは?」
「そんなことはナイですよ!そもそもappealするようなバメンもないんですよ!」
「え、選択肢とか」
「出てきません!」
おかしい。
ルーファスの攻略って待ち姿勢じゃ進まないから、ヒロインがガンガンアピールしなきゃいけないんだよ。王子よりも優先順位は常に王子兄なんだよ。
それなのに、アピールする場面もない?
それじゃ王子兄ルートに行かない……あ!
「あの、王宮学園のラプソディーはされました?」
「オウキュウガクエンのrhapsody?……すみません。知りません」
「王宮の輪舞曲の登場人物の学生時代の乙女ゲームです」
「ガクセイ時代……?このgameは他にも出ているんデスね」
あーなるほどそっかそっか。
そういう事か。
ルーファスの中の人は、前作をやらずに王宮の輪舞曲だけやったのか。
王子兄ルートは、前作をコンバートしなきゃ出現しないのかな。
「王宮学園のラプソディーのクリアデータをコンバートすると、続編の王宮の輪舞曲でストーリーが増えるんですよ。私は前作で王子様エンドをやって、そのデータで続編のこのゲームを始めたんです。もしかしたら、王子兄ルートは前作をプレイしたら出来るルートなのかもしれないですね」
「そうデスか」
「ちなみにヒロインは同一人物です」
「What's?!」
「びっくりですよねぇ。前作で結ばれた人と違う人のルートに行けるんですよ。……あ、そういえば、コンバートせずに始めた場合って、どんな感じで始まるんですか?」
前作をクリアした前提でしかやってないからね。王子と結ばれてからのストーリーしか知らないから、王宮の輪舞曲からのスタートでのヒロインの立ち位置が分からない。
「…………」
「あの?」
ルーファスが呆然としてる。
前作で誰かと結ばれたのに、次回作で別の人と結ばれることもできるってのが余程ショックだったんだろうか。
「……すみません。トテモ驚いたので。ええっと、王宮の輪舞曲のハジメですね。heroineはガクエンで優秀なセイセキで卒業した事をヒョウカされ、王宮でオツトメ出来るようになったところからハジマッています」
「……は?」
「そこでガクセイ時代の同級生とサイカイします。そして……ガクセイ時代、セッサタクマしあった親友ともサイカイし、ここでもheroineの最大のリカイシャとなります」
「それ本当に王宮の輪舞曲ですか?」
「間違いないデス。むしろキミの言うstoryの方が信じられナイ」
いやいや、信じられないのはこっちですわ。
「heroineはベツジンなのでは?」
「さっき王子の横に居たのが前作でも今作でもヒロインですよ」
「……オナジですね……」
なんだなんだどうなってんだ?!
全然違くないか?
あのヒロインが成績優秀?
あの学園で成績優秀って事は、貴族社会のこともきちんと理解してるってことだぞ。
今のヒロインを可能な限り良い風に見ようとしても、成績優秀になるわけない。
男を誑かす面では他に類を見ない才能があるけど、流石に学校の成績にそれは反映されんわ。
ていうか、優秀な成績で卒業って、私が最初にクリアしたエンディングじゃん!
もしかして、純粋に王宮の輪舞曲だけやる場合って、前作は主席卒業エンドでクリアした前提って事?
そっちが正規ルートってこと?
合ってたじゃん!私が最初にたどり着いたエンディングが正解じゃん!
……そして気が付いた。
まさか、再会した親友って……
「あの、ちなみにヒロインの親友って?」
「キミですよ」
だと思いました!